水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第322話 雨の中↴スライムカーニバル

 

ドゥッガはどう見ても休養が必要そうなのでちゃんと休むように言っておいた。今、人員が減るのはちょっといたいが無理をさせても仕方がない。

 

ポヨ令嬢は既にリゾート地に移動した。私の指示だから仕方ないが……大丈夫かちょっと心配だ。

 

続いて人をやってライオンのパルさんとヴァンディアズルさんを呼んでもらう。

 

すぐに来た2人は改めて恭しく頭を下げてきた。

 

 

「お呼びでしょうか」

 

「お忙しい中、早速面談して頂きありがたく思います。いかなる御用でしょうか?何でもしますよ」

 

 

片膝をついてかしこまって頭を下げるライオンのパルさん、横で同じようにはしているものの人懐っこい笑顔を向けてくるヴァンディアズルさん。

 

改めて近くで見ると……両方怖いな。両方普通の人と比較しても大柄だし筋肉質、そして猛獣の見た目である。

 

まともに対面するのはこれが初めてだけど彼らから侮りや嘲りのような感情は見えない。むしろピンとたった尻尾とぶんぶん振られる尻尾で受け入れられていることがわかる。

 

 

「貴方方の要望や普段はどうしているかなどが聞きたいです」

 

 

リヴァイアス侯爵家は侯爵家だけあってかなり広い。

 

彼らは南西の国境沿いで働いてきた。その中でも力を持つ2人が私を支持するのかは統治を行う上で確認する必要があったのだけど……大丈夫みたいだ。

 

色々聞いていくと結構フレンドリーというか、新たな領主に対する敵愾心のようなものは感じられず安心した。

 

彼らの願いは部族の子どもたちも領都の学校に通いたいそうなのでちゃんと受け入れる。現在学校に通っている領都の子どもたちはメキメキと便利な知識を身に着けて役に立っているようだ。

 

彼らが話せるのは翻訳スープを飲んだからだそうだけどなんだか凄く申し訳ない。なんか同じ部族の人が持ち帰った物を飲んだらしい。…………そう、移動に距離がかかって、若干いたんだものを、飲んだらしい。数日お腹を下したそうだ。

 

リヴァイアス領には他にも強い種族がいるが、距離的に離れているし他の領地からの攻撃に備えていてからなかなか領都まで来ることは出来ないそうだ。彼らと仲が良い熊人と虎人もこちらに来たがったそうだけど領都に来るよりも任地と部族を守る方を重視して来なかった。

 

2人はと言えば治療した引退兵たちが戻ってきて余裕が出来たから来たそうだ。

 

他の部族で知っていることを聞くと鹿人は部族でも立派な角を切り離したものを満月の夜に山で儀式をしてから献上すると張り切っているのだとか狸人は危険な川で手に入る石を磨いて集めているそうだ。……風習か何かなんだろうけど怪我したりしないか心配である。

 

 

「心よりお仕えします」

 

「ぜひご自由にお使いくださいませ」

 

 

雑談を交えて楽しくなってきたが仕事に移らないといけない。

 

忠誠を誓ってくれるようで2人は改めて片膝を立てて頭を下げていたのだけど私にはそれでも頭の位置が高かった。先に頭を下げたパルの頭に手が届かないなと困っていたらヴァンディアズルが先に顎を床につけるようにしたのでヴァンディアズルの頭から撫でておいた。

 

ヴァンディアズルは嬉しげにモフモフの尻尾をバタバタさせた。可愛いなと思っていたら目を瞑って頭を下げていたパルがすぐ気付いたようだ。

 

フフンと何処か嬉しげに目をやるヴァンディアズル。焦ったように同じように体ごと伏せて頭を下げてくれたので撫でる。おぉライオンのたてがみってこんなのなんだ……。

 

 

「ありがとうございます。そろそろ 凄 ま じ く 忙しくなるでしょうし……しっかり働いてください。怪我はすぐに治しますので」

 

「「??……はいっ!」」

 

 

一瞬「何をいってるかわからない」と呆けたようなパルとヴァンディアズルだったが、フリムちゃんは既に学習しているのだ。

 

私が領地に帰ってきて、あの温かい雨が降ってきた。

 

きっとこの雨が終わればわかるだろう。まだそうなるとは限らないのだけど。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「領主様!広大な畑が凄まじく成長しています!収穫しないと獣が集まってくるかと!!」「大漁です!見たことないぐらい大漁です!!」「畑に魔獣が次々と現れて奴隷と戦闘になっています!」「あっがいぎものみだごどねったのがいだんだ!ホルホーのまぢんぢがぐでざ!」「スライムが道を埋め尽くしています!というか草で道がなくなりました!」「林が森になりました!」「ガァウ!ガァフッ!!」「巨大像の杖と頭部にスライムを狙った魔鳥が集まっています!!」「川にスライム目的の魔獣が出現しました!」「海岸線の砦及び灯台の一部が草に覆われてしまいました!」「ソーギアー領に正規兵をやっていて人手が足りません!奴隷兵たちの出撃の許可を!本人たちが志願しています!」「報告は共通語を話せるやつがしろ!何言ってるかわからん!」「センス村周辺に大型の魔獣とその群れが現れました!アモス将軍が先行して向かいました!」「東で海商の一団が魔獣によって攻撃を受けています!至急助けを!」「ゴルル!」「こっちのほうが重要だろうが!?」「ルレ村で中型の獣が複数出てきていて討伐隊を編成しています。出撃の許可を願います!」

 

 

 

――――そう……スライムカーニバルだ。

 

リヴァイアスの爵位継承時には雨が降る。その雨で草木はもりっと生い茂って……スライムが発生する。スライムを食べる獣や魔獣が普段出現しない場所に現れたり、海の生物も大きいものが見つかったりと……色々と荒れるのだ。

 

爵位継承じゃないし、違っていてほしかったけど……凄まじく忙しいことになっている。

 

 

何もなければいいなと思っていたのに……。

 

私は地図を見てそれぞれの被害地域を家臣から受けて指示をする。その家臣たちには急報がどんどん舞い込んでくる。

 

 

タイミングの悪いことに、まとまった戦力が領地から出払ってしまっている。

 

 

ソーギアー領に急ぎで軍を派遣する必要もあって空軍を中心に構成された結構な数が出払っている。彼らは子爵領から来る兵に対抗できるようにするためにも質も量も揃えた精兵であり……当然うちの領地でも重宝される存在である。

 

予め準備させていたグレジッグ子爵軍の方が当然数は多い。彼らはソーギアー領地を即制圧するために武装を整えているし一筋縄ではいかない。

 

リヴァイアス軍は侵略に対して先んじてソーギアー領内で待ち構えることは出来たものの戦闘に発展すれば「リヴァイアス軍が王の許し無く他領で戦闘行為をした」とオベイロス国で見られることになるので先に手を出せないでいる。ちゃんと指揮官である三馬鹿を躾けたアモスにはナイスと言ってもいいだろう。

 

対してグレジッグ子爵軍も自軍に対して少数とは言え侯爵軍に手を出せば潰されるのはグレジッグ子爵領だというのがわかっているからか動けないでいる。

 

更に周辺の領も軍を出している。味方についてもらえればと思っていたのだけど、情報によれば「王のお気に入りであるリヴァイアス侯爵がグレジッグ子爵領のみならず、この一帯の領地を手に入れるつもりではないか?」と噂になっていてグレジッグ子爵軍を攻めるでもなく、かといってリヴァイアス軍を攻めるでもない状況になっている。

 

シャルルからの停戦命令と王軍の到着はそろそろのはずだがうちから出した兵を直ぐに戻すことは出来ない。

 

そしてこんなことになるとは思っていなかったリヴァイアスの正規兵はそれら他領がどう動くのか不明のため、準備ができた隊から急行してもらっていて……もう3度は部隊を送り込んでいる。それなりの数で、それなりに足の速い人員を中心に。

 

お陰でこちらは人手不足である。

 

 

しかし報告を聞くと良いこともあるな。

 

私の魔法でゴムの木やスパイス、薬草類を成長させることが出来たため、奴隷や隷属兵は畑の拡張を行っていた。私がいつ帰ってきても良いように、種も蒔かれていたことから畑はわさわさと成長していることだろう……それを狙った獣も出てきてしまっているようだが。

 

それにスライムだ。人口の増えたリヴァイアスではスライムはごみ処理に必要な存在である。海には海の種族がいるためちゃんと綺麗な水を流さないといけない。スライムが雨が降っただけでたくさん出てきてくれるなら今のうちに集めておくことも出来る。

 

いけない、思考が逸れた。

 

地図と問題が起きている場所を照らし合わせ、該当地に対応できるだけの軍を派遣して事態を収拾しなければならない。

 

 

「兵を出してください。外部から来ている商人や貴族に対しては精霊災害ということで外出の禁止を一時的に命じます」

 

「何処から優先しますか?」

 

「最優先は人の命です。まずは王都から来た貴族の保護をお願いします。彼らが怪我をすれば彼らの親……他領の貴族がうちの敵になりかねないので。次に被害が大きくならないように部隊を分けて被害の出そうな場所に軍を割り振りましょう」

 

 

領民を最優先としたいところだけど貴族の彼らが何らかの理由で怪我でもすれば貴族が軍を率いて攻め込んできかねない。

 

こういうのはアモスとドゥッガの仕事だけどアモスは強い魔獣が出てきたので対処に向かっているし、ドゥッガはディーンさんとの戦いで休ませる必要がある。本人は大丈夫だと言っていたがおでこ真っ青だからね。多分腫れてるだけだと思うけど、頭蓋骨内の出血は直せるかわからないので超魔力水漬けである。医者の見立てでは骨は問題ないそうだし腫れているのは骨より外側だがら問題はなさそうだが休養が必要とのこと。本人は働くと言っていたが大人しくしろと言いたい。

 

 

「その、ミリア様からの報告によれば王都から来たお客様方は狩りに出たそうで……」

 

「わたし、あたまがいたい。なにやってんですか……」

 

 

ミリーからの報告によるとお見合い参加者は危険な外に行ったようだ。

 

ほんとに何やってんだろう。ディア様……。

 

 

「護衛は多めにつけてください。それと責任の回避のために狩りに出ることに対して何があっても責任の所在は自分にあるといった書面を残すように……いえ、彼らも自己判断で行っているのでしょうし……でも怪我したら――――あぁっ!もうっ!!今さらっ!!」

 

 

頭の中でフリムちゃんがうわーんと泣いてる気がする。

 

ただでさえ忙しいのに!人員は減って面倒事は増える!!誰か、誰かこの騒動を収めることができる人材は――――1人だけ、いるな。

 

 




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