水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第55話 待機時間に実験とアイテム作成。

 

学校には年齢的にも政治的にも安全的にも行ったほうが良いというのはわかった。

 

それはそれとしてストーカーである杖をどうにかしたほうが良いと思う。例えばこれが私を護ろうとしているのなら「ぶつかってきた子が死ぬ」とかは怖すぎる。

 

とにかくシャルル王の調べを待つ。

 

待っている今のうちにもやることは多くある。貴族としての仕事の殆どはエール先生たちにおまかせしているが……どちらでも良い案件は私に方針を聞かれる。

 

ドラゴン魔法の披露からうちの派閥に来たいという人は増えているから面談もする必要もある。

 

 

うちは基本的に

・戦いたくありません、非交戦的派閥です。

・当主は水の血筋です。今後の水属性魔法使いの派遣に役立てるかも知れません。

・王様を助けて伯爵になりましたし今後成長する家ですよ。

 

 

といったポイントで見られているが水の名家の血を引くと言っても生き残りのいないリヴァイアス家以外では正統な後継者ではない。とは言え、王派閥とライアーム派閥はいずれまた戦うかもという不安からうちに来たいという人は多くいる。

 

王派閥から援助を受けてはいるけど独立している形らしいが……、ドラゴン魔法で力を示したのが良かったのかも知れない。

 

やはり強い当主というのは魅力的に感じるようでどんどん人や贈り物も来る。

 

 

「コリアーウェ家は代々風の使い手として……」

 

「わかりました。挨拶ありがとうございます。しかしこれから必要なのはこれまでの貴殿の家の功績ではなくここでの貴殿自身の働きです。私の役に立って正々堂々、不正を働くことなく頭角を現してください。これからの働きに期待します」

 

 

長々しい挨拶は打ち切る。

 

売り込みのために自身にどれだけコネクションがあるか、どれだけ有能なのかアピールするというのは現代では考えにくいものだがこちらでは普通である。

 

挨拶を止めるのは無礼ではあるがこちらが当主で面接は彼らの資質を見るためである。私を操ろうとしたり侮ってくるものはここで表情に嫌な顔が出てくる事が多いし、逆にやる気がある人がいるのもわかりやすい。

 

うちは新興の家だからまだ家は安定していないが、そのうち世襲できる爵位を与える権利が私には付与されるそうだ。だから彼らもアピールのためか財を払ってでも私の役に立とうとしていて……うむ、とても素晴らしい。

 

 

私は人が来るのは構わないし顔も見る。しかし基本的にキエットとドゥッガとエール先生に任せている。

 

エール先生は王宮から来ていることは知られていて、更に王宮内では使いにくい人間や派閥争いで窓際に追いやられていたり微妙な立場の人を連れてきてまとめてくれている。

 

キエットは引退していた水の名家出身者や縁のある人を中心に争いを好まない方々を引き連れてきてくれて、私の家では水属性で最大の派閥となってくれている。

 

となれば筆頭家臣であるドゥッガの元には玉石混交の人材が集まってくるわけで……。

 

 

「賄賂はどうするべきだ?」

 

「受け取って活動資金にしてください。しかし名簿はつけておくことと監視をするように采配してください」

 

「受け取って良いんですかい?不正は好まないようにフリム……様はよく言ってるが」

 

 

ドゥッガは部下になったが上司のように話したり、時に礼儀正しく話そうとしてお互いに笑っちゃうようなタイミングがある。

 

私もドゥッガと呼び捨てにするかドゥラッゲン卿と言わないといけない場面で親分さんと呼びそうになることもある。

 

 

「受け取らずに親分さんが刺されたら元も子もありませんからね」

 

「わかった」

 

 

まぁ怪しい動きや賄賂でのし上がろうとする人もいるのはわかっていたし、仕事の割り振りのために賄賂をした人はエール先生やキエットたちで共有されている。

 

悪意も見えて賄賂をたっぷりしてくる人もいるが、彼らの職場を決める時には会議でエール先生とキエットが対抗馬として実力も実績もある人を紹介してくれる。私が採用を決めるようにすればドゥッガは賄賂を受け取っていてもちゃんと推薦はしたことになるから問題はない。

 

こちらの世界では賄賂は当たり前なわけで……要職についてからこそ頑張ろうという人材はいるからそういう時はその人間だけではなく数人に任せて様子見すれば対処もしやすい。公務員みたいに職場を数年で移していこうかな?彼らを見ていると絶対に不正の温床は何処かで発生するはずだ。

 

 

私は前世で実力で主任までは行ったが社内政争なんてくそくらえとばかりに媚びずに仕事していた………。それが、こんな人の割り振りを考えることになるなんてな。

 

采配上手だったり部下をねぎらうのが上手い上司はいたが、私にはそうなれる気が全くしない。

 

 

お披露目も終わったところでなにかの事業をしようと家臣たちは考えているようだがよく考える必要がある。王位継承の争い以前は水の四家はそれぞれ別の特色があったそうだ。

 

ルカリム家は貴族付きの水発生装置として人を派遣する仕事をしていて、レーム家では薬品の作成、タナナ家では秘術と酒造り、リヴァイアス家では領地で海塩を作っていたそうな。

 

とはいえ領地で海塩を作っていたリヴァイアス家以外はある程度同じことをしていて、酒造りに至ってはどの家でもして味を競っていた。酒、美味しいよね酒。飲むのは良いけど作るってどうするのさ。

 

お酒はそう飲める方ではなかったが好きだった。工場見学なんかもしたことがあるし、原料に糖さえあれば出来ていたからある程度試行錯誤すればお酒は作れるはず。

 

実験すれば失敗は多いかもしれないがいつかは出来ると思う。お酒は仕込みに時間はかかるがうちには働きたい意欲のある人はいっぱいいる。彼らを防犯や情報収集の社交にばかり出すというのもよろしく無い。なにか事業を……仕事を与えたほうが良い。

 

しかし、既存の水の名家のやっていた事業を行うということは実家の既得権益を侵すことであって………藪をつついて蛇を出しかねない。

 

まぁお酒なら「うちも作ってみた!」で飲み合うのは良いと思う。お酒の種類はあればあるほど良い。薬品は無理、レーム家の縁者もうちに来ているが薬品はうちの家で使う分だけで販売するほどはない。薬は恩も売りやすいかもしれないがケチもつけられやすいだろう。

 

 

というわけで実験だ。

 

 

私の過酸化水素(H₂O₂ )は消毒にも使えるし漂白剤にも出来たはず。

 

経済を調べた時に半導体のエッチングなんかに使うということで少し調べただけなので用途しかしらない。毒性があって使う濃度も大事………だったはず。

 

しかし何で薄めれば良いのか?純水?それとも別のなにか?消毒液や漂白に使う薬品のはずだが濃度は?じゃあ毒性ってのは何だったのか?

 

記憶の中の情報すら限りがあるが、ツギハギの知識からでも少しは察することも出来る。

 

消毒用アルコールだって濃度を薄めないと火がつくし、皮膚を痛めてしまう。洗剤だって希釈して使うものも多かった。だから適切な濃度、適切な使用法で使えばきっと役に立つもの……のはず。フリムちゃんがどんな濃度のものを出せているかは不明だけど。

 

以前使った時は普通の水で中古の服を洗うよりもどばばっと汚れが浮き出てきたが毒性も濃度も詳しくないし結構日和って薄めて使っていた。

 

そもそも中古の服は水に浸すだけで汚れが出てきていた。濃度もなんとなくで恐る恐る使っていたが今ならもっと実験できるように思う。

 

連続強盗殺人犯のような経歴のある奴隷を連れてきた人がいたので実験してもらう。非人道的に濃度の高いものを拷問のようにかけるようなわけではなく、あくまで洗濯を行う労働力としてだ。貴族は「後腐れのないヒットマン用」にと……私にはとても理解できない意味合いで彼らを贈ってきたが、流石に悪人とはいえそういう使い方は私には出来ない。

 

被害者の家族などがいればどこかに引き渡したり殺したほうが良いかもしれないが、調べようもないしちゃんと厳しく働いて償ってもらおう。被害者がわかっているのなら働いた分お金を送っても良い。甘すぎると言われるが作業はそれなりに危険であるし、厳しい管理下において甘やかさずに生きてもらう。

 

薬に詳しい人に監督してもらって働いてもらえばこれからの社会の礎になってくれるだろう。というか貴族社会的に連続殺人鬼みたいな人間ですら贈り物になるのが不思議である。

 

一応親分さんのように賭場を守るなり教育のためであったりという理由もあって行われていた殺人であるかもしれないし、マーキアーのように奴隷になったのは冤罪の可能性もあるかもしれない……かと言って甘くはしないしできない。

 

現状過酸化水素は私にしか作れないが、洗剤が現代日本ほど発展していないこの世界では売れるかもしれない。洗剤は高いし洗濯事業を賭場のみならず王都中で行えるかもしれない。

 

いや、この国で使われている生地次第では全く無駄かもしれないが水を出すより少し魔力が掛かる程度でドバドバ出せる過酸化水素が高額で売れるならウハウハなはずだ。色々可能性や人の働き方を考えねばならない。

 

 

それと、どうしても許せないものがあったので商売にするかどうかはともかくとして作ってもらう。

 

 

『羽根ペン』動物の立派な羽、美しい見た目かも知れないが元は動物の一部であるし書いているとさわさわとその美しくもくすぐったい一部に触れる事になる。

 

――――――最悪すぎる。

 

私も動物は好きだよ。猫も犬も好きだ。鳥も可愛いように思う。

 

しかし、例えば鳩、病原菌を運ぶもののように例えられることもあるし、この世界の衛生観念が控えめにいってクソッタレなことを知っている私にはこの羽根がどうしても耐えられない。

 

というわけで作ってみた。万年筆もどきを。

 

ガラス製のペンというのも単一の素材で出来て比較的製造難易度が簡単そうに見えるがあれは割れるのだ。いや万年筆も金属製のペン先から落ちると使い物にならなくなるのは同じだがガラスペンはガラスの重さで全体的に割れやすいし、現代のような強化ガラスのような強度がこちらではない。

 

ガラス自体はあるが窓枠をよく見ると木や石の枠でそのままはめ込まれていてゴムやコーキングはない。文化の違いをしみじみ感じる。

 

万年筆にはボールペンのようにインクを詰められるものもあるが羽根ペンと同じくインクをペン先に付けて書くことも出来る。

 

羽根ペンはインクをペン先に浸して使うのだから、同じようにペン先さえ浸せば書けるようなものを作りたいのだ。カートリッジ式や吸入式のような工作精度の凄いものは作れないけど……とにかく羽根さえ使わず金属と木でペンが作れればそれでいい。

 

ただそれは簡単ではない。金属製の先端は薄い金属を丸めて切り込みを入れれば完成というものではないからだ。ペン先のしなりやインクののり方、用紙との相性もある。

 

それでも完璧に「もどき」で・・いや、もどきですら無いがなんとなく作りたいものは皆に理解してもらえて試行錯誤してくれている。そもそもでっかい羽根の部分はペンにいらないのだ。

 

できればペンの内部にインクを仕込めるようにしたり、もっとインク自体がサラサラしたら、用紙がもっとペン先で引っかからなければ……なんて高望みしてしまうがそこは仕方ない。

 

現代では何処にでも売っていた鉛筆だってこちらにはない。文房具のレベルが違いすぎる。なめらかな紙、漏れることもなくサラサラと一定の太さで書けるペン。…………いつも使っていたメモ帳とボールペンだけでも一生をかけてもあの品質のものは作れないだろう。

 

とにかくいろんな金属でどんどん作ってもらう。ペン先の強度や先端をバリもなく書き心地の良いようにほんのり湾曲させて作るのは容易ではないはずだ。確かテレビでもそういう職人がいたはず。

 

今はペン先が重く感じるほど分厚かったり、しなやかさが全く無くて用紙を貫通してしまうものもある。わずか数回でペン先が折れてしまうなんてことも……。

 

もはや万年筆の形から外れて開発は進んでいる気がしないでもないがペンはペンだ。

 

 

「馬の毛を固めて石でまとめればなかなか書けるな」

「いや、角をペン先にすれば結構書けるぞ」

「全部金属にして武器に出来るんじゃないか?」

 

 

――――とりあえず可能性は示すことが出来たし、仕事としてやってもらおう。

 




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