水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第305話 迷探偵。違和感

 

これ疲れるんだよなぁと思いつつルカリムシステムを使ってみると……真っ黒であった。

 

あまりにも堂々とした態度だったし、もしかしたらやってないんじゃない?と思い、少し後ろめたい気持ちもあったのに――――コイツ真っ黒であった。

 

彼女は何をされているか困惑しているようだが好きに読み取っていく。

 

 

「あんたは子爵領にこれを届けなさい」

 

「はい。わかりました」

 

「すぐにね」

 

「……え?もうすぐ列車が出ますが」

 

 

食後、列車の出る前の会話を見つけた。

 

 

「誰にも迷惑かけるんじゃないわよ。そうじゃなかったら貴女の父親をリヴァイアスにまで呼びつけて叱責するからね」

 

「っ!!?」

 

「あーあ、そうなったら足の悪い父親が可哀想ねぇ」

 

「…………でも、勝手に離れちゃ駄目なんじゃ?」

 

「知らないわよそんなの。何かあったら私がうまく言っといてあげるから……ほら、あんたたちは特別なんでしょう?」

 

 

やり取りが見えてくる。この時に考えていたグレジッグ子爵の悪巧みも。

 

この手紙も『ソーギアー領の手前までグレジッグ領軍を動かす』ように書いてある。

 

彼女がカリュプさんのことは後で助けてあげる気なんて毛頭ない。むしろ『自分勝手な理由で抜けたことを追求する』もしくはタイミング次第によっては『王命に対して反意のあるソーギアーは私の派閥であり謝罪いたします。我が恥になるのですが既にソーギアー領は制圧しました』とでも言うつもりだったようだ。

 

たしかに彼女はカリュプさんを直接攻撃してはいない。

 

しかし、カリュプさんが離れたことを理由にソーギアー領地を手に入れるつもりだ。カリュプさんの手紙の内容からしても「次のソーギアー領主になるカリュプさんが自領を攻撃する内容の手紙を届けた」となれば後継ぎから確実に外れる。

 

とにかく罪をでっち上げて、とにかく領地さえ手に入れれば薬草も、貯めこんだ金も全部自分のものにする。そのまま自分が領地を統治することを認められれば最高。誰かに渡すとなっても財産の殆どを取り上げてから渡せば良し。更には次の領主には礼金をもらうか借金があったとでも言いくるめて請求する。ターカー様と懇意にしてるからこうなるんだ。

 

 

…………う、うーん。凄い馬鹿すぎる。

 

 

「なにこれ、うごけな……」

 

「<動かず、今回のことの経緯を考えなさい>」

 

「は……い…………」

 

 

グレジッグ子爵は、目を半分閉じて眠そうにしている。ルカリムに当てられたのかな?よしよし。

 

軽く意識をグレジッグ子爵から外して周りの様子をうかがうと興味もなさそうだったラズリーさんですら背筋を伸ばしている。ルカリムは人型の大精霊だもんね。

 

たくさん読み取っていくと……本当に短慮と言うか馬鹿だな。

 

急にグレジッグ子爵の魔力が膨れ上がった。

 

 

「小娘ぇぇ!!私のことを馬鹿にして!!よくも記憶を!<岩よ!!シィネェェエエエ!!!!!>」

 

 

隠していた杖を取り出し、岩の砲撃を放ってきたグレジッグ子爵。私の思考が漏れたのか激昂している。

 

私の水で防ごうと思ったのだけど先にジュリオンが前に出た。

 

 

「ふぅん!!!」

 

「ゴエッ?!」

 

 

岩の砲弾を腕を振って弾き返したジュリオン。

 

砲弾は勢いよくグレジッグ子爵に当たり、砲弾はそのまままっすぐセルティーさんの護衛の人に向かっていった。

 

 

「おい、こっちに飛んできたぞトカゲ?」

 

「偶然だ。いやー、まさかデンレール様のもとにいたこいつが杖を隠し持っていたとはなぁ」

 

 

岩はセルティーさんの護衛に片手で撃ち落とされた。護衛の人がジュリオンに文句を言ってくる。

 

 

「うちと事を構える気か?」

 

 

「「――――あ”ぁ”ん?」」

 

 

一瞬の静寂の後、声が重なった。

 

 

「止めなさい。高貴な方々の前ですよ?ジュリオンも護衛の方も――――これ以上やるならリヴァイアスを出します。待って待って、まだだから。戻って。皆さん退避してください!」

 

 

また喧嘩しそうな2人を今度は止めようと思ってリヴァイアスを出すと宣言したんだけど……ルカリムが役に立ったことからか他の精霊も「僕も役に立つよっ」と出てきて――――殺る気だった。

 

全員すぐ退避してもらって、精霊たちを抑える。

 

 

こうして、犯人のわかりきっていた事件は幕を閉じた。

 

 

一時は髪の中から精霊がたくさん出てきて危なかった。グレジッグ子爵は生きているようなので最低限の治療をしてシャルルに引き渡しである。有力者が近くにいる状態で私に殺意を持って攻撃してきた段階で捜査も何も必要なく有罪である。

 

精霊たちが落ち着いてからもう一度集まってもらってグレジッグ子爵の目論見を話すと周りも何じゃそりゃと言った反応だった。

 

うん、やり方が雑いし、事を運ぶのには性急すぎる。しかしもしも私がこうしなければことは露見せずにグレジッグ子爵の目論見は『田舎の小さな領主同士の小競り合い』で幕を閉じていた可能性はあった。

 

すぐにシャルルに連絡を入れておく。それとソーギアー士爵家とグレジッグ子爵家、それと介入しそうな周辺領主にも「争うようならリヴァイアスが相手をする」と通達しておこう。

 

グレジッグ子爵の部下が短慮を起こさなければいいが、グレジッグ子爵の手紙の解釈次第ではすぐに戦いになる可能性もある。他の領主に事細かな事情を話す時間が無いためリヴァイアスで軍を出すと宣言すれば確実に止まると教えてもらったのでそうする。

 

 

しかし、いなくなったカリュプさんはどうなっているだろうか?

 

 

彼女は手紙をグレジッグ子爵家に届けるように言われ、その先の消息は不明である。

 

グレジッグ子爵の派閥であるため逆らうことは出来なかっただろうけど、それでもここまでの騒ぎになったし、何かしらの罰則を与えられたとしても不思議ではない。

 

貴族には慣例や規律というものが有り、それを守らないと嫌がらせされたり制裁がされることもあるそうだ。うん、私も覚えがある……普通のなりたての貴族だったら「お見合い」とか「領地よこせ」に対してNOとは言えないもんね。幸い私は後見人も爵位もあってなんとかなっているがそれでも突っかかってくる。

 

一応彼女のことは処罰しない方向でディア様に相談する。

 

 

「…………そうねぇ」

 

「どうかしましたか?」

 

 

深く考えているように見えるディア様。いつものように明るくはなく、額のあたりを手で覆っている。

 

 

「いえ、ここのところ、本当にこういった後先を考えない貴族が多くてね。昔はもっと良い関係の貴族ばかりだったのに」

 

「え?そんな時代あったんですか?」

 

 

つい聞き返してしまった。

 

中央の貴族といえば基本がゴミである。短慮で救いようのない生ゴミである。

 

モラルも良くなく、領民や亜人を物のように扱い、奴隷をプレゼントにしてもそれが当然としているような……。

 

 

「フリムちゃんが生まれるより前はね。もっと活気があって……領地で作ってる果物の自慢をして競ったり、お互いの領地の問題を解決したり、精霊様へのお供えで話し合って一緒に儀式をしたりして……もっと、そうね。穏やかだったわ」

 

「何処の国の話ですか?」

 

「オベイロスよっ!……まぁ信じられないのもわかるわ。主だった者たちは亡くなったり引退しちゃってね。今主要な職についてる者は当主としての教育を受けてないことが多いの。だから少しぐらいは良くないにしたって最近はあんまりにも酷くてね。今回の件だって後で調べればわかることなのよ」

 

「たしかに」

 

 

元がゴミだらけの貴族だが『不正しても問題のない環境』でそうなったんじゃないかとも思ったが……ディア様がおかしいと考えるほどならそれはきっと異常だ。

 

人は保身をする生き物で、保身を超えて危険な行動をすることはなかなかない。貴族は特に自分だけではなく自分の家族や面子を大事にする生き物なのに……保身を超えて危険な行動をして『本人たちがそれを認識出来ずにいる』って――――クーリディアス王やその周りの人たちみたいでちょっと怖いな。

 

彼らもいつの間にか「オベイロスは滅ぼすべき」ことが常識になっていてそのために行動していた。護国の竜は命じられれば動くタイプであったが、オベイロスを本気で攻めるならその竜は装備をつけてくるのが当たり前で、いや、普通に戦争なんだから装備をつけるぐらい当たり前なのに誰もそれを思いつかなかったという。

 

 

ゴミ貴族共もなにかに影響を受けているのなら――――調べる必要があるのかもしれないな。

 

 

それにしても私は名探偵フリムにはなれなかったな。そもそも私はそういうドラマを見たことがあるだけで基本的に一般人だ。よく失敗もするし……反省してみると問い詰め方がよくなかったかもしれない。もっとうまく穏やかに取り調べが出来たかもしれない。迷探偵フリムである。

 

まぁルカリムシステムを使えるし人の記憶見れるのは正直ずるいと思うが使えるのなら使わない手はない。今回ルカリムがしっかり私の言うことを聞いてくれることも周りに伝わったし、精霊たちが私にも制御できない場合があると知られたのは良かったんじゃないかな?

 

 

それにしても、もうすぐリヴァイアスか……ゆっくりしたいなぁ。

 

考えるとちょっと楽しみになってる。

 

人に気を遣って悪役令嬢するのも疲れた!可愛い海猫族たち見たい!指示した経済効果の有りそうな施設がどうなってるか楽しみ!!ゴミ貴族のいない場所でミリーたちとごろ寝したい!!!

 




水曜日を待って投稿するのめっちゃドキドキしました。

26日のコミックの発売日より前には投稿頻度増やそうかな(*'ω'*)
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