水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね? 作:mono-zo
全てを投げ捨てて眠りたい気持ちは嘘じゃないが、問題がたくさんあるとなれば解決してから眠りたい。
いや絶対にこなしきれないのは分かっているがせめてチェックぐらいはしたい。
大量にある報告や問題。しないといけない確認作業がたくさんある。
普通の報告なら良いんだけど緊急性のある問題から見ていくと……『港の近くで他国の船団同士で戦いがあってドゥッガが沈めた』そしてアモスは『ドワーフの貴族を広場で斬首しようとした』…………??
………………布団布団、私の布団は何処かなー♪
…………………………はっ!?現実逃避してしまいそうになった。
国際問題である。とにかく確認である。
『交易に来た他国の大商人同士がいきなり戦いを始めた』それをドゥッガが沈めた。
うむ、問題ないはずだ。問題だらけかもしれないがとりあえず現在は戦闘行為は終わっていているため今すぐ私が行かなくちゃいけないわけではないらしい。
次、アモス。彼は公の面前で見知らぬドワーフに盗人扱いされ、襲いかかってきたところに反撃。殺すつもりで攻撃したのだが相手が生き残っていて……問題なのが他国の現役貴族であるという点だ。
同時に2つの緊急性の高い問題が起きているのは分かった。
アモスの方の報告が緊急性は高いかな。アモスの相手は貴族であり、生きている。……まだ報告書をサラッと読んだだけだが、もうちょっとしっかり読むことにしよう。
しかしアモス側の報告書は本人が忙しいのか書体からしても複数人で書かれていていまいち要点を掴めないし、解読に時間がかかりそうだ。
……多分この報告書はアモス配下の三馬鹿が作ったな。書かれている経緯が長い。きっとアモスに何かしらの罰則がされないように詳細を書いたのだろう。
まず交易品の中でも『鏡』が人気である。
オベイロスの鏡は一般的に金属を磨いたものである。リューちゃんの卵が有精卵か調べるのに鏡を集めたがよ多くは金属を磨いた鏡であった。貴族であればよく見える鏡も使われているがそれは輸入に頼っているそうで前世とは比較にならないほどのお値段がする。
そう言えば、この国ではガラスも貴族社会ではそこそこ普及しているが平民の中では窓は木の板が多い。火の魔法があるのだから板ガラスができるのは分かる。
前世で一般的だった「よく映る鏡」と言えばガラスと……なにかの金属で作っていたような気がする。しかし、この国において「よく映る鏡」は輸入頼みだ。
それらはドワーフの国の特産品であるそうだが……作れないかな?
いけない、現実逃避に思考が逸れてしまう。
経緯としては港に大きな鏡が持ち込まれて、それを知ったアモスはこれまでの給料のほとんどを使って私に大きな鏡を贈ろうと考えた。
アモスなりに「主」とは言え幼女である私に強く当たりすぎたかと気にしていた。何より姉を治してもらったのに大した礼が出来ていなかった。だからか仕事をちゃんとこなした上でなにかお礼をしたくて良い贈り物を探していた様子だったと書かれている。
よくわからないがその鏡は物としてはとても大きく、とても美しい装飾がされているそうだ。大きな鏡は貴族社会では「持っているだけで自慢になる」と聞いたことがあるし、消耗しているとは言え保護の魔導具付きだ。他所から交易に来た商人たちも「輸送で割りかねないから」「いつ保護の魔導具が壊れるかわからないから」と手が出せずに悔しがっていた。
そこでアモスは全財産と三馬鹿から渡された金も使い、オークションで勝利した。
慣れないオークションに出て領都に集まる有力な商人や貴族の代理たちよりも高い金を出し、祝福された。それはもう、忠義のため、尻尾で迷惑なほどに石畳みを叩き、意気揚々と高揚していた……もうすぐ帰ってくる主のために。アモスの兄貴かっこいい!」…………余計な文が多いな。
アモスは部下には色々と見透かされているようである。ちょっと美化されて書かれているが3人とも別の書き方で読み解くのが大変である。特にホーリーの文字は乱雑で解読に苦労する。
オークションから大きな鏡を持ち帰っている途中、大通りで薄汚いチンピラに盗人扱いされた。
身なりの酷いドワーフが鏡を買ったアモスを大通りで盗人呼ばわりした。対してアモスは冷静に「これは正式に買ったものだ」と主張したがドワーフはドワーフの言語で、おそらく罵倒しながら近寄ってきた。
酔っ払いかと部下に取り押さえるように命じたが部下は蹴散らされた。
部下もそれなりに手練れだった。なのに蹴散らされた。つまりそのドワーフはかなりの手練れであり、間の悪いことにこちらは鏡を運搬していた。ドワーフに止まるように言っても聞くことはなかった。周りには小さな子どももいてドワーフに好きにさせれば子どもが危なかった。兄貴悪くない!
アモスは巨大な鏡を一旦空に投げ、間抜けで哀れなドワーフは上に投げられた鏡を見て油断した。そこにアモスの兄貴のスゲー一撃!ドワーフを打首にしようとしたがヒゲは切れてもその下の防具は切れなかった。流石アモスの兄貴だ!!……って書いてるのかな?字が汚い。
……何人かで書いたであろう報告書が読みにくい。後で指導が必要だな。
アモスは鏡を飛んで回収して、ドワーフを見ると……ボロ着の下はどう見ても身分の高い、身なりのいいドワーフであった。
それを見て、生きていたし、人目もあってここからトドメを刺すのもなと諦めた。兄貴かっこいいし寛大。
アモスもたまらないだろうな。せっかく大枚はたいて買ったものにケチを付けられたのだ。それも大通りの、人の目のある前で。
そしてアモスは彼を拘束し、事情聴取を行っている。
ドゥッガの方の状況は……テロスが書いたのであろう報告書が読みやすい。
こちらもドワーフが関わっているのだが鏡とは関係はない。2つの商団が争ってしまったようだ。
彼らはそれぞれが因縁のある相手であり、不運なことにリヴァイアスの城壁外で港の使用の順番待ちしていると彼らはかち合ってしまった。
結果、城壁外で戦闘が勃発。リヴァイアス側が停止命令を呼びかけたが彼らはそれを無視して戦闘を続行、ドゥッガが介入して商船の多くを沈めた。
リヴァイアス側の怪我人は城壁近くにいた海の民の軽傷だけ、商人側については記載無し。
……怪我人が出ているのか。治しに行かないとな。
そもそも人の領地で他国の問題を持ち出して戦い始めるのが悪い。それも双方が大商人であり、大船団と言える数で争ったのだ。それはその地を治める領主からすれば迷惑なことこの上ないし、普通に何かしらの罪状に問うことが出来る。
陸にも彼らの仲間はいて、ドゥッガはそれらを抑えに行っている。
現在の問題は沈められた船団の商人たちが船や商品大半を失ってしまったため、破れかぶれなのか嘘か本当か両方が「自分の国が黙ってないぞ」と脅してきていることだ。面倒なことに「相手だけ罰してくれればこれからこの港を優先して使うし利益が出るように国元に働きかける」なんて賄賂付きで言ってきている。両方が。
国際問題か最悪戦争になりかねない事態である。アモスもドゥッガも状況は違うが面倒事に巻き込まれているようだ。
更に厄介なことにドワーフの貴族もドワーフと人族の商人二組もかなりの影響力があって、交易に来た別の団体も動こうとしているそうな。
「いかがなさいますか?」
「そうですね。まずは――――ディア様たちの安全確保をお願いします」
「はいっ!」
ジュリオンに命じておく。
今すぐやらないといけないのは『ディア様たちの安全確保』だ。兵を集めてリゾート地に行ってもらって兵に守ってもらおう。
リヴァイアスの地では一般的に中央の貴族とシャルルを良く思っていないし、お見合い参加者を野放しにすれば問題は必ず起きるからね。
ディア様たちに何かあれば……今度こそリヴァイアス独立かもしれない。
そして国際問題になりかねない2つの事件だが、対応を考えるのに……まずはドゥッガとアモスに話を聞いてみよう。ドゥッガとアモスは仕事しただけであるが相手次第で戦争になりかねないし、一応当事者から直接の報告を聞きたい。
そしてドワーフだ。貴族であれば教育を受けているだろうし、なぜそんな事になったのか知りたい。言語の壁かもしれない。もしも言いがかりであれば……それはそれで対応を考えれば良い。
「もうちょっと落ち着けると思ったんだけどなぁ」
「にゃー」
「ねー」
部屋の海猫族の人を見てちょっとなごむ。
のほほんとなごんでいられる状況ではないけど、なごんでないとやっていけない。主に私のメンタルが。
(╯°□°)╯︵ 【問題】 Σ(゚∀゚ノ)ノキャー