水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第332話 パキス❀オギャース

 

ドゥッガと会えて、胸の内が落ち着くかと思ったら落ち着かない。

 

恋い焦がれていた相手……それも探していても見つからなかった相手だ。

 

 

「……おい」

 

「何でしょう」

 

「フレーミスに何か贈れ」

 

「はい。――――……しかし、ここのところ毎日ですが」

 

「礼だ。贈れ」

 

「かしこまりました」

 

 

しかし、ドゥッガは私のことなぞ興味もなかった。その点は胸が少し痛むがそれでこそドゥッガだ。

 

無骨で格好良くて、力強くて、堂々としていて――――宮廷のなよっちい男共とはまるで別。

 

相手にされていなくても、それはそれで良い。

 

多分、フレーミスの言っていた『オシカツ』というものかもしれない。

 

夢の中で異世界について教えてくれて、それは好きな活動をしている対象を応援することらしい。聞いてみると歌や舞踊が得意な人物や物を作る職人や画家を支援することらしい。

 

フレーミスは様々な活動をしている才人をオシカツしようとしているのだろう。そういう支援や援助は貴族では普通だし、きっとフレーミスは異世界では貴族だったのだろうな。

 

ドゥッガの息子の情報をセルティーやラズリーに調べてもらっているが、早く報告が上がらないか気になって仕方がない。

 

うちの人間だったらへーかとの間の邪魔になるドゥッガの情報なんて絶対に上がってこないからな。

 

 

「競馬に行ってくる」

 

「では護衛に声をかけますね」

 

「いらねぇ」

 

「お、おまちをっ!?」

 

 

一言告げて窓から逃げた。

 

競馬場には何日か通って仕事はした。

 

このリゾートと呼ばれる休養地はそもそも外国から来る豪商を相手に作ったものらしい。海に面して大きな港のあるリヴァイアスは交易が盛んなこともあって、人の出入りが激しい。

 

彼らの移動方法と言えば船で、その船は馬車と同じく使っていれば損耗する。

 

だから船を修繕する間ここに居てもらうことで無用な争いを避けるようにしているのだそうだ。

 

リヴァイアスは交易のみならず「拳闘」や「競馬」、それに「賭場」に「競売」でも盛り上がっている。

 

他国から来る貴族や豪商はこの地に商売をしに来ているが、拳闘や競馬も人気らしい。

 

拳闘はドゥッガとディーンの闘いで納得だが……競馬も派手で、気合が入っていた。

 

馬といえば移動手段としてはよくあるものだし、貴族は良い馬を自慢するものだ。……ここに来る人間にとっても同じようで、馬を自慢しにわざわざ連れてきて競争する。馬以外にも様々な騎獣もいて、様々な競技を行っている。

 

リゾート地近くにある競馬場には俺等もよく足を運んでいるが……面白くて仕方ない。

 

様々な騎獣が何かしらの競技で一番を目指して競う。騎手は居ても獣であるし、混合競争なんかではよく事故も起きている。それでも多くの商人や貴族が一番になろうと誇りをかけて全力で競うが、その姿は男らしいし胸が熱くなってくる。

 

勝てば騎手と騎獣の持ち主は賞金が出るし、会場に集まった人に宣伝も出来る。

 

賭けも派手で大声で馬や騎手や商会を応援しているし、熱狂とも言える。

 

競い方も様々で速さを競うのも人気だが、「障害物を避けて走る」「重い荷を牽く」「一度の跳躍の距離」なんてのもあったり……貴族らしく、毛並みや美しさを競うなんて競技もある。

 

王都から連れてこられたお見合い参加者も何故か騎乗していることがある。奴らは賭けに負けすぎて騎手や騎獣の世話なんかをして稼いでいるそうな……世知辛いな。

 

ポヨ家として勝っても負けてもいいから豪勢に金を賭けた方が力を見せつけられると言われていたしここ数日大いに賭けた。賭けて――――何か、勝った。

 

適当になんとなーく鱗や毛並みや顔つきで選んでいただけなのだが、結構な大勝ちをした。

 

賭け方も「二番目に勝ちそうな顔だからこいつは二番目」とか、「こいつらこの順で勝ちそうだからー」と、適当に選んだら何か当たった。

 

運営しているフレーミスには少し申し訳ない気もするが、その分目利きの従者には競売に行かせて贈り物になりそうな良品を探す。ここまでの大勝ちをしては周りの奴らに陰口を叩かれかねなかったしな。

 

そもそも使えばいいだけのはずだったんだが……まぁ負けるよりは良いか。

 

何日か競馬に通っていたし、きっと今日も競馬場に行くと思うはずだ。闇で身を隠し、護衛と従者を撒いてラズリーの部屋に向かう。

 

 

「今忙しい!後にし……良く来たな!おい、誰か席をあけろ!」

 

「嫌でーす。今、手が離せませーん」

「…………ブツブツブツブツ」

「新しい魔導具だ!俺が調べる!」

 

「うわぁ……」

 

 

仮にもこのリゾート地は豪商や貴族用の休養地で、他国の賓客も招けるように豪勢な作りとなっている。

 

豪勢な家具を使われているのだが……きったないなぁ。

 

ラズリーに割り振られた部屋は物で溢れかえっている。床には本が、椅子には魔導具が、机にもよくわからない無い道具で溢れている。床で膨らんでいる布切れをかけられているのは寝ている貴族だろう。魔導省ではよく見る光景だな。

 

手土産に部屋から持ってきた競売で買った瓶の魔導具を渡し、椅子の上のよくわからんものを退けて座る。

 

 

「おぉこれは!エルフの作る調度品だな!効果は……光るだけか?一体これに何の効果が……」

 

「貴族向けでは?奴ら光ってたらなんでに高く買いますし」

「傷直しではないでしょうか?今は傷がないから光るだけかもしれませんがエルフは物を大事にしますし」

「いやー、何か注いでから魔力を通せば良いのでは?」

 

「ラズリー……お前なぁ、まぁ良い。報告書だ」

 

 

俺が来たってのに、誰もまともに相手にしやがらねぇ。いつも通りと言えばいつも通りだし、それがこいつの良い部分でもあるのだが。

 

フレーミスのもとには数多くの魔導具が集まっているのにそれらを検査するような人材は居なかった。だからこそフレーミスはこいつに任せたのだろうが……ラズリーは王宮よりも楽しげにしているな。よく見たら床で寝てるの大賢者ユーススじゃねぇかっ!!?

 

 

「報告、何のだね?」

 

「……ドゥッガの息子の情報だ」

 

「誰?」

 

「おい」

 

「あー待て待て!拳を下ろせ!!頼まれた人物なら既に調べた!覚える必要もないと思って記憶しなかっただけだ!」

 

 

こいつ、たまに締めておかないと色々やらかす。

 

ただいつもと違って覚えていたし、資料らしきものを渡してきたので拳の出番はなかった。

 

一度なんて「髪染めの画期的な道具だ」なんて渡されたものが爆破して髪がチリチリになったからな……。しかも王宮中に「髪で悩む男性も女性も多い!ならばこれで予算が増額だ!フハハハハ!」なんて高笑いして配って……事故が多発したのは忘れられそうにない。上級貴族の髪が皆チリチリになっていたからな。

 

 

「これこれ、吾輩仕事に戻る!ここにはたくさんの魔導具が集まっていてな!交易というのは素晴らしい!これだけの魔導具や珍品!研究に必要な資材が集まるなんて!!」

 

「おう、ありがとな」

 

 

何か盛り上がってるラズリーだが、礼を言って渡された資料を読む。

 

これまでにもフレーミスの周りなら調べたことはあるが……いくつか別の視点で調べるのは大切だ。

 

昔は「王都は安全で、貴族に逆らうなど城下ではありえない」なんて貴族の言うことを信じていたからな。おかげで酷い目にもあって……ドゥッガにも出会えたわけだが。

 

 

しかし、ドゥッガの息子は多いな。

 

 

レルケフかトルニーが同時期に生まれてどちらが長男かは不明。

 

レルケフは暴力的な男と有名だったが、反旗を翻して学園で暴れて行方不明。腹を刺されたことで死亡と考えられている。

 

トルニーは呼吸のしにくい病とかで背丈はあるものの病弱だった。ドゥッガの部下と共に国内外で行商を行い、商売人としてかなりの勢力を築き、ドゥッガの役に立つ。病弱な部分はフレーミスにより治療済み。鳥のような嘴の付いた石仮面をつけるのは中に薬液を入れて呼吸するためで……調べたところ何でも合理的だからやっているそうだ。筋肉は治療後ついたらしい。

 

ゴムの開発は樹木と草の液を混合して作られるがその苗をフレーミスに差し出した人物。ゴムを使っての署名や書類の定型項目などを「印刷」するなど、ラズリー研究員とは別のやり方で同じ内容の印刷を実現している。

 

武器や防具、雨具に寝具、建築用資材に靴底、更に鉄道用緩衝材などにもゴムは使われている。彼は「フレーミス様から教わったものを作っている」と述べていたが謙遜だろう。

 

普段は肩の上にフレーミスが乗れる用に背もたれ付きの椅子に手すりのようなものを装着できるようにするなど、忠義にも厚く、良い人物のようにも思える。好青年。

 

 

――――……トルニーの情報はレルケフに比べて詳しいな。紙をめくっていくと何故か理解した。

 

 

『現在トルニーは魔導省にてゴムの開発者として研究開発をしている』

 

 

なるほど、ラズリーは子飼いの情報屋もいるが基本的に魔導省伝手に情報を得ているし、これなら納得である。

 

 

アレイとコルコトは調べてもトルニーから証言でも賊に近い存在で、あまりにも気性が荒い。そのためドゥッガも貴族としての教育は出来ずにいる。ただ商売は上手いようで、ドゥッガの商会ではドゥッガ不在となったが経営は崩れていない。

 

ゴッフは自由な人物で商売も暴力も出来なかったが、絵を描くのが好きだった。所在不明だがたまにドゥッガのもとには生存報告の手紙が届くらしい。

 

ミュラード、女神だか女の精霊だか名前からつけられているとかで自身の名を嫌っている。通称ミュード。幼い頃から上の兄たちにはこの名前でいじられ、たまにキレていた。苦労人で部下や賭場のことをよく見ていて問題を解決する。ただし小者であり、自分からなにかしようとすることはほとんど無い。ドゥッガを恐れている。

 

末のパキス……フレーミスにも聞いていたがこのパキスってやつはたまに見たな。フレーミスの周りをチョロチョロしているガキで、フレーミスよりは大きい。

 

ドゥッガ・ドゥラッゲンの末の息子だが双子のバーサル・ドゥラッゲンの養子となる。フレーミスが爵位を得る前の上役でフレーミスにも暴行していた。元は粗暴としか言いようのない人物であったが、岩殻や岩竜、岩雪崩などの二つ名で呼ばれているダワシ・ドゥラッゲンに養育される。しかし、今代最強の土魔法使いとされるダワシの教育のためか、「礼儀」よりも「強さ」を重んじている傾向が見て取れる。学園では年上の騎士候補生であろうと打倒し、上級生複数人による制裁がされるも逆に全員配下に置く。身体能力強化と土魔法が得意。風のボーレーアス家の長子モーモス・ユージリ・バーバクガス・ゴカッツ・ニンニーグ・ボーレーアスとは仲が良く、よく共に勉学に勤しんでいる。貴族教育を受け始めたばかりのためか成績はよろしくない。クラルス女史の元、薬学や情報収集、宮廷貴族の弱みの握り方など学ぶ。フレーミス暗殺のためではないかという疑念あり。ドゥッガ・ドゥラッゲンとは非常に仲が悪い。母親ラキスが病床になった際、ドゥッガが治療費の支払いを拒否したため。ただし、この諍いは母親ラキスがドゥッガからの治療費を受け取らなかったゆえに発生。基本的にフレーミスについて回っている。理由は不明だがフレーミスへの恋心ではないかという推察がされている。

 

 

――――こいつだな。俺と仮面女との喧嘩を邪魔して……俺の胸を見たかもしれないのは。

 

フレーミスにだけ見つからないように動き回ってるからよく目立つ。今度捕まえてみるか。

 




感想見て笑いました。スク水フリムちゃん何故か人気ww

コメントありがとうございます(*´ω`*)
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