水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第291話 保護者 の サプライズ

 

 

「実はな――――鉄道、作ったんだ」

 

 

言いたくて仕方ないという表情だったシャルルが少し照れくさそうになにか言ってきた。

 

 

「は?」

 

「鉄道だ。石で作られてはいるが……これでリヴァイアスとも行き来が容易くなるはずだ!皆も見るが良い!!」

 

 

言葉はわかる。だけど意味が伝わらない。おかしいな。リュビリーナと接続したからまだ脳が情報を遮断しているのかもしれない。

 

会場にレールと車輪付きの床、それと車輪付きの小型帆船が運ばれてきた。楽しげに設置している学園の賢者たち。ユース老先生もいる。あ、板バネ使ってるのね。

 

 

「へ、へー?」

 

「嬉しくないのか?」

 

「いや、あまりにもおおきなはなしすぎていみがわかんないですが?」

 

「見ないとわからんか、仕方ないな。それとそれを使って頼みたいことがある」

 

 

そうこうしているとシャルルが一度王都から離れるように言ってきた。

 

最近何やら考え込んでいる様子のシャルル。何かあったのかと思ったが他国からの令嬢やライアームの息子たちが合流して何故か船で移動しているらしい。水軍もいないオベイロスでは格好がつかないしリヴァイアスで出迎えるように言ってきた。

 

 

「…………」

 

 

脳がバグってる気がする。移動が大変そうだなーと思ったのだが………なんかシャルルがいつの間にかボルッソたちを使って鉄道もどき作ってた。

 

石製の車輪に石製のレール、車体にあたる部分は「車輪付きの床」型と「車輪付き帆船」に見える。動力は騎獣もしくは船のように風をうけるマスト、それか土魔法によって車輪そのものを動かすという……私の知識から作ったらしいよくわからないナニカ。

 

報告しろよと思ったが私を喜ばせるためだったと、本来なら絵にあったような電車の車体を作ってから見せる予定だったが金属で作ると重くなってうまくいかず、床と車輪がついているものに絨毯が敷かれているタイプのものがよく動くらしい。政治嫌いのユース老先生が鼻をふくらませて説明してくれている。

 

見た目としては大型の空飛ぶ絨毯のような物である。パーティ会場にレールと床持ってきてくれてるから貴族たちも興味深そうに見ている。フリムちゃんの脳内では「帆船タイプは強度に問題があるだろうな」「雨降ったらどうなるんだろう」とか「風圧で人吹っ飛ばないのかな」とか色々考えてしまっている。

 

しかし新たな技術に貴族は興味津々で乗ってみたりして遊んでいる。子どものように嬉しげに説明しているシャルルとユース老先生。楽しんでいる貴族を見るに水をさしたくない。

 

会場にあるものは見本で既にレールも車体も作られている。それを使って王都のお見合い参加者をまるまる連れて行って外国の姫君たちとライアームの息子と娘を出迎えて……できればしばらくそこでお見合い大会を継続してほしいそうな。ディア様がついてきてトップで引率してくれるしこちらとしては「リヴァイアスが良いところ」と知ってもらえれば経済の観点ですごく良いことだろう。そして王都の準備が整ったら全員連れて帰ってくるようにと。

 

経済良くなるならと回らない脳が呆然としたまま考え……オーケーを出した。

 

 

うちの部下も、シャルルも、私を喜ばせるためのサプレーゼ、いや、サプライズだろうけど――――――『サプライズで線路引きました』とか……言ってよぉぉおおおお!!?

 

 

いつかやりたいことリストか!?エール先生に見せたもんね!!?それとシャルルだろ?!前世の経済の話するときに高速鉄道とか産業革命の話ししてたもんねっ!!!??

 

 

…………だめだ、線路とか電車。莫大な予算がーとか経済効果に維持費に思考がいってしまう。

 

 

間違いなくボルッソたちをこき使って、数億円か数兆円かかるとかじゃなかったんだろうけど! あ 、 単 位 円 じ ゃ な か っ た わ ! !

 

 

ちなみに戦時になれば線路のコースは崖下に行くそうである。意味分かんないんだけど、魔法なんでもありかよ……。

 

ドレス姿で褒めてほしそうに胸を張るエール先生可愛いけどさ、なんか素直に褒められないっ!!?

 

くそぉ……私が関わってたらレバーで車線変更できるとかそういう雑な電車知識でもう少しは効率良くできたかもなのに……今は一車線なのね……あぁもう、仕事で乗合馬車とかしてる団体から絶対苦情くるって………………え?国としてやってるし領地に莫大な利益が出るって説得済み?それは本人たちに?いや領主側なのね。領主はこっち側だし冒険者組合にも線路周囲の安全確保の仕事も割り振り済み?

 

 

…………えぇい!そういう根回しは早いのかよっ!!!??

 

 

しかし聞いてみると行商や乗合馬車をやってる人には何の措置もなしだそうだ。反応としては今のところ「そんなのうまくいくわけない」と「俺たちのほうが有能だし」とせせら笑ってよろしくない態度だったそうな。だから何の措置もなし――――……絶対揉めるね!フリム知ってる!未来人じゃないけど未来予知できた!ふっしぎぃー!!?

 

はぁはぁ……

 

 

「喜んでいるようだな」

 

「いえ、何やら悩んでいるような……」

 

「そうか?」

 

 

 

 

なんかもう、色々吹っ飛んだ気がする。

 

 

これ以上の事態には私の脳が耐えられない、学園側の寮に行こう。会場から帰ろうとする私にしれっとついてこようとしたリュビリーナだが当主さんが帰ってきて認められてからだ!帰り道は別!ハウス!

 

 

試験の一時的な中止でお見合い参加者は皆結構自由にしている。王宮はお祭り騒ぎだし、ちょうど学園側の様子も気になる。バネやベアリング、電車同士での接続部について会場でユース老先生に少し聞かれたが学園で研究してるならその研究物やデータを見てから話したい。ユース老先生もサプライズに協力した側だったのがなぁ……なにも悪いことじゃないはずなのに、ヒゲ引っこ抜いてやりたい。

 

脳が整理を求めている気がする。最近のことを思い直した。私悪役令嬢となってシャルルの婚約者を試すって任務があったはず。

 

それで……マウントの取り合いや陰湿な挨拶見たり、財宝がリヴァイアスから届けられたり、ドレスを皆に着てもらったり、ストレスになりすぎる試験を受けたり、魔力で威圧したり、ポヨ令嬢とエルストラさんで殴り合ってたり、襲撃されたり、リュビリーナが私の取り巻きになったり……。

 

他にも色々あったはずなのに、色々と最後に吹っ飛んだ。

 

電車ってなんだよぉぉおおお…………。

 

 

………………癒やされることにしよう。そのためにも――――。

 

 

 

「……ボク、あんな親父やだ。リーズの言う通りにしたら肩触られた」

 

「運がなかっただけだから」

 

「焼いてハゲにした。怒られた。話ぐらい聞いてってリーズが言うからあんな事になった。リーズが慰めるべき」

 

「はいはい」

 

 

屋根裏からリーズの部屋に行った。すると立ってるリーズのお腹に膝立ちのテルギシアが顔を埋めていた。

 

何かあったらしい。

 

 

「――――……お邪魔しました」

 

「え?待って!?こら!」

 

 

そっと閉じて去ろうとするとリーズと目があった。友達に愚痴りに来ただけなのに見ちゃいけないものを見てしまったような……お邪魔だと思って一言言って部屋を出ようとした。

 

ちゃんと床を閉めたのに床から手が生えて足を掴まれた。

 

しかたなく部屋に降りて話を聞いてみるとお見合いの試験はなくても周囲との交流はあったようで……色々あったのは私だけじゃないようだ。

 

ミリーは光属性であるため貴族に大人気だけど私のとこにいるからと一蹴、基本的に私のグループの誰かと一緒にいた。ローガンも雷属性で人気。若い女性に言い寄られていたそうだ。ガニューラが何故か女装の結果か男性に言い寄られているだとか……。

 

 

リーズのベッドの上で持ってきた食べ物を広げて食べながら話を聞いた。ベッドの上で汚さないように絨毯のようなものを敷いて3人での女子会である。なにかショッキングなことがあったのかテルギシアはリーズのくっつき虫になっている。

 

テルギシアに何があったのか聞いてほしいのか聞いてほしくないのかわからなかったので聞かなかったのだが……。

 

 

「……もっと撫でて」

 

「わかった、わかったから……。えっとね、この子も会場にいたんだけど、誰とも話そうとしないし、好き勝手しててね。少しは人と交流するように言ったんだけど……」

 

「……おじさんばっかり話しかけてくる」

 

 

テルギシアは火の名家フェニークスの令嬢である。リーズは土の名家タロースの令嬢。家同士のつながりを重視する貴族にとってどちらも垂涎の相手だ。

 

リーズの実家はライアーム側だから声をかけにくい部分はあるが、テルギシアはシャルル側にもライアーム側にもいるフェニークス家で声もかけやすい、貴族にとっての玉の輿案件のようなものだろうか。

 

会場では何時ものようにマイペースで居たテルギシア。声をかけてきても無視したり、邪険にあしらったり、会話のキャッチボール無しで逃げたりしていた。

 

みかねたリーズが「恨みを買いそうなので少し話すぐらいはするよう」に諭した結果。そもそもリーズ以外と殆ど話さないテルギシアは相手のトークスキルに負けて肩を触られてキレた。キレて相手の髪を焼いた。

 

髪を焼かれたおじさんに恋愛感情はなく、社交的に「向こうに美味しいものがある」と少しばかりフレンドリーすぎるムーブで背中を押すような形で肩に触れただけだそうが……災難だったな。

 

そこまでは……まぁ相手も悪いが、テルギシアも過剰な反応と言える。そのため王都のフェニークス家の方々にテルギシアは超怒られた。

 

火の家は多くあるし、火の家同士で弱みを見せないように睨み合っているのに面倒を起こすなと。そして王宮にいると他のフェニークス家の人に怒られそうだし、こっちで寝ることにしてリーズに慰めてもらっていたらしい。

 

 

「まぁ美味しいものでも食べてください」

 

「……ありがとう伯爵。じゃなかった。侯爵。できたら人気の食べてみたい」

 

「人気の?」

 

「…………ヤサイオオカブラスクナが食べたい」

 

 

微妙に違うが……皆食べ物を変な覚え方をしている。人によってはラーメンはうどんの一種とまで覚えている人もいる。

 

しかし、ねだられるのはスイーツだと思ったらそっちか。ベッドの上の女子会で大盛りラーメンはちょっと。

 

 

「流石に寝室では……また一緒に食べましょうね」

 

「……うん、約束。これも美味しい」

 

 

いや、焼売や肉饅頭を持ってきて食べてるしそれはそれで今更だかもである。……しかし、世の中自分の知らないところでも事件は起きているものだな。

 

就寝前の薄着で抱き合ってる2人を見たときはお邪魔かと思ったが、美味しい食べ物で許してもらおう。

 

 




また髪の話してる・・・髪は百合のための犠牲になったのじゃ。
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