水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第295話 いくつかの試験+いつものお仕事

 

出発のタイミングはシャルルが決めるため少し時間がある。

 

久しぶりにお見合い会場の人との試験が再開された。リヴァイアスにはお見合い参加者も一緒に移動するし、その前にもう少し試験をするそうだ。

 

軽く踊ったり、作法を披露する。

 

礼儀作法や舞踊はエール先生に習いはしたが……やはり周りの令嬢に比べるといまいち、ギクシャクしてしまう部分があったと自覚する。

 

エール先生からすれば全体的に及第点はとれているそうだけどやはり年齢イコール貴族をやってるような周りの令嬢方は所作を美しく見せることが自然にできている。

 

しかしよく観察してみると王都の貴族と辺境の貴族では少し細かな部分が違う気がする。

 

王都の貴族は私の明確な失点に笑わなかったが、辺境の貴族たちをこそこそと嘲笑っている。感じ悪いなぁ。

 

 

「リュ、リュビリーナ様?」

 

「ふふん!お姉様が行った作法こそ流行の先端よっ!!」

 

「な、なるほど」

 

「貴女達もやりなさい」

 

「「「はいっ!」」」

 

 

ちらりとこちらを伺ってきたリュビリーナ。ヤメロ。褒めてほしそうに、いや、叱ってほしそうである。取り巻きも納得するんじゃない!

 

私の所作を見ていなかったであろうリュビリーナの取り巻きたちが、ぎこちない私の真似をするリュビリーナを真似してさらにぎこちなくなり……それを周りの人が見ていた。それを更に辺境の貴族たちが真似し始め、なんか変にぎこちない所作が見える。

 

 

止めてくれ。恥ずかしいから止めてくれ……。

 

これ、もはや私への攻撃じゃなかろうか?

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「杖の使用が許されます、属性事に集まってください」

 

 

杖の使用が許可された。速く移動するだけの項目なのに属性ごとに服も用意された。

 

風の魔法使いはビュンビュンと走ったり飛んだりする。くるぶしにある金具をマントの端に付けてムササビのように飛ぶ人もいた。よく見ればフリルの派手な人も多く、風でかなり目立つ。

 

モーモスもいるが……あ、誰か轢いた。

 

 

「水属性の方、火の玉が地面に落ちると同時に開始です。<炎よ。果実のように――――落ちよ>」

 

 

別グループを見るのも楽しいが、自分の番となれば本気を出さねば。

 

試験監督が炎の玉を落とした。スタートの合図である。

 

 

「<水よ>……とうっ!」

 

 

水のトンネルをトンネル状に作ってそこに飛び込む。水の腕を腰から出して蜘蛛のように動くほうが慣れているし安定するが、速さだけ考えるとこちらの方が速い。

 

擬似的に水のトンネルを作って一気に移動する。高速移動方法である新幹線やリニアのような……いや、ロケットになった気分で一気にコースをクリアした。普通の道なら行く先で馬車や人にぶつかる可能性もあるからほとんど使い道のない魔法である。

 

服から水を抜いて軽く乾かす。ほんのりと湿った感じは残るがビチョビチョよりはいい。

 

他の水属性の人は基本的に走っている。魔法で移動する人は殆どいない。

 

礼儀作法で侮られた空気だったがなんとか挽回した。……人間砲弾みたいだし見通しが良くて誰もいない状況じゃないと使えないけどね。自爆痛いし。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

次々と会場を移動して別の試験を受ける。次は軽い筆記である。

 

まともな問題と酷い問題を挟まれた……いつものクソ問題である。

 

 

「わたくし、筆記で自信がありませんでしたわ」

「私もです」

 

「この子よりマシでしょう?なにせなぁんにも書かずにただ座ってただけですからぁ」

 

「それはっ!用意された筆記具が使えなくてっ」

 

「あれ?言い訳?騎士の娘が言い訳かしらぁ?みっともなぁい」

 

「っ!!?」

 

 

あらら、いつか庭園で絡まれていた目の隠れた子が絡まれていた。

 

 

「あら、筆記具に問題があったのですか?」

 

「リ、リヴァイアス侯爵っ!?」

 

「はい!折れた羽根ペンに、インクも瓶にはいってなくて……交換を頼んだもののそれもまた乾いたものでした」

 

「自分が出来ない言い訳じゃないかしらぁ?」

 

 

私が話しているのにネットリした口調で口を挟んできた……名前覚えてないけど以前彼女をいじめていた離婚されたおばちゃん男爵だったか子爵。

 

そもそも筆記具が使えないのは試験以前の問題だろう。

 

虐められている彼女は騎士爵の跡取りである。この国における騎士爵は貴族の中ではほとんど最底辺。……嫌がらせかなぁ。

 

試験は国が彼らの能力を把握するために必要なものだ。そもそもまともに受けられないでは試験の意味がなくなってくる。原因がいじめているおばさんかはわからないが報告が必要だな。

 

強い視線で見下されている。

 

 

「ふむ、私はこの娘に話しているのであって貴女に話していません。口を挟まないでください」

 

「なっ!?こ、この娘は騎士爵の分際で領地を持つ役立たずの娘ですよ!?その娘と子爵である私であれば私こそ優先されるべきでしょう!!?」

 

「私はシャルルの相談役です。試験は受けれなければそれは問題であり、貴女が口を挟む問題ではない。――――<下がりなさい>」

 

「ぅ……あ…………」

 

 

強引に魔力の圧を浴びせておばさんを下がらせた。

 

 

「行きましょう」

 

「は、はい!」

 

 

目の隠れた少女をこの場からまた連れ出すことに成功した。

 

少し話を聞こうと思ったのだが……。

 

「あ、ありがとうございましたっ!!あの醜いババアを追い払ってくれてありがとうございます!では失礼します!ありがとうございます!!」

 

 

ペコペコ頭を下げられて、めっちゃ高速で逃げられてしまった。

 

 

「捕らえましょうか?」

 

「いや、まぁ大丈夫です」

 

 

ジュリオンが捕まえるか聞いてきたが……騎士爵と蔑まれていた彼女からすれば、私は見るな聞くな触るなの危険な大貴族に見えているのかもしれない。私も昔は虫の構えになろうとしてたしなぁ。

 

あ、私そういえば悪役令嬢やってるし、より危険な人物に見えている可能性もある。あの反応を見るに……うまく悪役令嬢やれてるんじゃないかな?

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

魔法省、魔導省でも意味は同じだし、どちらでも呼ばれるが一つ注意しておこう。

 

 

「ゴムは食べちゃダメなので気をつけてくださいね」

 

 

研究用ゴムシートの搬入のついでに伝えておく。

 

至極当然の常識だ。でもそれは前世を持つ私の常識である。

 

もしかしたら作ったゴムは食べても消化できたり薬のような良い効果があるかもしれない。しかし、注意ぐらいはしておこう。

 

前世でもなにかの注意書きはすごく大事だった。これは食べ物ではありませんと表記されるだけで事故はかなり防げたはず。

 

インフー先生を見て、危険を危険と理解できない人もいると知った。あれと同種の人間がたくさんいる場所なら……何をしでかすかわからないし言っておいたほうが良いだろう。

 

 

「リヴァイアス侯爵、雨具を作ろうとしているのだがどうしても糸を通した場所から水が漏るんだ。なにか対処法はないかね?」

 

「ゴムは溶けるので縫った後に加熱した鉄棒を押し当ててください。溶かしたゴムの強度は落ちますので作りたいものがあればリヴァイアスに注文をお願いします。あ、しばらく専門家をひとり置いていくのでどうぞお使いください」

 

 

トルニーを少しここに置いて技術の供与と監視をしてもらう。ゴムについて知らない人ばかりだし、一応「リヴァイアス家で作ってるものでシャルルやユース老先生も協力開発している」ということは知っているはずだ。気軽に外部に女王や物品を流すようなことはないと信じたいが、王都の貴族は腐ってる。

 

この技術の横流しをトルニーで止められるかどうかはともかく監視してもらう。そして作っていたゴムはんこのような日常使いで便利なものを開発するようにそれとなく誘導して欲しい。

 

 

「助かる!後このことはラズリー様には言わないでもらえるともっと助かる!」

 

「なんでですか?」

 

「いやぁ稀少な研究物は少しでも確保しないと――――じゃない。婚儀に参加をしている令嬢を少しでも支援することはオベイロスの貴族として正しいことのはずですからね!」

 

 

欲望が少し見えたが……ラズリーさんはむしろゴムの生産地となっているリヴァイアスに行くことを喜んでいた。

 

 

「これで仕事は終わりかなー」

 

「まだまだ執務は残っておりますが」

 

「それは言わないお約束ですよエール先生」

 

「そんな約束はしてないと思いますが……?」

 

「冗談です。仕事はいくらでも増えるので最低限はって意味です。…………サボるとかじゃないです」

 

 

家の仕事もたくさんこなした。たくさんの書類が届いている。結構な量が仕分けられているがこの山は――――いつも通りにお見合いの申し入れか……貴族院め。

 

特別なにか事件が起こるようなこともなく、リヴァイアスへの出発が決まった。

 

 

「何も起こらないと良いんですけどねー」

 

「それは無理でしょう。他国の姫君にフリム様の婚約者になろうというライアーム様の御子息がいらっしゃいますし」

 

「ですよねー……」

 

 




書籍買ってくれた報告凄く嬉しいです!

なにせ作家は買ってもらわないと続けられませんからね……『推しは推せるときに推せ』『推したい時に推しはいない』……なんて言葉を聞いたことがあります。僕が言うことじゃないかもしれませんがw
面白いと思ってもらって、読んでもらえる。これ本当に嬉しいです(/>ω<)/ありがとー!!
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