水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね? 作:mono-zo
シャルルがいないからと言ってやることは変わらない。
いつものように、いや、シャルルがいない今だからこそ本性を現す令嬢もいた。
「あら?今日はシャルトル様と一緒じゃなくって」
「はい、シャルルは政務がありますので」
「ふぅん、なるほどねぇ」
何が「なるほどねぇ」なんだろうか
くすくす笑われているが、またどうせシャルルは私に飽きただのと噂でもしているのだろう。
直接足をかけようとでもしているのかふらふら距離を取って近付いてくる人も増えてきて……ちょっと興味深い。環境の変わった生物を見ている気分だ。
「リヴァイアス!リヴァイアス侯はいるかァ!!?」
「ここに、いかがしましたかポヨ大臣」
「いかがしたではない!客だ!さっさと来るように!い、急ぎでゴホッ……横っ腹が……」
どう見ても不健康そうな見た目のポヨ大臣がピンボールのように駆け込んでくるとか何事か。
全力疾走して入ってきて横腹に手を当てて恥も外聞もなく座り込んでしまった。ミィアも口開けて驚いちゃってるし、こういうことは珍しいようだ。
「<水よ>……どうぞ」
「あり……ありがた……く、すぐに上等な服に、着替えて、謁見の間に来るように……オギャース!オギャースはいるか!!」
「その名前で呼ぶなってんだろクソが!!」
「ドブァ!?」
とにかく正装に着替えて謁見の間に着てくれとだけはわかった。ミィアに蹴り飛ばされたポヨ大臣。
その様子からして……ただ事ではないのだろう。
保護者のいない現状、私のみを狙ってくることも想定していたが……ポヨ大臣は「私を害するチャンスだから来た」という雰囲気ではなかったな。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
敵でもピンチでもなんでも無く、お客さんだった。
ただそのお客さんが、国の大臣が運動不足も忘れて駆け込んでくるような相手だった。
私も事情はわからないまでも急いで着替えて行ったのだけど、高位貴族が謁見の間にずらりと並んでいた。
最前列にはガリアス君も並んでいたぐらいで、事の重要性を感じる。
部屋に入った瞬間からポヨ大臣に手招きされて奥に進むが……貴族達の私を見る目がなんか妙にきつい。
しかし、悪意でも、殺気でも、敵意でもない。苦虫を噛み締めた後に頭痛が痛くなったかのような顔でなにか言いたげにしている。
「フリム殿、陛下のいない今、ポヨ大臣かデンレール卿が対応すべきでしょうが事態が事態。貴女が責任者となるでしょう」
「プラー何がありました?まだ何も聞いていないのですが」
赤竜騎士団のプライマーレ騎士団長が声をかけてきた。
彼もいつもよりも豪華な服を着ている。
「悪い話ではないでしょう。エルフとドワーフの国から使者がやってまいりました」
ドワーフとエルフの国から使者がやってきたそうだ。
…………
……………………
………………………………
なんだか心当たりがありすぎる。
ドワーフとエルフの一団は謁見の間に同時に入ってきた。
両方どこか早足で競うように前にやってきて、同時に膝を落とした。
エルフは優雅に頭を下げず背筋を伸ばしたまま、ドワーフは頭を下げて床に拳をうちつけるようにして。
「「この度は……チィッ!」」
二人の言葉が被った。
ドワーフ団の先頭にいたフドンさんと、代表者らしき見知らぬエルフが同時に声を出し、目で睨み合って舌打ちした。無言で2人とも睨み合っている。
ただ、ドワーフの一団が先に前に出てきて、人が入っていそうな大きな壺を三つと巨大な鏡を並べてきた。
「この度はリヴァイアス侯爵への謝罪をフドン・エルガがドワーフを代表して参りました」
「おい、私が先だぞ」
「早いもん勝ちだ」
恭しくも早口で言った後、すぐに横のエルフさんにフドンさんがなにか小声で言った。
場が静まり返っているから聞こえてるけど。
「ミーステー・ラニーカー、■■■。精霊遊ぶこの国に来れて■■■■。使者として里を代表してパルルカン家の六の芽が礼に参りました。この度は我らが枝様の無体な行動を深謝し、そして我らが樹、我らが葉、我らが技をお助け頂き報恩したく。またリヴァイアス侯爵閣下の海よりも深く、深き山の水が如く■■かな行いに我らエルフは感佩しております。■■■、■■■■……■■■■■■。この出会いを精霊に感謝を」
「何言っとるのかわからんぞ、今の時代の言葉で話せ」
「伝わってないか?言葉は時代で変わるからな……」
エルフさんは多分スーリの代わりに挨拶に来たっぽい。
どちらもまごうことなきリヴァイアス案件である。
私はこちらの言葉はわかるはずだけど、彼の言葉は一部完璧にわからない部分があった。ただ、お礼に来たってことはわかった。
エルフの使者さんはフドンさんに突っ込まれてちょっと焦ってるような気がする。
そのまま言葉を考えているのか、考え込んでしまったので声をかけることにした。代表者は誰かわからないけど明らかにリヴァイアス案件だしね。
「王家相談役リヴァイアス侯爵フレーミス・タナナ・レーム・ルカリム・リヴァイアスです。一応ですがお礼に来たってことでよろしいでしょうか?」
「はい、その通りです。天使と悪魔の襲撃から■■■……伝わらないか、ありがとうございます」
「もっと子供だったような?」
この姿でフドンさんと合うのは初めてかもしれないし不思議に思っても仕方がないだろう。
「精霊の力で大人の姿になりました。フドンさん、今ならお酒も一緒に飲めそうですね」
「おぉ!確かにリヴァイアス侯爵じゃの!!」
「ドワーフはこれだから……魔力で同じと分かるものだろう。里に流れた水と魔力が同じだ」
「魔力で人を測るのは普通じゃないんだがの」
「そう、なのか?それに人はすぐに成長する。草木と同じく2度見る間に大きくなっていても不思議ではない」
「これだから時間の感覚のないエルフは……限度があるじゃろうが」
エルフとドワーフでなにか確執でもあるのか口を挟み合っている。微妙に仲が良さそうに見えなくもない。
「そんなわけで我らドワーフからはこの壺と件の鏡を持ってまいりました。割りますのでお下がりください」
「割る?」
「はい。これはドワーフの礼儀ですの」
芸術品と言っても差し支えない大きな壺が順に破壊されると中から目がチカチカしそうなほどの財宝がゴロゴロ出てきた。
鏡も流れで割るのかと思ったがそうでは内容でホッとした。鏡は保護の魔導具がついたままでも立派なものだった。これは設置してから保護具は外されるらしい。
六の芽を名乗ったエルフは頭を下げて目録を渡してきた。
「我らエルフはこれら財宝……宝……価値あるものをリヴァイアス侯爵に渡し、リヴァイアス侯爵が主たるオベイロス王家に10、リヴァイアス家に100のエルフを500年、労働力……難しいか、働き手、仕事をするためにつれてきました」
本気で言葉選びで悩んでいるのか簡単な言葉で言い直してくれている。
エルフは長方形の棺桶のような箱を開けて財宝を見せてきたが、それだけで魔力が溢れてきた。これも多分良いものなのだろう。
「ぬぅ……これでは我らの鏡が霞んでしまうではないか」
「フドンさん。あれから色々あったのですよ。ほんとにもう……」
ドワーフの国では貴族とつながりのある商人が他国の侯爵領の領都の門前で戦闘行為を行った上で脅したのが大問題になっていた。
オベイロスは他国に対して領土拡張を狙った侵略はなかなかしない。とはいえ、精霊という上位存在と縁を結んだ貴族が多数いる他国から見れば恐るべき国家だ。領土はとらず、短期間であればその力を遠方で振るったという記録もある。
ドワーフの国はオベイロス国への正式な謝罪を行おうということだろう。
人が入りそうなぐらいの大壺には細工された宝石や精霊石、それに装飾品などがぎっしり詰まっていた。これはドワーフ流の謝罪の方法で壺の中に入れたものは謝罪相手の前で割って見せるようである。
「儂からの謝罪がこっちの壺で、一つは商人と繋がりのある貴族からもぎ取ってきた。あと一つは……陛下からじゃの」
「ドワーフの王様からですか?一体何故……?」
「商家とはいえその船にはドワーフの貴族が見習いにおっての。その上、他国の門前で暴れた上、その身を助けていただいたというのに国の名で脅すなど卑劣極まりないとお怒りでな。それも交易港で行ったものじゃからドワーフ種の名誉が傷ついてもうた。なら謝罪せんといかん。……たしかそんな流れじゃったかのう」
「なるほど、なんだか曖昧ですがほんとにあってますか?」
「いやーリヴァイアス酒がうまいのが悪い!陛下と一緒に飲んでの?揃って心地よくひっくり返らせてもらいましたわ!」
なんかお酒目当ての気がしないでもないけど、とりあえず「うちの貴族に何しやがんだゴルァ」ってことじゃないなら良いだろう。
「それは……身体は大丈夫でした?」
「ドワーフに酒の心配とは剛毅なことですのう!!いや、あの酒なら当然かもしれませんの……して、あの酒、購うことは出来ましょうか?」
「購入ですか?あーどうでしょうね」
「そこをなんとか!陛下も所望されておりまして!!」
「あれはお酒に特殊な加工を施し、精霊のいる場所で熟成させ、特殊な魔法を使ったり、職人が丁寧に作り出しているものです。その過程で精霊が持っていってしまうので開けるまでどれだけ残っているかもどれぐらい出来ているかわからない代物です。開けてない樽の中身が全部無いという可能性もあるので確約はできかねます」
そもそも蒸留酒を作るのに酒が必要であり、その先管理していても樽の中身がゼロの可能性があるというの経済的に最悪だ。
減れば減った分、元を取るためにも値段は上がる。
それでも価値のあるものだろうし、家臣や眼の前のフドンさんの反応を見るに作らない選択肢はない。確約はできないが。
「うぅむ……精霊が喜ぶ酒だからこその難儀ですな。たしかにあの酒にはそれだけの価値はある」
「我々も量を増やしたいので日夜研究を重ねてはいます。しかし出来上がった酒があれば売りましょう」
「ほんとか!いやーこれで儂の面目も立つというもの!!」
「量や味はわかりませんよ?」
「かまわんかまわん!そりゃ美味いにこしたことはないが、急かしたところで佳い酒は手に入らんからの!」
フドンさんはごきげんな様子だ。まぁ一応保険を入れただけで一定の量は確保できるだろうし、少しぐらいは良いだろう。
エルフの様子を伺うが、見せられた品が迫力がありすぎてちょっと怖いな。
……エルフの場合、ドワーフ側の「国際問題になってもおかしくない」「戦争をするかどうか交渉で防げる可能性がある」程度の謝罪と賠償ではなく――――「同盟国の侯爵領及び侯爵に侵略ととれるような加害行為をぶちかました上で国を助けられる」というとんでもな状況もあったため、もはやよくわからないレベルの希少な品や権利なんかがエルフの労働力とともに贈られてきた。
リストを見るに「火の最大魔力を底上げできる精霊具」だとか「山の木を根こそぎなぎ倒せるだけの風を発生させる竜の秘宝」だとか「持っているだけでゴートノーズの権能を得られる魔具」だとか「生きていれば『どんな怪我でも治癒する』『病を無かったことにする』『十年若返らせる』人間用治癒神聖聖具一式、天使からのお墨付き」だとか……多分超希少な物が多くある。
常に申し訳なさそうにしているルルニエが国元に何があったかをまとめた手紙を書いてたのもあって被害が正確に伝わっていたのも原因だろう。
リストには理解に苦しむものがある。中でも「何処かの泉を使っても良い」とか「パルルカンを名乗ってもいい」とか「古代巨神族の爪の欠片」なんてのは正直意味不明である。
貴族の反応はよくやったと言う反応は少なく、むしろ問題起こすなと言わんばかりの態度が大多数。
なにせエルフの国は同盟関係だけど、どちらの国力が強いかといえばエルフ側である。それになぜかおまけでドワーフからも贈り物が来た。ドワーフの王様からもついている。
整列している他の貴族の視線が凄まじい。特に宝物が出てからの視線は更に強烈になって物理的に突き刺さりそうである。
貴族からは欲望にギラついた雰囲気で私に視線が来たから扇子で口元を隠してニッコリ受け流す。
高位貴族の並ぶ周辺を見れば「頭いてぇ」「何がどうしてこうなってんだ」「おまえなにやってんの」といった雰囲気が感じられる。私もなぜこうなったかはわからない。
コメント見るのが最近の楽しみ(*´ω`*)いつもありがとうございます!
SNSで活動停止の可能性を書きましたがとりあえず頑張れてます。
PCが暑すぎてか停止したり、椅子が壊れて新品の椅子も壊れてで腰を二度打って打撲もあったので。(たまによくわからない不幸が続くことってあるよね)