水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね? 作:mono-zo
フリムへのサプレーゼは一応成功した。
反応が微妙な気がしないでもなかったがきっと内心では喜んでいたことだろう。
経済は何かしらのきっかけで加速するとフリムは言っていた。
教えてもらった知識の中でも特に良いとされる「工作をするための機械」とか「縫製工場」はどうしても作れなかった。オベイロスは生地も評判が良いし糸や生地を作る道具があれば良いかと思ったのだが……フリムの絵では想像もつかんし出来るかどうかもわからん。
しかし、鉄道や電車という大きな乗り物がどんなものか興味があって……これなら出来ると思った。
要は馬車を真っ直ぐ進めるように線路を作れば良いと思った。真っ直ぐ進むだけなら車輪も車軸も傷みにくい。しかし車体の「箱型である」という見た目には出来なかった。電車の天井と壁を作るとあまりの重さで車輪やどこかしらの部品が壊れるし資材が足りない。逆に天井と壁さえ作らなければかなりの速度も出せるし、重量が減った分重いものを載せることが出来る。
かなり良い出来になったように思う。
貴族たちも新たな乗り物に大喜びしていた。あれだけの人数が乗っても小さな力で動かせる。
フリムの言っていた鉄道の利点『人や物を安全に短時間で大量に運べる』……これはきっと莫大な利益になることだろう。リヴァイアスにとって大きな利益になる。経済を語るフリムは俺には何が楽しいのかよくわからんがそれでもいつも楽しそうだったし、きっと喜んでくれよう。
……それにしても、暗部からの情報によると伯父上の子は伯父上にも制御できない人物のようだ。
何がどうしてオベイロスの西を出発してオベイロスの東の果てであるリヴァイアスよりも更に北東にいるのか、全く意味がわからん。
一度迎えに行ってもらって……少しでもいいからリヴァイアスで王都に迎え入れる時間をもらいたい。その間に調べたいこともある。
爺が何が言いたかったのか。少しは推察が出来る。
爺の言っていた奴らとは上位存在であり、我が国は攻撃されている。
それを爺は止める立場にいて……おそらく、その対象が出てくるのを待っていた。
俺が近衛の数人、それにリュビリーナの側近を粛清し、これからは強い王であろうという宣言に対してこれまでの部下の死をも引き合いに出してまで止めに来た。
爺にとってそうまでする必要があったのだろう。そうして、爺は何らかの禁忌を犯し、自らが老いてまで何かを伝えようとしてきた。
大臣や貴族ではない『奴ら』……王が人である理由。考えねばならん。
きっと、いや、確実に『奴ら』と言ったのは相手をわかっていても言える限界がそのあたりだったのだろう。
上位存在のことを口に出すことが出来ない。爺にはそういう制約や縛りがあったはずだ。
敵は天使か悪魔か竜か巨人。いや必ずしも精霊が味方であるとは限らないし精霊……もしくはそれらの間の子や特殊な上位存在の可能性もある。
クーリディアスの王も悪魔らしきものに操られていた。オベイロスはいつからだ?いつからその何者かに攻撃されていた?
――――これまで考えたこともない。それほどまでに爺に守られていたのだろう。
とにかく何かしらの敵が存在していて、オベイロスはそれに蝕まれている。
爺が俺を説得したときのことを思い出す。弱い王の方が良い。王は生きていたほうが良い。
きっと俺が『弱い王』の方が爺の都合が良いはずだ。
フリムが襲われたと聞いて怒りで騎士もリュビリーナの側近も族滅してやると考えていたはずなのにな。フリムの安全のためにも爺と話し合ったが思わぬ答えが返ってきてしまった。
考えねばならない。俺は貴族を相手として考えていたのに、その貴族共に上位存在が関わっている可能性なんて考えもしなかった。
俺のためにも国のためにも……フリムのためにも慎重に調べることにしよう。
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「ライアーム様は?」
「トケルツェに慰霊に向かわれました」
「……なるほど」
最近、癇癪を起こすようなこともなく静かに考え込むようになったライアーム様。
政争の激戦区、元は山岳だったのに今では湖となってしまっているトケルツェに慰霊に行ったようだ。
テリーオフ殿下を筆頭に殿下方が派閥を引き連れての戦場となった場所。あそこで多数の貴族が死んだ。
当時ライアーム様は竜討伐に行っていたはずだ。
帝国は野生の竜だと宣言したが明らかに帝国の竜だというのはわかっていた。木っ端貴族に対して「あれは帝国の竜である。この地で見れるほどにオベイロスは崩壊寸前である。今裏切れば待遇も良くなるが」なんぞと下手な調略をしおって……いや、当時であれば勝算もあったことだろう。
ライアーム様は他の殿下方の争いよりも国の護りを優先した。
王位継承の争いを知った他国からの干渉もあったし国境では小競り合いを超えて戦争をしていた。
五、いや四人の殿下があそこで死んだ。光の殿下は先に毒か病でお亡くなりになっていた。
殿下方は儂からすれば異質だった。貴族は皆心酔していた。
儂もルカリムの加護を得てすぐは気がつけば日が傾いていたこともある。あの姿を見ただけでいつの間にか時が過ぎ去って驚いたものだ。
だからこそ、儂にはライアーム殿下のような人間らしさのない六人を気味悪くも思ったものだ。シャルトル陛下とはほとんど会えなかっただけだが……同類のようにも思えてしまった。
フリムには殿下方のことは伝えられなかったな。政争で両親を失っているし、政争の記憶などフリムには毒でしかなかろう。
いや、闇の加護で前世とやらがあるんだったか……今でもあの前世は頭にちらつく。
グラフとやらもよくわからんしなんで板に人が入っていたんだろうか?なんで空に届くような建物がどこまでも続いていたんだろうか?空に金属の塊が飛んでいて、大地に四角い金属が超高速で移動していて……意味のわからん世界だったな。
しかし人はいたし、人が作った文明でまちがいはないはず。
髪は黒ばかりで……きっと闇属性の人間ばかりの国家なのだろう。後退気味の父親は髪をわざわざ黒く染めていたしな。
(´・ω・`)ジーッ