水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第51話 フリムの異世界水魔法とパーティの終わった後。

 

作ったのは西洋竜ではなく東洋の龍だ。

 

長い体に大きな頭に大きな瞳、小さな手足、立派な鱗……口に玉を咥えさせたデザインの水でできた龍。

 

私の周りをぐるりぐるりと回していくうちに少しずつ大きくして形を作る。

 

 

練習通り大きく作れたら宙を浮かせて、驚いている人の隙間を歩き回る。

 

これには理由がある。他の術者が後ろから手助けしていないというアピールだ。

 

 

氷も出す気はなかったが……今回出すことにした『全力でやるよ』といううちの人間への合図でもある。炎で照らされた龍は立体的で、さぞ幻想的に見えているだろう。

 

 

仕組みは簡単。私は氷自体を出すことは出来ないが水の温度をある程度変えることが出来る。『過冷却水』あまりにも冷やした水は不純物が少なかったりすると凍りつかないことがある。しかし僅かな衝撃を与えるだけでその水は凍りつく。

 

魔力はそこそこ使うが過冷却水を会場に設置していた縦長の容器に注いで溢れさせるだけで氷の柱が出来上がっていった。

 

 

―――――……本当ならここまでやる予定ではなかった。

 

 

いくつかの魔法を練習していたがこんな派手にやるつもりはなかった。だけど、他の派閥の貴族たちと面と向かって「おめでとう」「素晴らしい」「応援します」なんて言われていても……その表情も陰口もそうは言っていなかった。

 

 

「大したことないな」

「下賤が」

「すぐにライアーム派が」

「あんな小娘に未来はないだろう」

 

 

明るい言葉を言っていたはずの貴族からわざと聞こえるように吐き出される陰口。私は見た目は小娘だし、理屈はわかるよ?

 

新たな勢力、血統だけで作られたと思われる怪しげな派閥、もしかしたらその血統すら怪しい。ここにいる人間の殆どは私の魔法を見ていない。

 

しかし百聞は一見に如かずという言葉があるように、その目で見なければ信じられないだろう。フリムちゃんが暗殺者相手にぶっ壊した破壊の痕跡は皆が見ているわけではないしね。

 

 

「中央から少し下がってくださいねー」

 

 

ただ水は5メートル以上離すことは出来ない。一度生成した水は一定以上離れると操作できなくなる。その範囲で限界まで大きく、それでいて優雅に見せて浮かせる。

 

 

距離に注意しながら私の周りをうねるように飛ばせて会場を軽く一周回って――――

 

「<龍よ!火の息吹を我に見せよ!!>」

 

 

口の玉の先から、高く掲げられた松明の前にいた龍に火を吹かせた。

 

 

「おぉおおおおお!!!??」

「これがヨルムンガンドかっ?!!」

「キャアアアアアアアア?!」

「なん……だと…………?」

 

 

水を出すように水素と酸素も出すだけなら簡単だ。

 

しかし、水から離れれば離れるほど操作は難しくなるし、酸素と水素は作ってしまえば操作がほとんどできない。だから龍の中は中空構造にして、酸素と水素と空気を龍の内部に含ませていた。

 

水の操作で龍の体の中の空気は尻尾の先から圧をかけて吹き出す。勿論尻尾の先から縮むから見栄えは悪くなるため、操作と同時に水を増やして尻尾の先から水を足していかないといけない。操作と水生成、そして口先の炎の調整を同時にこなすのはとてつもなく難しかった。

 

何度も試行錯誤した。一瞬で燃え尽きてバァンと弾けちゃいけないし、吹き出す火力が激しくなれば龍の頭が歪んでしまう。練習には苦労した。酸素よりも水素は少なめの方が良かったり、より長く派手に燃やすためには押し出すための空気を多く体に蓄えさせたほうが良かったり………普通の空気や酸素と水素の割合で一番どれが燃えやすいか調べるのは大変だった。屋敷燃やしかけた。

 

 

ただこれ、お祭り用の見せ魔法……一種のパフォーマンスや曲芸のようなものである。

 

一般的な水魔法の操作範囲が3メートルほどが限界の中、私の5メートル少しというのは広い。

 

自分の近くほど水の生成や魔法の操作の難易度は下がるし、一定以上離れてしまえば水は地面に落ちる。だからそれ以上離れた場所になにかしようとするなら放水なり酸素を包んだ水球を飛ばすなり、できるだけ圧縮した水の塊を放つ水槍を使ったほうが効率的な選択肢となる。

 

こんなの戦闘じゃ使えない。火の魔法使いはもっと広範囲で魔法を操れる。もしも火の魔法がこの魔法に当たったら……フリムちゃんは爆弾が近くにあるようなものだし、火以外の属性でも酸素や水素を包んだ水の玉が破れて近くに火元があったら――――フリムちゃんは丸焦げである。

 

 

しかし、きっとパーティで披露したことで私の見られ方が変わるだろう。水をそこそこ遠くまで出して操作することで風の属性、何もない状態から出した龍が火を吹いたことで火の属性、龍自体が水であることから三属性と見られるかも知れない。氷も足すと四属性かな。

 

これで少しは『強く見せる』というお題はクリアできたかな?

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「やりすぎだ」

 

「すいません」

 

 

エール先生は「さすがフリム様」とべた褒めだったが王様的にはやりすぎだったらしい。宰相さんも頭が痛そうにしていた。

 

日も落ちてきて解散となったのだけど王様は泊まっていくことになった。他にも食べすぎて泊まろうとしていた人達はいたけど警備上の理由でってことで泊まるのは王様達御一行だけとなった。

 

王様はお腹いっぱいらしく、すぐにベッドに入った。そして「ちょっと来なさい」とお説教をうけている。

 

あんなどう見ても精霊の助けのいるような魔法が暴走すればどうなると思っているのかとか、もしもの暴走に備えて騎士団がフリムを狙っていただろうがとか、短剣の届きそうな位置にまで近づくんじゃないとか、ライアーム派閥の手先の呼び出しに応じそうになるんじゃないとか。……タルトが美味すぎるとか。

 

ついつい「イケメンが台無しですわよ」「吐きそうならバケツ持ってきますよ」と言いそうになるが諦めて怒られておく。怒りのこめられたものではなく私のために言ってくれているしね。

 

 

「まったく」

 

「もしかして王様って手助けしてくれてたりしました?」

 

 

お怒りが終わったタイミングで聞いてみた。

 

もしかしてだが何度も呼びつけられてタルトを切り分けたのって意味があるのかも知れない。

 

 

「……まぁな、それよりもフリム。貴族の名前を覚えるのが苦手らしいな」

 

「え?はい」

 

 

少し笑った王様、話題の変更からなにか手助けしてくれていたと察する。

 

しかし……あれ?今日は誰の名前も間違えずにお出迎えできたはずだが?たしかに横文字の名前ばかりで名前を覚えるのが苦手ではあるけど。

 

 

 

「王様、じゃなく、俺の名前言ってみろ」

 

「………シャルトル・バイノア・ルアー・リーナ・ベイロス様でしたっけ?」

 

「シャルトル・ヴァイノア・リアー・ルーナ・オベイロスだ!オベイロスは国名なのになぜ間違える?!長いのは俺も認めるが!」

 

「いひゃいいひゃいいひゃい?!」

 

 

ほっぺを両方びろーんと引っ張られた。

 

…………エールさんが部屋に入ってくるまでお説教は続いてしまった。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

ちょっと赤くなったほっぺを氷で冷やして……エールさんに呆れられていた。いや王様の名前って長いし。間違えるぐらいならシャルルと呼べと言われたのでそうすることにしよう。

 

それはそれとしてうちの人間やこれから徹夜の騎士団の人をねぎらう。タルト食べたくても食べられなかった人もいるしね。

 

 

「今日はありがとうございます。好きなの食べてくださいね」

 

「「ありがとうございます!」」

 

 

食事をカートに積んで屋敷中の騎士一人ずつに渡していく。

 

王様を護る騎士団の人達は貴族出身であるしフリムちゃんは伯爵とはいっても新興貴族である。彼らには私よりもよっぽど権力とかあるかも知れない。

 

前世の上司はこういうときの贈り物は欠かせずにしていて出世していた。現代日本でこそお中元のような文化は賄賂のようで微妙な感じはあったがこっちの世界では普通だ。私やうちの人間の命がかかっているのだからお金を渡したって良い。親分さんとは「いくら握らせるべきか?」と話し合ったがエール先生にダメ出しされた。シャルルをこれから毒殺するみたいじゃないですかって……違います。

 

同じものを食べると警備上駄目と数人には断られたがその場で「水だけでも」と全員に配って回る。毒見でお腹いっぱいである。

 

騎士の彼らには今日お世話になったのもあるけど……もしかしたらこの中には私のパパ上とママ上の知り合いや友達もいたのかもしれない。優しそうな視線も感じる。

 

 

パーティは終わったというのにうちのキッチンはまだ戦場状態である。

 

 

「あ、あの宰相閣下はまだ食べてるんですけど大丈夫なんですかね?」

 

「あぁ、あの人、そういう特別な人なんですよ」

 

「特別な人?」

 

「大昔に貰った加護でいくらでも食べれて、体に合うものだったら健康に良いそうです。流石に若干ものがわかっていない時もありますが」

 

 

エールさんももう深夜だというのに疲れを感じさせずについてくれている。

 

もう私に休むように言ってくるがもう少しだけ頑張る。

 

 

「何歳なんですかね?」

 

「400は超えるそうです」

 

 

人間かな?

 

総白髪で年齢を感じさせるが……豪華な装いが汚れるのも気にせず食べまくっているレージリア宰相閣下。既に報告では小ぶり目なタルトを50は食べているようだ。

 

 

「水入れていおきますね」

 

「うむ、このたるとというのは素晴らしいですのう」

 

「食材があるだけお好きに食べて行ってくださいませ」

 

 

水差しと水瓶に大量に水を入れておいた。

 

食材もレシピも用意してあるしうちの人間全員でも食材は五日ほどは問題ないはずだ。

 

屋敷の人は「ここぞ正念場」と皆気合を入れて接待している。最後まで付き合いたいがこのままでは徹夜は確定だし、心苦しいが幼女ボデーではこれ以上は立ったままでも寝てしまいそうだ。

 

 

――――――今日は本当に働いた。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

昼に起きると既に王様達御一行はいなくなっていた。お見送りは出来なかった。

 

「こちらの資料も預かっております」

 

「これは?」

 

「リヴァイアス家についての資料です」

 

 

お披露目には間に合わなかったが……リベンジマッチである!

 




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