水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第296話 出発前@精神汚染

 

鉄道は王都の城壁から少し離れた場所にあった。

 

お見合い参加者に、最高責任者のオッヴァーディア様、鉄道作成によってちょっとテンションの高いユース老先生もリヴァイアスに行く。

 

 

予定では2日で到着の予定である。

 

 

事前に検査した時はわずか1日で到着したらしいが私はその安全性を信じていない。オッヴァーディア様もいるんだし早さよりも安全優先にしてくれと伝えると4日から5日になるかもしれないと言われた。

 

結構な食料も積載しているし、他国の姫君やライアームの息子たちが到着するのにはまだ時間もある。食料も時間も問題ない、安全優先で。

 

 

「行ってきます。お父様、お母様」

 

「気をつけていくんだよ」

 

「リヴァイアス侯、どうか娘をよろしくお願いします。これは些細なものですが」

 

「はぁ」

 

 

出発前、不思議なことにお見合い参加者の親族が見送りにやってきた。

 

辺境から来た貴族は王都の貴族と仲が良くないのに……辺境の貴族は中央の貴族に何やら生ぬるい視線を向けている。

 

 

「うちの息子も、宜しくお願いします!これはミハイン家の彫像です!ぜひ受けとってくださいませ」「この娘が心配で……私共もついて行ってもいいでしょうか?」「従者として20人ほど追加したいのですが、勿論お礼はしますので」

 

「却下です。安全のために陛下の騎士もいますので……なんだこれ?」

 

 

王都の貴族は王都から一生出ずに過ごすこともあるらしい。なのに息子や娘がオベイロス中央から国土の最果てリヴァイアスに行くのだ。今生の別れかのように激励する人もいれば音楽付きパレードでやってくる者もいる。

 

シャルルのサプライズである鉄道にはレールにも車体にも不安がある。あまり重量を増やしたくないため予定されていない荷物の受取りや同行は却下した。

 

乗って移動するだけなんだからすぐに乗ればいいのにと思ったがそうは行かなかった。

 

 

「あら元気ね。楽しみ?ふふっ良いわね」

 

「ココッ!」

 

「なるほど、楽しむのは良いですが壊さないようにお願いします」

 

「コッコ」

 

「あらまぁ!」

 

「コココココッ!!」

 

 

時間を守らない貴族が続々と別れの挨拶をしている横で、ディア様が何やら大きな鳥と触れ合って話していた。

 

その鳥はジュリオンが3メートルぐらいはあると思うが比べてもかなり大きい。全体的に丸い、北海道の……なんだっけ、エナガ?のような丸っこい鳥だ。白を基調として黒がまじっている。

 

 

「エール先生、あの鳥は……?」

 

「精霊鳥ラルターニ・ホメーフォス・フィッフィーですね。重いものを動かすことが大好きな子です」

 

「ディア様がなにか話してるようですが」

 

「オッヴァーディア様は精霊の気持ちが少しわかるそうです。不思議ですよね」

 

 

巨大生物が近くにいるのに、エール先生は警戒していない。安全なようだ。

 

精霊は何を言ってるのかよくわからない部分がある。自分に加護をくれた精霊でも意思疎通が取れないことはしばしばある。その中で『どの精霊とでもなんとなく意思疎通が取れる』のは王家と王家に養子入りした経歴のあるオッヴァーディア様だけだ。

 

 

「あぁいった鳥はよくいるのですか?」

 

「フィー様は精霊鳥で特別な存在です。可愛いのですがちょっと困った子です」

 

 

上位存在にも例外はいて、あの鳥は精霊と鳥の間のような存在らしい。

 

フィーと呼ばれた精霊鳥は友好的かつギリギリ話の分かるタイプの霊獣に分類される。

 

基本的にオベイロスの何処かにいて好きに行動している。重いものを動かすのが大好きらしく、鉱山付近にいることが多い。問題は『重いものを見つけると動かすことがある』ので石像や家、巨木がある日突然移動していることがあるそうな。

 

今は鉄道に興味があり、無視するとレールを地形ごと持っていかれそうだったので車体を曳いてもらうことが決まった。

 

ちなみに基本的にフレンドリーで声を掛けるぐらいなら誰でも出来る存在ではあるが、子どもと気に入った対象、そして王族以外に触れられると怒るので注意が必要らしい。

 

 

「フリム様も触っちゃいけませんよ?毛の中は気持ちよくはあるのですが」

 

「エール先生は触れたことがあるのですか?」

 

「幼い頃から王宮で過ごしていましたので……玩具にされている気がします。飛んで逃げてもそれ以上の速さで追いかけてきて丸呑みにされます。そして吐き出されて気が済むまで毛の中に入れられることがあったりします」

 

「……結構危ないのでは」

 

「いえ、危なくはないのですが……その日の仕事はできなくなりますね。あとたまに飲み込まれたまま知らない領地まで飛んでいくこともあるので帰るのが大変になります。国内ではあるのですが」

 

 

危険すぎる鳥ではなかろうか?

 

一応私は子どもカテゴリに入りそうではあるが前世のことも考えると何をされるかわからない。触らないでおこう。

 

とりあえずその国から大事にされている鳥とディア様は歓談しているし、お見合い参加者たちの乗車をゆっくり待つ。

 

 

「リヴァイアス侯爵閣下」

 

 

私にも挨拶は来るしね。さっさと出発したいのだけど。

 

 

「はい」

 

「リュビリーナをよろしくお願いします!いえ、その前にこの度の一件、うちのものが非道な真似をして大変申し訳無い。心から謝罪致します。うちの可愛いリュビリーナの為ならいくらでも支払いますゆえどうかリヴァイアスの地において特別な対応を願いたい。娘とは懇意と聞いておりますゆえ何なら寝所に連れて行ってもらって――――」

 

「ちょっと!もう!お姉様に失礼じゃない!」

 

 

後ろから声をかけられて、振り返ると私に対して膝をついて頭を下げている男性がいて、マシンガントークのようにいきなりなにか言われた。言ってる内容と後ろにいるリュビリーナによって誰か分かった。

 

この人、『商売貴族』の二つ名を持つ、ガーレール商会長だ。

 

 

「あの、私に敵意などないのですか?」

 

「とんでもありませぬ!誤解はありましたが私個人から含むところなど一切ありません!……それよりもリュビリーナの想い人ということを聞きまして、これは慶事ですな!リュビリーナはとても可愛く、昔からとても優しい、聖女と呼ばれるだけある自慢の子でして――――」

 

 

ニッコニコな顔でこの広い宇宙のどこかの言語らしき言葉を話してくる男性。

 

受け入れたくないが、それでも意味をゆっくり理解しなければいけない。

 

謝られたが同時に「リュビリーナ可愛い話」になりそうだった。しかし、信用はできない。彼はリヴァイアスの元領民を集めていたし攻撃的な意図はあったように感じる。

 

 

「一応ルカリムでその真意を確認してもいいでしょうか?」

 

「疑いが晴れるかはわかりませぬが、是非に」

 

 

やりたくはなかったが商売貴族ともルカリムシステムで接続する。人の心を覗けるルカリムシステムは便利すぎる。

 

彼は確かに誤解から敵対しようと準備した。だが実行もできる状態にはしたが自分の知らない状態で配下が勝手にやった。現在は敵意も反意もまったくない。現れた大精霊ルカリムに触れられたことで「なにこれ?」と動揺しているが思考を先に探った。考えていることが伝わっていると伝えるとすぐに「うんこうんこひんにゅう」などとお馬鹿なことを考えた。伝わってるぞと伝えておく。しばくぞ。

 

少し落ち着き、記憶と思考を読み取っていったが…………あれ?リュビリーナパパだけあってこいつも結構おかしいぞ。

 

 

「珍しいことでは有りません」

 

「ちょっと黙っててください」

 

「はい」

 

 

この国の上級貴族において結婚には「精霊」という障害がつきものである。

 

その中で女性にとって最上位の相手といえば一応シャルルであり、政争で荒れた際に裏でレージリア宰相によって要請があり、可愛いリュビリーナを泣く泣く「ふざけんなクソが」と思いながらも差し出すような形になった。国の中でも最上位の相手であるしリュビリーナも楽しんでいるようなので受け入れたが「あんな決断力もなく、政治から逃げ出したこともある男にうちの娘はもったいない。いつかぶっ殺してやる」なんて気持ちもあったようだ。おいおい、何だこの危険なやつ。しかし、政治的にも商会としても親としてもこれ以上の相手はいない。だから支援もしてきたし王家にもガーレール商会にも利になるように働いてきた。でもシャルルは娘と面会すらしない。少なからず、いや、かなりの不満はあった。

 

今回、どうして屋敷に軍団長や騎士団長や竜人が押し寄せてきたかわからないが……リュビリーナには想い人が出来た。

 

相手は幼いフレーミス。一度娘に膝をつかせた部分は気に食わない部分もあるがうちの娘を大切にしないシャルトルに比べてよほどいい。むしろいい。かなりいい。魔力と精霊が合わない結婚は不幸になるし、娘があれだけ求めているのならきっと娘の人生にとってなくてはならないような相性の相手だ。それが分かったのなら膝をつかせた騒動もきっと精霊の導きだろう。この国じゃ精霊同士が認めれば同性も問題ないし、最悪養子を取るか精霊様が持ってきてくださる。大体、あんな決断力もなくリュビリーナを邪険に扱う小僧にうちの娘をやることは反対だったんだ。娘が納得してあの立場にいたから応援していたがそれ以上の相手がいて娘が「どうしても」というのだからそうしたい。うちの可愛いリュビリーナのためなのだから、人も物も支援はいくらでもしよう。

 

色々この人には言いたいこともあるが心の底から応援してくれているようだ。おたくの娘さん思ってるよりもヤバい人ですよと伝えたい気持ちもあったが真意は分かったので接続をきる。ひどく疲れた。

 

 

「儂の心からの想い。おわかりいただけましたかな?そんなわけでうちの娘をよろしくお願いしたい。――――そのためならこのガーレールは膝をつき、頭を下げることも厭いませぬ。支援も出来る限り行いましょう。うちの娘を、どうか末永く宜しくお願い致します」

 

 

結婚の挨拶かよ。

 

結婚の挨拶か…………空は晴れていて綺麗だなー。電車早く乗りたいなぁ……あ、電車じゃなかったか、電気で動かないし、よくわからないトロッコ的ななにかだったわ。

 

 

 

 

…………………………………………どうしてこうなった。

 

 

 

「もう、お父様ったらぁ」

 

「はっはっは!娘のためなら、おっとすまない」

 

「ココ?」

 

 

いつの間にか近付いてきていた精霊鳥。リュビリーナがパパさんを押すとパパさんは精霊鳥の毛にふらついて触れて……精霊鳥はガーレール商会長を丸呑みにして頭をブンブン振った後にゲロった。生きてるっぽい。ちっ。

 

遠目にそれを見ていて、精神力の回復に努める。

 

そういえばリヴァイアスの領地を得たあとには「結婚相手に」と年頃の近い男女が差し出された。あれの名目に「私との結婚相手に」とあったが、女の子もそういう意味だったのか。

 

状況を理解するのに時間がかかっている。

 

 

準備は終わったようなので出発したが……なんだかなぁ。

 




ということは男性✕男性、女性×女性……人間と他種族でも可能かもシレナーイ!!
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