水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第47話 ホラーハウスとフリムちゃん。

 

 

「陛下からあの屋敷を試すようにと言付かっております」

 

「いやだなぁ、後にしない?」

 

「後にしましょうか?」

 

 

エールさんにちょっと甘えるとそのまま通りそうだった。嫌なことは後にしたいのだが……それでも大人の理性を働かせることとなった。

 

 

「………行ってきます」

 

 

フリムちゃんは貴族からの挨拶を聞いたり、勉強をしていたり……当主として部下を呼んでの個人面接をしているのだがやらなければならない大きなお仕事が一つある。

 

水の名家であった『リヴァイアス家のお屋敷を探索しろ』というものである。

 

爵位を頂いた時にある意味お披露目は終わっているのだが、ちゃんと自分のお屋敷で行うことにも意味はあるようだ。いくつか頂いたどの屋敷でやっても良い。既に使っているお屋敷でも良いし別のお屋敷でも良い。

 

 

―――――………しかし使えないお屋敷が一つある。

 

 

かつての水の名家は4つ、ルカリム、タナナ、レーム、そしてリヴァイアス。

 

政争時にタナナとレームは国境線の争いと内紛で多数が減ってルカリムに合流。リヴァイアスは縁者が全員死亡した。

 

水の名家であったリヴァイアスの家は後を継ぐ物が誰も居なくなったそうで……今は屋敷には誰もいない。

 

一応ママ上がフラーナ・レームという名ではある。「リヴァイアス」はつかないのは数代前に縁は切ったらしいが、リヴァイアスの血筋からして私が使えば良いのでは無いかという話になった。ママ上の生前の申告ではリヴァイアス家に縁があったそうだし、もしかしたら使えるんじゃないかとのことだが………。

 

できればここを本拠地にしたほうが私の出自についての根拠を補強することが出来る。

 

 

「痛い痛い痛い!怖いから!もー!!」

 

 

大家としても認められたことのある名家リヴァイアス家のお屋敷は管理人は誰もいない。だが、謎のセキュリティが現在も機能している。

 

まず敷地に入ろうとすると壁を感じる。無理に中に入ろうとすれば壁はなくなって入ることは可能だ。―――しかし、首が落ちて死体は敷地内の水路から流される。物凄く物騒だ。

 

しかし血縁のあるものはそもそも壁を感じず、管理している精霊がじゃれついてくるようで……私には見えない何かがぶつかってくる。

 

お屋敷は結界に守られていて私以外の全員は壁を感じて入ることが出来なかった。しかし私はすんなり入れて………見えないなにかにゴスゴスボフボフされている。

 

柴犬とかの突進のような衝撃を感じる。試した時は怖かったけど人が触れば謎の見えない結界の位置はわかるし……入れてしまったのでホラーハウスの調査が始まった。フリムちゃん一人で。

 

 

しかし管理するための何かは何処にあるか分からず。使い方も不明。

 

 

私の母親の更に2代前、詳しくは知らないが私の曽祖父か曾祖母が喧嘩か何かでリヴァイアスの家を出奔しレーム家に嫁入りだか婿入りしたそうだ。

 

今は無人のこの屋敷だが、ここを使うことが出来たのなら更に人は集まるだろうし私の安全性は高まる。ついでに中に水に関わる私に合いそうな魔導具もあるかも知れない。それと貴重なお酒があるはずとのこと。

 

 

「屋敷を使えるようにするにはどうすれば良いんですか?具体的に」

 

「知らん。フリムは何か知らないのか?こういうのは口伝とかなにか継承されてたりとかは―――」

 

「無いです」

 

「まぁ文献によると害のないものだしゆっくり探すと良い」

 

 

王様は役立たずであった。………そんなわけで透明な何かが襲ってくるホラーハウスで私はお屋敷を制御するための魔導具とやらを探している。痛いっ!

 

怪我するほどではないがなにかの衝撃が伝わる。屋敷は調べてマッピングしていったが何もない。建物には深い藍色がよく使われていてとても立派だけどそれよりもこのホラーさが怖くて仕方ない。

 

大きな洋館は……まだ誰かいてもおかしくないほどの生活感が残っている。開いたままの窓、机の上の書類、何かをしていた作業の痕跡。今にも誰かが入ってきて挨拶してくるんじゃないかというほどだ。

 

……ルカリムの実家に吸収されたレーム家とタナナ家と違ってここの人は誰も生きていない。数年前までは人がいたわけだし生活感が残っているが雨風が入ってきたであろう窓の近くの劣化や厨房の食材だったクリーチャーが存在していることから誰も入ってこなかったことがうかがえる。

 

何も知らなければこんなに怖くはなかっただろうが、こういうのってホラー映画みたいでくっそ怖い。まるでホラーハウスである。私の知覚の範囲外でなにかが動いていたり―――急に襲ってくる可能性だってあるかもしれない。

 

 

「ヒッ!!?」

 

 

バサッと音がして遠くの本が落ちた。

 

見えない何かは私に向かってくるだけじゃないのか!?

 

一応精霊信仰のあるこの国で精霊は有り難い存在だし、皆に「怖くない」と言われてはいるが怖すぎて仕方ない。

 

帰りたいしやりたくないがやらねばならない。まるでダイエットや受験勉強のようだ。やらないといけないのにやるのは辛い。先延ばしにしたり、そもそもそこまでやる意味があるのかわからないが……色々考えるとどう考えてもやった方がいいに決まっている。だからやる、私もやる………。

 

リヴァイアスのこの敷地の周囲はうちの人間が取り囲んでいる。襲撃者が入ってこないように護ってくれているのだ。

 

屋敷の中に入れる私を見て歓声を上げてくれているうちの人間、ゴスゴス全方位から衝撃がかかって来て凄く怖いが……期待してくれているならやるしか無いよね。

 

キエットおじいちゃんなんて「おぉ……姫が、生きて………おぉぉ”お”お”お”」と泣いていた。心臓発作とか心配だった。

 

まだこのお屋敷を掌握しきれていないし、外部には公表できないがそれでもうちの人間には信用度は上がったと思う。一部の人間は物凄くやる気を出してくれている。

 

 

―――とは言え、私が怖くて痛い思いをしていることは変わらない。

 

 

見えない何かは私がふらつくほどの勢いでゴスゴスボフボフ当たってくる。魔法で守りたいところだけど精霊が反応して攻撃してくるかもと考えれば我慢するしかない。

 

『見えないなにか』に『生活感のある無人のお屋敷のホラー映画のような怖さ』も問題だがそれより大きな問題がある。――――ゴールが見えないことだ。

 

普通こういうホラーハウスって言うと出られなくて脱出しないといけないとかで出口を探すものだと思うがこれは逆、大きなお屋敷を探し回らないといけない。

 

 

「うぐっ!?」

 

 

血縁関係のない不法侵入者であれば殺されるらしいし、この精霊(仮)も怖い。

 

 

「もーなんなの!痛いって!!」

 

 

もう今日はいい時間だし今日の探索は終わりにしよう。マッピング以外成果のないまま3日も経った。

 

貰った普通のお屋敷からリヴァイアスのお屋敷は馬車で3分ほど……そのぐらい歩けばいいと思うがしっかり馬車を出してもらえる。というか家に来た人達は徒歩で移動しているぐらいの距離だ。

 

何ならリヴァイアスのお屋敷を取り囲んでいた人達は馬車で私が別の屋敷に戻る前に先に走って帰ってお出迎えしてくれる。軽いマラソンをさせてしまって申し訳ない。

 

 

「おかえりなさいませ、わからないところがあるので聞いてもよろしいでしょうか?」

 

「ただいまです。どの部分でしょうか?」

 

 

バーサル様がお屋敷のチェックと改善の為に来てくれている。

 

発見された「怪しげな脱出路」を塞いでもらったり、ちゃんと使えるように新しい鍵をつけてもらったりがメインだがちょっとだけお屋敷の改造もしてもらっている。いくつか貯水槽を設置してもらっているのだ。

 

私は水を操れるが普通の水よりも私が出した水のほうが操作は簡単だし、いざという時には『水の発生』の過程を省けるためより安全になる。できれば上水道を設置して蛇口を捻って……としてもらいたかったが水瓶文化のこの世界では無理だった。

 

まだ仮のお屋敷だしそこまでは望めないがいつかやりたい。上下水道設置したい。

 

それに私の水に価値があるのならうちの人間には飲んでもらいたいし、近くの人に売ったって良い。飲み水をいつでも飲めるようにするのはとても大事である。

 

 

エールさんに礼儀作法や慣例、そしてこの国での基本的な勉強を学ぶが……逃げ出したくて仕方ない。というか逃げ出した。

 

貴族たちからの挨拶などの合間にやっていたのだが勉強よりもやることがある。貴族の当主にはカリスマや政治力、統率力、血統等色々と必要なものがあるがまず何よりも『死なないこと』と『強い力を見せること』が大切だ。

 

礼儀は確かに必須技能である。礼儀もわきまえていない上司について行きたいとは思わないだろう。

 

しかし今のフリムちゃんにはもっと大きな、人を集めるだけの力を持っていると示すことが大切である。水を出したり攻撃魔法の練習だ。

 

フリムちゃんの魔法は水の魔法の割には強いらしいし、酸素や水素の力は理解されないがそれでも強い力に見えているようである。

 

練習で的を粉々にしていき、いつものように飲み水を出す。

 

 

「おぉ……」

「フレーミス様ー!!」

「魔法ってやつはとんでもないねぇ」

「やはりこの派閥に来たのは間違いではなかった!」

 

 

礼儀作法もそのうち学ぶ必要があるが今は攻撃魔法の練習をうちの人間に見せておくことで単なる飾りじゃないと見せつけることも出来る。そのうち見栄えの良さそうな魔法を作ろう。

 

――――やらないといけないことは多いけど、全部こなす時間はない。とはいえ勉強から逃げ出して申し訳ない気持ちもある。ごめんってエールさん。

 




評価やコメント、釣れる日もあれば坊主の日もあるさ。
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