水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第310話 もぐもぐ〃ぺっ

 

ドワーフの通訳さんには急かして悪いが『貴族の主張』と『船の争い』について早く話を聞いてもらう。できれば酒宴よりも前に報告書にまとめてもらいたい。

 

ディア様には悪いが貴族の統率をしてもらう。他にも大量の問題があるが、国家間のトラブルに発展しそうなのだからそちらを優先するべきだ。

 

貴族たちの様子を聞くと神殿に行きたがって仕方ないらしい。

 

本来何処かの領地に行けば領主や領主の家族、そして精霊が祀られる祭壇に行ったりして礼拝するらしい。

 

友達の家に行って友達の親がいれば挨拶をするようなものだろうか?そう言えば前世の友人がお墓参りについてきたが、そういう習慣もあるのかもしれない。

 

 

…………あれ?リヴァイアスも私も彼らと一緒の行動をしていたんだけど、そもそも参拝のような真似をする必要ってあるのかな?

 

 

まぁいいか、酒宴には時間もあるしドワーフの接待のために習慣を知っている人に準備物をまとめて貰う必要がある。お見合い参加者を引率して神殿に向かう。

 

 

「少々お待ちください」

 

「はい」

 

 

お見合い参加者は移動の関係で数回に分けて城からリゾート地に移動しようとしていたが呼び戻して集まってもらった。忙しくて申し訳ない。

 

神殿内の掃除は領主一族しか出来ないってことでほんの少し汚れているし入口にまたせて――――

 

「<水よ。一気に掃除せよ>」

 

 

杖を振って魔力多め、軽く光る程度の魔力水で広い神殿内を一気に掃除する。

 

まずは全体を流す。誰も入らないし、そもそもこっちにいるときには定期的に掃除していた。ほとんど汚れてないんだけど……あ、失敗した。

 

水をためてそこから水をかけるだけでいいと思ったんだけど、ここはリヴァイアス、いつもの何倍も水が出てしまった。

 

部屋の中央の空間の殆どを水で埋め尽くしてしまった。汚れた水を先に流していくが少しだけ排水には時間がかかりそうだ。

 

……壁は分厚いし、排水口は広い。私は水の上を移動して壁や天井の汚れを見ながら部屋を移動する。いつも通りに腰のあたりを水で纏ってそこから水の腕を伸ばす形で動いていたんだけど……なんか大質量の水の上でやると赤ちゃんの歩行器みたいだな。

 

排水には時間がかかりそうだし、すこし格好がつくように水の上に立つように練習してみる。

 

 

「わわっ」

 

 

スケートのように出来るかと思ったのだけど、全然出来ずに操作を誤ってドボンと水に落ちた。水の操作で足の裏だけに当てて安定させるのは難しい。

 

清潔な水だからいいんだけど、あ、髪から一気に精霊たちが出てきた。

 

 

「<<< キ ュ ア ッ >>>」

 

 

精霊たちは皆ご機嫌な様子で泳ぎ回っている。

 

いつもは出てきても怒ってるか泳いでるだけのリヴァイアスもご機嫌な気がする。イカやオルカス、魚やヒトデ、オオサンショウウオみたいなのに……見たことのない精霊も、ん?ルカリムは私の後ろにいたか。

 

私を中心に球形にくるくると精霊たちが泳いでいく。

 

その中で少し離れていたリヴァイアスがこちらに近づいて来た。

 

 

牙の並ぶ口を開けて――――「え”っ?」

 

 

また杖ごと口に含まれて……前よりも口の中でもぐもぐされて――――ペってされた。

 

気がつけば神殿内の大部屋の床に転がっていて、排水は終わっていた。アホ毛がいつもよりほんの僅かに元気な気がする。…………ナンダコレ。

 

前もなんだこれって感じはあったが、意味がわからないな。あ、ディア様たち待たせてたんだった。

 

 

「お、おまたせしました」

 

「大丈夫?」

 

「ま、まぁ色々あったんで」

 

 

ドアを開けて……私は奥に戻って横で床に座って彼らを見ておく。全身ずぶ濡れだし服や髪から水を集めて排出する。

 

本来であればリヴァイアスの壁画のような部分を参拝のようなことをすればいいのかもしれないがリヴァイアス自体が神殿の天井付近を泳ぎ回っているし、他の精霊もまた出てきて神殿内をぐるぐると自由にしていて……お見合い参加者たちは背筋を正して皆思い思いに頭を下げていた。首痛めないかな。

 

魔力水を使って、壁が全部濡れて若干光ってるようにも見えるからか部屋全体が神聖な雰囲気に見えないこともない。

 

普段騒いでるお見合い参加者はありえないほどしっかり礼拝していて……不思議な気分だ。人によっては精霊に対して虫の構えと言うか土下座までしている。リヴァイアスは気にせず泳いでいるが……他の人を口に含むようなことはないのね。

 

落ち着いたようなのでリゾート地に行ってもらおう。私が神殿を出ようとした瞬間、彼らは私の首筋の辺りに一気に入ってきた。めっちゃくすぐったい。

 

 

「その、大丈夫?」

 

「はい。とりあえず新たな戦争が……じゃない。国際問題にならないように対処しようと思います」

 

「無理はしないでね。いつでも相談してほしいわ」

 

「わかりました。ディア様も彼らが勝手をしないようにお願いします」

 

「頑張るわ!」

 

 

頼むと少し嬉しそうにしているディア様。お見合い参加者たちや騎士がなにかしないか心配である。

 

 

「えっと、これを言うのは良くないのかもしれませんが……政争によってこの地ではオベイロスに対して良くない感情を持っている人が多くいます。ここは王都ではないので本当に気をつけてください」

 

「……わかったわ」

 

 

言い含めておく。ここは王都ではなくリヴァイアスであり、その安全度は全く異なる。

 

王都なら平民に対して貴族が攻撃しても問題にもならないかもしれないがここはリヴァイアス、なんなら貴族に対して畏怖すること無く、すぐに反撃しそうだ。

 

現に周囲には武装した亜人たちの鋭い目がある。私に対してこんな目をしていたのは昔のホーリーぐらいか。

 

一応ジュリオンに決して彼らを傷つけないように言っておいたが……なにか起きそうで怖いなぁ。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

ドゥッガの方でひっ捕らえた船団の責任者を2人、謁見の間まで連れてきてもらった。

 

他にもまだまだたくさん仕事はあるはずなのに問題ばかりである。出来た施設とか見に行きたい。

 

部下の数は多いし、様々な仕事を任せているが私の考えた仕事以上に働かせようとすると越権行為になるため許可を待っているものもたくさんあるそうな。

 

 

とりあえず彼らの主張をまとめた報告書を読むと……『リヴァイアスの領海内での出来事だからここの責任者が保証しろ』なんて、何故かこちらに文句を言ってきていた。 

 

 

私の思っていた以上に大問題になっていた。

 

 

他の資料を見ると彼らは互いに大商人で、ここで争った規模も船が単独の一隻で争ったのではなく「船団による戦闘」である。事故ではなく武器を出し合っての戦いとなっていたらしい。それぞれの言葉を喋れる奴隷に翻訳してもらって事情を聞くと過去にも数え切れないほどやり合っていたそうだ。

 

そうして今回は多くの船が沈んだ。

 

近くで見ていた海の種族たちが落ちてきた船員を救出。だと言うのに船に乗って無事だった人たちは戦闘を続行、リヴァイアスの停戦命令を聞かずにこちらにまで攻撃してきたためうちの船長……じゃない、ドゥッガがキレて三つ巴で戦闘開始。

 

もともと疲弊していたところにドゥッガの攻撃とGOサインによってうちの正規兵が海からも空からも攻撃が行われた。2つの商船団は完全に降参した。残った船は僅か数隻のみである。

 

彼らの財産は残った船数隻と身につけていた宝石類だけであるが、それらもリヴァイアスが抑えている。船も商品も失った彼らはなりふりかまっていられずにこちらに責任転嫁してきていたと。

 

 

「ふむ、こちらからすれば『領内に入ってきて争いを起こした罪』はありますね。それに『商売にきたと見せかけてリヴァイアス領を攻撃してきた』という見方もできます」

 

「…………」

「…………」

 

 

商売人には土下座させたまま情報を整理する。

 

このまま罪人として奴隷落ちも当然であると思う。うちの兵も巻き込まれていて怪我をしている。

 

 

「なにか言いたいことがあれば通訳に話すように」

 

 

なにか言い分があるのなら聞いてやろう。

 

現場にいた当事者ではないし、なにか仕方のない事情があった可能性もある。

 

 

「せめて船員の命は助けてほしいと言っています」

 

「この待遇は許せん。祖国のものが知ればこの領に攻め込みに来るぞと強い言葉で言っています」

 

 

周りの兵を配置して連れてきてもらった。

 

人の商人はこちらの態度を見て青くなって助命を求めてきた。ドワーフの商人は諦めてないのか血管を浮かび上がらせて怒っている。

 

 

「脅しですか?問題を起こした貴殿らがこのリヴァイアス領主に?ちょうどドワーフの貴族もこの城に来ていますので意見を聞いてみましょう。一旦話は以上です。下がってください」

 

 

彼らの言い分は分かった。

 

うちの人間のことを信じていないわけではないが、なにか特別な事情や誰かに嵌められたわけではなかったようだ。最後のチェックだった。

 

次は酒宴だ。忙しい忙しい。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

「無礼にならないようにドワーフの作法も取り入れてみました。これでいいのかな……乾杯!」

 

「ウェリドモージアッ!!」

 

「乾杯の挨拶かな?ありがとうございます。えー……新たな出会いに!」

 

「ドワーフの礼、やってくれて嬉しい。ありがたく」

 

 

お決まりで当たり障りのない言葉を並べておいた。

 

ドワーフの礼儀を聞いて実行してみた。私の杯にお酒を入れて、その杯からジュリオンの杯に入れ、ジュリオンの杯からフドンさんの杯に同量になるように注ぐ。

 

私は子どもなのでその杯は腹心であるエール先生に渡して飲んでもらう。これは『酒に毒が入ってない事を証明し、同時に身分に関係なく同じ酒を一緒に飲む』といった作法らしい。

 

本来なら私が飲むのが正しいのだけどそこはお酒を飲めないことを了承してもらっていた。一応オベイロスは年齢制限もないし子どもがお酒を飲んでも良い国だけど、領主である私が倒れると話し合いもできなくなるし和解の道が無くなりかねない。ちょっと飲みたい気もするが我慢である。

 

 

用意した料理も紹介しつつ酒宴を開始する。

 

軽く「幼女の私と同じ量だけを一緒の酒を飲むとフドンさんは全然量が飲めませんよ?」と言うと笑ってくれた。 ある程度寛容で茶目っ気も有るようである。

 




コミック発売されて胸が一杯になってます。皆様応援ありがとうございます!
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