水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第325話 遊覧船ΓO₂

 

起きると私はミリーではなくポヨ令嬢に抱きかかえられ、背中を預けていた。

 

 

「起きたか?」

 

「ふぁい」

 

 

周りを見ると城壁の内側の海の上で、船の上のようだ。

 

船にはテルギシアがどことなく嬉しげに船の上で震えているクライグくんとリーズを見ていたりミリーが船の先に行っている。お、ローガンやマーキアーもいる。

 

少し寝てしまったが結構対処を頑張ったからか昼夜逆転しても誰も注意してこないのだ。それは幼女である私に対する気遣いではある。

 

 

「その役目はこの私にこそふさわしいと思うのですけど」

 

「ちょっと話があんだよ。さがってな」

 

「もうっ」

 

 

椅子志望の御令嬢ことリュビリーナの言うことはどちらかと言うと正しい。ポヨ令嬢は一応他の派閥だしね。だけどポヨ令嬢は結構強引だ。

 

船の上に取り付けられたテーブルと椅子、船の速度は動いてるのかわからないほどに遅く、揺れも問題がなさそうだ。

 

私もポヨ令嬢との友誼は結びたいし周りも推奨しているようである。

 

まだ眠いな。いきなり日中ずっと起きるのは無理だったようだ。たくさん食べてお腹いっぱいだったし無理はしない。少しずつ慣らすようにしよう。

 

 

巨大な城壁の門を開けてもらって入江状になっている海を一周する。

 

 

「ねぇねぇフリム様!海!白くない海!向こうの方なんてもうなにもない!広いね!!」

 

 

軽やかに船を走り回るミリー。

 

すごく楽しそうだけどあれだけ食べた後だと言うのに気分が悪くならないのだろうか?

 

軽く手を振っておくと手を振り返してくれて、船の中に入っていった。まともな船なんて初めてで楽しいのだろう。

 

何人かの貴族が乗っているがたかが「船に乗る」だけでも大冒険かのように目を輝かせている。ポヨ令嬢やリュビリーナは船に乗った経験でもあるのか落ち着いてテーブルを囲んでいる。

 

私はポヨ令嬢の膝の上だ。

 

 

「あー、リュビリーナ、魚釣りでもしてきてください」

 

「はぁい。行きますわよ貴女達!釣り竿は向こうね!」

 

 

海を見るだけでも凄く楽しんでいる人もいるけど、一部では釣りを楽しんでいるようだ。

 

多分厳重警備のため海の種族も船の下にはいるだろうし、もしかしたら……魚を接待でつけてくれたりしているのかもしれないな。

 

とりあえずリュビリーナが離れてくれたしそれで良い。ポヨ令嬢も言いたいことがあるみたいだし話してみよう。

 

 

「ありがとな、ずっと引っかかってたんだわ」

 

「そうですか」

 

 

ドゥッガのことだろう。

 

大事な時にちゃんと言えなかったのはずっと心に引っかかっていたはずだ。

 

 

「なにか言いたげな顔だな」

 

「え、いえ。なんでもないです!!」

 

 

髭面マフィア……じゃない、白馬の王子様への気持ちはどうなったのかとか聞きたかった。が、女の勘か、何かを気付いたのだろう。手をワキワキさせたので何も言わないでおく。なぜわかるのか?

 

エール先生も止めてほしいものだがこういう害がない触れ合いはエール先生的には許容範囲のようで助けてもらえない。

 

身体能力の差は年齢的に歴然で、膝の上から逃げようとしたのだが一瞬で脇に手を入れられてしまった。

 

 

「……え?」

 

「ほんとにな……感謝してるんだ」

 

 

両脇に手を突っ込まれ、くすぐられるかと思ったが引き寄せられてしまった。

 

手はお腹に回されて後ろから抱きしめられ、肩のあたりに頭が載せられた。

 

 

「俺はフレーミスを裏切ったりしねぇ。だからさ、少しぐらい頼ってくれても良いんだからな」

 

「ありがとうございます」

 

「ん……まぁ、これからもよろしく頼むわ。考えたんだが俺のことはミィアと呼んで欲しい。特別だかんな……それとパキスってやつのことは知ってっか?」

 

 

耳元で言われて少しくすぐったい。

 

彼女のフルネームはオギャース・ミィア・ゥウー・ハウアウ・ポヨ。ファーストネームがオギャースであり、名前の由来は彼女が赤ちゃんの頃の鳴き声からつけられていて彼女はこの名前を気に入っていないため……これを言うともはや戦争である。

 

だからか本人も嫌っていてセカンドネームから愛称で呼んでほしいとのことだ。

 

本当に気に入られたらしい。私も彼女の裏表のない部分は好きな気がする。

 

くすぐってくるのはあれだけどわかりやすいし、前世の私からすればツンデレなギャルと言うか不良というか。年齢の少し離れたひねた子って感じがしてとても可愛らしく感じている。

 

もうひとり、りゅびりーなってこがいるけどあれはまだちょっとこわいなぁ。

 

 

「パキスですか?」

 

「あぁ、まぁ、なんだ、縁があってな。夢に入るまで聞かせてくれ」

 

「わかりました」

 

 

パキスと言えば、忘れることも出来ない。不意に私の意識が急浮上したときに一緒にいた少年で、暴力上司である。

 

色々揉めたこともあるけど彼も学園に来ていて貴族としての道を歩んでいる。エール先生の報告によればモーモスと仲が良く、学園では戦闘に限って言えば教官を倒すこともあるがルールを全く守れていないため単位は全然取れていなかったが複数の教師をつけて改善しているようだ。

 

クラルス先生に暗部の動き方を学んだりしつつも私の周りをうろちょろしていると報告が上がってきている。

 

警備のぎりぎり外でうろちょろされたりと迷惑ではあるが筆頭家臣であるドゥッガの息子であり、土の大家ドゥラッゲン家の分家跡取りと決まっていることもある。

 

私と敵対している人の情報を勝手に持ってきてローガンやモーモスに伝えるなど何かと役に立つ動きをしているそうだ。頑なに私のもとに挨拶に来ないため何がしたいかわからないしとても邪魔でもあるそうで……エール先生やジュリオンからは一度折檻したいと言う要望も出てきている。

 

まぁどんな人物かと言えば……私の路地裏時代から話す他無く、素直にそのまま話した。

 

 

「……クズじゃねーか」

 

「まぁ最近は何やら頑張っているようです」

 

 

その「頑張る原動力」が私に対しての恨みじゃなかったらいいんだけどなー。

 

話していると眠くなってきた。

 

今私がしないといけないことは第一に「ライアームの子息と他国の姫君のお迎え」で、次に「領地の確認と運営」である。

 

どこにいるかもわからないライアームの息子たちはいつ来るかもわからないし緊急性はない。だからもっと人任せにしていたほうが良いのかもしれない。お見合い参加者の目もあるしね。

 

領に帰れば仕事が沢山あるとはわかっていたし、色々大変だったこともあって疲れた。幼女ボデーには休息が必要なのだ……まだまだ仕事はあるけど。

 

でも私が頑張ることで、私のしたいことが出来ている気もして、頑張ろうと思えるしやってしまう。机で寝てしまうこともあるが、こうやって人の体温を感じると手足が動かしたくても動かせないように、抗えない眠気にまどろんでしまう。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

夢で家族と会うのだけどそれぞれ別のことを話す。

 

父さんは思いつく便利そうな技術を印刷して見せてくれる。母さんは料理について教えてくれて、妹は私が知りたい事を調べ直してくれる。弟は……まぁなんか今度調べてくれるらしい。筋トレ方法とかだけ詳しい。

 

妹は美容師になっていて、メイクやネイル、エステなどの美容についても私以上に詳しくなっていた。弟はサラリーマンをしながらなんかムキムキになっている。

 

弟は私が死んでなにか思うことがあったのか、ひょろひょろガリガリからプロテイン愛飲者となったそうだ。

 

 

「姉ちゃん昔から力もないのに頭突っ込むことあったからな。まぁそれもいいところっていうか、でも……姉ちゃんの友達も葬式で泣いてたよ」

 

「言われても微妙な自分の葬式話」

 

「おねーちゃん、そう言えば水について調べてみたんだけど酸素はOが一つじゃなくてOが2つで酸素なんだって」

 

「え、そうなんだ?!」

 

 

私の雑な理系知識ではH₂Oから出るのは酸素(O)と水素(H₂)であり、後は身近な消毒剤兼洗濯用薬品である過酸化水素(H₂O₂)に強力な脱臭が出来るオゾン(O₃)だけである。

 

酸素はO₂が正しかったようである。化学式と元素記号で違う?一緒じゃなかったようだ。

 

 

「それとさ、調べてみると重酸素と重水素っていうOとHがたくさんつくものもあったんだけどなんか危険っぽいから出さないほうが良いと思う。なんか核とか原子力っぽかった」

 

「水が……??」

 

 

水に超高圧を当てれば固形化したり、水の中で激しい動きがあれば光ったりして熱を発生させることが出来るのだとか…………水の話だよね?シャコのパンチ?太陽のような超高熱??なにそれ???

 

妹に無知をさらすようでとても恥ずかしいのだが私が生きるための知識である。私の専門分野はあくまで経済であり、科学知識が専門というわけではない。

 

それに妹は姉である私を馬鹿にするようなこともしないし教えてくれる。むしろ過酸化水素(H₂O₂)のような洗剤や消毒液になるものやオゾン(O₃)の活用法を知っていることをたたえてくれた。姉の面目は立ったのである。撫でられてはいるが。

 

妹は髪のセットをたくさんしてあげたこととちゃんと働いて家にお金を入れていたこのおねーちゃんを尊敬していたようである。ちょっとぐらいの知らないは仕方ないよねで済ませてくれる。…………ほんのちょっと、もうちょっとだけ勉強するべきだったと後悔。

 

弟はなにやら居心地が悪そうである。

 

私と妹が話していて、ポヨ令嬢、いやミィアと弟は無言でいる。

 

ミィアは日本語はわからないからコミュニケーションが取れないから仕方ない。

 

母さんと私に妹と弟で服を買いに行って父から「女子の会話に口を挟む愚かさ」を教わったからか弟はこういう時おとなしい。

 

服選びを3分で済ませて会計するのだからちょっと信じられない。私もめんどくさがって仕事用には同じような服を買っちゃってたけど。『誰かと服を選ぶことが楽しい』のであってその時間を「サイズが合えば良い」「着れればいい」で済ませてはいけないのだ。

 

ミィアに声をかけてやることもあるが…………弟はなんか筋トレを始めた。果たしてこの場での筋トレに効果はあるのだろうか。

 

 

妹に色々聞いてみたが妹の考えた水の利用法は結構やばかった。体内、それも三半規管のような少しでも水が入るとまずい場所に一気に水を出せば良いんじゃないかとか、体の水分を凍らせればとか……妹にも物騒な世界だということは伝えたため考えてくれたのだろうが残念ながらそれは出来ない。

 

自分の近くほど魔法は出しやすい。魔法を発生させる範囲は自分を中心としたものであり、他人には他人の領域がある。別の属性でも、魔法は使えなくてもそれはあって身体の中にまでは発生はさせられない。空いた口に押し込んだりならできるけど発生は無理。「ならば目の直ぐ前に剣山みたいな氷を出せば」と言われた。妹の発想が怖い。

 

しかし相手の領域には差があるし、可能な場合もあるかもしれないな。

 

後は妹がお金になるんじゃないかというアイデアをくれた。ネイルをする手順やこんな道具があるよと……残念ながら殆どは再現はできないだろう。

 

ジェルネイルやUVライトによる硬化は私も知っているがそもそもそういう便利そうな道具が無いと思う。

 

ただ、様々な薬品を爪に直接塗るのは健康上のリスクもあったり、調べるのも大変だが……爪の形に合わせて予め何種類も作っておいてそれを接着するやり方であればベースとなる付け爪と爪に付ける接着剤だけでも商売になるかもしれない。後はサイズに合わせてある程度削るのとツヤ出しが出来るコーティング剤があればそれで商売になるんじゃないかと……。うん、そっちは出来る気がする。

 

簡単に使えそうな知識をまとめてアイロンプリントしてくれるそうだ。

 

 

「それでポヨさんにもやってあげて欲しい」

 

「ん?」

 

 

急にポヨさんと言われてなんのことかと思った。

 

 

「だって私たちはポヨさんになんのお礼もできないからね。ポヨさん、ありがとうございます」

 

 

妹は良く気がつくいい子だ。ポヨ令嬢のことを気を遣っての提案でもあるのだろう。

 

妹は直ぐ横にいるポヨ令嬢に向かってお礼を言った。

 

 

「呼んだか?」

 

「はい、妹がポヨ令嬢に今度付け爪をしてあげてほしいって、それとお礼を言っています」

 

「まぁ何だ。俺もちょっと疲れるだけだしな。礼もらってるし」

 

 

後頭部を掻きつつ少し照れている様子のポヨ令嬢。お酒は渡しているがそれ以上のものをもらっている。

 

そう言えば聞きたいことがあった。

 

 

「そう言えばなんで私に良くしてくれるんですか?」

 

「あ、あぁ……まぁあれだ。――――――家族に会えねぇのはつれぇからな」

 

 

 




祝日挟んで月曜日か火曜日の感覚でした(;´Д`)曜日見てビックリ
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