水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第304話 グレジッグ子爵§王家相談役

 

ちょっとセルティーさんとは関係が悪化した気がする。

 

おそらく答えは同じだろうが……いや、あのババアが犯人という先入観はよくないな。前世のドラマとかで見た探偵はもっと知的に『全ての可能性を考えた上で』華麗に事件を解決していた。

 

 

「……すぅー、はぁー…………よし」

 

 

先入観で目を曇らせるのは良くない。セルティーさんの言うように、もしも彼女が犯人ではなかった場合、良くない結果になったのかもしれない。

 

私としては証拠を見つけるために疑ってかかり、話を聞くなりするのは全く問題がない行為だが貴族的にはちょっと良くなかったかもだ。考えてみればカリュプさんが殺されたという証拠もないし、忘れ物とかで自発的に下車した可能性だってある。そう考えれば……ディア様は私を助けようとしたのかもしれない。

 

 

「とりあえず証拠があればそれに越したことは有りません。聞き込みをお願いします。これは『ライアーム前王兄殿下の子息と他国の姫君をオベイロス国にて出迎える』という王命を邪魔するのに等しい行為の可能性があります。対象者はディア様を除く全ての人が対象です」

 

「しかし……ここでフリム様が動けば私怨と思われるやもしれません。ディア様が仲裁してすぐなので周りの目もあると思われますが」

 

「ですがエール先生、冷静に考えた上でこれは必要な行為と考えます……ですのでディア様に許可を求めてきてもらえませんか?」

 

「……そうですね。伝えてきましょう」

 

 

カリュプさん自身がどうなったかの問題よりもリヴァイアス侯爵であり王家相談役、更には筆頭婚約者の一人である私と貴族院をバックに持つセルティーさんの関係の悪化の方が大きな問題である。

 

いずれにせよ原因究明は必要なことはディア様もわかっているようで許可はすぐおりた。

 

うちの人間と騎士に何かしらの証拠や証言、痕跡を探すように命じる。

 

特に容疑者としてグレジッグ子爵とセルティーさん、そして2人の取り巻きについては動向を調べ、取り調べも念入りに聞いてもらう。私怨に見えるかもしれないが必要なことである。

 

 

「結果は直ぐに出るでしょう」

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「お姉様。私役に立ちましてよ!」

 

「…………えらいえらい」

 

「ふぅ!褒めてもらった!褒めてもらえましたわ!」

 

「「「おめでとうございます!」」」

 

 

リュビリーナの頭を撫でるとぴょんぴょん飛び跳ねて自身の取り巻きに報告している。

 

うちの人間ではあまり良い情報は得られなかった。そりゃ私とセルティーさんの対立は瞬く間に噂……いや、この列車内の常識となった。もしもセルティーさんにとって良くないことを話してしまえば貴族院が敵に回りかねない。だから話したくても話すことは出来ず、なにか知っていても出てくるのは「自分は知らない」という言葉ばかりだった。

 

そこでリュビリーナである。彼女とガーレール家、それにガーレール商会は貴族社会において顔が広い。うちの人間よりも情報をしっかり集めてくれた。セルティーさん本人にも話を聞いてもらった。

 

 

カリュプさんについてはとにかく『乗車までは確認ができていた』『そこからの足取りはない』……この2点は確かであった。

 

そして容疑者であるグレジッグ子爵は乗車後から不自然なほどセルティーさんの近くにいて領地の相談をしていたそうだ。

 

彼女は領地貴族であるし、貴族社会において子爵当主の地位はそこそこ上位である。セルティーさんは相談されるのが嬉しかったようで親身に話を聞いていたそうだ。

 

結果、カリュプさんがいついなくなったのかは不明だがグレジッグ子爵が乗車してからの間ずっと……それこそトイレにすら同行していた。

 

カリュプさんがいなくなったであろう予測される時間よりも前からグレジッグ子爵はセルティーさんの近くを片時も離れていない。

 

 

つまり――――……グレジッグ子爵がカリュプさんを直接攻撃したわけではない。

 

 

リュビリーナはセルティーさんとは仲が良く、ちゃんと話を聞いてきたので嘘はないそうだ。私的には微妙に納得できない。

 

カリュプさんについての人物評価についても報告が上がった。

 

貴族として騎士のように働くものの中ではちょっとした有名人であった。

 

彼女は王宮のイケメン騎士たちと仲が良いため嫌われてる一面があるようだ。特にターカーとハジンという騎士が王宮内において人気であり、その2人と仲が良かったため……令嬢方と一部の男性子弟から妬まれているようだった。

 

目が隠れていて1人でブツブツ話しているので若干怖がられているという評価もある。ただ彼女を知っている騎士にも話を聞くとそれなりに評価が良かった。騎獣の世話や武器や防具、革製品のメンテナンスのような汚れる仕事でも率先してするし、働き者である点が好まれていた。

 

人物評価からグレジッグ子爵以外にも捜査線上に容疑者が浮上しそうではあったのだが……やはり誰もが口を揃えて『やるとすればグレジッグ子爵』という意見があった。グレジッグ子爵にこき下ろされていたり、屈辱を受けさせていたのは知ってる人には知っている事実だったからだ。

 

 

「あの子爵だと思います。問い詰めてもいいと思いますわ」

 

「ですよねー」

 

 

グレジッグ子爵の取り巻きは私の悪い噂を流し始めた。

 

私が「冤罪をふっかけた」だの「権力を傘にきて爵位の低い貴族を馬鹿にしている」などなど。酷いものでは「シャルルの愛妾だからって好きにさせれば国が傾く、誰かが倒すべきだ」など……。

 

 

「ディア様、はっきりさせるためにも許可をください」

 

「ごめんなさいね。あの時止めるべきじゃなかったわ」

 

 

流石にシャルルに関しても悪評が立って、ディア様に謝られた。

 

 

「いえ、私がうまく取り仕切れればよかったのですが」

 

「……難しいわよね貴族って、許可は私が出します。ただし、筆頭婚約者の前で行ってください。貴女のためにもね」

 

「はい」

 

 

ディア様からすれば貴族の聞き取りって過激なこともあるから、あの場で私が武力を行使してでもなにか吐かせようとでも考えたのかな?

 

私はそう凶暴ではないんだけど……ディア様が私をどう見ているのかも気になるところだが、許可はおりた。

 

 

「では、聞き取りを開始します」

 

 

周囲に筆頭婚約者を集めて……私は正面から中央にいるグレジッグ子爵に問いただす。

 

 

「何を聞きたいのかしら?」

 

 

グレジッグ子爵は明らかに緊張している。前に見たときのような余裕はなさそうだ。

 

彼女の周りにはポヨ令嬢、セルティーさん、ラズリーさん、リュビリーナ、後ろにユース老先生、フィレー、前に私とオッヴァーディア様、それにエール先生にジュリオン、イリアがいる。更にその周りには騎士が取り囲んでいて……最悪の状況だろう。

 

 

「まず、カリュプさんの失踪について貴女は直接または間接的に関与していますか?」

 

「しておりません」

 

「一応伝えておきますが、この場にいる皆があなたの証言を聞いていますからね」

 

「はい。言われなくても分かってますわぁ」

 

 

ディア様ではなく、私が前に出て質問したこともあってか彼女は少し余裕が戻ってきたようだ。

 

……それに周りが悪い。

 

 

「爺、ゴムなんだが、これどう思う」

「玩具かの?」

「いや、金槌をゴムにしてみたんだ。使えるような使えないような……」

「リヴァイアス酒うまいな。これ飲んで風呂入りたい」

「こっちのつまみもあうな。学園では何してんだフィレー」

「だいたい酒の研究だな。後はできればそっちの爺を学園長に出来ないかと頑張ってるとこだ」

「聞こえとるぞー。エンカテイナー家がやれー、わしゃーしらーん」

「チッ、いつか学園長にしてやるからな」

 

 

この列車の最高権力者たちは集まってはいるものの、聞いているのかいないのか……緊張感もなく自由にしている。

 

まぁ集まってくれただけ上々なのだろうか。皆好きにしているようだけど一応話は聞いているっぽい。

 

 

「……これは、王命がかかった行事です」

 

「はい?」

 

「貴族以外の方もいますので貴族として胸を張れる行動をお取りください」

 

 

王命を盾にニッコリ言ってやった。

 

数こそ少ないもののお見合い参加者には平民や商家の人もいる。彼らの目もあるのに恥となるようなことはするな。そしてここまでの事態になったんだからとりあえず貴族として粛々と話を聞けと暗に言っている。

 

 

「そんなっ、このグレジッグをお疑いになるのですか!」

 

「疑うも何も有りません。先程申し上げた通り、必要だから行おうと言っているのです」

 

「い、嫌です!そうやって私を悪者にしようという閣下の策略ではないといい切れませんよねっ」

 

 

ここまで騒ぎが大きくなっているのに、お前の部下は私の悪評を流しているのに――――そうやって好きとか嫌とかで回避できる段階を過ぎているのがわからないかな?

 

 

「……では説明しましょう。確かにカリュプさんがいなくなったであろう時間、セルティーさんとあなたは常に一緒にいた。そうですよね?」

 

「はい。そのとおりですわぁ」

 

「セルティーさん、それで正しいですよね?」

 

「はい。確かにその通りです。ですので彼女の扱いは公平に願います」

 

「公平であります。なのでひっ捕らえてはいません。これはあくまで取り調べであるため邪魔をしないでください。……話を戻しますがこれは騎士にも証言を取ってあります」

 

「……はい」

 

 

セルティーさんがどういうつもりで彼女を庇っているのかはわからないが、そもそも取り調べの邪魔をしないでもらいたい。

 

 

「私もそう思うわ。貴女の悪い癖よ、助けを求められたらその人の方が悪くても庇い立てしちゃうでしょう?それで何度も問題になっちゃったでしょうに」

 

「リーナ」

 

「だからお姉様の話を聞くべきよ。お姉様が間違っているのならここまで人が集まるわけがないじゃない」

 

「……貴女がそんなだからっ!いえ、わかったわ。ただし彼女の扱いは公平に願います」

 

 

リュビリーナがセルティーさんを説得してくれた。

 

微妙に納得していなさそうだが、それでも割り込んでこないでもらいたい。そもそも私はグレジッグ子爵を調べたいのであってセルティーさんは関係がない。

 

 

「はい。もしも彼女が犯人であれば丁重にする気はありませんが、公平には行うべきだと思っています」

 

「…………」

 

 

彼女もセルティーさんの言葉に思うところがあったのか、黙って引いてくれた。

 

 

「では、確認に移ります。グレジッグ子爵、確かに貴女には直接の犯行を及んだ証拠は有りません」

 

「……はい?ではなぜこのような集まりを開いたのですか?」

 

「私の独断と偏見で貴女に取調べしているわけではないと見せるためですね。話を続けます。……しかし、現状においてカリュプさんを害するとすれば貴女である可能性が高いです。それは『普段からカリュプさんを虐げていた』という複数の証言も取れています。私自身でも一度お見かけしたことが有りましたね」

 

「それは……お見苦しいものを見せたかもしれませんが、派閥の先達として下の者に指導するのは当然のことでしょう。少し厳しくしすぎたかもしれませんが未熟な者を正しく導こうとするオベイロスを想う心あればこその叱責です」

 

 

彼女が犯人かどうか、きっと何を問い詰めても素直に吐きはしないだろうな。

 

 

「そうですか。忠誠心は大切です。しかしそれはともかく貴女は直接なにかしていなくとも、間接的にでも関与している可能性がある。少なくともそう見られています」

 

「……そう見られても仕方ないのかもしれませんね。しかし、このグレジッグ、子爵の名誉に懸けてやっておりませんわ」

 

 

堂々とした態度で、しっかりとこちらと目を合わせてそう言ってきた。……もしかしたら犯人じゃないかも?

 

少し後ろめたい気もしてきたが、それでもこれはやるべき仕事だ!

 

 

「素晴らしいお言葉ですが……まぁいいでしょう。ならば私もオベイロスの貴族として、シャルルの相談役としても確認する必要があります。理解していただけましたか?」

 

「はい、何なりとお申し付けくださいませ」

 

 

犯人じゃなかったら素直に謝らないとな。

 

 

「では……<おいでませ、ルカリム。お願い>」

 

 

犯人じゃないなら、それはそれで他の可能性を考えないといけない。どちらにせよこれではっきりするだろう。

 




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