水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第333話 故郷∈リヴァイアス

 

「お仕事ご苦労さまです」

 

「いえ、休暇でした」

 

「…………」

 

「…………」

 

 

あくまで休暇だったと言いたいらしい。

 

ジュリオンが帰ってきた。休暇と言いつつもリヴァイアスに巣食っていた悪党を撃滅していたらしい。

 

アモスが帰ってくる前だったし、アモスが真っ当な統治が出来るように泥をかぶったのかもしれないな。

 

もともと精霊リヴァイアスからの加護を得ようとしていたアモスだからこそ、正しいことであったとしても強い行動は「越権行為」や「反逆のための活動」に見えかねない部分もある。

 

社内政治みたいである。いや、人が集まって集団を作ればこういうこともあるものかもしれない。

 

 

「ではまた祭りがあるので移動しましょう」

 

「はいっ!」

 

 

とはいえ定期的に行われるようなお祭りではない。アモスが大きな魔獣を討伐して角を持ってきたため労うためだ。

 

 

「村の防衛!……と建物よりも大きな魔獣の討伐!ご苦労さまです!」

 

「いえ、フレーミス様からの支援あってこその討伐でした!」

 

 

一般の人にはなんで祭りをやっているのか知らない人もいるし、大声でアモスを出迎えてねぎらいの言葉を伝えた。

 

アモスもわかっているのだろう。かなり声が大きめである。

 

 

「これが魔獣の角と核です!!元は俺よりも大きな角だったのですがここに来るまでにしぼんでしまいましたが献上いたします!!」

 

「ありがとうございます!困難な状況でも最後まで村を守り抜いたその働き!リヴァイアスの誇りです!!」

 

 

あれ、言い過ぎたか。

 

何か盛り上がるよりも泣いている兵がいるんだが……泣くならこんな大声で叫ぶように言っている場面以外で泣いてもらいたい。

 

まぁ感じ入っているのなら良いかな……だって、こう、ブラックな労働環境での悔し涙とかじゃないはずだし。

 

 

「宴を楽しんでください!勇敢なリヴァイアスの兵に乾杯!!」

 

「「「うぉおおおお」」」

 

「――――……ありがたく」

 

 

うまくやれただろうか。振り向くとエール先生は私を、ジュリオンはアモスを見て何か感動しているっぽい。

 

なんか気恥ずかしい。

 

肉と酒を振る舞っているので私も見て回る。ジュリオンの肩に乗って。

 

ジュリオンがやけに美味しい肉の串を渡してくれたのは良いんだけど、人の肩に乗って食事ってどうなんだろうか。

 

 

「お気になさらず、行軍などでこういう場面もありますでしょうし」

 

「はい」

 

 

凄く食べにくい気もしたが、ジュリオンが選ぶ料理はどれも美味しかった。

 

美味しい料理を作る料理人と知っているのか、それとも鼻がいいのか。

 

一件だけ、行って良いのか行かないほうが良いのかわからない変な屋台があった。

 

大きな鬼のディーンと、仏頂面のドゥッガと、顔を完全に隠している子供が働いている。

 

 

「何やってるんですか?」

 

「いや、働いてたんだが……領主様と働いていた将軍様に串一つ作ってあげられないのか?なんて言われてな。作ることにした」

 

 

部下たちの統率のためにも屋台を出しているのだろうか……よくわからないが、それで良いのかドゥッガ。

 

 

「……どうぞ」

 

「ありがとうございます」

 

 

ディーンが後ろで肉を切って刺し、ドゥッガが焼いて……多分パキスが差し出してきた。

 

食べてみるとちょっと味が強い。にんにくのような香味野菜を揚げたチップが焼けた塩辛い肉にまぶしてあって……凄まじく暴力的な味をしている。体に悪いとわかっていても食べきっちゃう味。

 

お酒と一緒に食べるための肉だな。アモスや兵士は出したお酒を飲んでいるし、塩辛いのも肉体労働後なら良いのかもしれない。

 

 

「美味しいです」

 

「……あざす」

 

 

パキスも何がしたいのか……前も見えないだろうに、そこまで顔を見せたくないのか?

 

まぁ殴りかかってくるよりは良いかな。

 

 

「こーちょーせんせー!これもこれも!」

 

「ありがとうございます。でも私が食べるには大きいので一口だけです」

 

「やりぃ!」

「ずるい!私のも!!」

「これ!うちの畑で作ったんです!」

 

 

子どもたちが寄ってきた。

 

噴水の縁にジュリオンは座り、下ろしてもらう。生徒たちから食べ物をもらった。

 

キャッキャと差し出した食べ物を食べている私の反応を見ては楽しんでいる様子の無邪気な子どもたち。

 

 

「――――フレーミス様には、この領地を好きになってもらいたいです」

 

 

ジュリオンが何か言ってきた。

 

 

「私はこの領地が好きですよ?」

 

「ではもっともっと好きになってもらいたいです!王都になんて行かなくとも良いように!」

 

 

私からすれば王都にずっといたからか、王都は故郷と言った気持ちが少しはあった。

 

けれどもジュリオンからすればここが故郷で……私にもそう思ってもらいたいようだ。

 

エール先生は若干微妙な顔をしている。エール先生なら王都が故郷のように思っているのかもしれない。

 

 

「ふふっ、私は平穏無事で生きられるならどちらでも良い気もしますが……」

 

「が?」

 

「子供が安心して笑っていられる。そんな場所を作るのも良いかもしれませんね」

 

 

何処で生きるのか。

 

将来のことを考えれば……この場所も良いかもしれない。

 

自分の居場所は何処か、それは周りの環境や自分の気の持ちよう次第なのかもしれないな。というかまだまだ貴族社会に振り回されている私だし、私の一存でどうにかなるかはわからないんだけどね。

 

 

「せんせー遊び教えてー!」

「勉強知りたい!」

「おにくもっといりませんか?」

 

「ふむ……では遊びを教えて、勉強を教えて、お肉はその後に食べましょう」

 

 

たまには……少し休んで子どもたちと向き合ってみたり――――こんな日もあっていいだろう。

 

鬼ごっこと泥警を教えようとして諦めた。なにせ「鬼」という種族がいるため「鬼ごっこ」で伝えれば差別が生みかねない。

 

そして泥警、前世では警泥と逆に呼ぶ地域もあるかもしれない。

 

どちらでも良いけど、警察は捕まえる役で泥棒は逃げる役だ。警察は兵と言い換えても良いかもしれないけど、こちらの倫理的に遊びが遊びで済まなくなる可能性がある。そもそも泥棒がいれば捕まえて手を切り落とすぐらいならやりかねない世界のため、そういう「キャッキャと笑って泥棒役をする」という遊び自体が親御さんからすれば不謹慎になりかねない。

 

 

「うむむむむむ」

 

「せんせー固まったー」

「考えてるみたいですね」

「邪魔しないようにしましょう」

 

「「「はーい」」」

 

 

前世でこそ「これはこういう遊びだった」という事が伝わるが、この世界で「泥棒と警察やってるのー」なんて子供が親に伝えれば何か勘違いしてとんでもないことになりかねない。しかもこの子たちは統一された種族ではない。そのため身体的な能力に差がありすぎて仲間はずれや喧嘩が起こる可能性すらある。鳥人なんて飛んで逃げれば絶対負けないじゃないか……。考えろ、考えるんだ私……。なにか、とにかく平和で誰も怪我しないやつが良いけどなにかないか!!?

 

 

「とりあえず普段どんな遊びをしてるのか教えてもらっていいですか?」

 

「うん!」

 

 

むしろ教えてもらうこととなった。

 

まずは槍投げ。木の棒を的に向かって投げる。的に近い場所に当たるほど得点は高い。やっていると腕自慢の大人も来て指導し始める。何か物騒。

 

石投げ、槍投げとほぼ同じ。ただこっちはたまに石が砕けて危ない。力凄いな。

 

魔法による的あて。血統魔法とかで牙や爪の先に魔力を固めた何かで攻撃して的を壊したり的を狙う遊び。ここまで全部物騒。

 

 

これらは学校教育でもやっているそうだ。

 

 

「最近のはやりはこれー」

 

「なんですかこれ?」

 

「ゴム球!でもたまに怒られる」

 

 

バレーボールほどの私には少し重いゴム球。これを遠投したり、人にぶつけ合いをしたりしているらしい。よく弾むが、街でやると何かを壊したり、角に刺さると抜けなくなるので危険。

 

 

「じゃあサッカーでどうでしょう」

 

「サッカー?」

 

 

少し離れた広場でやってみせる。

 

ボールをゴールに蹴って入れれば1ポイント。

 

ゴールを設定し、ゴールには手を使っても良いキーパーを配置、他の参加者はボールを蹴る。……普通にサッカーだな。接触しやすいコンタクトスポーツのため、暴力的にならないように言いつけておく。空を飛んでボールを保持するのは禁止。

 

ただルールは言葉では伝えにくかったので水を使ったミニフリムとゴールを作り出して見せてみると子どもたちは理解したのか……ボルッソの子供がボールポストを作って――――何か残像が見えそうなスピードでやり始めた。

 

オフサイドとかもないし、参加は怖いので審判に回る。

 

 

「こらそこー!服を掴んで倒すとかは反則!基本的に手を使っちゃ駄目ー!」

 

「そこ!ボールを咥えて移動は駄目!」

 

「そこ!……角の間にボールが挟まった?そのままは駄目かな。うん、そうじゃないと皆頭狙って蹴ったりしてきて危ないからね。え?外れないの??」

 

 

ちょっと予想外な部分も多いが、皆激しく動き回ってくれる。

 

特に面白いのが空を飛ぶ鳥人と、亜人達による超人的な移動方法だ。

 

鳥人の存在によってより立体的にボールのパスがされて軌道が予測できない。亜人は壁や味方のサポートで飛び上がってボールを獲得する。足の間でボールって挟んで……そんな取り方して良いんだっけ……。

 

 

「良いですか!手を使っちゃいけません!相手を引っ張ったり掴むのもダメ!キーパーの、最後の守護者だけは手を使ってもいいです!相手に怪我をさせたり、偶然じゃなくぶつかったりするなら守護者と一対一でやってもらいます!強い相手だからこそ卑怯な手を使わずに相手に勝つこと!仲間と協力すること!」

 

「「「はーい」」」

 

 

審判なのに、周りがあまりにも速いし怪我しそうになるから魔法を使うことになって…………泥だらけになってしまった。

 




この作品は3つのサイトに投稿してますが全部に評価してくれてる方ありがとうございます。評価が分散してる気がしないでもないので助かります(*´ω`*)

そう言えばカドカワBOOKS(書籍を出してるレーベル)の方には9周年や10周年SS(短編)もあったりします。おすすめ!
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