水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第306話 海とは?ビキニアーマー

 

気分は令嬢、問題事もなくなり列車の車窓から風景を眺めると言った気分でゆったりしていた。

 

カリュプさんのことは心配ではあるがおそらく移動したであろうルートに騎士を向かわせたし、グレジッグ子爵領についても飛べる人間に命じてリヴァイアス軍を動かせるように手配した。やれることはやったしここで出来ることもない。少しぐらい休むのもいいだろう。

 

まぁ車窓と言うか壁も天井もないんだけどね。

 

若干セルティーさん……というか、護衛たちの空気も悪い事もあって席を移動した。なにせ「セルティーさんの護衛」と「雷剣ブレーリグス」と「ジュリオン」が今にもぶつかるかと言う空気をずっと醸し出してる。ピリついてて怖かった。

 

 

ディア様には「勝手にいなくなる人がいないかの見回りのため」と言って別車両に行った。ディア様は分かってくれた。

 

そんなわけでミリーたちと一緒に車両の後ろの方で楽しんでいる。

 

 

「海って塩がとれる場所なんだよね」

 

「場所……?そうですね」

 

「うちの村じゃ塩って高くて、そんな塩がとれるってどんな湧き方してるの?」

「え、海は……なんて言えばいいんだろ。ついてからの楽しみってことで!」

 

 

ミリーに聞かれた。ミリーは海を知らないようで、よく分かっていなさそうだ。

 

 

「連れて行ってね。フリム様!」

 

「見ればわかると言いますか見ないとわからないと言いますか……」

 

 

海を知らない人に海を教えるというのは難しいかもしれない。そう言えばこの世界にはテレビやスマホは普及していないし、教育の機会も平等ではない。

 

彼女は光属性だから学校に来れたが貴族以外の場合は特殊な才能があったり、実家が商売をしていてお金があったり、貴族の仕事のために必要で通う場合がほとんどである。あとは貴族の目に留まるほどの学力があったりだそうだ。

 

貴族の家の部下だからと奴隷の身分で学園に通うこともあるが……そう言えば自分の周りではダーマだけが平民の中で特殊な才能もなしに通っているな。

 

彼は親が傭兵団の一員で学を得るためと……ミキキシカのために学生になったんじゃないかと推察する。幼馴染で彼のことを思っているミキキシカのためにもダーマには頑張ってもらいたい。

 

 

「何っスか?」

 

「いえ、ミキキシカは海を知っていますか?」

 

 

ミキキシカをなんとなく見ると用かあるのかと声を上げてくれた。

 

どうせなので海について聞いてみる。

 

 

「大きな水場で塩がとれる場所でスかね」

「泳ぐと底に塩があるのかな」

「いやー、たくさん持って帰りたいっスね。でっかい塊で!」

「そういうのって勝手に取ったら怒られるんじゃないかな」

「……それもそうっスね。どんな池なんスかね」

 

 

ミリーとミキキシカは海を何だと思っているのだろうか?

 

 

「池じゃなくて『海』ね。海ってどこまでも広く続いてるのよ」

「どこまでもって……そんな塩がとれる水場がたくさんあるんスか?」

「……ボクもそう習った」

「岩塩って色が付いてるけど海の塩って白いわよね。塩は海の水からとれるっていうし……海って白いのかしら」

「きっと白いっス!」

 

「――――……まぁいいか」

 

 

ミリーとミキキシカのみならずリーズとテルギシアも会話に入っていたが微妙にズレている。

 

海という広い水場があまり想像できてないのと、この国において塩といえば岩塩の方が基本なので鉱物のようなものが水の中に転がっているような面白い想像をしてそうだ。

 

百聞は一見に如かずと言う言葉もあるし、私が海をどんなものだと言葉で伝えるよりも見て触れて体験してもらったほうがきっと伝わるだろう。

 

知らないものについてどんなものかと想像して話している皆。どこぞのババアと精神接続をして疲労していた心が癒やされる。

 

 

しかし、ババアの記憶、思い返すと不自然なこともあったな。

 

 

幼少のカリュプさんを見かけて憎むどころか可愛がっていたし、テリーオフ殿下を崇拝したり、人気のイケメン騎士を他の令嬢と見に行って遠くからキャッキャと楽しむようなミーハーな人物でどちらかと言うと控えめだった。爵位を得る前は誰かを傷つけるようなタイプではなかった。

 

結婚もしていたが普通に相手を傷つけて離婚。もうこの頃には誰かを傷つけることを楽しむような人になっていた。

 

イケメン騎士を遠目で見てキャーキャー楽しむだけの人物だったのに自分のものになるわけでもないのにイケメン騎士の相手や噂していただけの人を攻撃して楽しむなど……全く利のないことをしていた。

 

いつからだろう?彼女がおかしくなったのは……。

 

爵位を得てから?取り巻きが出来てからか?王宮で子爵とはどうあるべきかの教育を受けてからか?王宮のゴミどもに苛烈な嫌がらせを受けたのがきっかけ?

 

わからないが、まぁ環境が人を変えることもある。私だってそうだ。

 

自分に部下がいなければ、自分に爵位がなければ……きっともっと好き勝手して、何処かで働くなりなにか商売でもしていたかもしれない。

 

前世の子供の頃は「生活の心配」などすることはなかった。親の庇護があって、自分には何にでもなれる未来があると漠然と信じていて……でも大人になれば色んなプレッシャーがあった。

 

日々生活しているだけでもお金はかかるし、部下ができてからはより「しっかりしないと」と考えてしまって、もっとうまく出来るんじゃないかという焦燥感や出来ない自分への不甲斐なさから来る自身への怒り。立場から何処かにいつもあるプレッシャー。

 

 

…………大人になればそれなりにストレスやプレッシャーはつきものだった。

 

 

そういう何かが彼女を変えてしまったのかもしれない。私も気をつけねば。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

列車が止められた。

 

もうすぐリヴァイアスの領地に入ろうかというタイミングだった。なのに川で止まった。なんでだろうと思ったら「少し身綺麗にしてから領地に入る」という貴族的な身だしなみのマナーらしい。

 

いや、ぜんっぜんわからないや。なにそれ。

 

この世界における「普通の長距離移動」はかなり汚れることになる。騎獣が道を通るし道は当然土である。移動によって人は汗はかき服は汚れて泥まみれになるのが当たり前。そんな状態で「他所様の領地、特に自分よりも爵位の高い相手の土地に入るなど破廉恥」であるそうな。

 

列車の移動だし関係ないような……そもそも君たちピラミッド型車両の中には風呂もトイレもあって清潔だよね。着替えも最低限は持ってきていて着替えもしているし。

 

しかし、これも慣習。川である理由は本来なら泥の汚れはなかなか落とせないことから必要らしい。

 

しかし……ホスト側に回る私がいるのに気にしてもなぁ。

 

 

「そういうことじゃないわ」

 

「侯爵、ボクもやらないのは恥ずかしいと思う」

 

 

リーズだけじゃなく、テルギシアにも言われた。

 

そういうことじゃないって……あれか、よく遊ぶ友達でも少しぐらいはまともな服を着てから行こうみたいなものかな。

 

修学旅行みたいなノリで列車を止めて皆でちょっとキャッキャと良い服に着替えて、また列車に戻る。

 

 

「全員の準備はできましたね?では、乗員の人数をよく……よ~く数えてから出発です」

 

 

完全停車したこともあってまた問題が起きてないか心配である。

 

何もしなくてもワイワイ騒ぐ旅行気分の人ばかりだし、また勝手になにかしてないといいんだけど。

 

 

「その……そのことでご報告が」

 

「……なんでしょう」

 

 

近寄ってきた騎士からのご報告。

 

凄まじく聞きたくない。このタイミングで騎士がなにか言ってくるとかどう考えても問題事でしか無い。

 

また人が減ったかな?

 

 

「――――4名ほど、増えています。あちらで騒ぎになっています」

 

「え”っ”」

 

 

 

……確かに増えていた。多分良い意味で、そして――――

 

「フリム様、あれはまだフリム様には早いです」

 

「キャー!何その格好!誰かー!いますぐ絵にしてぇー!!」

「男が3人が絡み合って……ふふっ」

「おぉー」

「これは『優雅な貴婦人の集い』に報告しないとっ!」

「い、今なら、ふ、触れても怒られないんじゃないかしら」

 

 

カリュプさんが戻ってきていた。

 

そしてなぜかビキニアーマーのイケメン男性2人と畑の管理人さんを連れて……男性陣はぐったりとびしょ濡れで重なり合って倒れている。

 

 

「ターカー兄!ふへ!ふへははは!う、後ろから見ると!し、尻!尻めっちゃでて!ひー!ひー!!」

 

 

元気に爆笑しているカリュプさんの声が聞こえるが私はそれが見えない。エール先生に視界を遮られている。

 

笑い死にしそうなカリュプさんを呼び出して何があったか事情を聞く。

 

彼女はグレジッグ子爵に命じられて領地まで手紙を持っていった。そしてあの陰険腐れクソババアのことだからどう考えたって私を擁護するわけがない。だから任務を終えてリヴァイアスに付く前に列車に戻ろうと考えた。列車は直進しかできないから方向はわかるし休憩もあるのだから、先回りして線路を探せばいい。

 

 

そこでカリュプさんはソーギアー家の特殊能力を使った。

 

 

彼女の一族の特殊能力は『人を収納』することだ。先祖が精霊にもらった謎の能力。無制限に何でも収納するわけではなく少なからず制限もあった。

 

収納する対象は遠縁であってもいいから親族であること。そして収納してする人物は体力の大半を奪われる。金属製品ならつけたまま収納可能だが、革や布であれば僅かな面積でもかなり体力を消耗する。

 

そうして彼女は収納していた騎士ターカーと騎士ハジンを出した。彼らはブーメランパンツに意味があるのか疑いたくなるようなビキニアーマーを身にまとっていた。

 

ちなみに面積の小さいパンツと極限まで減らされた防具を装着するために使われる細い革紐だけで王宮2周分ぐらいの体力を奪われるそうだ。ちょっと素肌に食い込んでるな。

 

話を聞きながらちらりと彼らを見ると重なって倒れている2人の周りにいる女性陣が騒いでる。

 

収納から出された段階で体力の消耗の激しい2人は事情を知って魔法で爆速でソーギアー家に移動。自分で手紙を届けるのではなく信頼できる人に手紙を渡して直ぐに列車に戻ろうと考えた。騎獣を使って列車を追いかけようとしたがそれよりも川を使ったほうが早いと言われ、人魚の管理人さんも含めて超危険な川下りを行って合流してきた。

 

イケメン騎士と名高いターカーとハジンは超薄着のビキニアーマーで全身ビチョビチョ、息も絶え絶えの状態である。人魚の人も流石に溺れかけの人間2人に主人の娘をここまで無事につれてくるのは大変だったようである。

 

3人ともほぼ局所だけ隠したほとんど全裸で息も絶え絶えに打ち上げられている。女性陣は騒いで囲んでいるし、カリュプさんだけは元気でグレジッグ子爵があれから問題を起こしたなどとは思っておらず、親族のターカーを爆笑していた。

 

 

「まぁ無事で良かったですよ」

 

 

彼女が虐められていた理由の一端にはイケメン騎士ターカーと仲が良いという面もあったのだが……そもそも親族で騎士団の近くで雑用のような仕事をしていたのだ。更にこの特殊能力であれば接点も増えるだろうし仲も良くなるだろう。

 

ディア様も到着前に彼女が列車に戻ってきたことを喜んでいた。捜索に出した騎士はまだ帰ってきていないが、王命を無事こなせることは彼女にとっても結構大事っぽい。

 

 

ひょんなこともあったが!もうすぐリヴァイアスだ!亜人も多いし服着て無くても大丈夫だって!うん!無理に水気を吸ってか身体に軽く食い込んだ革紐外す必要ないって!

 

……外そうとするたびにストリップショーみたいになっちゃって収拾がつかないしさっさと移動したい。アイドルが薄着で倒れてファンが取り囲んでいるようなものか?介入したくなくて誰か口を挟める人待ちである。

 

ついでにここに来るまでに滝を落ちて川経由でソーギアーに帰れなくなった人魚のおじさんもリヴァイアスに来てもらう。列車は往復するから確実にソーギアー領地は通るしね。

 




(/>ω<)/6月26日にコミック1巻が発売するので暫くの間更新強化します!
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