水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第352話 居場所⌂リヴァイアス

 

ドゥッガが艦隊を真っ二つにしたというリヴァイアスの戦杖というか戦鎚。

 

そこから水のビームのようなものが放たれ――――スーリの、頭というか上半身は爆散した。

 

観察してもピクリとも動かない。

 

 

「よぉフリィム!だぁいじょぉぶかぁ?!」

 

 

襲いかかってくるその悪意はスーリで、そのスーリが死んだのならもう脅威はない。

 

いきなりの魔法砲撃に驚いている中、千鳥足でこちらに向かってくるドゥッガ。

 

体幹ごとぶれていて、目の焦点もあってない。

 

 

「大丈夫ですが、ドゥッガの方こそ大丈夫ですか?」

 

「俺か?俺ならぁ!……………………駄目だわ」

 

「親分さーん!!?」

 

 

パタリと倒れた親分さんことドゥッガ、つい親分と言ってしまった。

 

パキス側で何があったか聞くとそもそもドゥッガは頭を怪我していた事もあって、精神的な干渉をそこまで受けていなかった。私が休むように超魔力水を出していたけど仕事が立て込んでいてあまり休んでいなかったらしい。

 

本物の私が出てきたことでスーリに攻撃しようとしたがディーン達に邪魔され、戦鎚による魔法攻撃は不発。

 

ドゥッガはディーンを殴り倒すもパキスが使った毒で片腕をやられ、意識朦朧の中で二人を説得。パキスが照準をしてディーンが戦鎚を持ち上げ、ドゥッガが砲撃のトリガーを引いた。

 

ただ毒の効果で酔っ払いみたいな状態でフラフラのドゥッガはダウンしてしまった。

 

 

「……人間が、<人間ごときが>」

 

 

上半身が無くなっていたはずのスーリだったけど、いつの間にか再生していて、また身体から異形を出してきた。

 

 

「――――死んでなさい」

 

 

大きな影が現れ、スーリは滅多切りにされた。

 

細切れに解体されるスーリ。動かなくなるスーリに剣を振るう手は止まった。

 

こちらに顔を見せることはないがそれは頼りになる背中で……すぐに誰かわかった。

 

 

「ごめんなさいフレーミス様。……取り返しのつかないことをしてしまいました」

 

 

ジュリオンに近づく。こちらに顔を見せること無く謝ってきた。

 

スーリを攻撃したことから洗脳のような状態は溶けて……私への罪悪感があるのだろう。

 

 

「ジュリオン、そこは謝るところではなくお礼を言うところですよ?」

 

「……しかし」

 

 

いつもなら私のことをずっと見てくるのに、今はこちらを見てくることはない。

 

 

「こう考えてみてください。私は……じゃない、僕は男の子だと!」

 

「は?」

 

「囚われの臣下を助けた僕は褒められるべきじゃないかな?」

 

「なんですか、それは……」

 

 

少し気の抜けたような声を出したジュリオン。

 

 

「護られるだけの存在じゃないんですよ。もしも、いや、性別は関係なく、謝るよりも褒めてほしいなぁと」

 

 

そもそも、こんな「無理」を通したのは、エール先生とジュリオンをはじめとした……私にとって大切なものを守るためだった。

 

自分の身可愛さだけで行動するのなら王都に帰ればよかった。箱にでも詰めてもらえば列車で帰ることは容易だったはず。エルフとの約束だか条約を使えばシャルルかレージリア宰相に会うことは出来ただろうし、そこから身分証明すれば良い。

 

そうじゃなくても時間さえかければリヴァイアスで仲間を集うことだって出来たはずだ。

 

一人ずつ確認すれば、きっともっと味方も増えたはずだ。

 

スーリの術の範囲がどこまでかわからなかったけど、ローガンやミリー、マーキアーにヴァンディアズルに……お見合い参加者の護衛の騎士もいた。

 

なのにそうしなかった理由。それはその時間の間にジュリオンやエール先生に取り返しのつかない事が起きることを防ぎたかったからだ。私を信じてくれて、領主と認めてくれた人を守りたかった。

 

 

私は私の身よりも、もっと大切なものが出来ていた。

 

 

パキスによって戦力も整ったし、すぐに逃げられるように準備したうえで勝算もあったからこそ「乗り込む」なんて選択をしたわけだが……。

 

 

「大丈夫ですよジュリオン。ここはもう、私の居場所です」

 

「――――っ」

 

 

肩を震わせているジュリオン。

 

彼女のせいではないけれど、洗脳されていた記憶があるのなら不甲斐ない思いもあるのだろう。

 

 

「これからも頼みますよ」

 

「――――――――……はい」

 

 

震えるジュリオンのふくらはぎに手を触れ、その体温に取り返せたと幸せを感じながらそう思えた。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

ただ、事後は恐ろしく面倒だった。

 

スーリに政務なんて出来るはずもなく、私がいない間の政治は謎の洗脳でぼんやりとしか進んでいなかった。再確認する手間もある上、城が奇っ怪なモニュメントになっていて機能停止している。なんか軟体生物みたいなまま固まっている。

 

外からボルッソファミリーがユース老先生の土魔法に対抗していたそうで、城と言うには程遠い危険な建造物となった。

 

しかもだ。

 

私のいない間のトップに任せていたドゥッガは毒でダウン。アモスも何故だか負傷していて同じくダウン。エール先生も両腕の負傷に出血もあってまだ起きていない。

 

立入禁止の城の補修はユース老先生に任せるとして……神殿で寝ているエール先生の世話をしながらルカリムたちに取り囲まれて書類を眺めている私。たまに甘えてくるリューちゃんもあやす。

 

 

エール先生に触れるとその体温を感じられる。生きていてくれて嬉しく思う。

 

 

ただ、今回の問題の……諸悪の根源をどうするか。

 

スーリはジュリオンの滅多切りでも死ぬことはなく、死刑百回分を超えるほどに切り刻まれている。何処を切ってもすぐに再生する。下半身だけでも元に戻るし、現場はモザイクを掛けなきゃいけないレベルだろう。

 

なにせ領主に対しての明確な攻撃だし、私も賛成である。……数日経ってディア様にも知られて止めるように言われたけどやめられない。止めるとまた再生して攻撃してきかねない。

 

テロスが「リヴァイアス領の自治を揺るがす気か」と猛抗議してスーリへの処刑を超えた対応は続いている。ディア様はリゾートに戻って手紙を書いていたそうで……きっとシャルルかレージリア宰相への手紙だろう。

 

エール先生の看病をして二日目。

 

寝ているだけで苦しんだりはしていないし、私も同じベッドで寝ていたらエール先生は起きた。

 

 

「フリム様……一体何が起きたのか、その、よく覚えていませんが何かあったのでしょうか?」

 

「ちょっと上位存在がエール先生に悪さをしただけですよ。これからも一緒にいてくれますか?」

 

「はい?……はい、もちろんです」

 

 

ジュリオンはしっかり覚えていたようでまだ申し訳無さそうに接してくるが、エール先生は覚えていないようだ。

 

 

「ちょっと体を動かしますね」

 

「それには及びませ……あれ?」

 

 

ベッドの上に立ちエール先生の上半身を持ち上げ、背中側にクッションを挟む。

 

エール先生は両腕に毒付きの短剣が刺さっていたため出血もあった。もしくは麻痺毒の効果が抜けきっていないのかもしれない。

 

麻痺したまま超魔力水漬けにするのも危なかったので傷口を洗って塞いだだけだった。

 

 

「はい、あーん」

 

「あー……ん?なんです?この状況??」

 

「まぁまぁ、もう一口」

 

 

シャルルを暗殺者から助けた後、看病をしてもらったこともあるけどまるで逆だ。

 

ぼんやりしているエール先生は素直に食べてくれた。

 

まだ眠たそうな状態のエール先生だけど……反応してくれることが何より嬉しい。いつでも食べてもらえるように用意していた温かいシチューを食べさせて、今日はもう寝てもらった。

 

周りに人もいるけど深夜だしね。

 

 

「おやすみなさい」

 

「おやすみなさい」

 

 

食べてすぐ寝るのはよくないかもしれないけど横になってもらって一緒に寝る。

 

この体温こそが、取り返したという実感で……やっぱり路地で寝るよりとても良い。

 




タイトルの間に挟んでる意味がホニャララな謎の記号。どうやら環境依存文字とやららしく見えないこともあるそうなのでこちらの環境で見える、元に近い記号に変えました。
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