水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第59話 水の販売計画と魔導具とちょっとした一言。

 

「カァッ!!うまいっ!!!」

「いいなこれ!」

「もう一杯頂いてもいいですか?」

 

「もちろんです」

 

 

フリムちゃんの飲み水は人気である。

 

倉庫の建築現場に出向いて特設された日傘の下で家臣たちの仕事を見守り、偶に水を出して配る。

 

 

「これが、売る予定の水なのですか?」

 

「そうですね、私自慢の水で倉庫で販売予定です!」

 

「………仲の良い派閥に売る方が良いかもしれませんね」

 

 

クライグくんは監督兼作業員として頑張っていて微笑ましい。

 

クライグくんが手を地面につけるとたくさんのレンガが出来て、セメントらしきレンガとレンガの間の接着剤らしきものがウニョウニョ動いて壁が出来上がる。

 

ドゥラッゲン家からきた土魔法使いの皆さんは作業が終われば戻ってきて水を飲んで休む。そしてまた魔力が回復したら仕事に戻る。これを繰り返している。

 

クライグくんは10歳ほどに見えるし「子供なのに仕事」という固定観念はあるが現代でも世界を見れば子供が働くのは当然だったしな……。

 

他の人の魔法も凄いが特にバーサル様、ダワシ様、クライグくんの魔法は広範囲で倉庫が出来ていくのは見ていて面白い。

 

 

「ありがとうございます。とても美味しいです」

 

 

戻ってきたクライグくんに水を差し出す。

 

魔力の回復には魔法薬と水魔法、そして光の魔法なんて手段もあるらしい。

 

魔法薬は副作用もあるし味もよろしくないが魔力の回復は最も早い。魔法で出した水は効果こそ魔法薬よりも下だけど水だけあって量が飲める。光の魔法でも僅かに魔力は回復するそうな。

 

魔力の回復は基本が自然回復で緊急時に魔法薬、光の魔法は使い手自体が少ないし効果があるというだけで使われることは殆どない。だから薬と水の二択であれば薬の危険性やコストパフォーマンスを考えても水の魔法が最も効率が良い。

 

魔法で出した水は魔力の減った人には特に美味しく感じるようで……建築現場で魔法を使う人の役に立っている。水は水のはずだけど栄養ドリンクでもあるようだ。

 

建築は現代のように計画に沿って進むばかりではなく、途中でアイデアが膨らんだりしてドンドン改良されていく。氷を使うのに私が落ちないように一箇所で出せば済むような構造を試しに作ったり、トラップにも水を使うようにしたりと手探りで作っている部分もある。

 

年齢的にも経験値的にもダワシさんが一番できるようで色々考えて図面を引いていってくれる。親分さんも筆頭家臣として話し合うことも多いようだが……まだ関係は固い気がする。ここから事業が成功すれば倉庫も増やすことになるだろうし、まだ話す機会もあるだろう。

 

 

水に近いものを出すだけなら私はいくらでも出せる。

 

 

氷になる過冷却水、お風呂に使えるお湯、酸素や水素を出すのは普通の水に比べて少し魔力がいるだけでこれも大量に出せる。水瓶幾つとかではなくプール幾つ分かわからないぐらいには出せる。浮かせたり操作したり、同時に展開させる方が負担は大きい。

 

フリムちゃんの水に価値があって売れるのは良いが魔法の回復アイテム、つまりは「戦略物資」になるのなら売る相手は考えたほうが良いだろう。いっぱい売りたいのに売り先が絞られてしまう。私の水は他の水魔法を使える人のものよりも美味しいと聞くし………城で売ろうかな?

 

 

「これはどういうものだと思います?」

 

「多分、こう使うものですね」

 

 

クライグくんとは仲良くなれている。私向けに貴族から大量に送られてきた貢物の中の用途不明の謎の道具をどうしようかと親分さんと話しているとクライグくんが食いついてきた。

 

贈り物には魔導具もいくつもある。しかし、うちには魔導具の専門家がいない。一度この倉庫の奥の屋敷に置こうとしているとクライグくんは魔導具の勉強もしているみたいで休憩時間に興味津々に鼻をふくらませて……色々楽しそうに教えてくれた。

 

玩具を手に取った子供のようにキラキラした目でいろんな道具の使い方を教えてくれるクライグくんは年相応に可愛い。頭撫でたい、私の方が小さいけど。

 

 

「これは一世代前の大貴族用に開発された加熱機ですね!毒見から時間が経っても温かい料理が食べられるように使うものです!へー、ここのところこうなってるんだ!!」

 

 

金庫サイズの魔導具、縦長のその魔導具の上に置けば皿一つぐらいが加熱されるようだ……横長にしてほしい、使いにくそうだな。

 

 

「便利そうですね」

 

「こっちのは……紙を切るための裁断機ですね!買った紙の大きさがバラけるから家で切るための道具です!力いらずで出来るものですね!!」

 

 

人が入れそうな箱に刃物がついた裁断機、そういう道具だったのかこれ。人体切断ショー用の道具ではないようだ。

 

楽しそうに調べるクライグくんをドゥラッゲン家お付きの人がハラハラして見ている。

 

 

「きっちりした用紙は綺麗ですもんね」

 

「こちらのは、なんだろ?コールター工房の刻印が入ってるけど見たこと無いな……」

 

「若、若!」

 

「レードック?あぁすいませんフリム様。つい」

 

 

用途不明の道具に頭まで突っ込もうとするクライグくんをお付きの人が止めた。

 

燃えたり刃物で傷つける危険性があるのに心配だったので助かる。

 

 

「いえ、楽しそうで良かったです。便利そうな道具って見てて楽しいですよね」

 

「そうなんですよ!僕もいつかは作ってみたいものです!!」

 

「良いじゃないですか。私もいろんなものを作ってみたいです」

 

「そうなんですか?」

 

「はい、しかしなかなか難しいものですね」

 

 

ペンを作ろうとして理想の方向からズレたものが完成した話なんかをするとクライグくんは目を輝かせていた。

 

魔力が回復してまた倉庫作りに戻るクライグくん。手を振って見送る。

 

 

「すいません。若は跡取りですし魔導具の製作を許されていません。できれば控えていただけますと……」

 

「あー、わかりました。しかしあれだけ好きなら止めようがないですよ?」

 

「確かに。しかし魔導具作りなど次期当主の行うものではありませんから」

 

 

それだけ言うと行ってしまったレードックさん。エール先生の目が冷たく、ドゥラッゲン家の他のお付きの人の表情が一気に青ざめた。

 

何気ない会話だったはずだがエール先生の表情から察してしまった。

 

今のは「伯爵である私に向かって控えるように言った」という点と「道具作りに興味を示している私に当主が行うものではない」と……面と向かって喧嘩を売ったと取れるんじゃないかな?

 

 

「つまみ出しますか?」

 

「いえ、バーサル様に一言伝えておいてください」

 

 

彼の行動は「他家の伯爵に向かってお付きの人間が控えるように言うなんて舐めきっている」……そうとれたのかな?私の経歴は怪しいし、見た目が子供だから侮られたのかな?

 

エール先生がバーサル様に伝える前にクライグくんはすぐに戻ってきてしまった。

 

 

「お待たせしました!先程の魔導具なのですが……あれ?如何しましたか?」

 

「レードック、という人物にフリム様が魔導具について話すのを控えるように言われたのです。当家の伯爵に向かってどういうつもりですか?」

 

 

抑えられない笑顔で早足で帰ってきたクライグくんだが一気に真っ青になった。

 

エール先生は子供が相手でも容赦がなさそうだ。

 

 

「ドゥラッゲン家の名代として正式に謝罪します。他家の伯爵閣下にそのような無礼な指示した覚えはありません」

 

 

すぐにクライグくんが膝をついて私に頭を下げた。

 

こういう時は事実確認をするのが先だと思うがレードックという人に信用がなかったのか、それとも王宮から来たエール先生の言葉だからか……クライグくんお付きのこの休憩所にいる人の顔色が悪いことを察したからだろうか?

 

 

「それで済むと「謝罪を受け取ります。私はドゥラッゲン家と揉めたくありません。エール先生もすいません、私のためなのに」

 

 

割り込んでエール先生を止める。工事の真っ最中でこれから仲良くなろうというドゥラッゲン家と揉め事を起こしたくはない。

 

利発そうな子供との会話は楽しいしね。

 

 

「いえ、ですがよろしいのですか?」

 

「はい、このようなことで事業が中止するなどあってはなりません。利発なクライグくんの将来のためにちょっと言い過ぎてしまった家臣がいただけのこと。私は気にしていません」

 

「―――わかりました」

 

 

微妙に不満そうなエール先生。私が思っているよりもレードックは言ってはいけないことを言っちゃったのかもしれない。

 

フリムちゃん的にはそこまで気にしていないが……少し口を挟んでおこう。

 

 

「彼をどうするかはドゥラッゲンの人に任せます。クライグくんが良いようにしてくださいませ。口を挟む気はありませんが禍根が残らないように殺さないように、軽い罰で済ませてくれると私は助かります」

 

「ありがとうございます。レードック・ササールの処分を任せて頂いたことも感謝します」

 

 

私への配慮で口を滑らせた人が死んじゃったら私の目覚めが悪すぎる。貴族社会怖いよ。

 

クライグくんが苦い顔をしているがそれよりも、うちの人間にも通達が回っていたのか……本家の坊っちゃんが膝をついて謝っているからか微妙に殺気立ってきている気がする。

 

 

「彼は貴方のために発言してしまっただけです。ただ、流石に体面上よろしくなかったですね。私は気にしていません!和解はなりました!皆さん仕事に戻ってください!!」

 

 

手をクライグくんに差し出して立たせる。

 

問題ないと周りに示すとちらほら仕事に戻って行ってる家の人達。

 

 

「ま、まだ処分も決めてないのによろしいのですか?」

 

「おまかせします、なんなら一言二言説教するだけでいいです。ほら皆さんを落ち着かせるために笑顔で」

 

「……かないませんね」

 

 

また楽しく話して――――………ほんと、首にして持ってきたりはしないでくれとだけは後で念を押した。

 




I look forward to your comments and ratings on the work. Since I don't have any English skills, I will translate it for you.
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