水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第285話 ポヨ令嬢 の 過去

 

 

「おぉ、夢じゃなかったんですね」

 

「あぁ?あー、そうだな、魔法をかけられた側はわかんねーよな、悪かったよ」

 

「いえ、助けてくれてありがとうございます」

 

 

シャルルに救出されてすぐ、ポヨ令嬢がいたのでお礼を言って頭を上げると……苦虫を噛み締めたようなボヨ令嬢。

 

お礼を言う事自体おかしいのだろうか?ポヨ令嬢の派閥の子もいたし私の後ろでブチギレているジュリオンの目もあるしな。

 

 

「それで、改めて貴女と2人で話そうと思いますが……今お時間大丈夫でしょうか?」

 

「あぁ、ルカリムしすてむっつってたな?」

 

「はい、誰にも邪魔されずに会話できるはずです。エール先生、大丈夫なんで」

 

「危険です。闇の魔法は何が起こるかわかりませんし……」

 

「いえ、私はこの人を信用できると判断しました。それに約束しましたもんね」

 

「あぁ」

 

「いつ……?」

 

 

それで許可済みで思考を読み合いしてみると……あまりに可哀想で、しかし可愛すぎてちょっと笑ってしまった。

 

私の前世もバレたが闇の魔法の使い手だからかそのまま受け入れられた。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

名前が最悪だ。

 

母がつけた名前。それだけで笑いを堪えられない人は多くいた。

 

オギャース・ミィア・ゥウー・ハウアウ・ポヨ。

 

こんな酷い名前、誰かが付けてたら私だって笑う。

 

名前の由来は母が聞いた……生まれてすぐの私の声だ。

 

もっと意味のある名前にしろよとかじじーも止めろよとか思ったが……母はどんな名前でもこの子が偉大になれば良いのよ!なんて抜かしやがる。

 

 

派閥には俺につけられる側近がいるが……俺の名前を嘲ったり笑ったりする。

 

 

名乗るだけで笑われるしまじでムカつく。

 

何が「お可愛らしいお名前ですね」だ。お前も似た名前を名乗れって命令しても逃げ帰ってそこの当主が頭を下げに来る。くそすぎる。

 

いつだったか、じじーが力さえ示せば笑われなくなると言った。

 

 

だから、こう……なぐった。

 

 

嘲りのある目をすれば殴った。噴き出しやがったら蹴った。言い訳しやがったら杖をへし折ってやった。

 

そんなこんなで腫れ物みたいな扱いをされつつもポヨ家は国内でも力持つ一族で許されていた。

 

しかし、まぁ、居にくくなって城下に出た。賭け事にもハマったし、好きにできた。

 

誰も自分を知らなくて心地よかった。食いもんは不味かったが。

 

ある時、理由は忘れたが賭場があると不良貴族仲間から聞いた。行ってみようとすると――――攫われそうになった。

 

 

「なんだてめぇ!」

 

「口が悪い嬢ちゃんだ、なっ!」

 

 

路地を通ろうとすると肩を無遠慮に掴まれ、男に加減もなく頭を殴られ――――……恐怖した。

 

これまでこんな思いをしたことなんてない。誰かに叩かれたりしたのなんて初めてで、身がすくんでしまった。足が動かなくなった。

 

 

「良い服着てんじゃん」

 

「先に味見しようぜ」

 

「お前ら売りもんにすっから手ぇ出すんじゃねーぞ、大人しくなるまで躾けた奴隷も売れるにゃ売れるが……高く売るなら別のやり口もあるってな。覚えとけ、変態貴族共は躾ができてないぐらいのほうが好むこともあるってもんよ」

 

「へーい」「そんなもんか?」

 

「奴隷にする前に痛めつけるだろ?あれを客にやらせるんだってよ。逆らわなくなるしちょうどいいらしい。この間上物が大金貨4枚にもなったからな!」

 

 

相手は1人ではなく、数え切れないほど出てきた。

 

これまで全くの関わりがなかった人をいきなり売ろうとしているのに、全く悪いとは思っていないのが伝わってくる。

 

 

「いいねぇ!」「じゃあ奢ってくだせぇよ!」

 

「ばーか!前に売れた時はお前らに奢っただろ!たらふく食わせてやっただろうが」

 

「あー、ごちになりましたー」「いまもはらへってまーす」「おごってくだせー」

 

「てめぇらなぁ」

 

「ははははっ冗談ですぜ兄貴」「なー」「冗談冗談!」

 

 

こいつらからは離れるべきだ。

 

だけど怖くて動けなくて……何もできない。

 

 

「服も高く売れそうだな!」

 

「良い儲けになる。ここで剥ぎ取っちまうか?」

 

「奴隷屋の前にベーディーの旦那の店があったよな、あそこじゃ服も売ってるし……おい服脱げ」

 

「ふ……ふざけんな!誰が脱ぐかっ!!?……っ?!」

 

 

こんなところで脱げと言われて脱ぐなんてありえない。

 

大きな拳が目の前にあった。殴る寸前で、止められた。それを見せられた後に頭を小突かれた。

 

 

「――――次ふざけたこと抜かしやがったらぶっ殺して剥ぎ取るからな」

 

「こんなことして、兵が許しておくわけがないだろ」

 

「兵?はははは!あいつらな~んも出来ねぇよ!ほら見ろ!あそこにいるぞ!!おーい!こいつさらうけどお前死にに来るかー!?……ほらなっ!はははは!」

 

 

下町にだって兵はいる。なのにいなくなってしまった。

 

私と目があったというのにだ。

 

 

「なっ……」

 

「ひー、おもしれーな、嬢ちゃん。ほーら兵がいなくなったぞ。死にたくなきゃ脱げ」

 

「ひひひ」「ぬーげ!ぬーげ!!」「見せもんにして金取ろうぜー」

 

 

笑いながらこちらを見るクズども。

 

手元が震えて、うまく出来ない。

 

 

「何してやがる?」

 

 

訝しんだ顔の男に問われた。

 

 

「じ、自分で、ふ、服脱いだことがなくて」

 

「――――っぷ」

 

「ぎゃはははは!」「はーはっは、ごほっごほっ!?ふ、ふへはははは!!」「ひー!はらいてぇ!どこのお嬢様だよ!!?」

 

「まぁそんなこともあるわな、だけどまぁ服が駄目になっても俺達も機嫌が悪くなるってもんだ。機嫌が悪くなった俺達がどうするか――――わかるよな?」

 

 

短剣を取り出した男。見せつけてくる。殺すのだと。機嫌を悪くすれば殺すのだと。

 

怖くて恐ろしくて仕方ない。

 

息ができず、指先が震えてしまう。

 

 

「俺が脱がしてやるよ。――――動くなよ」

 

 

ここは外で、下郎に囲まれて、服を脱がねばならない。いや、脱がされてしまうのか。

 

恐怖で震えてしまう。自分の護衛は撒いてここに来てしまった。

 

 

 

 

 

――――――…………だれも、たすけてくれない。

 

 

 

 

「何してんだてめぇら?邪魔だぞ」

 

 

人の群れの向こう側に、誰かが来た。男の声だ。

 

 

「あ?てめぇにゃかんけぇねぇだろうが――――ちげぇか?」

 

「関係か、確かにその女との関係はねぇな……」

 

 

男は自分とは全く関係がない。こんな声の知り合いは居ない。こんな人数相手に助けてくれるわけもない。

 

 

「ならさっさと行けって、いくらてめぇでもこの人数相手じゃ無理だろう」「やっちまおうぜ」「こいつも売っちまおう」

 

「だがなぁ、俺の前で起きてることは俺に関係はあるんだよ……ゴルァ!」

 

 

そこで見た圧倒的暴力。

 

何人いたって関係なく、その男は全員を打ち倒した。

 

 

「たく、雑魚どもが……あん?大丈夫か?嬢ちゃん」

 

「っ!!?」

 

 

逆光で自分の涙でその男の顔はよく見えない。手を差し伸べてくれた男に、小突いてきた男の影が重なって…………私は手を取るどころか、打ち払ってしまった。

 

自分でも何をしたか、分からなかった。

 

 

「…………まぁ、好きにするこった」

 

「あっ……あっ…………い……」

 

 

そのまま男は行ってしまった。

 

助けてもらった礼も言えず、手を打ち払ってしまった。

 

 

「……お、おれいを」

 

 

過ぎ去った男の背に大声で呼び止めようとしたが、声が出せなくなっていた。

 

 

商人風の男にはっきりと恋焦がれたね。

 

それからはいつでもその男が俺の心に居座ってそのたびに胸が高まった。

 

せめて礼をしてやろうとしたら……その付近がじじーによって掃除された。ゴミも積もっていない、悪な奴もいない。衛兵がひしめき合っていた。

 

また会いたい。会って礼を言いたい。

 

それからずっと探したのに見つからなかった。名前も知らないその男は、見つからなかった。

 

じじーが俺のためを思って、掃除して、その中にいたのかもしれない。

 

それでも生きていると信じていた。あれだけ強かったしな。

 

まさか目的地だった賭場の主人だったとは……行商人風で、精悍で――――この上ない美貌の持ち主だと指定して探させたのが悪かったのかもしれん。俺は絵が下手だったのもある。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

いやー、夢、便利。ポヨ令嬢には殺されそうになったが手助けしてくれて助かる。後で良いお酒贈ろう。

 

頼めば前世の親の夢にも行かせてもらえた。

 

父さんたちはこの髪が虐待か何かじゃないかと心配したらしい。

 

 

自前です。アホ毛は自前じゃない気もするけど自前です。

 

 

前回は私の感情が高ぶりすぎて……気合いで頑張って耐えてたポヨ令嬢の限界が来て中途半端に終わってしまった。

 

それでもう一度つなげてもらって、今は日本が夜じゃないのか、寝てたのが父さんだけだったので色々話してみた。

 

現在家族は困ってることはないかと聞かれたが心配させないために「大丈夫だよ」って発言によって逆に身元を探ろうとしているらしい。

 

こんな髪の色なのはヤバい親に染められたとか思ったらしい。夢に出てきたのはなにかの虫の知らせで私のピンチだと。

 

ちゃうねん、ていうかなんで私の嘘がバレた?親だからわかる?

 

親にはかないませんなぁ。

 

最近の話とかできてよかった。まぁ、話すように言われた私の近況を白状するとなんか色々手伝ってくれるそうだ。夢の中でだけど!

 

ポヨ令嬢がいないとできないし、ポヨ令嬢様様である。

 

何度か夢に来てみたが日本の家族が寝ている時間につなげてくれているみたいだ。同時に寝ていないと家族みんな一緒には話せない。……時間の流れが違うのかとかは気になったがまぁどうでもいい。

 

おかげで家族とイチャコラ出来た。少し歳をとっていた妹と母さんには愛でられまくってる。

 

ふへへへ、まぁ夢の中なんだが

 

父さんたちにとってこちらの世界の知識が役に立つかはわからないが、地球の知識が役に立つだろうと科学や織物、産業なんかを教えてくれることが決まった。ただし紙やスマホはもちこめないし知識は記憶してここで口頭で話す必要はあるが。

 

 

助けてくれるポヨ令嬢と一対一で頭を覗いて本心から話してみると……ドゥッガに用があった。ルカリムシステムでは感情が伝わってくるが初恋だったらしい。今でも好意を持っている。ラキスさんの存在や子供がたくさんいることを伝えると愕然としていた。ショックが伝わってきた。

 

まぁ親分さんのことだし「道を通ろうとして邪魔だったからボコボコにした」のか、それとも「賭場の近くで明らかに仕立ての良い服の子が絡まれてて問題になる前に片付けた」のかのどちらかだろう。あとは面倒くさがって引きこもって顔を合わせないようにしてたんだろうなぁ……。

 

ルカリムシステムによると初恋とかじゃねぇしと言い訳する思念が聞こえてくる。

 

まぁなんて甘酸っぱいのかしら。

 

そんなわけで触るな危険、強面髭面暴力マフィアボスを……じゃない。白馬の王子様を探していたポヨ令嬢。初恋もあってずっと探していたらなんか私の部下になってた。だから恋心♥を他人に知られるなんて恥ずかしくて死んでも出来るかと考え、2人で話そうとした。愛するドゥッ――――

 

「ひゃはははははは!?ごめんなさっ!!?やめっ!もっふははひ!あははははは!!?」

 

 

思考って会話と違って止められない時がある。

 

あまりにも可愛くて、それでいて身内の話で調子に乗って面白がってしまったのだが…………ルカリムシステムで伝わっていたらしく、脇をくすぐられてしまった。笑い死ぬかと思うほどくすぐられた。

 

 

まぁ今度会わせよう。初恋は実らなかったけどお礼を言いたいのは伝わったし。

 




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