水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

319 / 391
第298話 シャルルの学び↑↑フリムの学び

 

 

フリムはリヴァイアスに行ったか……今頃列車を楽しんでいると良いのだが。

 

 

王として、フリムの保護者としてやるべきことがある。

 

ライアーム伯父上の子らに外国の姫君を迎えに行ってもらうのも確かに大事だが――――王都にはなにかの危険が潜んでいる。

 

爺がすぐに解決できなかった問題だ。それに慎重にしていたのを見るに……きっとその何かはすぐに見つけられるものではない。それでも気が付いた今であればその影か足の先だけでも見つけられるやもしれん。

 

基本的にお見合いに参加している者はまともだ。王宮の貴族のように腐りきってはいない。彼らを調べても普通に駄目な貴族はいるものの、倫理観や道徳観が大きく欠如しているものは少ない。

 

王宮の官吏にも試験的に分厚い問題の一部を受けさせていたのだが結果は酷いものだった。

 

フリムとの勉強では『多角的な見方が重要』ということを学んだ。

 

俺にはわからない部分も多かったが、フリムは俺にもわかるように教えてくれた。

 

 

「『平民が卵を盗んだ』とします。このことから考えられることを言ってみてください」

 

「そうだな。その平民が食べたくて盗んだのではないか?」

 

「それも一つの見方ですね。はい次!」

 

「盗んだのだから捕まえねばならないな」

 

「それだけですか?」

 

「あ、あぁ」

 

 

こちらを見つめるフリムが何を言いたいのかわからなかった。しかし、すぐに思い知らされた。

 

 

「その卵は貴族の命令で盗むことになったのかもしれません。お店の警備があまかったのかもしれません。卵を別の店で買って帰ろうとしていたら力ある商人によって盗んだと陥れられたのかもしれません。働いてもお金がなくて飢えて卵を盗んでしまったのかもしれません」

 

「それは……」

 

 

その目は政策を決めようとするときの大臣や爺のようだった。

 

 

「卵に限らず、何かが起きた時、なぜそれが起きたのか推測し、それが起こらないように予防し、起きてしまったとしてどう対処するかを考える必要があります。多くの立場や視点で想像して」

 

 

何をするにしても色んな考え方や視点があるということが言いたかったようで、それは心に染み渡る思いだった。

 

王宮の貴族と集められた者には違いがある。これが意味があることかはまだわからんが、それでも何かがわかるかもしれん。

 

 

フリムの能力は高く、きっと俺よりも賢いのだろう。

 

たくさん話してフリムの弱点にも気がついた。フリムは優しすぎる。

 

前世の国では犯罪が起きることも珍しく、夜でも女1人で護衛もなしに出歩くことが出来たそうだ。

 

そんな状況から過酷な生活を経た。だからかフリムは周りに置く人間を無意識にか選んでいる。周りの人間の状況を優先し、被害を自分の身に抑えようとしている。今では多くの部下がいるのに、傍に置くのはいつも変わっていない。

 

護衛にするだけならマーキアーは奴隷のままで良かったはずだ。ジュリオンも一度は自由にしても良いと突き放したそうだ。裏切りそうな人間が部下として集まるからか、フリムはあまり人を信用していないように感じる。

 

だからこそ俺が信じるヒョーカを傍に置こうとしたというのに……いや、ヒョーカは口下手だし1人で行動したがる。考えてることがわからんし、遠ざけられているのかもしれんな。

 

無意識なのだろうか?子どもの視点で考えるのなら、周りの誰も彼もが大きいはずだ。勿論力も強い……もしも誰かに拳を振るわれればそれだけで危険である。信用しなくて当たり前か。

 

部下を1人の人間として尊重し、彼らが傷つくよりも前に出て問題を解決しようとする。前世の価値観からだろうが、守られることに慣れていなさすぎる。なまじ能力があるから周りも止めにくい。絶対の権力はフリムにあるのだからなおさらだ。

 

 

俺は俺で貴族共を牽制してフリムの安全のために働きかけているが、やはり防ぎきれん。今回、近衛がフリムを襲ったのは……本当に不甲斐ない。

 

 

それに『自分で処断する』ことに慣れていない。『処断するのは国の役目』だと思っている節まである。前世ではそれが当たり前だったそうだ。揉め事が起きても自分では対応せずに国の騎士のような立場の人間が対応する。

 

襲われても自分で対応しないってのはかなり意味がわからないが、そういう常識の中生きていたからこそこれまで甘い裁定をしてきたのだろう。これを聞いたエールが短剣の指導方法がどうとかブツブツ言いながら頭を抱えていた。

 

フリムのもとには不良貴族の子弟も派閥入りしていて、明らかに裏切っているものの処罰はヒョーカと重臣が行っていてフリムは関与していない。普段からそうなのがよくないのかもしれんな。家の問題は当主が処断するのが当たり前だし、魔法の的にして引き締めるぐらいはやっても良い立場のはずなのだが……。

 

リヴァイアスで戦争を経験してからは少し過激な気もする。王都の貴族に対して遠慮がちだったのが敵対心がはっきり見えるし、まだまだ甘すぎるが当主が前に出ようとするのはリヴァイアスの気質が出てきている可能性もあるか。あまり凶暴になられても困るが……今は周りの貴族にとって力のある大魔獣に思われたほうがフリムにとっても、貴族にとっても安全な可能性もあるな。

 

 

フリムは周りの状況や意見に合わせて、国や俺、リヴァイアスの利益……多角的に『最良』を考えて選択している。

 

 

しかし信用するべき相手を傍におかず、命じることを好まず、自ら前に出ようとする。

 

明確に弱点であり、付け入る隙があるだろう。何故俺は気がつけなかった。

 

しっかり者で全幅の信頼をおいているエールをつけていた。自分や国のことで精一杯だったというのもあるが……自分の不甲斐なさに腹が立つ。それでも俺はやるべきことをしなければならない。

 

 

腐った貴族の少ない子弟に叔母上、筆頭婚約者となっている5人を動かした。

 

 

腐りきった貴族が爺の言っていたようななにかに操られてそうなっているという確証も未だに無い。

 

だが、これだけ大きく動かしたことで……なにかが変わるかもしれん。何かが見えるかもしれん。

 

その何かを見逃さないように、信頼をおいている騎士の動向も含めて調べねばならん。――――闇の奥深くから。

 

 

「しかし、フリムにはすぐに帰ってきてほしいような気もするな」

 

 

もはやオベイロスの何処にも安全な場所などないのかもしれん。リヴァイアスの方が安全なのかもしれんが……いつの間にかフリムが近くにいてくれたほうが安心できていたと思ってしまう自分がいる。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

意外とこの列車は居心地がいい。

 

ほぼ直線の移動で多少の振動があるもののカーブによる揺れもないし風は常に魔法使いがガードしている。

 

壁がないのは不安といえば不安だが外履きでも移動しても良い絨毯と寝転んでも良い絨毯で分けられているし騎士が見張っているから落ちることはなさそうだ。景色も壁すら無いだけあって抜群に良い。

 

まぁブレーリグスにセルティーさん、そしてリュビリーナの存在によって別の意味で空気は悪いのだが。

 

ポヨ令嬢が起きた私を見てか近寄ってきて、また夢の魔法を使ってくれるみたいだ。

 

 

「じゃあお願いします」

 

「おう」

 

 

あれ?ポヨ令嬢も私を持ち上げて膝の上に抱きかかえた。まぁリュビリーナよりもいいか……改めて寝直すとすぐに父親がいた。

 

 

――――めちゃくちゃ変な服を着ている。

 

 

 

「何その服」

 

「アイロンプリントで転写したんだ。改めて調べると技術って凄いな。これなんか父さんびっくりしちゃったよ」

 

 

服全体にパソコンで調べたものを印刷してアイロンで寝間着に貼り付けたようだ。

 

そういえば以前の夢でも服は着ていた。だから父さんはこうやって寝間着に実現可能そうな知識を片っ端から印刷してくれたらしい。前世ファミリーのパジャマはきっと部屋干しだろう。見つかったら変人扱いされるはずだ。

 

ポヨ令嬢もいると分かっているからかアイロンプリントされた寝間着を脱いでいつもの寝間着になったお父さん。……よく二重に着て寝れたね。

 

印刷されていた使えそうな技術は多岐にわたっている。

 

海の周辺で便利そうな知識についてを重視して調べてくれたようだが……くさやって…………え、いやそもそも作ろうとは思ってなかったんだけど、たしかに海に接した地形だしありといえばありかな。

 

塩水に魚を漬け込んでから干して干物を作っていた。その同じ塩水を使い続けることで魚の成分が溶けだし、さらにそれが発酵によってくさや液ができる。内蔵をとって開いた魚を漬け込んで干すわけだが、なんと賞味期限で1ヶ月から1年もあり、発酵の力で健康にも良いと!

 

いや…………私は食べれるが独特な臭みもあって万人向けではないのだが。まぁ珍味と言うか製造方法として覚えておこう。

 

果物や野菜をスライスして酢や特定のなにかに漬ける美味しい漬物の知識。魚が自動で捕獲できる網籠の構造。海に浮いているブイの製造方法と原理。養殖で使うイカダとイカダの活用法。海辺でよく使うロープの縛り方……。

 

色々あるな。

 

すぐには使えなさそうな知識もある。海に浮かぶブイはプラスチックや発泡スチロールにEVAなどを使用するそうだし再現は……ゴムで代用できるかな?

 

イカダってテレビとかで島から脱出するときに使うだけじゃなく、養殖に使う網の回りに足場として設置したり、島から島への橋、いや、海の上に浮かぶ道としての利用もできるようだ。ちょっと知ってたけど改めて細かな部分を見ると役に立ちそうである。

 

全部が全部、こちらで再現可能かは不明だが……知識として知っておけばいつか使えるかもな有益なものばかりだ。国語や数学のような点数を取って評価される勉強とは違うがこれも勉強である。

 

ロープは…………これは全然わからないな。

 

ロープをこう、決められた順番で結ぶ。それによって強い力にも対抗できるようになったり簡単に外せるなどが書かれているが……絵で見て覚えるのは難しい。利点とか書かれてもわからない。

 

というかロープって直径どれぐらいの想定なんだろ?紐とかみたいなつまめる細さでも出来るのかなこれ。

 

 




いつもバラバラの時間に投稿してるのは見てくれる人増えるかなと思っての試行錯誤ですね。

定期投稿にするならどの曜日でどの時間帯が良いんだろ……。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。