水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第368話 不審な聖女のお茶会(ヒカルンダ)

 

ラズリーはユース老先生のみならず他の研究者にまで強烈な説教をされていた。

 

まぁラズリーだし、私もいきなり舐められたとだけ言っておいた。

 

 

気を取り直してお茶会だ。

 

 

前回の最後にくじに当たったのはヌールーさんだけど……とても心配だ。

 

彼女の奇行は、というかその頭の紙袋がとても目立っている。彼女は神聖国の聖女であり、頭に四角い紙袋のようなものを装着したままだ。

 

突然立ち止まって祈ったり、お茶会でストローのようなものでお茶を飲む。お菓子も紙袋の隙間を片手であけてから食べている。ちょっと面白いのが出した食べ物が美味しければ美味しいほど強く発光する。ある意味、美味しかったという反応だけは非常にわかりやすい。

 

ただ、やはり顔を隠すのは「結婚してから顔を見せる」という古くの文化とはいえ、どう考えても不審者だ。

 

 

「オチャデスワ」

 

「……?ありがとう」

 

「……」

 

「……??」

 

 

珍しいお茶を出してきた彼女、だけどとても不審だ。

 

今度は声を不自然なまでに作って出してきた。……いや、これは、緊張して上がってしまっているのかな?あまりにも異質で、シャルルも戸惑っているようだ。

 

 

「これは……昔、兄が作ってくれた茶のようで懐かしいな」

 

「サヨウデ」

 

 

お茶は茶葉を使ったものではなくフルーツティー。

 

柑橘系の果物を皮が破けない程度に叩いて潰し、丸く棒で穴を開け、中の果実を潰し、そこにお湯と香辛料と砂糖を注いで混ぜて濾したもの。

 

味はあったかい柑橘ジュースのようなベースに砂糖と何かのスパイスが追加されていて、酸味と甘みとほんのりとスパイシーさが漂っていて……飲みにくいような、悪くはないといった味だった。

 

 

「……あぁ、懐かしい。フリム、これはオルダースも好きな飲み物でな。オルダースはこれを冷やして飲んでいた」

 

「なるほど」

 

 

亡くなった我がパパ上の好きな飲み物だったと。

 

そう考えるとただの飲み物なのになんだか感慨深い気もする。

 

 

「昔よく飲ませてもらった。その後、兄や姉がこれを冷まさずに出してきてな。当時は美味しくもなくて嫌がらせかと思ったものだが――――」

 

 

シャルルも何処か遠くを見るかのようにしてお茶を飲んでいた。

 

とても味わっているようだ。

 

 

「だが?」

 

「あぁ、オベイロスならどこでも手に入るし、野営でも器なしに飲めるものだ。行儀は悪いが親指を使って中の果実を潰してな…………身体の温まる飲み物を自分で作れるように教えたかったのかもしれん。はははっ、今思えば不器用で人間らしさのない兄様や姉様が火の魔導具に鍋にと、無言で持ってきて作っていたのにはそういう理由もあったのやもしれんな」

 

 

なるほど、オベイロスにおける外で緊急時に飲むためのものだったのか。

 

シャルルの精霊、闇の精霊姫ルーラが出てきてシャルルの飲みかけのコップに頭を突っ込んだ。多分味見しているのだろう。

 

 

「なるほど」

 

「まぁこれは冷やした方が格段にうまいぞ。……ヌールー殿、褒美になにかやろう。希望はあるか?」

 

 

ご機嫌になったシャルルが褒美を言い出した。

 

これまでにシャルルが褒美と言い出したのは男性のみ。女性で貴族相手には初めてだったので場の空気が一気にざわついた。

 

 

「陛下にコホン……ヘイカニフレテモヨロシイデショウカ?」

 

「まぁ少しぐらいなら」

 

 

やはり怪しいな、この人。喧嘩売ってるのかと言わんばかりの高音な声で話してくる。

 

神聖国ルターティブとの関係は良くもないが悪くもない。それに聖女は心優しい存在と噂だ。怪しいことは怪しいがオベイロスの神官も顔合わせをしてその素顔を確認したところちゃんと本人と認定された。

 

ライアームと神聖国の繋がりはない。むしろライアームは政争から諸外国を嫌っているそうだ。そこから考えてもヌールーがシャルルを害する理由もない。理由もないが……一応警戒はしておく。

 

呑気なシャルルと違って周りは完全に警戒態勢だ。それがわかっているのかゆっくりとシャルルの頭に撫でるように手を添えたヌールー。

 

 

「……<我が子よ。健やかなれ>」

 

 

これは神聖国のなにかの儀式のようなものだろうか。祈祷魔法というのが向こうにはあったように思えるが祝福か何かをしているようにも見える。

 

シャルルをゆっくり撫でるその手の甲にルーラが立ち止まってヌールーを見つめていた。

 

 

すっとシャルルから離れたヌールー。

 

 

警戒していたが、彼女がしたのはそれだけだった。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

お見合い大会によって少し経済が動いている。それに伴って王宮が少し華やかになった。

 

王宮でやっている服飾事業。外国の姫君が遭難してきた。彼女らの荷物の大半は失われていることもあって彼女らのドレスの提供を優先していた。

 

シャルルからの指示なのでオベイロス王家のご購入となる。あとで彼女らの国元がドレスの代金ぐらい支払ってくれるだろうけど王家がとりあえず立て替えてくれている。

 

服飾事業では用意している素材を使ってガニューラが水魔法を使って超高速で服を作っている。

 

とはいえ元々服飾事業は人気部門であり予約は埋まっていた。そのためガニューラは占い部門を縮小し、他の時間は服飾事業に打ち込んでドレスを高速で仕立てているそうだ。

 

ガニューラは自ら志願して仕事量を増やしているようだけど……目の下にはくっきりクマが浮かんでいたし、何もしなくてもブツブツ呟いているとの報告があった。水渡しておこう。

 

デザインさえあれば用意された材料で問題なく服は作られるが、特定の素材や産地を要望されれば注文通りには出来ない。

 

オベイロスにない生地や魔獣の骨のボタンなんかはすぐに用意できないし完璧には出来ないのは仕方ないように思える。デザインや色味は可能な限り相談にのってすぐに作る。

 

作られるドレスはオベイロスのものとは様式が違う。

 

肩を出してドレスとは繋がっていない袖なんかはとても斬新に思えた。脇の高さで腕から手首までをフリフリと広がる袖で覆っているデザインは斬新に思えた。

 

その国での女性の魅力は首と肩、それに鎖骨と言われるらしい。令嬢方は寒い時期は根性でこのスタイルを乗り越えるそうだ。

 

作るのにわざわざ腕だけ、それも脇から手首まで覆う萌え袖のようなものを作るのは手間ではあるけど、彼女の国では袖の有無と袖の豪華さで貴族かどうかが分かるそうだ。これも文化か。

 

他にも面白かったのが前側が膝上から左右に大きく開いたスカートに長ズボンの両方を履くスタイルのデザイン。騎獣に乗る需要から生まれたらしく男女兼用である。靴底を「良い音の鳴る木」にしてなどと言われても対応できないが、それでもとても興味深い。

 

 

国によってデザインが異なる。それらを良いと思えばそこに需要が生まれた。

 

 

王宮では様々なデザインのドレスや靴、それに紙袋で顔を隠す人が見られるようになった。

 

服といえば遠心力による脱水脱水ローラーは上手くいっているような上手くいってないような気がする。どちらも生地次第でボロボロになるかが決まる。

 

そもそもの服にしっかりした洗濯をするほどの強度がない。

 

しかも動物の角を使う大きなボタンがあったり貴金属や装飾品が縫い付けられている場合なんかにはどちらにしても脱水がしにくい。ローラーのゴムの部分を柔らかく分厚くするとそこが引っかかってローラーか服のどちらかが破れる。型崩れ防止にネットを作ってから脱水するかな……。

 

程よく伸縮し、肌触りも良くて……何年も着れて洗濯もちゃんとできる合成繊維が懐かしい。

 

いや、服によっては遠心力での脱水もローラーによる脱水もちゃんと脱水できるし、そもそも「洗わない」ってのは嫌だから何もなしよりはありなんだけど……服の形に合わせた穴をプツプツ空けた陶器と火と風の魔法が優秀らしい。

 

魔法が必要だけど、熱風や風で服の中から乾かせば服にダメージが少ない。

 

 

「…………」

 

「フリム様、どうかしましたか?」

 

「やはり王都は疲れますね」

 

 

王都ではリヴァイアスと違って考えることが多い。

 

ラズリーは舐めてくるわ爆発するわだし、ヌールーさんは明らか怪しいのに何もしてこないから警戒をし続けている。服飾は可愛いけど、無茶な要望を言ってくる人もいるみたいだ。

 

 

「お茶にしますか?」

 

「いえ、ミリーに新作の服でも着せようかなと」

 

「え、あ、はい」

 

「エール先生も着ましょうね」

 

「はい……お疲れのようですね」

 

 

全員分、長い袖のドレスを着てもらおう。あのデザインは可愛いものだった。

 




コミックの更新嬉しい(*´ω`*)フリムちゃんかわいい!
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