水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第350話 僕彼⟚姉枝

 

「大丈夫ですか?フレーミス様、あぁこちらのフレーミス様も!」

 

「ジュ、ジュリオン殿……?」

 

 

ジュリオン殿は戦闘後のようで、目より上で出血していた。

 

それだけでも異常だが……ジュリオン殿はスーリのような、スーリからなにか生えたり、なにか足りないそれらをフリム殿と思っているようだった。

 

ふらふらと歩き回る個体、立ったままの個体、ジュリオン殿に寄り添うようにしている個体。

 

 

明らかに異常で、ゾッとする光景だ。

 

 

アモス殿は言葉を失っている。理解が出来ないのだろう。

 

 

「おぉ!アモスにイリア!二人もフレーミス様の守護につきなさい。二人がいれば心強いです」

 

「……義姉上、それらをフリム殿とでも?」

 

「もちろんです。スーリがなにかしたようで――――今なんと?」

 

 

ジュリオン殿はそこでゆらゆら立っているそれらをフリム殿と認識している。

 

 

「それらは、フリム殿ではありません」

 

「イリアもですか。アモスにはどう見えています?」

 

「……それはどう見たって、スーリだ。ねーちゃん、何があった?」

 

 

アモス殿はスーリの姿の異形から引き離したかったのだろう。ジュリオン殿の腕を掴んだ。

 

 

「――――そうですか、なら目を覚ましなさい!!」

 

 

軽く振り払うようにジュリオン殿が……アモス殿を壁に叩きつけた。

 

し、死んだんじゃないか!?

 

 

「ぐぁっ!?ねーちゃん!!?ふざけんなよっ!!!」

 

 

あ、全然大丈夫そうだ。

 

やれやれと追撃しようとするジュリオン殿と倒れたアモス殿の間に槍を挟む。

 

 

「言葉遣い……イリア?もしや貴女まで?」

 

「ジュリオン殿、いや、義姉上……今の貴女は正常ではない」

 

 

いつもと同じジュリオン殿だ。

 

だけど、何処か圧を感じる。

 

スーリのような異形がなにかしているのかとも考えられたが、何処を見ているのか……その場で身体を揺らしているだけで、何かをしているようには見えない。

 

 

「おかしなことを言いますね。貴女とはフレーミス様を守ろうと誓いあったはずですが?」

 

「おかしくなっているのは義姉上だ。それはフレーミス殿ではない。僕の目にも、アモス殿の目にも、別のなにかに見えています」

 

「……つまりは、二人は敵ということですね」

 

 

――――ガィン!!

 

 

「ゴルルルルァッ!!」

 

 

言い終わるかどうか、肩垂直に拳が振り下ろされた。

 

しかしアモス殿がそれを受け止め、そのまま身体を回転させて尻尾をジュリオン殿の足首に叩きつけた。

 

当たったと思った尻尾だったが、ジュリオン殿は軽く下がって避けていた。

 

 

「しょうがないですね。――――骨の数本、覚悟なさい」

 

「ゴルルル!!ねーちゃんこそ覚悟しろよな!!!」

 

「アモス殿……しかし」

 

「ここにねーちゃんがいるってことはフレーミス様が危険な目に合ってるかもしれない!!やるしかない!」

 

「たしかに……義姉上、お覚悟を!!」

 

 

ジュリオン殿には悪いが、怪我は後で治してもらえばいい。

 

この部屋に入るときにアモス殿は槍を手放して入ったためアモス殿は無手だ。

 

アモス殿と組み合うジュリオン殿に向かって槍を突く。

 

 

「邪魔ァっ!!」

 

 

ジュリオン殿の肩を狙ったが、アモス殿の体を掴んで動かされた。

 

アモス殿に当たりそうな槍を止めて慌てて下がる。この場で一番やってはいけないのは同士討ちだろう。

 

 

「ゴルルル!ここは無視して先に!」

 

 

アモス殿は先に行くように行っているのだろうけど、そもそも目的地が何処かもわからないし、こんな状態のジュリオン殿を無視することなど出来るはずもない。

 

目にも止まらぬ早さで殴り合う二人。壁も床も破壊し激しく殴り合っている。

 

軽く見える一撃ですら、壁だろうが床だろうが砕いている。一般的な兵では持ちこたえられないだろう。

 

なのにどちらの攻撃も意に介していない。

 

 

二人ともかなりの体格で――――かなり頑丈だ。

 

 

膂力はジュリオン殿の方が勝っているが、アモス殿の方が頑丈。そしてジュリオン殿の方が強い。これはリヴァイアスの兵では常識だが……聞いていたようにジュリオン殿の圧勝で終わってはいない。

 

元々ジュリオン殿は出血していたし、汚れからして既に何かと戦っていたようだ。

 

アモス殿の腹に膝蹴りが入ったがアモス殿はその膝を抱えるようにしてジュリオン殿の脇腹に殴りつけた。

 

アモス殿の剛腕は大男でも一撃で倒す。なのに、ジュリオン殿は意に介さぬと言わんばかりに頭に向かって横から肘を打ち込んだ。

 

首がもげそうな、重みのある一撃。

 

アモス殿は頭を下げて避け、ジュリオン殿の血に濡れた左目側に軽く一歩踏み込んだ。

 

おそらく血でアモス殿を見失ったジュリオン殿は拳を振るうも大きく外した。

 

ほんの僅かに下がったアモス殿はジュリオン殿が死に体となったところに渾身の一撃を頬にいれた。

 

酷く鈍い音が響き……終わったかと思ったが……ジュリオン殿は倒れそうな身体を起こし、即座にアモス殿の顔面に一撃を加えた。

 

 

「「――――ゴルルルルッ!!」」

 

 

出来れば止めたいのだけど……二人はまるで上位存在のように、近づくことも出来ない。

 

ただ、元々負傷していたジュリオン殿は動きが鈍い。このまま行けばジュリオン殿を打倒出来る。出来ればその時を見て拘束したい。

 

 

「その動き!なおすようにいつも言ってるでしょうが!!――――寝てなさい」

 

「ゴル…………ガァッ!!?」

 

「アモス殿!」

 

 

ジュリオン殿はそう甘くはなかった。

 

アモス殿の拳打が当たると同時、ジュリオン殿が逆手で首を掴み、もう片手を腹に当てぐるりとアモス殿は軽々と持ち上げられ、縦に回転して背中からもろに落ちた。

 

轟音が響いた後、ジュリオン殿はアモス殿の頭部を大きく踏みつけた。

 

アモス殿はかろうじて片手で防いだものの、床を抜けたようで頭部はめり込んでしまった。

 

普通なら即死級の攻撃を二度受けたアモス殿……ただアモス殿の頑丈さはリヴァイアス随一と言われるように、まだ終わっていないようでジュリオン殿の足首を掴んだ。

 

 

追撃しようと片足を上げたジュリオン殿に向かって突撃する。

 

 

躊躇いはあるが、アモス殿をやらせまいと無理やり石突で突く。

 

手前に刃がある状態で突くのは危ないが状況を考えるとこれしかない。――――頭部・首・心臓を狙った。

 

 

「…………ふー」

 

 

片足を掴まれて動けないのに、片手で容易く弾かれてしまう。

 

先ほどアモス殿を投げた時に痛めたのか、ジュリオン殿は片腕を落としている。

 

このままでは倒れたアモス殿に対し致命の一撃を与えかねないし、石突で無理ならと槍の穂先を向け直し――――全力で突いている。

 

正常ではないジュリオン殿ではフリム殿を傷つけかねない。現状、アモス殿が危なくて、フリム殿が危ないかもしれなくて、ジュリオン殿も助けたい。

 

そのためには怪我させてしまうかもしれないが、全力で突く。

 

手傷を追わせることが出来れば……せめてアモス殿が回復すればジュリオン殿を止めることができるかもしれない。

 

 

こちらは覚悟を決めて全身全霊の突きを放っている。

 

しかし、ジュリオン殿は片手で、その場から動かずに槍を捌いている。

 

 

素手なのに、槍の刃の側面を弾き……呼吸を整えるほどの余裕を見せている。

 

基礎的な身体能力にも差はあるが、それよりも圧倒的な技量の差を感じる。

 

自分には勝てない相手だ。

 

息が整ったのかこちらに闘気が向けられた。でもだからって、ここで引いていいわけじゃない。

 

 

「キュクルル」

 

「えっ?」

 

 

一瞬、何の声かわからなかった。いつの間にかリューチャンが後ろに居て……声がしたと思ったと思ったら何かが身体に入り込んできた。

 

 

「イリア、それ――――」

 

 

私にも何が起きているかわからない。

 

ただ力が湧き上がって、その万能感のままに槍を手放しジュリオン殿に体当りして、吹き飛ばすことに成功した。

 

クーリディアスは竜に護られた国だった。リューチャンは守護竜王の子だ。そして僕は曲がりなりにもクーリディアス王家の血を引いている。だからリューチャンが僕に力を与えるのに相性が良かったのだろう。

 

 

でも……駄目だ。

 

 

力が身体に追いついていない。体当りした肩の辺りが折れた。

 

更に位置も悪い。僕の位置はスーリの異形に近い。

 

ジュリオン殿からすればフリム殿に敵対している僕が、フリム殿に近い位置にいる。

 

となれば加減は出来ないのだろう。ジュリオン殿の空気が変わり、殺気を込めて僕に襲いかかってくる。

 

 

――――しかし、逆に考えれば好機だろう。

 

 

 

「まて!?やめ、ヤメロォオオ!!!」

 

 

スーリの異形に向かって落ちた槍を投げる。あれがジュリオン殿を操っているのなら、潰してしまえばジュリオン殿は正気に戻るはずだ。

 

近くにいた一番大きな個体の胸に当てることが出来たが…………ジュリオン殿に描けられたであろう術は解けること無く、ジュリオン殿がこちらに向かってきた。

 

 

「ゴルルルルァッ!!」

 

「――――っ!?」

 

 

もう駄目かと思ったが、床にめり込んでいたアモス殿が割り込んでくれて、ジュリオン殿に向かって火を吐いた。

 

以前本人に聞いたことがある。ジュリオン殿も火を吐けるが、「浴びせられる火」は弱点らしい。なぜなら以前、敵兵に火で炙られ、甚振られたことがあるからだとか。

 

大きく下がったジュリオン殿は慌てて顔に当てられた火を払おうとして……そこにリューチャンが飛んでいってジュリオン殿の顔面に激突した。

 

攻撃にしては強くはなかったはずなのに大きく崩れたジュリオン殿。ぶつかった一瞬、リューチャンの気配が大きくなった気がする。

 

この竜、幼竜にしては知性は高いとは思っていたけど……絶対なにかの力持ちだな。まぁフリム殿に懐いているようだし――――僕の将来の義姉上は大丈夫と信じたい。

 




原稿バトルしてきた!

何度も直して読みやすくなったはずなのにいくらでも出てくる誤字・脱字・衍字・表現不足の数々……過去の自分にボッコボコにされました。

でも書きたいシーンを描けたので満足!皆様に楽しんでもらえれば幸いです(*´ω`*)
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