水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第343話 自室凸エール

 

状況を整理し、作戦を考えてみたが……あまりよろしくはない話が出てきた。

 

エルフとは同盟関係であるがオベイロスよりもエルフの国の方が力がある。めったにないことだけど要請されれば断ることは出来ないそうだ。

 

 

「従わなかったらどうなるんです?」

 

「王がすげ替えられたことはあるのぉ」

 

「それはよろしく無いですね」

 

 

しかもエルフにも階級があり、その中でもスーリは明らかに上位に位置する。

 

それは何かしらの要請をオベイロスに出せる立場という可能性が高い。

 

 

「そもそも狙いはなんでしょうか?」

 

「わからんの……高位の存在、人よりも明らかに位が上の存在にとって人など玩具よ。人を戯れで壊すこともあれば国を滅ぼした記録も多々ある」

 

 

嫌な存在だな。

 

 

「それに……やり口がおかしいの。そもそも強い存在であるからして小細工のようなことはしないのじゃ。なのに賢者フリムと姿を入れ替えておる。そこに意味があるのやもしれんな」

 

「予測でもいいのでユース老先生はスーリの目的はなんだと思いますか?」

 

「……うぅむ」

 

 

悩んでいるユース老先生。

 

意味がわからない状況だ。でもたしかに違和感がある。

 

上位存在はそもそも力を持つし、なにかやりたいことがあるのなら小細工をする必要がない。それにスーリの立場であれば他のエルフに命じれば国ぐるみでそれが実行される。出来ないことはほとんどないだろう。

 

なのに「リヴァイアスにいる」「自分を傷つけてみせてまで私と戦って本気で戦って欲しいと願った」「私を殺さなかった」「私となりかわって行動している」……どれも理由がわからない。

 

知見の広いユース老先生なら僅かでも予測が立てられると期待したのだけど考え込んでいるようだ。……水でも入れて少し待つか。

 

 

「爺、吾輩。思ったんだが」

 

「なんじゃ?」

 

「酒が欲しいんじゃないか?」

 

「――――は?」

 

「酒の中でも光るまでとなった精霊酒は精霊と竜、一部の高位ドワーフも求めると聞く。天使も悪魔も儀式に使うし、文献に載ってる通りなら古代巨人種も好んでいた」

 

「うぅぬ。……なら買えば良くないかの?」

 

「そういう『手段』や『過程』を理解不能な方法で進めるのも上位存在らしいやり方に思える」

 

「たしかにの……賢者フリム、何かを要求されたりしたことはあるかの?」

 

「ありません。スーリからは全力で戦えとだけで……そもそもスーリはお酒の存在を知っているのでしょうか?」

 

「……あっ、そ、そうか?吾輩知っている前提で話していたから」

 

 

少し胸を張って話していたラズリーさんだが一気に挙動不審になった。

 

 

「いえ、そういった考察は本当に助かります。スーリが何らかの方法でお酒を感知する方法があるのかもしれませんし、もしもお酒が目的なら渡しましょう。えと、心構えができました」

 

 

会議と同じだ。

 

ラズリーさんの「スーリの目的はお酒」というのは的はずれな意見だったかもしれないが可能性としてないわけじゃない。それよりも萎縮されて意見が出ない方が今は困る。

 

 

「そ、そうか?」

 

「他になにか可能性は考えられますか?」

 

「そ、そうだな。じゃあ仲良くなりたいんじゃないか?」

 

「…………というと?」

 

「その、だな。貴族にも位がある。それと同じで自分と同じぐらいの力を持たないと、付き合いができないこともある。だ、だから、試しているのでは?」

 

「なるほど?いやー、まぁ意味不明ですが、可能性はなくもないかもですね」

 

 

目を合わせると挙動不審なラズリーさんだけど……可能性はありうる。

 

我が国の上位存在である精霊も「花を咲かせるため」に地面を破壊し続けたという記録が残っている。

 

土壌さえできれば花が咲くだろうと精霊は思考し、その土地をフカフカにするために爆破。結果花は咲かなかったが大きな雑草が生えて……またその土壌を爆破。好みの花が咲くまで続けようとその地ではその土地は定期的に破壊されていたことがあるそうだ。

 

その土地の領主は精霊の行動に恐れ慄きシャルルに通報。王として精霊の問題を解決する役目のあるシャルルはその問題解決のために出動した。シャルルはその精霊と接触して花の種を植えて解決したそうだ。

 

精霊を含む上位存在は何をするのか全くわからないし、人の物差しで考えれば疲れるだけと話してくれたことがある。その精霊と契約していた領主も「精霊が地面が爆破し続けて言うことを聞かない」と嘆いていたそうだけど……契約していてもその相手の都合など関係なく自分の勝手を押し付け、理解できない行動を取ることもある。

 

……うちのオルカスもゴスゴス来るからなぁ。肋骨の痛みは忘れられない。

 

 

理由はわからないが、意見を出し合っても「侯爵領になにかあるかもしれない」とか「シャルトル陛下との子を作ろうとしている」とか「もしかして目的はジュリオンやドゥッガではないか」とか……答えは出ない。

 

しかし「とにかく何らかの目的がありそう」ということだけは理解した。

 

相手の対応次第でこちらがどう動くか話し合ったうえで――――城の隠し通路を使った。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「エール先生、私がわかりますか?」

 

 

もっと何日もかけて綿密に作戦を練ったほうが良いのかもしれない。だけど、今はスーリが帰ってきたという情報もない。

 

ならばそれはチャンスと思えた。

 

こちらはスーリを倒したいわけじゃない。私の目的は私の大切な人を取り戻したいんであってスーリに復讐することが主目的ではない。

 

 

「…………」

 

「あの――――エール先生?」

 

 

本来なら脱出のために使われる隠し通路から侵入し、城の自室に行くとエール先生がいた。

 

照明の魔導具を使うようなこともなく、暗い部屋で座ったまま俯いていて……私の声が届いていない。

 

寝ているわけでもないのに、返答がない。

 

異常な様子からスーリになにかされたのは明白で……思わず前に出ようとするとエルストラさんに強く抱きしめられた。前に出るのは危険と言いたいのだろう。

 

 

「――――……この、主を間違えるような不心得者め!!」

 

「ぐっ!?」

 

 

無防備だったエール先生は婆やさんの突然の攻撃に反応することも出来ずに殴り倒された。

 

婆やさんが音もなく前に出て、エール先生に向かって行き……なんと肘鉄を頭部に打ち込んだ。

 

そこは淑女らしく「手のひらで頬をパーンってやる」とかじゃないのか。上半身がブレるようなスピードで腰の入った肘鉄だった。私の出来ることで「超魔力水で怪我を治せる」って言った時にニッコリしていたが、だからってまさかここまでするか。

 

 

「――――あなたは、フリム様の、敵ですか?」

 

「何を今更……<風よ>」

 

 

もうこれはノックアウトだろうと思ったのに、エール先生はぬらりと立ち上がってこちらを見てそう聞いてきた。

 

私を見ているのに、どこか別の場所を見てそうな虚ろな目をしたエール先生。

 

杖を手に取ったエール先生。

 

 

「フリム様の敵は、排除しませんと」

 

「あまりに愚か。……仕方ないかもしれませんが――――目を覚まさないのならここで終わらせてあげましょう」

 

 

婆やさんが加速して接近するとエール先生も姿がブレるほどの速さで動き、攻撃を行ったはずの婆やさんのお腹に逆に膝蹴りを放った。

 

当たると思った膝蹴りだったけど、婆やさんは自身の身体を風でずらし片手で膝を受け流し、身体を回転させて肘でエール先生の顔面を狙った。

 

エール先生は膝蹴りを入れようとした体勢から杖を持っていない反対の腕で受け止めた。

 

エール先生の様子はおかしく、うごきはどこかぎこちない。対して婆やさんは年齢を感じさせず機敏な動きだ。

 

 

「「<風よ>」」

 

 

お互い崩れた体勢のまま、両者は身体が触れ合ってる距離から同時に杖を突きつけあい……風の塊を至近距離で放った。

 

互いに顔に向けて放った風の塊。二人とも首を横に曲げて避けたが二人の後ろの家具が吹っ飛び、大きな音を立てて壊れた。

 

エール先生に話しかける前に婆やさんの風の魔法で部屋の外に音が漏れないようにしていたが、家具の一つが入口のドアにぶつかった。

 

 

「なんだ?大きな音がしたぞ!」

 

 

説得は無理だった。できれば拉致したかったが……それも無理そうだな。

 




コメントいつも(/>ω<)/ありがとうございます✨️

|д゚)あ、レビューしてくれてもいいんですよ?(オネダリ)
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