水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね? 作:mono-zo
フドンさんをどうするかはほとんど決めたのだがちょっと思いついたことがある。
「というわけで意見が聞きたいです」
お見合い参加者の中でも筆頭格の人たちに今回の『ドワーフの貴族についての対応』と『商人二組への対応』を聞いてみることにした。
ちゃんと事の経緯は書類にして渡しているし、回答はどちらかに対してだけでも良い。彼女らの考えが聞きたいのだ。
「舐めてるんだから首落とすのはどうだ?」
「それも一つの意見ですね。ありがとうございます」
ポヨ令嬢は処断すると言う判断だ。
舐められれば今後の統治に関わるかもしれないし理解は出来る。
「吾輩は反対だ!断固として反対だ!!商人に萎縮されれば吾輩のもとに来る魔導具が減るではないか!恩情を与えてこれからもこの国に商品を運んでもらおうではないか!」
「なるほど、交易の継続のためにも許す方向ですね。なるほど」
ラズリーさんは魔導具目当てか。
お見合い参加者の集団はリゾート地にいてもらったのだけどユース老先生と勝手に抜け出していた。市場で他国製魔導具を見漁っているところを捕獲してきた……処刑には反対と。
言うだけ言って懐から魔導具らしきものを取り出して触り始めた。これ以上意見はないのだろう。ちらりとリュビリーナに目をやる。
「んー……これって厳しくすれば他国との問題になりかねないから慎重にした方が良いと思いますわ。しかしこちらは被害を受けた立場ですし、妥当なのは強気の姿勢で彼らの国元に損害金を請求してみる。または対応策について陛下と協議してみるのが良いんじゃないかしら?」
「なるほど、それも一理ありますね」
リュビリーナはまともな判断である。
充分ありだと思える。まともなのが逆におかしく思えるが。
「わたくしは精霊に従って見るのが良いと思います」
「…………過激ですが、この国にあった刑罰でもありますね」
エルストラさんの主張するのは獣刑に近いやり方だ。
正しいかどうかを確かめるべく、その身一つで放逐する。悪くなければ生き残って再起を果たせるし、そうでなければ自然に還ると。
かなり過酷なやり方だし他の国から見ればかなり残酷に見えるかも知れないから後で問題になりそうである。でもこの国なりの解決策でもある。『この国なりの対応』であるのだから他国からすればそれで納得されるかもしれない。
「国際問題になりえる案件です。貴族院に聞かねばリヴァイアス候はオベイロスに反意があると見られるやもしれませんね」
「<なるほど、却下で>」
「!!?」
セルティーさんの意見にちょっと苛立って魔力が漏れてしまった。――――意地悪や悪役ムーブではなく、これは却下だ。
たしかに「税関」のようななにかしらの『検査をする機関』は必要なようには思う。法規制されている品とかわからないし港に国の機関はあってもいいと思う。しかしゴミばかりの貴族院に対処をさせようとは思わない。リヴァイアスと貴族院の関係を考えるにそれは許されない、多分亜人たちがこれまでの私に対する要求を知れば着任前に全員事故死しちゃう。
そもそも入国管理とか何も言われてないし……国のまともな人材に任せたい気持ちもあるが貴族院は私にとって鬼門である。これまで無茶苦茶言ってきた経緯から信用も信頼もできない。
考えれば考えるほど「本来なら中央に任せるべき案件」であり、そうした方が良いような気もするが、やはりこれまでゴミみたいな脅しや賄賂や要求をしてきたから任せられるわけがない。だと言うのに……『それこそが正しい』『私が間違っている』とこれまでの罵詈雑言や「領地寄こせ」「金よこせ」「結婚してやる」などの苦労も知らずに真っ向からと責めてくるようなセルティーさんの姿勢に苛ついてしまった。この娘には聞くんじゃなかった。
処刑する。恩情を与える。相手の国元に確認する。精霊に試させる。貴族院の介入。
どれも意見ではある。腹のたつ意見もあったが得られるものもあった。
彼女らは令嬢であってこういった案件を取り扱う専門家ではない。それでも意見が一致するようなものではなかったということは私が出す意見も私なりで良いはずだ。もしも全員が同じ意見を出すのなら私の知らない何かしらの統一した方針があるのならそれに習ったほうが良いとは思ったんだが……。マニュアル欲しい。
「んー……んー……んー……?」
「ここの領主はフリムちゃんなんだからフリムちゃんが決めていいと思うわ」
「ディア様、ありがとうございます」
まぁ今回の件については問題がなさそうだが、検査機関は必要なように思える。
「吾輩、もう行ってもいいか?」
「あ、ラズリーさんに相談があります」
「わ、吾輩に?」
少し挙動不審なラズリーさん。
この子、研究物について話していないと少し人見知りというか、今も幼女である私の視線を避けようとしている。
「はい。他の皆様はリゾートに帰ってもらって大丈夫です。いずれ自由行動ができるように取り計らうので一旦令嬢方をまとめて頂けると助かります。商人などは向かわせますので」
「分かったわ」
あ、いつも静かなエルストラさんが反応してしまった。
派閥的に私の言葉に反応しないようにすると手紙で話していたのだが、無意識に出た感じだ。無表情ながらも私には「やっちゃった」と動揺しているのがわかる。
他の令嬢方も普段静かなエルストラさんが話したことに驚いているようだ。お見合い参加者には西からライアーム派閥も少数ではあるが来ているしエルストラさんにはしっかり抑えてもらいたい。
まぁ他にも聞きたいことは言いたいことはあった。
特に精霊鳥について……あの鳥、何故か山の方に走っていったらしい。食料不足気味のこの領地であのまるまるとした大きな鳥だ。焼き鳥になってないか心配である。しかしこれは彼女らに伝えるよりもディア様だけに伝えておくほうが無難というものだろう。
「な、何かね?」
体を揺らして不審なラズリーさん。少し聞きたいことがあったのだ。
「魔法省は、いえ、魔導具を扱う検査機関の設置をしたいのですがそういう許可は何処に求めればよいのでしょうか?」
「あ、あ、あー?……その、誰でも出来るじゃないか」
「そもそも魔法省というか魔導省というか……普通の貴族でも大貴族でも関係なく入るなという警告がされていますよね?応急の建物の入口に『資材及び予算も持たない者、入るべからず』とか書いてますし、手続きの手紙は送っているのですが一向に返事がありません」
私もインフー先生の爆弾から少しは警戒しているのだ。この領地には他所から貴重な魔導具も入ってくるがそれのみならずダンジョンからもたくさん献上されてくる。それらは倉庫を作って保管しているが結構危険なものも多いそうである。
もちろん最低限であればラディアーノによるチェックはしてもらっているが、彼は専門分野ではないらしい。やはり危険かもしれない品が相手なのだから複数の専門家の意見があったほうが安心できる。なにせダンジョン産のアイテムは意味不明なものもある。
伯父上と争う前に既にそういった手紙は魔法省に送っていた。しかしリヴァイアス領内の薬草や鉱石を勝手に調べに来るような人はいても専門機関から仕事として人が派遣されてくることはなかった。
「そ、そもそも魔法省がどうなっているのか、知っているかね?」
「いえ、よくわかりません」
「ふぅー、やれやれ。わ、わるかった。説明するから」
思わずジト目で見てしまった。
「その、魔法省は……いや、『精霊及び魔法・魔導・魔技・魔闘・魔術・魔獣・魔樹などの解明を目的とした省庁』は自国及び他国の神秘を解明しようという……その、理解できているかね?」
「続けて」
「う、うむ。元は『精霊庁』とも呼ばれていたのだがそこは神殿に任せて我々は『人に関わりがある魔法や魔導について』を調べている。魔法省や魔導省、魔術省などとも言われる。自分の研究費用を増やして欲しい魔獣研究者なんかは魔獣庁なんて言ったりもする。吾輩も予算もっと欲しい」
「それで?」
「そ、それで?……えー、竜術や秘術、神聖術、更には固有種の使うような特殊魔法、魔獣の使う特殊能力に特殊な環境下でのみ発生する現象や樹木なども、それに、なんだ?えー、結局は精霊を含む上位種についても多岐にわたって研究しているな」
「なるほど……」
「なるほど?えぇと、何が聞きたいのだね?吾輩、見つけた魔導具とゴムの産地に行きたいのだがね?」
少し挙動不審なラズリーさん。
フリム知ってる。ラズリーさんは研究こそが楽しく仕方なくて、それ以外が色々と駄目な人だ。
彼女と仲良くなるには研究材料がある空間か、もしくはもうちょっと時間が必要だろう。
「……リヴァイアスには現在が魔導具がたくさんありまして、そういう魔導具を調査するのに魔導――――「なるほど、魔導省の人間をここに置きたいと!素晴らしい!!んっんぅっ! 吾 輩 ! わ が は い が ま ず 見 て み る の が 良 い ん じ ゃ な い か ! ! 」
「ずるい!わーたーしー!わたしがやる!」
「ラズリー様には国母になってもらって予算増やすって計画があるでしょ!」
「ヴァリエタース様にチクってやる」
「お前らの上司は吾輩だ!よって吾輩がまず見てみる!」
「……まぁやる気ならよろしくお願いします」
うーん、この食いつき……様子を見るに出した手紙は彼らに届いていなかったな。
腐った生ゴミ院からは「まず我々が精査してみるので送ってくれ」と言った内容の手紙が届いたことがある。うっかり「まともな対応か」とサインしてしまいそうになったがエール先生に止められて助かった。
奴らに高価な魔導具を流せばそのままポッケナイナイされるかもしれない。
コミック発売記念に一週間毎日投稿してみました( • ⩊ • )ターノーシーイー♪