水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第299話 当然の如く←ガタンゴトン

 

夢から覚めて手持ちのロープでああでもないこうでもないと練習していたのだが何やら変な報告が入った。

 

 

何人も倒れてしまっている。

 

 

食中毒とかかなと思ったのだがまだ一斉に同じものを食べたりはしていない。

 

原因は……最悪の場合毒かなとも思ったのだが、理由がわかった。

 

 

――――……これ、乗り物酔いだ。

 

 

そもそもこの国における移動手段といえば馬や騎獣による移動、そして徒歩である。

 

馬車の方がスプリングもないしガタガタ揺れるが、そもそも何時間も馬車に乗るような機会はめったにない。ましてや王都から出たことがない人なら尚更だろう。

 

誰かが吐いたようで嘔吐物特有のすえた匂いが漂っている。これは気分も悪くなって当然だ。

 

周辺が安全そうな場所で止まってもらって一度掃除と換気をしよう。

 

 

「ディア様に報告します。そして精霊鳥に止まってもらえるように話をしてきます」

 

「貴女がそうする必要はあるのでしょうか?騎士に言いつければ良いのでは無いかしら?」

 

 

セルティーさんが声をかけてきた。

 

これは、筆頭婚約者としての牽制か?それとも仕切りたがりと言われているし自分が動こうとしているのだろうか?たしかにそういう考えもできるかもしれないが……。

 

 

「いえ、最高責任者はオッヴァーディア様です。そして私はシャルルに任されています。状況を見聞きし、オッヴァーディア様に報告するのは私の責務でしょう」

 

「それは人に仕事を割り振ればいいだけのことでしょう」

 

 

まだ言うか。……あー、いや、リュビリーナが原因かな?

 

リュビリーナはセルティーさんと仲が良かったそうだし、彼女の目からすればリュビリーナの突然の変貌もあって私を不審に思っていても仕方がないのかもしれない。

 

 

「おい、フレーミスがやるって言ってんだろ。口はさむなよ」

 

「口が過ぎました。しかし……」

 

「私は行きますね」

 

 

ポヨ令嬢が助け舟を出してくれた。手でさっさと行くようにと合図を送られたので無視していくことにした。

 

話し合ってる間に問題を解決出来るならしたほうが良い。

 

 

後ろの方は地獄だった。

 

長時間の揺れに慣れてない子弟は真っ青な顔でゲーゲー吐いている。後ろの謎のピラミッド型の車両内部は凄まじい悪臭がしていた。風呂やトイレ、化粧室付きのため壁を作ったこの車両。他の車両は服についた汚物があっても風魔法を使う騎士が悪臭を少しずつは飛ばしてくれているが完璧ではないようだ。

 

 

「フリム、大丈夫なの?なにかの病気じゃない?」

 

「その可能性もあるにはありますが、乗り物の揺れで酔ったようです。どこかで休めるようにディア様に進言してきますね」

 

「で、でしたら!い、いい場所がありますわっ!もしかしたらですけふぎゅっ」

 

「カリュプさん、大丈夫ですか?」

 

 

口を挟んできた、いつぞやの目隠れいじめられ少女がなにか言いながら近づこうとしてクッションで転けた。

 

二度逃げられたから調べてみた。カリュプ・ベーレ・ソーギアー、彼女も特殊な才能を持つからこそお見合い大会に呼ばれた1人であった。良い関係で居たいし、できれば引き抜きたい。

 

つまみ上げるようにジュリオンが彼女を立たせた。

 

 

「というと?」

 

「この先は私の領地があります。そこを通るなら休める場所があります」

 

「なぜそれを知っているのですか?」

 

 

あれ?ほとんどの貴族は鉄道に乗るのは初めてだし、ほぼ直線であるため人が通るような場所よりも森の中のような場所のほうが多いのに……なんで知ってるんだ?

 

 

「?うちの領地を通るので父と手紙で……なにか変でしたかね?」

 

「あぁ、わかりました。私はシャルルに秘密にされていたので」

 

「陛下から!愛されてますよね!」

 

「そういうわけじゃ……あぁ、まぁそれでいいです。それよりも詳しく教えていただけますか?」

 

「はい」

 

 

領地に鉄道が通るなら普通に手紙が届いてもおかしくはないか。

 

通過地点にはちょうど人が休めるような場所もできているそうである。

 

 

「……もしかしたら、あのクソババアがうちの領地を欲しがっているのかもしれませんね。筋違いも甚だしいのに、あのシワを切り広げたブツブツブツブツ」

 

 

前も思ったけどこの娘、結構毒吐くなぁ……。

 

しかし、先頭のオッヴァーディア様に報告するのにちょうど良い材料ができた。

 

移動しながらエール先生に聞くと、オベイロスにおいて騎士爵は「士爵」であり、「男爵」や「子爵」のようなれっきとした貴族よりも下であり、その立場でオベイロスの領地を持っていると近隣の領地から嫌がらせを受けることが多いそうだ。

 

オベイロスは精霊の国であるが全てが全て精霊の支配地ではない。だから誰が治めても良い土地を狙っている貴族が多くいる。領地を持たない貴族も多い中で誰がその席を手に入れられるか日々争っている。領地を任せられるには功績があればあるほどよく、賄賂も当たり前である。

 

彼女の先祖はうまく功績を上げて領地貴族になれた。このまま行けばもうすぐ男爵位を授かるかもしれない。水を使った薬草か何かの栽培に成功したそうだし更に鉄道計画にも賛同していたそうだ。このまま行けば確実だ。

 

そんなタイミングだが……もしも彼女の一族をクソババアことグレジッグ子爵が追い出すことができれば隣の領地を任せてもらえて、収入が得られる。自分の領地にならなかったとしても新しく領地を任せてもらえた貴族から礼金を貰えるかもしれないと。腐ってるなぁ……。

 

 

普通はそこまでの事態にはならない。

 

 

貴族とは『魔法を使える力の強い魔法使い』でもあり、領地を任されるほどであれば軽く見ていい相手ではないのだ。カリュプさんはグレジッグ子爵の派閥である。助け合って然るべきはずなのに……。いや、貴族だからこそ、なにかしらの人間関係や利益関係があるのだろうな。

 

グレジッグ子爵にはグレジッグ子爵の利益があって、そう動く。感情から来る単なるいじめじゃなく、なにかの利益を得るためだったのかもしれない。

 

こういう話を聞けばユース老先生やローガ将軍のような政治嫌いの人が増える理由もわかる。胃が重くなるもん。

 

とりあえず後ろの惨状をディア様に伝えるとソーギアーの領地で休憩することになった。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「死ぬかと思った」

「地面が揺れてる」

「ウォロロロロ」

「人の服にかけないでよ!?」

「ここがリヴァイアスなの?」

 

 

辺りは真っ暗だが、列車を止めて休憩することになった。

 

残念ながらここはまだまだリヴァイアスではない。

 

 

「ここに風呂場を建てていいかの?」

「え、あ、はい」

「馬を繋ぐ場所もいいか?」

「その、はい」

「宿もな」

「…………必要なものはどうぞよろしくお願いします」

「酒場も作っていいか?」

「必要なのでしょうか?」

「ついでだ」

 

「――――もう、すきにしてください」

 

 

いくつかの建物はあるが作業用と言うか貴族用とは言い難かった。

 

領主ではないがカリュプさんの領地だし、許可をもらって開けた場所に次々と建設する。

 

しかし可哀想に、爵位は貴族としては下から数えたほうが早い上にソーギアー領主本人ではないから決定権は代理程度であって確実ではない。なのに元王族であるオッヴァーディア様含む方々に許可を求められて萎縮しきっている。

 

フィレーがなんか余分なものを作ろうとした気がするがまぁ休憩も必要かもしれない。

 

辺りは暗いが列車用の照明を一時的に取り外して使っている。

 

幸いにして魔法の使える有力な貴族子弟がたくさん乗っていて……一気に改造は進んだ。とりあえずトイレと公衆浴場サイズの風呂が建設され、汚れた服を脱いでもらって私がお湯をはる。人数も多いしさっさと入ってもらう。

 

汚れた水の魔法で洗濯し、服の繊維から水を抜いて洗濯を完了し、風の魔法で仕上げてもらう。火の魔法使いに軽食も温めてもらい、土の魔法使いがどんどんと建築を進める。

 

魔法を使える貴族、力を合わせればこんなにも早く物が出来るというのにな。

 

私もずっと寝ていて元気だし、一気に列車もカーペットもクッションも謎のピラミッドも、ついでに洗ってほしいらしい精霊鳥も洗っておく。

 

 

「ココッ」

 

「いえいえ」

 

 

少しお礼を言われた。礼儀正しい鳥だな。

 

この大きな鳥がいなくても列車を曳けるように騎獣もいるし水を入れておく。

 

終わったら……寝る。

 

私が寝ないと私の派閥とされるミリーやイリア、それにリーズも周りから「派閥当主よりも先に寝るのは不敬だろう」って見られてる感じの空気があって起きていたから寝ないといけなかった。「会社の上司よりも先に帰っちゃいけない」ってルールみたいなの思い出した。掃除楽しかったのに。

 




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