水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね? 作:mono-zo
しばらくの間すごく楽しんでいた。
エール先生やジュリオン、ミリー達のドレスを好きに作って着てもらう。
私も綺麗な服に袖を通すのは気分が良くなる。……だけど、私よりも私は私の周りの人が良い服を着ている方がテンションが上がる性格だった。
妹の髪を手入れし、一緒にお出かけして……妹が注目されている時はなんだか誇らしくて気分が良くなっていたものだ。
それに今ならドレスだってある程度私の手で作ることが出来る。
初めから全体をデザインすることは私にはまだ出来ないが、既にあるドレスや帽子に装飾品を縫い付けるぐらいなら出来る。
大きな宝石とか私がつけるのは畏れ多い気がするけど、周りの人がつけてくれればそれは私の気分も良くなる。しかも今なら外国のデザインのドレスがあるからドレスも好きにしても良い。
「お客様素晴らしいですわ!」
「お客様?」
前世でおなじみのビジネススーツを作って店員の真似事をしている。
アパレルだと多分スーツじゃないかもだけど、スーツを着てやりたくなった。
「お客様の髪の色にバッチリです!これは上品さと優雅さを兼ね備えた逸品で……」
「あの、フリム様?なにを……?」
「接客と言えばこういう感じかなと」
ちょっと遊んでいたらジュリオンがエール先生に部屋の隅でコソコソと「そういうお年頃だろうし付き合おう」と言っていた。大人フリムは耳も良いのだよ?
なんかちょっと恥ずかしくなったけど、まぁ良い。なんとなくそういう気分だったのだ。
「こ、これ、ほんとに貰ってもいいの?!壊しちゃっても知らないんだからね!??」
「良いんですよー」
リーズも驚くほどの大きな宝石をドレスにつけてあげた。
だいたい、私の元にはちょっとえげつないほどの宝物が届く。
だって交易や商売がうまくいきすぎている。
オベイロスは排他的な国だし、その上、政争が起きてからはその風潮は増したそうだ。
そんな国とのかすかな交易だけど他種族・多民族かつ海に面したリヴァイアス領はぴったりなようで……しかも列車も商業用に物を運ぶようになった。そのため更に儲けが増えている。
流石に税金はシャルルに直接渡しているけど、そんなの気にならないレベルで懐に入ってくる。
だから私も大金持ちだ。贅沢すれば良いと言う考えも家臣にはあるが……そういうのはノーサンキューである。
自分のお菓子に300円は高いと思うけど、お世話になった人には5000円の菓子折りは惜しくはなく。家族のためなら奮発してケーキだって買って帰っちゃう。――――金銭感覚とは不思議なものである。
まぁ良いことばかりではない。
家臣の中には裕福になって賄賂を要求し始めた輩もいるっぽいし、そうなれば処罰の許可は私のもとに来る。
大量の輸送は列車が担っているが、それまで自分の足や騎獣を使って地道に商売をしていた商人にとってはそれまでの商売での稼ぎが減るわけだからたまったものじゃなく……思った通り列車の襲撃や線路の破壊を目論んだようだ。
ある程度予測はしていたけど……軍と騎士が武力で対応していて、経済と争いの関係性が垣間見える事態となっている。野盗となったところで精霊と一緒にいる騎士の方が圧倒的に武力が上である。決着はすぐつくことだろう。
そして貴族だ。
基本的に列車で儲けているのは私だ。列車は王都とリヴァイアスの直線を走る。
途中の駅も相当儲けているだろうけど、結局のところ最も儲けているのはオベイロス王家とリヴァイアス家である。
金銭が動けばゴミカス貴族どもは声を上げてくるもので……「利権をよこせ」だの「商売するから手伝え」だのと手紙がわんさか来ている。
列車の中でも最も手間のかかったであろう地盤と路線を作ったのはボルッソファミリーだ。ベアリングとスプリングは私の発想。金属部品はユース老先生……なのにノータッチであった貴族にも利権をよこせと言われてもなぁ。
そもそもこの列車はシャルルがサプライズを考えて、技術面でユース老先生に相談し……「できそう」だった。だからシャルルとレージリア宰相がそこに投資し、男共が悪ふざけのごとく協力して出来た浪漫こと列車。
そもそも「いきなり列車作る」のだから混乱も当たり前だろうけどさ。
今では貴族の観光にも使われていて……リヴァイアスで問題を起こしているという報告も来ている。
儲けたい貴族は多い。
持ち込みに手持ちの荷物ぐらいなら良いけど、まだ商用利用は許されていないのに積み込もうとしてくる。それは却下だ。
なにせ鉄道を破壊したいアンチもいる。なのに信用できない人物に貸し出すスペースができてしまえば内部で破壊活動する隙ができる。
お金儲けは良い部分もあるがストレスでもある。
ならこうやってストレス解消するぐらいちょっとぐらい良いだろう。
大柄なジュリオンは自分から可愛い服を着ないし、装飾をつけられる面積が広くて飾り付けが楽しい。エール先生とミリーになんとなく猫耳をつけてもらったりと……最高の時間だった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「近くの領地で精霊が昂ぶっていてな。しばらく留守にする」
「大丈夫なんですか?」
「あぁ、いつものことでな。あそこの精霊は酷くわがままというか、迷惑と言うか……」
シャルルが用事で出かけるらしい。
リヴァイアスの恵みの雨の時も王様なのに来ていたけど、これも王家の仕事っぽい。
聞いてみるとその領地の精霊は誰かに加護を与えているわけでもない精霊であり、領地を任せられた貴族が正しく儀式さえすればそれで満足するそうだ。
問題なのが「正しく」という点だ。
一種類の果物を山盛りに集めて、領地を任された貴族は一日半その種類の果物のみ食べて過ごす。たったそれだけの儀式。
しかし、そこの精霊が選ぶ果物は毎回別のものであり、特定はできない。精霊の好みに当たるまで周りの領地の精霊に当たり散らすそうだ。
別の果物ぐらい用意はしているが一日に食べて良い果物は一種類のみ。当たりが出るまで何十日でもそこの精霊は付近の精霊と揉めるそうだ。そして、時間の経過に伴って過激になってくる。
凄まじく迷惑な精霊である。そのためその精霊が騒げばすぐに王家に連絡がいく。
「5日ほどで帰ってくる」
「毎回3日以内に済んでいると聞いてますよ。しかも精霊に会って果物の種類を聞くだけ」
「ちょっと他にも用があるし、暴れていると別の領地にまで探しに行く必要があるからな」
シャルルが私から目を逸らしてそう言った。
あ、これ後ろめたい時にやるやつ。弟はこうだった。
「ぶっちゃけお見合いから逃げたいんでしょう?」
「まぁな」
「まぁなじゃないんですよ。早く帰ってきてください。私じゃ役不足な部分もあるので」
他国の姫君への対応は完璧とは言いにくい。
しかもまだまだ舐められている。平然と文句は来るし、廊下ですれ違えば唾を床に吐かれる始末。ヤンキーのようである。
「3日……いや、接待を抜いても1日……いや2日以内には帰る。精霊がいつもの場所にいなければもう少しかかる」
「助かります」
逃げようとしたようだがそうはいかない。
というよりシャルルの婚姻を最もプッシュしているレージリア宰相付きだし、休暇にはならないだろう。
なるべく早くお願いしますとレージリア宰相宛に伝言と超魔力水を送っておこう。
エアコンマックスにして室温40度こえてるとかヤバい。
皆様お気をつけを!