水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね? 作:mono-zo
知覚できる範囲でだけど、人里に降りてきた獣や魔獣は追い払うことが出来た。
執務室に戻って問題のある場所と方向を教えてもらおう。情報のすり合わせは大事なはずだ。ここでこのまま手探りで探すよりも効率が良いはず。
ふと、なにか感じて下を見る。
一瞬だけどスーリさんのような人影がいた気がする。明確に人影を見たわけでもなく、視線が合ったというわけではなく、水での知覚か……そこにいた、ような。うん、今は見えないけどそこにいたような気がする。見られてたのかな?雨の中なのに。
「いかがしましたか?」
「……気のせいかもです」
数回情報と照らし合わせて対処して……報告がなくなったので休むことにした。だけどなんだか凄く落ち着かない。
これは精霊による災害であり自然災害のようなものだ。だから一般的に『何が起きても仕方のない』と言う認識がある。
前回も少しぐらいは被害があったようだけど問題ないレベルだったそうだ。現在では領都の急成長もあるからこその被害が出ているかもしれない。
人が急激に増えれば……それだけ護る対象が増えるのだ。
「引退した兵を結構な人数治していただきましたし防衛力に問題はありません。駄目ならそれは奴らの力量不足です」
なんてジュリオンには言われたが――――心がざわつく。心配で仕方ない。
それに外で降る雨が、よりその不安を増長させる。
台風の時に「ちょっと畑見に行ってくる」とか「ちょっと川を見に行く」というケースに近いのかもしれない。
農家の人にとって畑は大切な収入源だし、もしも水路を止める板が割れて水が流れてしまえばそのシーズンの畑の収入は無くなる。そうすれば畑は作り直しになり、肥料や土を追加して、さらに馴染ませる期間も必要で……明確に「お金」がかかってしまう。
たかが板、金属の水門や大きめのパイプなんかの場合もあるかもしれない。これらは普段なら苦もなく簡単に動かせるもので……いつものようにそれを動かすだけだ。危険なように思えるが、もしかしたら行ってみれば台風の影響なんて受けていないかもしれない。それが確認できる。
いつも簡単に動かせるそれをちょちょっと動かせばそれで安心できる。どうなっているのか見るだけでも安心できる。そして――――……今対処すれば、収入が……生きるために必要なお金が守れるかもしれない。
そういう不安によって「ちょっと田んぼ見に行ってくる」からの事故につながるのかもしれない。それで助かる田畑や収入もあるんじゃないかな?
私もそれに近いように感じる。
今自分の手探りでも魔法を使えばもしかしたら助かる命があるかもしれない。
だけど、まぁ危ないよね。客観的に見てそこそこ大きな猛禽っぽい鳥がわさわさいて雨と建造物で視界に死角があって足場も悪い。そんな場所での作業。
家臣からの報告も無くなってもやはり不安になって数時間おきに領全体のスキャンを行って対処していく。
雨が降ってない場所まで知覚できないし、きっと万全ではないが……悪さをしている獣はいるもので、見つけ次第順次対応した。
雨が降ってない遠距離でも分身したオルカスが働いているのがわかったしもう大丈夫だと信じたい。
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「フリム様、海だよ!」
「ぅぅ……そうですね。眩しい……」
ミリーに起こされた。ワンピース姿のミリーにおぶられて港を移動している。
ミリーはお見合い参加者でもあるが私の家臣志望なので城に部屋を用意しているがリゾート地にいてもらっていた。なにかあった時に貴族の行動を止められないまでもこちらに報告してもらえる。
何度か護衛してくれていたしミリーも寝不足のはずなのに元気だ。
3日ぐらい休みながら対応していたら……夜は眠くないのに昼は眠くなって完全に体内時計が逆転してしまった。
こういう時は陽の光を浴びて体内時計を戻せば良い気がするし、無理にでも動かしてもらえるように頼んでいた。結果すごく眠たい状態でミリーにおんぶされている。
…………ミリーが興奮している海は海なんだけど、城からも見れるしなぁ。
楽しげなミリーには悪いが眠たくて仕方がない。
大きな力を使ったからか今回は大人化の感じがしなかったし、いきなり大きくなってミリーが潰れるということもないだろう。
お見合い参加者の殆どが海初体験なのに「精霊災害が終わるまで駄目!順番!」と私が閉じ込めていたのでまとめて港と海岸のツアーをすることが決まっていた。
ちなみに彼らはスライムカーニバル時に役に立とうと志願者を募って近隣の獣を討伐してくれていた。ユース老先生とフィレーが大活躍。
しかし怪我人は出た。怪我の理由は「スライムを食べようと出てきた獣を狩りに行って、スライムを踏んで転けて風の魔法で味方をふっとばした」というお粗末なもの。反省してほしい。
しかし狩りに自発的に参加していた殆どの貴族は成果を上げてくれた。なにげに彼らは貴族の有力な人材であり、戦力としてもそれなりに役に立ってくれたそうだ。ボクシングでの賭けに大負けしていた人ほどたくさん働いたらしい。うぅむ。
ともあれ雨もやんだので豊漁の祭りとなっているし、彼らを閉じ込めるとそれはそれで問題になりかねないので安全区域を設定して自由にしてもらっている。
一律ではあるがお礼金を出したし彼らはとても楽しげにしている。
港近くに優良な商人を集めていつもとは違う特別な屋台を作り、砂浜では大漁だったのでエビや魚を好きに食べてもらったりと好きに遊んでもらう。海も城壁内の海なので強い波もないし、海の種族が海中にいるので溺れる心配もない。遊べる範囲は一時的に一般人立ち入り禁止エリアとした。
「海って壁があるんだね!」
「ここも海は海なんですが違いますね。船が順次出てるので後で乗りましょう」
数回に分けて遊覧船も出している。
参加希望者のみ乗ってもらっている。リーズとクライグくんはテルギシアが何やら面白がって引っ張って来たため半ば強制である。本来なら年に一度の翻訳スープの儀にはまだ早い気もするが領民が色々集めてくれているし、ついでにやろう。
おんぶによってミリーの体温が感じられて、砂浜で歩いているミリーが走って目覚めるまで心地よくうたた寝してしまった。
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リヴァイアスに新しい名物が出来たと言うので行ってみたのだけど――
「これ絶対多い……切り分けるやつかな?」
「これは領主様の分です。おかわりもあります」
「私の体よりも多いんですけど?」
「お好きな分だけお召し上がりください」
領地では戦争による人口超増加によって食料が不足していた。
そのためできるだけ食品を無駄にしないように指示していたし、皆で工夫していった結果……不思議な食べ物が出来ていた。
ハンバーグが元だとは思う。肉をミンチにして形成して焼く。ミンチにすることによって多少食べにくい部分でも飲み込んで栄養にできる。
それはわかる。
そこから独自の進歩をしたらしく、8種類の肉に各地で取れる野菜にスパイス、そして海で取れるものも混ぜて作る。
カレーと一緒で、ハンバーグも各種族・各部族で発展したようだ。
それぞれレシピが違っていて、全然味わいが違う。
そして――――「全部混ぜたやつは縁起が良い」とかでテーブルサイズの超特大が一枚。後は各部族のオススメハンバーグがタワーみたいになっている。
机の脚の耐久性が心配なレベルだ。
全部混ぜハンバーグはなんかよくわからない複雑な味がしたが、それぞれのハンバーグは面白い。
一応一口ずつは食べて、感想を述べていく。
周りでは「領主様がどんな反応をするのか?」と家臣たちがソワソワしまくっている。
「これは……ちょっと硬いですね。私には合いません。でも好きな人は好きかもです。噛むたびに良い味がでますね」
残念ながら口に合わないものもあるが、それはそれでちゃんと伝えないときっとまたその路線のものを出されるはずだから正直に言う。ハンバーグの中央にキューブ状の歯ごたえ抜群のベーコンブロックのような肉が入っていて顎が疲れそうだった。
冬瓜のような野菜がゴロッと入っていて肉の旨味で口の中でスープのように広がるハンバーグやスパイシーさに特化している端がカリカリの薄めのハンバーグなどは個人的に評価が高い。
好みにもよるだろう……鶏皮のような脂っぽいミンチハンバーグや海老の身と野菜たっぷりフライにしたハンバーグらしきもの。それぞれ別の美味しさがあって良い。独自の発展を嬉しく思う。
「これ美味しーね!一番だよぉぉ」
「それは私も美味しかったです」
私の横で私の体積よりも大きな肉の塊を食べているミリー。胃もたれとかしないんだろうか。
やっと食べ終わったと思ったのだけど……追加が来た。
「領主様、こちらもご賞味いただければ幸いです」
「え、もうお腹いっぱいなんですけど」
「そう……ですか、なら仕方ありませんね」
「ちょ、ちょっとずつなら」
あからさまにがっかりとしていたので時間をかけて食べることにした。
ハンバーグの次は……クッキーか堅焼きパンのようなものだった。
果物も栽培していたこともあって指示したように糖を作れるようになってきた。船乗りにとっても長期保存できる食べ物は必要で高く売れるため作って発展したそうだ。
これもそれぞれの独自の発展をしていて……だめだ。これ、基本全部硬い。
まぁ味はいいんだ。レーズンみたいな強い味のする果物も素朴な生地と相性が良い。
でもこの果物、タルトにしてサクッとした生地と合わせたい。ぐぬぬ。あ、タルトもある!黒狐族が作ってくれたって?おぉ私、王都で作ってたもんね!情報収集が良い仕事してるね!サクサクで軽やかな酸味のタルトが良い!
「こーちょーせんせー次はこっちー!」
「ちょっと待ってください。食べすぎて……」
「んなーぉ」
「早くって今はちょっとまずいですって……」
ハンバーグに堅焼きパン&クッキー。
これで終わったかと思いきや……。
「鳥の皮のカラーゲです」
「こっちは魚のカラーゲ!」
「クケコココ!」
「にゃー」
「こっちがおすすめ!ダンジョンでとれたばかり!」
「私は大食いチャンピオンじゃないんですよ!!?」
しまった。そう言えば前回は浜辺で唐揚げとか出してたんだった。
めっちゃ美味しそうな揚げ物。鶏皮の揚げたものなんて、両手に持ったものを軽くカツカツと叩き合わせてアピールしてきてサクサクさがうかがえる。
ビーフカツみたいなタイプやタコの足っぽいのもある!!絶対美味しいやつ!お腹いっぱいじゃなければ食べたい!!
今日という日……いくらでも食べてもらえるミリーがいてくれてとても助かる。私が一口お食べて残りはミリーが食べるのだ。
「ミリー、ついてますよ」
「な、なんか夫婦みたいだね。私ばっかりこんな良い思いしても良いのかなこれ」
頬にべっとりついているソースを拭いてあげるとミリーがなんだか照れた。
「これが、夫婦……??」
「へへへ」
よくわからないがミリーが幸せそうならそれでいいか。
貴族たちも珍しい料理を食べて喜んでいるようだし、良しとしよう。え?今日しっかり食べてもらえなかった肉やクッキーや揚げ物は明日も出される??胃もたれしない程度に順番に出してください。特にハードワークとかしてない時に……。
初期の作品の書き直しとかやってますが、楽しい(●´ω`●)涼しくなってきたー!