水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第359話 お呼び出し(イキタクナーイ)

 

洗濯機は予期しない方向で謎の進化を遂げていた。

 

洗濯は衣類を水と洗剤につけて容器に入れて撹拌するような方式で「出来ればこういう形にして欲しい」と要望を出していた。

 

いくつかのパターンとして棒で突く方式を水車で出来ないかとか前世の外国の文化にあった「川から水を引いて渦巻きのような箇所を作って水流で洗濯する」といった施設を作れないかなどなど。

 

すると人魚が丸い岩の上に円形に集まって尻尾の先を岩の凹んだ中央、洗濯物と水の中にヒレをいれて洗濯するという……ちょっとよくわからないものが生まれていた。

 

強い汚れは強い洗剤やスライムであらかじめ消化してもらう。そうすることで軽い洗剤なら尻尾を水につけても荒れることもなくじゃぶじゃぶ洗えるそうだ。尻尾は大丈夫かと心配になったがそんなにやわじゃないらしい。

 

海で泳ぐ人魚にとってこれぐらい労働にもならないらしく、談笑したり食事しながらでも役に立てると張り切っている。洗剤ありでは良くないかもしれないし、ゴムで尻尾と言うか足ビレのような部分を覆ってもらえば問題ないかな。そうじゃなくても洗剤なしの濯ぎの工程なら任せてもいいかもしれない。

 

なにせ洗い物は多いし助かる。

 

 

「ほんとにそういう理由でこちらに働きに来ているのですか?」

 

「いえ姫様、それは建前で陸の食べ物が食べたくてですね。私もお菓子大好きです!」

 

 

まぁ……洗濯物問題は一旦どうにかなりそうだし、いいかな。

 

 

そうして自由気ままに領地改革をして楽しんでいた。

 

 

謎のパワーを持っているらしい純粋無垢なリューちゃんを愛で、大人モードが抜けないのにもかかわらずエール先生やジュリオン達に愛でられ……たまに保護者に習って変装して領地を見て回り、仕方なく礼儀作法を学んだりと充実していた。魔法の勉強も周りに配慮することが必要もない環境でできるし楽しい。

 

礼儀作法だけは気乗りはしなかったけど、自分でもメキメキ上達したように思える。

 

生きるだけなら礼儀作法は覚えなくても良い技能の気もするけど組織のトップは頼りになって隙がない人物のほうが良いはずだ。前世の職場でも、今世の賭場でも下の立場だったからこそそう思える。

 

完璧に出来ているかはわからないけど、それでも王宮で過ごして「どれくらいが正解か」を見て学んだこともあって自分でも自信を持てる程度には習得できた。更に今なら大人モードでも全身の痛みがなくなって、ドレスが重く感じなくなったのも理由かもしれない。

 

 

もっと悠々自適にのびのびーと領地にいたかったのだけど、そろそろ王都に行かないといけないかもしれない。何度かシャルルからの手紙で泣き言が入っていたが……ついにお呼び出しがかかった。

 

 

たしかにそろそろ遭難者が来なくなって、他国からの連絡もなくなった。

 

リヴァイアスではなく別ルートからオベイロス王都に向かうとか、連絡ありがとうとか救助活動への感謝などの使者も来て……スーリの問題は一旦落ち着いたように思える。……まだ連絡のつかない国もあるものの、これ以上ここで出来ることもなくなったしどこかで切り上げる必要もあった。

 

シャルルからの泣き言も気になる。

 

なんでも他国の姫君の複数は「お見合い大会」を「自由参加でお相手を見つけてね」と言う趣旨があったはずなのに、「オベイロス王の正妃として呼ばれた」と認識していたとかで増長して手がつけられないそうだ。

 

そもそも女性恐怖症のあるシャルルにとって、婚約者は筆頭婚約者だけでもいっぱいいっぱいだった。なのに他国の姫君の数名は正妃になることが決まっているかのように振る舞う。説明してどうにか止めようとしたけど、彼女らの国元にとっても大国オベイロスの正妃の座を狙えるのだからと背を押されて姫君の争いは激化。筆記のストレステストを行うなど様子を見ているものの何故か喧嘩が増えてしまったとか……。

 

対抗馬である筆頭婚約者衆はどうしたんだと思ったら、矢面に立つ性格のリュビリーナは私の配下になった為大人しくなった。ミィアは立場上でそうなったからで本人が乗り気じゃない上に対処をお願いしようものならシャルルに対して喧嘩キックが出たそうだ。エルストラさんは以前にも増して静かにしている。セルティーさんは時折起きている喧嘩の仲裁をしていたりとワタワタしていてそもそも役不足。ラズリーさんは私のところの魔導具を持って帰って以来研究室にこもってしまい、たまに破砕音や爆発音が聞こえているのだとか。それはなんかごめん。

 

丁寧に書かれているため、これでもマイルドな表現なのだろう。現地がどうなってるか、既に恐ろしい。

 

かと言って……大人モードの解除がされないままのフリムさんだ。帰ると何かのピンチで使えそうな大人モードの存在は確実にバレる。

 

 

よーく考えた結果――――……悲しいけど大人モードで王都で悪役をやりに行くことにした。

 

 

ここでこのままリヴァイアス領にいるのも出来なくはないはず。だけど王都に行かないといけない理由もある。

 

このままだとガリアス君がこっちに単独で来そうだったし、そうなれば既成事実だ結婚だのと強制されかねない。

 

それとリヴァイアスの力でこの大人モードが解除されないのならいったんこの土地から離れたほうが良いように思える。というかここに居ると――――「年齢の追加」が何より恐ろしい。

 

6歳ぐらいから見た目18-23ぐらいの成人に変身できた。その状態で現在は変身したままになっていて……もしかしたらそこからまた12から17歳プラスされて、止められないとなれば私の見かけは一気に30-40歳になりかねない。

 

これはあまりにも怖すぎる。しかも解除が出来るかもわからない。

 

そのためリヴァイアスの力の高まるここからどこかに離れるとして……エルフの国に行くという選択肢もあるけど、色々考えると王都に行くのがベストかつベターなんだよね。スーリに関わりたくないし。

 

王都に戻れば大人モードはバレるけど、そこは諦める他ない。おのれリヴァイアス…………。

 

今ならマナーを勉強したこともあって所作も完璧のはずだ。

 

リヴァイアスでの仕事もちゃんと減らせたし、アモスもエルフの国から帰ってきたから任せることも出来るはず。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

王都に戻る前にスーリを撃退したドゥッガには褒美を上げたかったのだけど何が良いか悩んだ結果……「船」と「船着き場の権利」がぴったりだと考えた。

 

ドゥッガはリヴァイアスとクーリディアスを行き来して統治に大いに貢献しているし、船での移動が多い。

 

仕事で仕事用の船を使うのもの良いとは思うけど、この世界で船を所持しているのは一種のステータスらしい。

 

海商が出来るのは商人の中でもごく一部の上澄みだ。

 

他国に商品を持っていくだけの経済力や海賊や害獣を打ち払えるだけの武力、そして自国の貴族に奪われないだけの権力を持っている。船という閉鎖した空間で部下に反乱させないだけの人徳や統率力もあるだろう。

 

彼らは良い船を所有していることを誇りにしていることもあって、良い船を所有しておけば一目置くそうだ。

 

それに元々ドゥッガは賭場で商売もやっていた。もしかしたら「個人所有の船」はドゥッガにとって嬉しいプレゼントになるかもしれない。

 

 

他の家臣に相談しても良い考えだと言われたし、ドゥッガに船をプレゼントすることに決めた。船着き場の権利もセットで。

 

 

リヴァイアス領では常に船の修理に解体、そして新造が行われ続けている。

 

他国から来た船を直すように依頼されれば他国の船の作りを学ぶことが出来るし、それなりにお金になる。クーリディアスとの戦で壊れた船が多くあるから使える部品を取ろうと解体もしている。そして船は需要があることで常に作られ続けている。

 

幸い亜人の多いリヴァイアス領では力持ちも多く、マンパワーに困ることのない。そのためこの領地では船が作られるスピードは結構早い。

 

以前に夢の中で父さんから教わった船の知識とこちらの船の常識から生まれた……実験的な船が3つあった。

 

 

そのうちどれか一つをドゥッガに選んでもらおう。

 

 

まずは「帆の多い帆船」。帆の操作次第で向かい風でも進むらしい。意味がわからないけどそういう作りらしい。強度や形状があってるかわからないし、こちらで同じように向かい風で進むとかができるのかわからない。

 

次が「ガレー船」。同じ大きな帆が一つか二つある船で側面に穴が空いていて、櫂をつかって船を漕ぐことが出来るらしい。

 

最後に……あーだこーだと私の雑な知識を伝えている間に生まれた「変な船」だ。

 

安定するのような船双胴船や風を出して浮くホバー船、中世のような大砲いっぱいの船。こういった船を伝えた結果……ホバー船は風の魔法使いの数や出力の不明さから没。火薬を使った大砲はないので大弩弓を大量に設置する形にしようとしたけど物凄い重さがある上に大弩弓の製造には強い力を生むための希少な素材がいるそうで数を揃えるのが無理となった。設計が出来る職人さんたちは物凄い申し訳無さそうだった。

 

そして生まれたのが謎の船。双胴船とガレー船を合体させたような船である。

 

巨大な船でガレー船のように側面が開き、左右に一緒に航行するセットの船に丸太が伸びる。これらを接続することで嵐があっても3つの船で安定を取るため転覆しにくくなり、母艦の船足は遅くとも左右の船は小回り利いて船足が早い。

 

母艦の側面は大きな穴があいているが櫂で漕いだり、海の種族に引っ張ってもらう事ができる。そして危険な海の魔物のいる海域では海の種族が船に上がれるだけの収納力を持っている。……三胴船とでも言うのだろうか。ちなみに丸太の接続をしなければ左右の船はごく普通だ。

 

船職人が私から出た知識をミックスしてもの凄く頑張って考えた謎のセット船である。実験として好きにしてもらって良いと伝えて……職人たちが設計でコンペを行って生まれた本当に意味のわからない謎の船である。

 

 

ちなみにドゥッガは目をキラキラさせて……謎のセット船を選んだ。

 

帆の多い船は操作がよくわからなくて実験行きに、単純なガレー船は船を漕ぐのに部下や奴隷を使うのが筆頭家臣としてのあまり対面がよろしくないからやめたらしい。

 

謎のセット船も漕いで進めるのは変わらないけど、武装もあるし収納力もあるし、スピードが欲しければ左右の船に乗るなどもあって気に入ったらしい。

 

一応普通の船もあるにはあるんだけど派手でもなく地味で、ご褒美には微妙な気がしたから気に入った船があってよかった。船着き場の権利も小型船の分増やしてもらおう。

 

 

「より一層励みます」

 

「ふふっ、はい」

 

 

ドゥッガは子供みたいにはしゃいで船のあちこちを調べ回っていた。

 

それを見て少し笑ってしまった私。気が付いたのかドゥッガは後頭部を書きながら恥ずかしそうにしていて……この強面な親分さんが少し可愛く見えてしまった。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

王都に行く前に最後に掃除でもしようと神殿に向かうと……恐ろしいことがあった。

 

 

「あ、あれっ!?」

 

「なにか御用でしょうか?」

 

 

神聖国聖女ヌールー。彼女が祈っていた。

 

この神殿の奥は基本的に立入禁止のはずだし、そもそも彼女も王都に行ったはず。なぜここにいるんだろうか。

 

まさかずっとここに居た!?

 

 

「王都に向かったものかと思っていました」

 

「なるほど、我が子よ。護衛数名がこちらについたやもしれないと報を受けてやって参りました」

 

 

……我が子?

 

前世の母さんも今世のママ上でもないこの人が何を……。

 

 

「我が子とは?」

 

「えっ?あ、そ、そう!普段信徒を相手にしておりまして!間違えましタワ!」

 

「そうですか」

 

「ソウなんです!そういう説法といいますか決まり文句のようなものがありまして!オベイロスにはそういうものはありませんよね!」

 

 

めちゃくちゃ早口で不審すぎる。

 

紙袋で頭を覆っている段階でものすごい不審なんだが……。

 

 

「は、はぁ。……とりあえず、王都に戻ってもらってもよろしいでしょうか?」

 

「えぇ!勿論デス!!」

 

 

頭の紙袋をフガフガ動かして何やら言い訳しているヌールーさん。

 

なにか怪しい。顔が見えないけどもしかして祈ってる感じだったけど寝てて……寝ぼけでもしたのかな。

 

足早に神殿から出ていってしまった。まさか王都に送り忘れたかと思ったけどいつの間にこちらにきたのか。

 

神聖国の聖女様だし熱心に祈っていたことも考えると泥棒とかじゃないはず。……まぁ荒らされた形跡もないし、まぁいいか。

 




GWの間毎日更新しようとしてるのですが、GWっていつまでぇ!?

更新されたコミック版フリムのドゥッガに「わかんないです」ってシーンがなんかすごく好きです。
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