水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね? 作:mono-zo
いつ怒り出すかわからない令嬢の相手にも慣れて来た。
外国から来た中で本気でシャルルを狙ってるように見える……危険そうな姫は二人。
ライアームと縁のあるアームリアヴィスより更に西のある農業国家から来たナンナ・ヴォルテ・イ・アシュナイ。ナンナさんは一度シャルルを押し倒して「婿取りは成った!私こそ王妃だ!!」と宣言してシャルルを恐怖させた女性。
国元ではそういう風習もあるのかもしれないけどここにオベイロスなので無効。彼女の一族は土と豊穣と火矢を司る天使の加護を授かっているらしい。私は敵対視されている。
それにガルガンドス・バッラ・コンナ。コンナが名前で性がガルガンドスらしい。遠く、南方の戦闘民族の姫で悪さをしていたことから他国に行儀見習いに出された女傑。
胸はあるけど、胸よりも上腕二頭筋の目立つマッチョ。行儀見習いを勝手に抜け出して傭兵業をやっていたという異色の経歴持ち。
聞き取りによると彼女はシャルルを射止めることができれば借金が返せるから参加している。お金さえ支払えば何でもやると言っていて、天井で待機して王の貞操を狙った一団の一人である。かなりの危険人物だ。私との接点はまだ無い。
二人とも警告で終わったが、また何かしそうであるため強めの監視対象だ。
まぁオベイロス側にも危険な令嬢はいる。
自分の名前が赤ちゃんの鳴き声から来たという由来を持つミィアは嘲られたと感じれば喧嘩するし、ラズリーは私がいない間に何度も爆発騒ぎを起こして最近水没騒ぎを起こした。二人ともオベイロスきっての問題児だ。最近のラズリーは広場で「私は魔導省を水没させました」と看板を持った状態で丸一日石像の中に閉じ込められていた。
ある意味謎に均衡が取れている気もする。
そして、ラズリーが他国から見ればえげつない罰を受けていたことで「最重要人物であっても罰はある」と他国から来たお見合い参加者は学んだようである。オベイロスの貴族が「またか」という態度をしていたことにも彼女らは驚愕していた。
好き勝手に走り回ってる問題児もいることはいるけど…………他の令嬢は大した魔力も加護持ちもいないし大人しいものだ。内心ではどうかはわからないけど行動的じゃないだけマシかな。……そもそも問題を起こさないでと言いたい。
明確にストレスのかかる環境にあるし、喧嘩や問題は起こるべくして起こっている気もする。私にもペーパーテストの時間はあるし、内心では理不尽すぎる問題には腹も立つが……そういうものだし、諦めるしか無い。
この時間、オベイロスの子息令嬢は燃え尽きたかのような雰囲気で回答し、他国の令嬢は明らかにキレつつ試験を受けている。
他国の人間からすればオベイロス貴族の自慢とか特産品とかが問題に出れば答えようもないと思えるけど……国元からの期待や従者の目がある環境的もあって「出来ない」とは言えないんだろうなぁ。人によってはこの時間を無断とでも思っているのか机に突っ伏して寝てるまであったりする。
礼儀作法や特定の技能を見る時間では国によって基準が違う部分があるので評価は一概には言えないだろう。
ただ――――
「良いわね!フリムちゃん!」
「ありがとうございます」
「皆さんもフリムちゃんを見習ってね!王室に入れば学ぶことですし、そうでなくても学びに損はありません!はい!しっかり動いてお茶会楽しみましょう!」
礼儀作法や手芸の時間はうまくいっている。
手芸は水の魔法で針を動かせばミシンいらずの動きができるし、礼儀作法は完璧な所作が出来る。
お子様ボデーの子供フリムと違って今の大人フリムは無敵と言っても良いかもしれない。なにせ「王宮で学んだ所作の正解例」を知ったうえで「身体が痛くない」「思うように動ける」のだから……それにリヴァイアス領でゆっくりまったりしているついでに水魔法の鍛錬をしていたしね。
精霊の加護を授かることで「少しだけ健康になる」「ほんのり病気になりにくい」と言う共通の恩寵があるけど、その効果もあるかもしれないな。思うように身体も動かせて気分が良い。
自然と子供モードに戻れるまでどれぐらいかなんとなくわかってきたし、戻ろうと思えば戻れるだろうけど…………今はこの方が都合が良い。
「次はこうよ」
「「「「はいっ!」」」」
ドレスは重いし、体の動きを制限する。ただその上で完璧と思える動きを模倣し、ほんの僅かに思い描く自分を表現する。
自信ありげにするか、抑えめにするか、派手にするか……今の悪役令嬢の私なら完璧かつ、ほんのり自信ありげにするのが正解のはず。
表情、姿勢、裾の動き。視線の配置――――今の私なら出来る!
「チッ……何よあの女」
何処かから嫉妬の声が聞こえたな。
何度転んでも頑張って習得しようとする令嬢がいる一方、誰かにヘイトを向けるような人もいる。
「…………」
「はぁっ……はぁはぁ……おねぇ様ぁ……」
リュビリーナが若干壊れそうである。ステイステイ、こんな場所で飛びかかってこないよね?…………あ、ジュリオンが止めた。
「あぅ」
「大丈夫ですか?ミンテーさん」
「ありがとうございま――――あ、ああああ、ありがとうございます?!」
私のすぐ横で転倒したミンテーさん。
手を貸して起こして上げようとしている途中で私だと気が付いたのか驚いていた。彼女は刺繍が得意なようだけど、運動は得意ではなさそうだ。
「いえ、あぁ、そうだ」
「な、なっんでしょ……ぅ……」
「お茶会の後、お話があります。水の宮に来るようにお願いしますね」
「ケェ……?!」
謎の声を上げたミンテーさん。
「美味しいものでも用意して待ってますから」
「……………………………………はい」
青ざめた表情で了承してくれたミンテーさん。私の何がそんなに怖いのだろうか?
とりあえず約束は取り付けられて何よりだ。
大雨らしい。こんな時は小説がいいのかもしれない。
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