水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第354話 ライアームの双子αハイエルフ

 

スーリのヒヤリングには非常に苦戦した。

 

どこにその国があるのか、何故そんな事態になったのか。今後私やリヴァイアスに不利益をもたらさないためにそれはもう細かく聞き取りを行うことになった。

 

色々されたこともあってスーリに味方したくはなかった。

 

むしろスーリかスーリと同じような存在である「枝」、もしくはエルフ側がなにか滅ぼされるような悪さをしたのかと怪しんだ。

 

リヴァイアスは交易が盛んであり、ここには商人が多くいる。

 

エルフの国は商人にとって目の離せない対象であるようですぐに情報が出てきた。

 

エルフを攻めている上位存在は天使だけではなく悪魔もいる。その2柱がエルフの里……いや、国を攻撃。これは数カ月に渡って行われている。何故そんなことをと思うのだがこれも判明した。

 

天使と悪魔、それぞれ縁のある人が話を聞くと「エルフは感情が薄いため、脅威に対して団結して立ち向かう善性の感情と理不尽に対する悪感情を呼び起こすため」らしい。天使が主導で悪魔も目的が一致したためタッグを組んだそうだ。

 

……スーリもそうだけど、天使も悪魔も自分勝手である。私もエルフの民も天災に巻き込まれているようなものかもしれない。

 

世界を股にかける豪商達、彼らの情報は非常に有益だった。スーリに悪魔のことは言ってなかったと追求すると悪魔の方は力が弱いから問題ないらしい。説明しろよこの駄エルフが。

 

どうせならスーリも一緒に滅ぼすべきだとは思うけど……この国のスタンス的には同盟も組んでいるし味方するべきだ。精霊とハイエルフは仲が良いとか……知らないって…………でも統治者としては「知らない」じゃ駄目なんだろうなぁ。

 

やるしか無いのならせめて良い条件を引き出し、出来ないのならどうにか言いくるめよう。

 

そもそもスーリのような「強者」が「倒せない相手」を倒せるのかと疑問もあった――――ただ、結果的にエルフの国を救うことは超イージーだった。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

里の中心に避難したエルフ達、彼らはスーリとは別の枝……つまり別のハイエルフの術で結界を作った中にいる。

 

それをまんべんなく包むように炎が燃え続けていた。見た目はまるで巨大な太陽。

 

 

帰還門というスーリの技能は自分の住んでいる木から半径多分3キロぐらいならどこにでも出すことができる。

 

『帰還門』の技能は「帰還」が専門で行きたい場所にどこにでも出すことができるわけではないそうだ。だけど、その条件なら準備ができる。

 

 

水は貯めることができる。そして当たり前だけど水は重力に従って――――落ちる。

 

 

巨大な太陽のようにも見えるエルフの里、その上空に帰還門を開いた。

 

リヴァイアス側は数日貯めた貯水池の底に門を設置した。

 

滝のように落下する水とともに謎のスクール水着のような素材をインナーにしたジュリオンとアモス、それとエール先生が飛び出していった。

 

あの生地には水精石の粉末が練り込まれていて水が染み出す効果がある。炎対策にはぴったりだろう。

 

様子見をして危険そうなら出直すか、打ち切り。一息に上位存在を狩れそうなら狩る……そういう計画だ。

 

無理そうなら撤退だ。

 

スーリからしても無理なら無理で、目的の達成のためにはまた次攻め込めば良い。その時に戦力を残した方が良いという判断もあったのだろう。

 

ジュリオンとアモスが本命でエール先生は風で火を散らすだけ、私は貯水池の水中から、リヴァイアスの力を大いに使って水を操作し――――火を扱う上位存在にぶつけた。

 

ボルッソファミリー総出で作った貯水池。そこに私が出した水貯めていた。

 

私が出した私の扱いやすい水。無数の水の精霊が貯めた水の中に入って突撃した。

 

燃えていた二体の上位存在は圧倒的水量で一瞬火が消え……エール先生の風がジュリオンとアモスの前の前の空気を切り裂き、剥き出しの上位存在をジュリオンとアモスが串刺しにした。

 

天使も悪魔も何が起きたかわからないと言った状態のまま散っていき、エルフの里を包みこんでいた火は跡形もなく消えた。

 

ドゥッガの魔導砲撃、お見合い参加者の護衛、リヴァイアス軍……第二、第三の戦力を使うこともなく、あっけなく終わった。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

「これで、二度と私やリヴァイアスに害を与えぬようにしてくださいね」

 

 

言葉を選んでスーリに告げる。

 

 

「約束」

 

 

かなり苛立った。

 

この加害者ゲスエルフに悪気はないんだ。悪気は……。

 

 

「では約束を言ってみてください」

 

「リヴァイアスに利益をもたらす。リヴァイアス優位で交易もさせる。なにかあったら助ける。領主に対して自分及び他の枝に手は出させない。精神に干渉しにくくなる魔導具を渡す。要請がない限りリヴァイアスに近づかない。自分から要求があってもまずは話す。精神を操作しない。オベイロスの人を襲わない。収納もしない。リヴァイアスに対して他の上位存在が攻撃しようとすれば助ける。加害した全ての相手に謝罪する。そちらからの要請に対して可能な限り素早く対応する。100年無視するようなことはせずにすぐに対応する。その他細かな約定は渡された文書を元に履行する。だいたい自分ではなくエルフに対応させる」

 

 

なんだろう。利益はあるはずなのに、こいつも滅ぼしたほうが良いんじゃないかという気持ちが拭えない。

 

ただもう、スーリを人間という目安で考えるからおかしく思えるだけで……ハイエルフは植物とかに近いかもしれない。半分神であるって話もある。そうすると、もはや別の生命体だから仕方がないのかもしれない。

 

ジュリオンには戻ってきてもらい。アモスには残って使者として対応してもらう。

 

アモスは以前この国に来たことがあるらしい。交渉と調査は任せた。エール先生はまだ本調子じゃないしね。

 

 

それに久しぶりの精霊の力をふんだんに使って、大人フリムになりそうだ。

 

 

スーリは約束通り、ライアームの息子に娘、それに他国の姫君に護衛の騎士、それに従者や船員を解放してくれた。

 

ただ、スーリの収納魔法は時が止まるようで……スーリという上位存在の武力行使がされた直後の彼らは非常に好戦的というか意識が戦闘の最中であった。

 

 

「――――国に栄光あれ!!!」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

「……ら先には行かせん!!!――――あれ?」

「この?!……っ?」

「<トラス!キルリア!キルリア!エルライ……ア?>なにこれ??」

 

 

この世界には魔法があり、魔導具がある。

 

元の世界でも「銃器」があったが、おそらくそれ以上の火力を秘めた個人がいて――――その中でもよりすぐりの彼らだ。

 

大国であるオベイロスの王が伴侶を探している。そのため参加してきた他国の姫君達。当然彼女らには護衛がついている。

 

襲いかかってきた理不尽ことスーリに敗北したのだろう。

 

スーリが謎の力によって出た瞬間に猛烈に襲いかかってきたりもする。もしくは命乞いや脱兎のような逃走。たまに寝てる人もいる。

 

夜であるなど、特定の条件でしか人を収納する技能は使えないらしい。夜にスーリに襲われたとか可哀想に……改めてこのハイエルフには人の心とか無いな。

 

 

「俺だけでも、許してくれ」

「お願いしますお願いしますお願いします」

「すー……すー……」

「獣人風情が汚らわしい!この船に誰が乗っていると思っている!!」

 

 

寝てたらそのまま捕まった人は完全装備の兵に取り囲まれていて何が起きたかわからないようだけど……現場で何があったのか、味方を売ってでも逃げ出そうとした人もいたり、もう絶望から頭を抱えてうずくまってる人もいる。

 

うちの兵が取り囲んだうえで安全に配慮して一人ずつ人質を解放してもらっているが彼らが混乱するのも仕方がない。

 

とにかく一人ずつ出してもらう。その中にいるはずの王族の二人と周辺国家の姫君だけは出迎えねばならない。

 

たまに目に付く姫っぽい人もいるけど、とにかく今はライアームの子供が優先である。

 

私とディア様を筆頭にお見合い参加者は整列して待機しているのだけど……出されていく人はこの光景も意味がわからないのだろうな。

 

大人フリムになりそうだし、抑えるのも体が辛いのでさっさと終わらせてもらいたい。順番もバラバラ、偉そうな人が出てきたり、従者らしき人が出てきたり、護衛が出てきたり――――……見ただけでわかった。

 

 

「ディア様、あれが……あの方がそうですか?」

 

「私も面識はありませんが、おそらくそうでしょう」

 

 

年齢は私以下、つまりは5歳か6歳以下だ。そして男女の双子で、男の子は私との婚姻を求めてきて、女の子はシャルルとの婚姻を求めている。

 

ライアームからすれば融和も考えた一手だ。

 

婚姻は成立しなくても良い。男女のことや精霊のことで相性が悪いなんてこともしばしば、貴族として魅力で落とせないのならそれは仕方ないとなる。邪険に扱わなければそれでその間に関係の修復をする。

 

私とシャルルで丁寧に対応しつつも軽くあしらってしまえば良い。なにせ相手はおこちゃまだ。

 

――――そのはずだったんだけど。

 

 

「その子がフレーミス?子供じゃん」

 

「お兄様」

 

 

王族が相手である。だけど王族であっても私はこいつの臣下ではない。

 

この地の領主として皆の正面に居て、周辺には護衛もいる。……なのに無遠慮に近付いてきた男、見ればわかるがこの男がライアームの子供だ。

 

 

「わかってるって!フレーミス。俺の女になれよ」

 

「……まずは挨拶を。フレーミス・タナナ・レーム・ルカリム・リヴァイアスです。この地の領主として侯爵位を授かっております。どうぞお見知りおきを」

 

「あ、ガリアスだ」

 

「お兄様、オベイロス」

 

「そうだった。ガリアス・ライアーム・ユーレリアヴィス・オベイロスだ。もてなせ!!」

 

 

見た目はまるでシャルルと瓜二つ。

 

シャルルとの違いは猫耳で、ピンク髪なぐらいだろう。あとほくろの位置とか大量のアクセサリーで目がチカチカする服のセンス……だいぶん違う部分はあるのに顔や体格がまるで同じだ。あ、猫の尻尾もあるのね。

 

精霊の影響で見た目が違っていたり、なにかの能力を得る人はいる。

 

ダースさんは体を金属にできるし、カリュプ・ソーギアーは人を収納できる。私はアホ毛があったり、大人になれる。意味不明だな。……………いけない、丁寧にもてなすはずが、ドヤ顔で胸を張ってる偽シャルルに対して思考が停止している。

 

この青年、年齢は私より下のはずだ。

 

女の子もどう見てもシャルルと同じぐらいの年齢に見える。彼女の手の甲に丸い盛り上がりがあり、井戸のようなそれからは火が燃え続けていた。

 

 

「それで、婚姻ってのは俺とするんだろうなぁ?」

 

「ほほほ、私、これでもシャルルの婚約者でもありますの。結婚したければシャルルに勝ってくださいませ」

 

「なるほど!そいつに勝てば良いんだな!俺様は強いんだぞ!!」

 

「そうですかー」

 

「そう!俺の特製アルダランテはなかなかに強いんだ!今度お前にも見せてやるからな!!そうだ!忘れてた!!」

 

 

なんだろう、見た目シャルルでイケメンなのにどこかおかしい。

 

そう思っていると近寄ってくるガリアスだけど近い近い。

 

顎先を持たれて、目を合わせて言われた。キスする気かと思って身構えたが目を合わせたいらしい。

 

 

「君の瞳は――――水のように…………なんだっけ?」

 

「美麗か奥深いですよ」

 

 

妹さんにセリフの続きを聞いているガリアス。

 

 

「そう、奥深い。……続きは?」

 

「可愛いでいいんじゃない?」

 

「かわいいぞ!」

 

 

顔はシャルルと同じで整ってる。やってることもモテる人のような気もする。

 

……だけど、全然ときめかないなぁ。

 

 

「離してください」

 

「わかった!」

 

 

護衛が手を出しそうだったから言ってみたけど素直である。やる気ならオルカスにボスゴフしてもらおうと身構えていたのに。

 

悪気があったわけでもなさそうだ。

 

 

「どうだ!俺に惚れたか?」

 

「いや全然」

 

「……あれ?ピュイ、こうじゃなかったっけ?」

 

「雰囲気が足りないんじゃないですかね?」

 

「あの、二人は何歳ですか?」

 

「「5歳」」

 

 

何が楽しいのか、二人とも身につけたマントをバサバサして遊び始めた。

 

……子供かぁ、思ってた双子と違うなぁ。

 




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