水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第38話 起きたフリムは色々と知った……が。

 

いつもの食卓、普通の、一般的に何処にでもいる家族。

 

昆布のいい香りがする、今日は水炊きか。

 

父さんも母さんも妹と弟もいて、いつもの家。父さんは春菊を避けようとして母さんに怒られ、何にでもすりごまをかける弟はもっさりと自分の皿に盛っていて妹はスマホから目を離さずにSNSをチェックしている。

 

いつの間にか食卓の周りが海の中で、ここが夢だとわかる。四角い頭の大きなマッコウクジラとシャチも泳いでいる。夢だからかやけに大きな気がする。

 

ゆっくり視界から離れていく食卓、家族に言わないといけない……声を出そうとしたが声は出ず、振り返ってこちらを見てきた母さんに微笑まれた。

 

 

「母さっ、ごめっ………ぎっ!!?」

 

 

母さんに、先に死んでしまって……とにかく謝ろうとして痛みで起きた。

 

 

「起きられましたか?すぐに誰か呼びますね」

 

「だれっ……すか?」

 

 

全身がひきつるように痛い。フッカフカのベッドに豪華な壁紙。美人なメイドさん。なんとか生き残ったようだ。

 

指先から喉まで全身まんべんなく痛いが……それはやはり生きてるって証かな。手と足の指、どちらも動く。片目が遮られて見えないのは包帯かなこれ。

 

 

――――あぁ、むちゃくちゃしちゃったなぁ。

 

 

魔力が全然無くなってきて奥の手を使った。

 

高圧洗浄を5本出せるようになったように同じ種類の魔法ならいくつか同時に使える。水の玉、高圧洗浄、放水、バリア、水刃のすべてを同時に使えるが最近はバリアと高圧洗浄の二種類ばかりを使っていた。

 

単一の魔法の使い方であれば複数の魔法よりも操作がより集中できる。使用する種類を減らせばそれだけリソースを別の魔法に回せるわけだが……全力で自分を中心に水のバリアを卵のように何重にも展開してしまえば後は維持だけだったし――――残った最後の力で外側の二層に酸素と水素を注ぎ込んだ。

 

酸素と水素は簡単に作れるのだがどれぐらいが必要か分からなかった。過剰に作りすぎたのかも知れない……。

 

外側の層が爆発すれば相手も警戒するだろうし相手を倒せないまでもまた外の層に酸素と水素を生成させてバリアも戻して……それで耐久して時間を稼ぐつもりだった。

 

時間の経過で魔力も回復するからそれで何度も爆発音が響けば流石に警備員さんも来るかと思ったんだけどな。大爆発を起こしたのかも知れない。

 

覚えていないが当然暗殺者っぽい人たちはバリアを破壊しようとしただろうし。爆発した。そして気がつけばここにいる。――――………それよりも

 

「気がついた………か?何をやってる?」

 

「あいがつってぇ!!?いだだだだだ???!!」

 

 

足の指を動かすのと一緒に足がつった。美人なメイドさんに手伝ってもらってアキレス腱を伸ばしている。ただでさえ体が痛いのにこの痛みはヤバいィィいいい!!

 

 

―――……逃げることもできなかったし一か八かの賭けだったけど……私も彼も生きてるのなら、賭けには勝てたようだ。

 

 

あの不審者か王様か王子様かわからない人と偉そうな知らないおじいちゃんが部屋に入って来てなんか微妙な空気が流れたが……ちゃんとお医者さんには診てもらえた。大きな傷は塞いだが気絶して体の奥までは分からなかったし強い薬は体に良くないからとあまり使ってもらえなかったらしい。

 

ムチで引っ張られたからか、つらなかった方のふともものつけ根と足首も結構痛い。自力ではまだ歩けないなこれは。

 

 

「フリムよ。俺の命を救ってくれたこと。本当にありがとうな」

 

「………」

 

「………顔を上げて話しても良い。俺はお前と話がしたい」

 

 

ベッドに寝かされた私だがベッドの上ですぐに虫の構えとなった。いや、両足が痛くて足を畳めなかったから土下座ならぬ土下寝の構えだ。腕立て伏せに近い。

 

もしもこの金髪イケメンさんが王様なら、フリムちゃんやばい……足を治療のためとは言え拷問みたいなことした。説明したって前世の医療行為なんて理解してもらえるかも分からないし無駄かもしれない。さらに変質者扱いして処刑されてた?変質者扱いだけでもアウトかも?

 

 

「………」

 

「………」

 

 

会話ってなんだ?!貴族って言うと平民をおもちゃにして弄んで殺すこともある人間じゃない別の生き物でそのトップが王様だぞ??!紙とペン、それと竹はないか!!?いやこういうのって大名行列してるところに差し出して結局処刑されるんだっけ??!!!

 

 

「俺はお前の全ての無礼を許す。気軽にしても良い」

 

 

幼女の土下寝にいたたまれなくなったのか許してもらえた。

 

 

「すいませんでした……」

 

「何を謝っている?」

 

「変質者だって赤竜騎士団に通報して処刑されたって聞きました」

 

 

後で問題となるよりも先に謝っておく。許してもらえるタイミングで謝っておかないと後で怖いことになることもある。

 

 

「あれは俺が悪い。化けてたしな」

 

「―――陛下?」

 

「ほ、他に聞きたいことはないか?」

 

 

謝ったが理不尽に怒ったりはしないようだ。途中メイドさんがなにか一言言って焦ったような声が聞こえたが誰にも言ってなかったのだろうか?

 

流石にもうここまで来たら王様と信じざるを得ない。しかし知らなかったと言ったほうが良いと思う。

 

 

 

「あ、貴方は一体何処の誰様なんでしょうか?」

 

 

 

 

「俺?俺か――――……俺は、お前の親?」

 

 

 

 

「「「は?」」」

 

 

 

 

私と豪華な服を着たおじいさんとメイドさんの声が一致した。何だこいつパパ上?

 

 

「いや、違う!違うぞ!!?兄か!?いや、そうでもないな!!!?」

 

 

陛下に隠し子がと驚いてるおじいさん。子供を産んでないから驚いているのなら名付け親のような風習はあるのかもしれない。

 

何でもこの王様は気心のしれた兄と姉のような護衛がいて、その彼らが子供を生む時に名前をつけたからこの青年は名付け親だと言いたかったらしい。

 

 

「コホン、まぁいい。俺はシャルトル・ヴァイノア・リアー・ルーナ・オベイロス。この国の王で、お前に命を助けられた者だ」

 

「フリムです。人を間違ってませんでしょうか?」

 

 

うん、意味がわからん。この青年、もしや実のパパ上で娼婦相手にやっちゃったとかそういうあれか?隠そうとしてる?不審者の時に名前を聞いてなにか様子が変だったのもうなずける。もしも本人が言うように私の両親がこの人の護衛だったとしたら貴族のはずだし自分の路地裏と繋がらないんじゃないかな?いや、フリムの記憶は殴られてゴミから始まっているが確かにキラキラしたお屋敷にいたような気がしないでもない。そんな記憶もフリムの元の体の奥底にある。

 

だけどこの名付け親の記憶は思い返そうとしてもまったくない。

 

昔の護衛で産まれたことも知らなかったし名前をつけてと頼まれてつけたそうだが……。

 

 

「いや、その髪の色もそうだがちゃんと人物は確認した」

 

 

どうやって?いや、もしかしたらDNA検査とかされたのかな?もしかしてなにか身体的特徴とかあるのかな?ほくろとか。

 

 

「じゃあ私の名前はなんですか?」

 

「フレーミス・タナナ・レーム・ルカリム。だからちょっと、話したいことがあってな」

 

「ルカリム!?陛下、ちょっと儂も聞いてないのですがっ?エール、少しの間ここは任せますからね!」

 

「はい」

 

 

首根っこをおじいさんに掴まれて出ていった自称王、王様の名前なんだっけ?シャしか覚えてない。長くて覚えられなかった。フリムちゃんもフリムではないと………何だっけフレーミング・タナカーム・リム?

 

 

「病み上がりだし、俺は王様だぞー?」

 

「良いですからさっさと来なさい!」

 

 

私の名前ワンモア!なんて馬鹿なこと言いそうになったが偉そうなおじいさんに王様は連れて行かれた。

 

どちらかと言うとおじいさんのほうが王様に見える。総白髪でなんか風格がある。

 

 

「えっと、家に帰りたいんですが」

 

「……今はちょっと無理だと思います。失礼」

 

「うぷっ」

 

 

なんかメイドさんの胸に抱きしめられた。幼女の体の私だが成人女性としての意識も持っている。これは気恥ずかしいし離してほしいのだが――――

 

 

「……そっか生きていたんですね、フラーナ………」

 

 

髪を撫でられている。泣いている彼女はパパ上だかママ上だかと交流のある人だったのかもしれない。流石に邪険にはできない。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

しばらく経って戻ってきた二人。まだ目元の赤いエーさん。笑顔で戻ってきたシャなんとかさん。眉間にしわがよっている頭痛を耐えているようなおじいさん。

 

何やら私の取り扱いに困っているようだ。

 

 

「えーっと、私の実家ってどうなってるんですかね?」

 

 

これは聞いておくべきだろう。パパ上とママ上がとっくに他界していたとしてもおそらく正当な後見人だか身元引受人はいるはずだ。

 

 

「………」

「………」

「………」

 

 

渋い顔をしている。なにか言いにくそうなのには理由があるのだろうか?

 

そう言えば水の家はいくつもあったが今は統合で1つになったんだったかな?ということは私の実家は無くなったとかかな?

 

 

「結論から言うと……お前の家はあるにはある」

 

「ルカリム家は水の名家で現在の大家ですが………ライアーム前王兄殿下を支持をしていますね」

 

「付け加えるなら刺客を送り込んできたのはライアーム殿でしょうな」

 

「おっふ……」

 

 

最悪である。この王様と対立していた勢力を支持しているのがルカリム家。今回の暗殺騒動には表向きライなんとか殿下もルカリム家も関与していないが 明らかに首謀者は彼らである。暗殺成功ギリギリで邪魔をした私のことは相当に憎いだろう。

 

 

「今後どうする?」

 

「とにかく一度帰りたいです」

 

 

賭場も気になるし義理もある。

 

そう言えばバーサル様は大丈夫なのだろうか?賭場も王都は大丈夫なのだろうか?

 

 

「その後は?」

 

「まだ全然考えていないです」

 

「傷が治るまでは何も考えずゆっくり休むと良い。その間に考えておくことだ」

 

 

シャなんとか王様に頭を掴まれて首を横に動かされる……何だこれ?撫でてるつもりか?

 

 

「おやすみ、エールに面倒を見てもらうと良い」

 

 

まぁ、怪我してるし。良くしてくれる人もいるのなら甘えてもいいかな?

 




坊や、大きくなったら評価と感想をもらえる子に育つのよ。
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