水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね? 作:mono-zo
「ジュリオン、ついてきてください」
「はっ!出るぞ!ついてこい!!」
「領主様!?ここはどうするおつもりですか!!?」
領中の情報が集まる領城のこの部屋から私が出ていこうとすると誰かが声を出した。
この現象は『精霊災害』で済むかもしれない。
精霊による不利益は自然災害のようなものという一般的な認識がある。そもそも基本的に抗いようがないしね、逆に豊穣になるとかは良いことだけど。
ここはリヴァイアスであり、水を知覚し、水を操れる今なら……いつもより私は活躍できるはずだ。
「テロス、一時この場を預けます。後にジュリオンを戻しますのでリヴァイアスの地に詳しい2人に軍の割当を任せます」
「はいっ!」
「姫君は如何するのですかな?」
「――――……解決のために私が出ます」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
巨大な私の像の上に行く。軽い雨の中、鳥の魔獣を追い払ってもらう。
ついてきた飛べる家臣たちがいなければこのゾッとする高さを歩いて登らないといけなかったのか。
ジュリオンによって鳥は追い払われて、雨の中外に出る。下の家は小さく見えるし風も吹いていて、正直怖い。
「ここでできる限りの対処をします。……エール先生。私はしばらくここを動けなくなります。周囲を任せても大丈夫ですか?」
「フリム様がやらずとも兵に任せてもよろしいのでは?」
心配そうにエール先生に言われた。
アモスは大型魔獣の相手をしている。ドゥッガは現在治療中で動けない。
イリアはクーリディアスの兵の統率をして対処に回ってくれている。重要人物でもあるためマーキアー姐さんとローガンをつけた。
首を振って否定する。子どもの我儘に見えるかもしれないが、エール先生ならわかってくれる。
この状況を一気に解決できる可能性があるのはリゾート地にいるユース老先生かフィレー、もしくはついてきている騎士にディア様――――……そして私だ。
「――――わかりました。お任せください」
私が断るとわかっている上で質問してきたエール先生。
心配してもらって申し訳ないしばつが悪い気がするがやると決めた。
杖を手に取り、跪いて魔法を使う。
高層タワーサイズの領主様像。結構ずんぐりしていて建物自体が揺れるということはないが雨も降っていて風もある。
立って魔法を使うよりもこの方が安心である。
「<水よ。水よ。水よ――――オルカス?うん、行っていいよ>」
オルカスが「役に立つよ!」と顔をゴスゴスしてきたので行ってもらう。
「<クァーン!!>」
やる気満々のようである。ここでゴスゴスされれば私が危ない。
オルカスは空中を泳ぎながら分裂して全方向に散らばった。
いつもよりも広範囲で知覚していく。
雨のおかげか、より遠くまで……以前よりも鮮明で、少しずつ物体を知覚できていく。
目で見えるものではないが、動かない建物に、わずかに風と雨で揺らぐ草木、明確に動く、なんだ?……地面に蠢いているのはスライムか。
人里や畑で暴れている魔獣や獣は水を当てて山に追い立てる。
ちょっと強そうなのにはオルカスを向かわせる。無数に増え続けるオルカスは何やらヒャッハーと魔獣を倒し始めた。
リヴァイアスはこの雨でご機嫌に周りにいるだけでルカリムは静かに近くにいる。他の子は海に向かっていった。
スライムがモサモサ出てきていているが集めて貯水槽と学校のプールに集めておく。
ん?こら、リューちゃんは魔獣じゃないって!オルカス!?
いつの間にか部屋を出ていたリューちゃんだったが都の近くに出ていた魔獣を蹴散らしてくれていた。そこにオルカスの水レーザーが直撃した。吹っ飛んだリューちゃんだが水の竜王の子だけあって問題なさそうである。
私も知覚した魔獣に対して水を当てていく。
……かなりコントロールが難しい。数メートルの誤差があるがそこは回数で補う。幸い獣も馬鹿ではなく、攻撃されれば『なにかに攻撃された』と理解するようで大抵は逃げていく。
遠くになればなるほど、より負担も大きくなるし使える力は小さくなる。数十キロは離れているし、こんなに遠距離にまで魔法を使うのは初めてだし仕方ないか。
海にもなんかおっきいエビがいるな。よし君はご飯になると良い。回収回収。
しかし大型の獣は何処だろうか?センスと言っていたしヴァンディアズルはセンス商会所属でセンス村の出身であるためある程度の兵を率いて国境に帰っているが彼の進行方向で良いのだろうか?ヴァンディアズルもパルも体格が良いだけあってわかりやすいな。
ん、これは……精霊鳥だな。果樹園の一部で果物食べてる。…………いや、でも周りに猿みたいな獣が倒れてるし…………うーん、農家の人には後で補填しよう。国が大事にしてる鳥だし。
雨が止めばここまで広範囲を操れなくなりそうだし、手早く終わらせてしまいたい。丁寧に、村や集落で暴れている獣を対処していく。
知覚していくと……体高だけで20メートルはありそうなバッファローのような魔獣と、それと同じタイプの普通の牛のような魔獣が暴れていた。畑の野菜を食べていて兵が止めようと戦っている。
アモス……かな?アモスだ。大型の魔獣と戦っている。
「<水よ。掴め>」
兵士と混戦になっているしコントロールの悪い水の放出は避けたほうが良いだろう。
群れから一番離れている獣を水で掴んで動かそうとしたのだけどそれでも牛のような獣は力も質量もあって動かせなかった。
アモスは建物サイズの大物を相手にしているが竜王のようなものなのか、大岩を操っている。
それを飛ばして……すぐ近くの建物の前に回ったアモスが打ち払っていた。建物を守ろうとしている。中に人がいるんだね。
「<水よ。氷となって――――貫け>
やり方を変えよう。
上空に過冷却水を棒状に作り、少しずつ形を槍のように尖らせ……落下させる。放出するだけではなく、細かく狙いって軌道を修正する。
まずは緊急性の有りそうな兵から。
一匹目は人を噛んでいた。二匹目は人を頭突きで追い詰めようとしていた。――――どちらも下半身に、ある程度の大きさが出来たので落下させ、細かく調整し……よく狙って落とした。
両方腰より後ろで命中。
きっとこれで動き回っているアモスは事態が把握できたことだろう。ミニフリムを出して、多分アモスが見ている方向に手を振っておく。飛び回られるとよくわからないな。
突然の水や氷の発生によって周りの獣は激しく動き始めた。狙いがつけにくくなってしまった。
一際大きな魔獣の足を水の腕で掴み、胴体に空中で作っておいた一際大きな氷の槍を落とす。
こちらの氷が刺さって、動きが鈍くなったと同時にアモスが頭に棒を刺した。槍かな?
あまりにも遠いため少しのズレで人が傷つくことを避けたかった。氷の槍も人が持てるサイズで考えていたのに、ロッカーぐらいのサイズで作ってしまった。先に狙った二匹は下半身と片足をそれぞれ失って藻掻いている。
人から離れて戸惑っている獣に対して氷をガンガン落としていく。
それに突然現れる氷に対して牛のような魔獣は混乱しているようで山に逃げるでもなく円を描いてその場で走り始めてしまった。
アモスも兵も後ろに行かせないようにするだけで必死のようだ。
過冷却水を空に作って、それを氷柱のように形成して、狙って、操作する。この工程はかなり負担がかかる。何体か狙って当ててみるも命中率は悪い。
だから氷の粒を作るだけ作って落とす。カーテンのように村側から魔獣の一群に向かって落としていく。このやり方なら過冷却水を雑に出すだけで狙ったり軌道修正の手間がなくなる。
人に当たっても問題はないが、なにかわかっていない獣が人のいるエリアに来なければそれでいい。
思惑通り氷の粒を落としていくと魔獣は慌てて逃げた。
ちょっとばかり畑に氷のオブジェが出来て荒らしてしまったが人的被害を減らせたし良しとしよう。水の壁だと牛のような重量のあるタイプだと突進で貫かれないし近くの人ごと溺れさせかねなかったから攻撃の選択も悪くないはず……。
大型魔獣もまだ動いているが後は近くの兵がなんとかするだろう。
アモスの眼の前に改めてミニフリムを出して改めて私だと知らせておく。多分こっちが見てる方向だよね……背中じゃないと思いたい。
大きいのは倒したし、後は任せた。
「一旦大きいのはどうにかしました。アモスも無事です。だから落ちないように戻してください」
「はい」
前世でも国に一つあるかなというサイズぐらいあるし正直この高さで命綱なしは怖い。
それにジュリオンに蹴散らされた鳥だったが私たちが何もしないとわかったからか近くに戻ってきて落ち着かないし襲われそうで怖い。
空を飛べるエール先生がいるとはわかっていても事故は怖いし、二度とこんな真似したくないな。
この巨大フリム像を容認する訳では無いが手すりとかつけてもらおう。
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