水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第370話 妖精姫にヒアリング(ナンカヘンナノイタ)

 

お茶会だけでもその人を見ることが出来るが……やはりシャルルがいるからこそ本性を出していない場合もある。

 

それにオベイロス貴族が他国の重要人物である彼女らになにか取り返しのつかない悪さをしていた場合、仲裁をする必要がある。セルティーさんも独自に仲裁しているようだけどあまりうまくいっているようには聞かない。

 

何かしらの爆弾が出てくるとすればミンテーさんの可能性が高い。それに基本広場で手芸しているから予定はなかったはず。

 

 

「どうぞ、お待ちしておりました」

 

「殺さないで……お招き、とても光栄です。……殺さないで、おねがいします」

 

 

第一声がそれか……。

 

 

聞き取りするのにミンテーさん以外にも候補はいるけど……彼女は明らかにお見合い大会に意欲がない。やる気がないのであれば彼女にストレスを与えるのは本意ではないし私のやっている悪役令嬢のネタバラシしてもいいとすら思っている。

 

彼女はとても不憫である。騎士の国の姫君で彼女についていた元々の護衛や従者はスーリの襲撃によって全員逃亡、姫なのに一人だけになっていた。代わりに仕えるべき主を失った他国の護衛や従者が集まって彼女についた。ある程度護衛や従者は仕える主の元に戻ったりもしたそうだけど……「主をスーリから守れなかった」からと解雇されてそのまま正式に主従になった人も多くいる。

 

しかも、シャルルの好みが「幼い見た目の女性もしくは男性」という噂があり、私がいない間の最有力候補という情報があったためか国からも追加の人員がおくられてきて……小国の姫君なのに、他国から来た中でも最大勢力となっている。

 

シャルルは他の令嬢のように突撃してこないし目立つ場所でずっと裁縫をして過ごしている彼女をプラスにとったようで彼女のことを気に入ったと発言して令嬢の攻撃対象となった。

 

シャルルが悪い気もするけど、シャルル的には関わってくる気がない部分を気に入ったのは理解できる。

 

 

「なにか困ったことはないですか?」

 

「あ、あの……それを言って、殺されたりはしませんか?」

 

「……」

 

 

今の私は外から見ればシャルルの筆頭婚約者の中でもトップに位置するだろう。

 

つまり普通に考えれば彼女はその立場を揺るがす敵対者であり、その心情は予想はできる。と言うか視覚で見て取れる。

 

 

彼女はもうガックガクの状態で、汗がダバダバ出ている。

 

 

私は優しい正妃候補ではなく評判の悪いであろう悪役令嬢である。以前リュビリーナと他の筆頭婚約者の派閥の子に威圧されて逆に全員膝をつかせたことは王宮では常識になっている。

 

彼女に怖がられていて当然で……ちょっとどう答えるか詰まってしまった。

 

 

「勿論、殺したりはしませんよ?」

 

「う、嘘だぁ!?」

 

「嘘じゃない、嘘じゃなーい」

 

「ピェ!?こ、殺さないで……」

 

 

いけない、もう精神崩壊しそうなほどの恐怖が見て取れる。ちょっと悪役令嬢をやりすぎたのかもしれない。

 

 

「ほら、お菓子でも食べて落ち着いてもらって」

 

「げ、解毒薬は?……せめて苦しまないようにお願いします」

 

「毒なんて入ってませんよ、ほら落ち着いて<水よ。出ろ>」

 

 

お菓子をかじり、彼女に水を出した。

 

彼女は全く信じてないようで私が食べた部分にあわせてほんの僅かに触れただけのように見える。水も毒見してから渡すと口につけた部分から飲んでいるふりをしていた。

 

明確に毒を警戒されている。

 

 

「困ってることは、たくさんあります」

 

「教えてもらえますか?」

 

「言わなきゃ殺され……いえ、全部話します」

 

 

小声だったけどなにか聞こえたな。

 

まぁ良いや……彼女の近況を聞いてみるとお見合い参加者からの嫌がらせは激しく、ゴミを窓から投げ入れられたり、精霊込みの威圧されて漏らしそうになったり、廊下の移動を妨げられたり、手紙が数回に一回は届いておらず、王宮にやってくる商人の物販は自分の買う順番になる前に良いものはなくなってしまう。

 

 

「そもそも妖精の血を引いているため、精霊の皆様方の、いえ、こちらの貴族の皆々様の力がより感じられて押し潰されそうです。殺さないで」

 

「なるほど?今の私はどう見えていますか?」

 

 

ミキキシカの精霊眼のようなものかな。

 

ミンテーさんは妖精の血を引いていることもあって見えているものが違うのかもしれない。

 

 

「後ろに大きな精霊様方がたくさん。特に大きな魚のような精霊がこちらを覗き込んできてます。……ヒェ」

 

「私は害する気はないので落ち着いて」

 

 

魚……多分リヴァイアスかオルカスだな。

 

続けて話を聞くと……騎士の国でも彼女は妖精の血が出たことで冷遇されていた。しかし妖精の血を引いているから正妃になれる可能性もあるかもと厄介払いのようにこちらに送り込まれたそうだ。

 

というか騎士の国はオベイロスの北側で一部隣接していて、政争時にはオベイロスに攻め込んできたと言う最悪の経緯もある。そのため厄介払いをされている可能性も高い。

 

あと国元では蔑まれていたのに増援できた令嬢は元々自分より立場のあったため怖いそうだ。隙あれば自国の人間に襲われかねない事もあって主を失った護衛や従者が彼女を彼女の国元の人間から死守するという状況でもあるのだとか……それは喧嘩が起きた場合国際問題になりそうだから騎士に報告しておこう。

 

 

「王宮ではどう過ごしていますか?」

 

「人の目がある場所で刺繍をしております。結婚もしたくないです」

 

 

来た当初は姫なのに一人で身元が怪しかったし、他国から集まった護衛も従者も不審に見られる可能性があった。

 

しかも本人も選ばれるとは思っていないため前に出たくもない。

 

大人しくしているとアピールをしているようだ。

 

 

「よくわからないのですが、オベイロスの方々にはとても良くしていただいてます。エステとかドレスとか。でも理由もわかりませんしそれが逆に怖いですし、周りの目もものすごく怖いです」

 

 

エステは良いコースを行ってもらえるしドレスは豪華なものを作ってもらえるけど、その分周りの貴族の目が怖い。

 

多分エステとドレスはあれだな……うちのやってる事業だし、リヴァイアス出身者はシャルルを嫌っている節があるから有力候補とされるミンテーさんにくっついてほしいんだろう。

 

 

「もうね、一人で旅に出たいです。どっかの商家で働きたいぐらいで……」

 

 

ストレスが溜まっていたのかだんだんとぶちまけてくれた。

 

泣き言、恨み言、だけどこっちの食べ物しっかり美味しい。帰りたくないけどここにもいたくないなどなど……。

 

彼女はふと疲れた目で自分の従者に目を向けた。

 

 

「それと―――――こいつがすごい嫌です」

 

「彼は貴方の従者では?」

 

 

ミンテーさんの横にいた黒紫のスーツを着た細身の男性、彼がなにか問題でも起こしているのだろうか?

 

 

「こいつ、何故か従者面してますけど、魔国の王族です。タスケテ…………」

 

「……は?」

 

「お初にお目にかかります。リヴァイアス侯爵。魔国第一王子ハーリュー・ディースです。――――クククッ!」

 

 

口角を釣り上げて心底愉快そうな表情になった彼。いっ……意味がわからないんだけど!?

 

 

「えーと意味がわからないんですけど」

 

「失礼。オベイロスのお見合いにはオベイロス王目的で参加しました。かの王は女性を寄せ付けないとお聞きしまして」

 

 

特大の爆弾が出てきた……。

 

な、なんで従者なんてやってるんだ!!?

 




数日大雨で読み物が欲しいかと思っての連続更新……ただ、台風はもう通り過ぎたっぽい。
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