水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

314 / 391
第293話 蒸気機関<初単位

 

「んぅ………ぅぅ…………」

 

「…………」

 

 

リーズの呻き声で起きた。

 

深夜まで近況を話したりしてからそのままリーズの部屋でお泊りした。同じ建物だし部屋に戻っても良かったのだが女子会が楽しくなった。移動が面倒だっただけである。

 

それは良いのだが私とリーズとテルギシアの3人で川の字で寝ていたのだがリーズの顔にテルギシアの太ももが軽く乗っている。テルギシアの寝相は悪いようだ。

 

顔にのっていた太ももをどかしてあげて、ベッドを出る。

 

 

「ぉはようございます」

 

「はい、おはようございます」

 

 

横で座っていたエール先生は私が動くと目を開けたので小声で挨拶をする。そして天井の出入り口から静かに部屋に戻った。

 

部屋ではジュリオンが待っていた。寝ててよかったのになんか申し訳なくなる。

 

ずっと起きているように思うし、大丈夫か聞いてみると交代して休んでいるし、私の水を定期的に飲むので疲れもないのだとか……魔力水にはカフェインは入ってないはずなんだけどね。一緒に水のもう。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

学園のチェックをしているとインフー先生の研究についての噂を知った。

 

 

なんだか爆発しているらしい。いつものことだな。

 

顔を見せるべく居場所を聞いて研究室に行くと何かを作っていた。

 

 

「おぉ賢者フリム!サプレーゼに間に合わなくてすまないね!なかなか難しくてね!!」

 

 

サプライズに?鉄道に関してなにかインフー先生も関与しているのだろうか?

 

フードを深く被って表情は見えないが少し楽しげというか明るい様子のインフー先生に少し警戒する。なにやら薬品臭い。

 

 

「蒸気機関というものを作ろうとしているのだが……なかなか難しい!うまくいきそうな気もするんだがうまくいかない!!」

 

「あ、なるほど」

 

 

電車や鉄道の歴史をシャルルに教えた時に蒸気機関のことも話した。

 

蒸気機関車は原理が単純だ。火を起こし、水を沸かして水蒸気を作る。その水蒸気の圧力を使って列車を動かす動力にする。

 

水蒸気や水圧というものはかなりの力を持つ。同じ原理でタービンを回転させて発電するし、水圧を利用して金属を変形させる技術もあった。

 

素晴らしい技術だ。技術の進んだ現代の日本ではなかなか事故にはならなかったが……それでも過去には多くの事故があった。

 

金属を折り曲げるほどの圧力は列車に発電所、水道管の破裂などの事故を起こしていた。

 

 

技術を積み重ねて、安全対策を入念に行っても予期せぬ事故は起こる。

 

 

インフー先生には悪いがそもそも蒸気機関のような巨大な動力機関を作るのに金属の精錬や圧力の測定に蒸気の逃がし方の工夫など、なんの積み重ねもないのに作るのは無理だろう。

 

床に何かが転がっているが……おそらく試験機かなにかだろう。金属がめくれるように壊れてしまっている。

 

まだまだ蒸気機関には程遠いな……それでも頑張ってもらいたい。多分私なら蒸気で動かせるようになる。

 

……ん?水車で穀物をついたり碾いたりというのがあったはず。とりあえず鉄道の方は動力が確保できているはずだしそっちの研究をしてもらおう。移動方法は蒸気機関がなくても確立しているみたいだし「いきなり蒸気機関車作る!」なんて難しいもんね。

 

 

「この転がってるやつはもしかして……」

 

「どれも失敗してね!恥ずかしいができそうな気もするんだ!それに陛下もおっしゃられたがこの技術があれば飢える子も――――」

 

「エール先生、ジュリオン。捕獲してください」

 

「「はっ!」」

 

 

よく見ればインフー先生は結構な怪我をしていた。足を引きづっているし手は包帯まみれである

 

聞けば予想通り実験による怪我であった。超魔力水コースである。

 

 

学園での視察はインフー先生以外順調だった。ユース老先生に話を聞きたかったのだが王宮から帰ってこないらしい。政治嫌いのユース老先生だが研究物を褒められていた。動く床のような車体とレールを使ったデモンストレーションには貴族たちの反応も子どもみたいだったからきっと楽しかったんだろう。

 

ちょっと反省した。

 

前世の知識を伝えたとしても元々ないものだから「実現はすぐには不可能」と考えていた。だって私の雑かつ漠然とした知識が元だし、専門家が集まって研究して……10年や20年かけても、もしかしたら私が生きている内に研究したって再現は不可能かもしれなかった。

 

前世の技術について「こんなことに使えてこういう利点があるものだった」「こんな形で便利だった」などは伝えても、鉄道には線路の保守点検や車両のメンテナンスのような作業が重要であることも、作るまでの過程には危険なこともあったなどとは伝えていなかった。

 

良かれと思ってのことでも、その知識で人が傷つくこともあるかもしれない。反省しなければならない。

 

しかし動力、動力か……。

 

私は近くに水を発生させて動かすことが出来る。水の玉で少し離れた場所でも自分の領域の範囲内なら物を動かすことは出来る。だが浮かせたまま繊細な動きをするのは難しいから自分や地面と接続することでより安定する。

 

近くにあった箒を持ってみる。前世で空飛ぶ魔法少女といえばこれだ。

 

水の腕で移動するのは簡単だが、空を飛ぶことは出来ない。空間に水を発生させて物を動かすことは出来るのなら……箒のみでは無理だな。引力に逆らっても何らかの発生する謎の力で飛べるかと思ったが出来なかった。軽いものなら浮かせることができるのにな。

 

水の腕で箒の前後を掴んで柱のように地面に柱を立てれば一応「身体は」浮くことが出来る。

 

水に直接触れなければ濡れることはない。書類を持ってるときにはありかもしれない。……しかし、なんだろうこれ?箒にまたがって箒の前後を水の柱で支えれば飛べてるような飛べてないような変な状態になる。魔法使いっぽく「空飛ぶ箒」にしたかったのに「鉄棒にまたがっている」ような感じになってる気がしないでもない。

 

 

「あの、なにをしているのでしょう?」

 

「…………なんでもないです」

 

 

エール先生の指摘でなんか恥ずかしくなった。

 

…………やっぱり無しである。服が濡れないのは利点があるが箒の上でひっくり返らないようにしているのは腕の筋力だ。安定しないし、これなら水の腕を使って自分にまとわせた水と水の腕で移動するほうが安定するし速さも出る。

 

色々考えて試行錯誤はしてみるが失敗ばかりである。

 

 

ついでに単位の試験もしていたので受けた。

 

 

学園の卒業は爵位継承の箔がつくし、最低限ここを卒業することで貴族として一人前と見られる風潮がある。

 

これまで様々なもののために単位を犠牲にしてきた。

 

長雨の原因となっていたためリヴァイアスの領地に行って、領地と爵位の継承、クリータの策略にクーリディアスとの戦争、落ち着いてリヴァイアスの領地を経営をして……学生としてどうしても王都に帰らねばならず水属性の学生代表になって、伯父上との戦い、ライアーム殿下の策に対して保護者と宰相が酒を飲んで「お見合い大会」なんて意味のわからないものを開催、私は意地悪な悪役令嬢をやっている。

 

いろんな問題で単位を取れず、いまだに私は単位ゼロ。

 

ノータに計算を教わって高等学校まで最速で進学したモーモス、それに追いつきそうなリーズとテルギシア。

 

他の皆も単位を取っている。私よりも後に学園に入って銭湯と洗濯と繕いものをしているタラリネもお見合い大会までに少しだが単位を取得している。

 

 

そんな中、私は――――ゼロ。ゼロだった。

 

 

貴族として単位取得は何年かかっても問題はない。その制度を利用してエルストラさんはずっと学園に籍を置いている。私の場合何年単位ゼロでも問題はないのだ。

 

だが、こう、今まで留年とかしたこともないし、大学でも基本的に単位を落としたこともない。せいぜい病気でイレギュラーに試験に受けられなかったことがあるぐらいだ。

 

みんなにおいていかれていたような、やっちゃいけないことをしているような嫌な気持ちがどこかにあった。

 

 

でも!今日!!初の単位を得た!!!!

 

 

小学校低学年レベルの算数問題でだけど!今日は祝いだ!!

 

…………リヴァイアスに行く用事も増えたが、また様子を見て単位を取ることにしよう。

 




ストックなくなったら週一ぐらいの投稿頻度にする予定。他にも書いてるので……(;´Д`)ユルシテ…ユルシテ……。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。