水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね? 作:mono-zo
「次は皆様お待ちかね!拳闘です!!」
拳闘、元は奴隷に殺し合わせるのを止めさせるために提案したボクシングルール。グローブを付けて拳で殴り合うスタイルである。
武器を使った戦闘よりも人気のようで観客は盛り上がっている。
「今回っ!!領主様に見てもらうべくぅぅ!!!」
司会の人が「領主様」なんて言うから私にも視線が来た。そういう注目は慣れてないからやめてほしい。
「参加者全員!優勝経験のある強者揃いぃぃ!!」
パンフレットを貰ってみるとお店の宣伝付きで出場者の紹介がされていた。
知らない人のためにかルールや会場の飲食物の値段やゴミ捨てのマナーについてまで記載されている。
「まずは拳闘最強!俺より強いものなどいないっ!!!七度の優勝を果たした最強の鬼人!『拳闘王』!!ディィィン!!!」
鬼人ディーン・グラタル・ガウンツェン・カガ。世界を股にかける大商人が誇りと優遇措置のために連れて来た最強の鬼人。
見た目は大きく、凄まじく筋肉質で……凄く怖い顔をしている。二本の角もあってまさに鬼。後胸毛もっさりである。
服装は腰巻き一つにサンダルのみ。入場してきて、私の魔導鎧を一瞥してほんのり笑っている。一番に入ってきて私に向かって頭を下げてきた。
「次!本来なら『斬撃』プラライフに『岩砕き』サクサーが出場予定でしたが、領主様がこられるとわかってリヴァイアスの中でも勇猛な戦士長2人が参加してきた!!!リヴァイアスの老舗!ウル商店とセンス商会と奴隷契約してまで出場し、見事優勝を果たして資格をもぎ取った!!獅子人パルケレッルニャー様に魔狼人ヴァンディアズル様!!!」
…………やばい名前覚えられない。なんて言った?
二足歩行のライオンと人狼っぽい2人がキラキラした目をこちらに向けて堂々と入場してきた。そしてきっちりと頭を下げた。ライオンさんは尻尾がピンと立っているし、狼の人は尻尾がブンブン揺れている。
会場はディーンの入場よりも大盛りあがりである。リヴァイアスで彼らは有名なのかもしれない。
どちらも筋肉質で大柄である。古傷が多く『歴戦の強者』であることが一目で見て取れる。服装はどちらも腰巻きに黒い布地の胸当て、それにサンダルである。
あれか、私がリヴァイアス領主になって忙しい時期に国境を守ってる強い種族がいたって聞いてたけど彼らか。
名前なんだっけ?……獅子人のパルケ……パルケレ……パルケレッル?それに、ヴァンディア……アズル??何だこの凄まじく覚えにくい名前は……パンフレットの字も手書きで読みにくい。部族名か家名も書かれているが覚えなくてもいいだろう。
声をかけるかもしれないからそれまでに覚えないと、ライオンがパルで狼がヴァンね。
「最後にぃぃ!!!ふらりとこの地に現れたエルフ!!その可憐な見た目に男女関係無く求婚者続出!!見た目は戦えるようにはとても見えない!だが侮るなかれ!二つ名を持つ数々の戦士が地に伏せた!!!『絶技』スーリィィィ!!」
耳の大きなエルフが出てきてこちらに頭を下げてきた。
横の3人に比べて圧倒的に小柄。普通の人に見える。服は奴隷らしい平服で無表情。感情は見えない。
この四人の試合が今回のメインイベントらしい。
ここまでは武器ありでの戦いが主であったが、ここからはボクシング、イベントの最後に゙もってくるあたりこれが目玉なのだろう。
武闘大会で『自分から参加して勝つ』よりも商人たちが商売や自身のプライドを掛けて世界中から集められた彼らの『自身の自由を賭けた拳闘』のほうが盛り上がるものなのかもしれない。
それも今回は領主が直接見に来るような特別な試合である。
こういった催しでは優勝者に絶対無理なものでもない限りできるだけ要望を聞いてあげたり、莫大な金銭なんかを与えることも良くあるそうだ。今後の経済のためにも奮発しよう。
しかし、出場枠の半分をうちの人間が奪った部分については微妙に言いたいこともあるけど……まぁ良いだろう。
優勝候補である鬼人ディーンは拳闘において七度の優勝をしている。彼は既に奴隷の身分から解放されている殿堂入りチャンピオンである。事前の聞き取りによると彼はリヴァイアス酒を要望している。
ライオンさんと狼さんはリヴァイアスの戦士である。彼らは戦士の中でも名のしれた戦士であり、面識はないが国境沿いの護り手をしていた。
彼らの資料にも目を通す。領地が落ち着いたため国境から領都に上京。どうせなら自身や自分の種族の有能さを領内外にアピールしするべく、領都で縁のある商店との奴隷契約をしてコロシアムで暴れまわっていた。部族の子どもを領都の学校に入学する許可を要望。
2人の注意点として「実力はあるが結構馬鹿である」と記載されている。スポーツブラのような胸当ては防具ではなく、こちらの学校で水泳を教えたときに私が胸を隠すように推奨したからつけているそうだ。ちなみに両方男性である。
エルフのスーリィさんはディガッシュ商会の奴隷だったそうで……要望は勝ったら私に伝えると。
実質スーリィさんだけ何を考えているかわからないため注意が必要だな。
しかし……彼か彼女はわからないが戦いになるのだろうか?
一際目立っている鬼人はゴリゴリのマッチョで胸毛モッサァで顔が超怖い。ライオンさんは傷だらけの身体は見るだけで歴戦を物語っている。狼さんは肉厚な2人に比べるとスマートな印象を受けるがそれは比較対象が悪いだけである。3人とも背が高い。
この3人と比べるとエルフはまるで子どもである。普通の人ぐらいの大きさのはずなんだけどね。
「誰と誰が戦うか!それは運が決める!!拳闘王ディーン!まずは貴方から!!!」
大きなくじ引きの箱のようなものを司会者に差し出されてディーンが手を入れ、中からなにかを取り出して上に掲げてみせた。それは赤い石だった。
「次は……不正防止のため!スーリ様!よろしくお願いします!」
不正防止……ライオンさんと狼さんはリヴァイアスの人間だから先に引くと不正を疑われるのか。
同じように箱から取り出されたのは青い石だった。
次にライオンさんが赤い石、青い石を狼さんが取り出して、組分けが決まった。
……名前覚えなきゃな。なんだっけ。
会場に設置されていくリング。
土の地面に四角く杭を打っていき、ロープを張るだけ。
多分前世のボクシングのリングよりも一回りも二回りも広い。テレビでしか見たことがないからわからないけど。
審判やなにかの魔導具が設置されていき、その間、商店なんかの宣伝がされていく。
サッカー場のように広い会場だけあってすこし遠く感じるが、まぁそれは仕方がないだろう。ライブ会場の端から見ている気分だ。
リングの周囲にはうちの人間やここまで参加した人たちが出てきているため賑やかな印象を受ける。
リングが作られていく外側で向かい合っている鬼人と獅子人。どちらも筋肉質で肉厚な体つきをしているが体格はやや鬼人のほうが大きい。
獅子人は全身の毛の分膨らんでいるようにも見えるし、それに比べて鬼人の方は筋肉が出っ張っていて、これでもかと言うぐらい筋肉筋肉している。
「爪、角、牙は使わないこと!審判の命令には従うこと!!」
「わかってる」
「うむ」
ルールも色々元のものからかけ離れている。元が私の雑な知識から産まれたものだからということもあるが……掴んだり関節技、寝技はダメだが、手のひらを使ってもいいし足を狙うのも問題ない。金的は打たれる方が悪い。ガードのためなら肘を使うのもよい。背中や後頭部を狙うのもあり。
魔力による強化もあり、ただし詠唱と遠距離からの魔法攻撃は禁止。
空を飛べる種族は羽ばたき3回までオーケー。
場外やノックダウンの場合、試合の続行は審判の判断に委ねられる。
審判を誤って攻撃した場合は審判も同じ回数の反撃可能で試合は続行される。故意の場合は複数の副審がメイスをもって打ち据えに来る。
ちょっとした反則なら審判と副審の判断に委ねられるが、武器を使うような卑劣な場合は主審と副審のみならずうちの正規兵により罰が下る。
私から見るとだいぶんルールがかわってるように思える。金的ありなのか……。
基本的に拳を使っての殴り合いであり、外から見て珍しいのは拳を保護するグローブを使うことだけ――――その単純なルールからとても人気が出てきているようだ。
最近は作業に没頭してます。いつも応援してありがとうね!
(ヽ´ω`)あついよぉ……。