水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね? 作:mono-zo
「昨日ぶり、ん?なんか痩せ……縮んだ?ちゃんと食べてる?」
「昨日ぶりかぁ」
「うん、昨日。ちゃんと食べてる?」
「和樹、そっちとは進む時間が違うんだって」
寝ると弟の和樹がいた。父さんはミィアにペコペコ頭を下げていた。
前回から軽く数カ月は経っているというのに、弟は普通にしている。
いや、向こうの時間で「数十年経っていた」とかじゃなくてよかったけども……なんだか苦笑してしまう。前回会った時と変わらない家族に、それまでの間に色々ありすぎた私に。
「今日は人が多いね。そちらは?」
「えっ……あれ?」
後ろを振り返るとミィアだけじゃなくてリュビリーナがいた。
「おねぇ様?」
「わりぃ、近すぎて連れてきちまった」
ミィアの夢の魔法って個人を対象にしてると思ってたけどそういうこともあるのか。
前にもリーナを枕にしていたこともあったけど、その時は来れなかったはず。
「えぇと、こちらリュビリーナ」
「リュビリーナさんこんばんは」
「どもっす」
父さんは丁寧に頭を下げたが、和樹は普段絶対に見かけない西洋美人に腰が引けたのか無愛想だ。
それとリュビリーナのことは気にしてなかったから注意してなかったけど若干薄めの寝間着なのも理由かもしれない。
「この人とはどんな関係?」
「ストーカじゃないな…………配下、かな」
家族にリュビリーナの説明をするとか難易度が高すぎる。
元々敵対していたけど小さな子に責められたいとか椅子にしてもらいたいとかでなぜかうちの配下になったとか……言えないな。言ったら言ったで「そういう趣味だから配下にしたのか」とか言われかねないし。
「あの、おねぇ様?」
「あぁえっと、こちら前世の私の家族。父親と弟です」
前世とは世界が違う。当然ミィアとリーナには日本語が通じていない。
リーナは偶然来ちゃったし説明ぐらいしないと。
「――――……まぁ、まぁ!まぁ~!!おねぇ様の御家族!!!」
「え、あ、はい」
飛び上がらんばかりに身を震わせ、凄まじく笑顔になったリーナ。
「どうも、おねぇ様の将来の嫁……リュビリーナ・レンドリュー・デ・ガーレールですわ!!いえ、リュビリーナ・レンドリュー・デ・リヴァイアスになるのかもしれませんわね。このミカシスの佳き日、出会いに感謝を。おねぇ様を生み育ててくれて、感涙しそうですわ」
「「「「…………」」」」
なんかテンションがぶっ壊れたリュビリーナさん。
言葉が通じていないのになんか結婚の挨拶みたいなのし始めた。今世は育ててもらってないんだけどな。
父さんと和樹は手を掴まれて言語の違う言葉を早口で言われて困惑している。
あまりの変化に私とミィアは言葉も出ない。言葉が通じていない父さんと和樹も同様である。
「何言ってんだオメェ、ちょっとこい」
「ここが私の愛の戦場!お父様に気に入ってもらえれば……こ、婚姻できるかもしれないでしょう!それとも貴女……まさかこれまでこうやってお姉様との婚姻を目論んでいたのですか!?」
「マジで何いってんだ?!」
リュビリーナさん……親が結婚を決める貴族の価値観もあるのだろうけどさ。
でも前世の家族になにか言ってもなぁ。しかも言語的に通じてないのに。
「ねーちゃん、彼女はなんて?」
「挨拶挨拶」
「なんか殴られてるよ」
「いつものことだから」
「えぇ……」
ちょっといつもとは違っている部分はあったものの、家族との交流が出来て何よりだ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
いつの間にか私だけ先に起きたのだと思う。
いつもと違う感覚だった。いつもなら家族と好きなだけ話して、ミィアかミィアの闇の精霊に言えばふっと戻してもらえるが、そんな様子もなくなにかに強制的に引っ張られた感じがあった。
会話の最中だったのに……まだ体が眠っているような、金縛りのような状態で動けない。
「ちゃんと起きたのねぇ」
声はする。だけど真っ暗で周りがわからない。
ただ、頭部にリーナ、横にミィアがいることは感じられる。
そして反対側。誰かいるとすればミィアの侍従かエール先生、ジュリオンがいるはずだけど……別の気配がする。
「――――誰です?」
「オギャースの母、クロイ・ローリィー・ガセール・ココ・ポヨですわぁ。愛娘がお世話になってるようでぇ」
動けない体、だけど闇が晴れてか部屋が明るく見える。私の目は開いていたようだ。
ゆっくり目を凝らして声の主を見ると、そこには……なんか凄いのがいた。
黒く艶っぽい生地に明るい紫と明るいグリーンのアクセントの入った露出多めのドレスを着たその人。目元だけ隠す怪盗マスクのようなものもつけている。
ドレスの肌面積は多く見えるが、肌色面積部分は網タイツのような生地で覆われていて……一見して肉が出ないようにされているイメージがある。
凄い服で、凄い太ったおばちゃんであった。
これがミィアの母にして、ミィアでも止められないと噂の……ミィアとは別の『ポヨ令嬢』か。
「早速ですけど、フレーミスでしたわよね?」
良く見れば彼女の周りの影が動いている。
彼女は闇の属性だったはず。ただ敵意とかは感じない。
「はい」
「ちょっと味見したいのでぇ、わたくしの寝所に行きましょうねぇ」
ひょいと持ち上げられた私。大人モードは解除されてしまったし今の子供ボディは軽いものだろう。
ジュリオンもエール先生も、ミィア付きの婆やさんも部屋にいるけど誰も不審な見た目の彼女を警戒していない。むしろ困惑している様子だ。
「クソ!クソババアぁっ!!やっぱてめぇか!!」
それはそれとして私はこのまま連れて行かれるのだろうか?味見ってなんだ?
荒っぽいわけでもなく、優しい抱っこで優しい眼差しを向けてきている。頭まで撫でられて……初めて感じるレベルの上手い撫で方だ。シャルルとは比較にならないな。
「あらぁオギャースちゃん、良く眠れたかしらぁ?たくさん寝たほうがお肌に良いのよぉ?」
「うっせババア!!くっ、この……返せ!!」
ミィアママさんからひっぺ剥がされてミィアに抱っこされた私。
「あら残念……またねぇ、フレーミスちゃん」
最後に私をひと撫でして、ゆらりと部屋から出ていったクロイさん。
寝起きになんか凄いものを見た気がする。何だったのだろうか?
寝間着の西洋美人が現れた!弟はタジタジだ!
起きるとポヨママが現れた!肉がはみ出そうだ!