水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第62話 入学試験……当然私は勉強ができるはず。

 

初めて学校に行く途中……リヴァイアス家について調べたメモを読んでいく。

 

皆が言いにくそうにしていた理由も良くわかった。

 

他の三家と違ってリヴァイアス家が滅んだ理由。それは家の方針である。

 

水の魔法は他の属性と違って戦闘力の観点だけで言えば弱い。火や風なら広範囲に効果を及ぼすことが出来るのに比べて水は出すのも操作範囲も狭く殺傷能力もしょぼい。

 

で、あるのに水の名家の中でだけリヴァイアス家は超好戦的であった。

 

本来であれば毒対策の水発生装置として使われる水魔法使いは巻き込まれただけで死んでいく弱っちい存在だ。

 

 

―――しかし、人が死ぬ以上、恨みは募る。

 

 

自分の家で戦いを許されない以上、仇を討ちたくて……戦いたくて仕方ないものは自分の家とは縁を切ってでもリヴァイアス家に集まった。

 

水属性唯一の異端の家、好戦的なリヴァイアス家は敵の家の水に毒を盛り、貴族として常識外れの夜襲を行う凶悪な家であった。地盤ごと屋敷を崩壊させ、土砂崩れを利用して道ごと破壊していた。仇は絶対に許さず、最後の最後まで戦って……一人残らず全滅したと。

 

………う、うん。こんな家の特徴説明しにくいよね。だから政争の折に家人全員死んだのだろうか?

 

 

それはそれとして「学校での生活の注意点」や「学校に在籍している生徒の要注意人物の情報」なども見ていく……。お茶会は王家相手でもお断りなんだけど……ん?ルカリム家からのお茶会のお誘い回数17回?殺意満々かな?

 

学校、いや、初等学校と高等学校、研究機関などを含めた『学園』は国内の人間が派閥関係なく学べる巨大教育機関である。様々な政治闘争や因縁もあるが昔から「ここだけは争いから隔離しよう」という風習があるようだ。

 

一家全員に罪を問うようなものでさえ学校に通っていれば罪には問われない。

 

 

学校は小学校と高校、そして専門機関のようなものが合体している。

 

平民や商家の人間、それに貴族の従士は普通に初等学校までは学び、その中でも優秀と認められた者であれば高等学校進学もありうる。貴族は高等学校までの進学が基本である。

 

高校からその上の専門機関で働く事ができるのはごく一部であり、その専門機関から教師が初等学校と高等高校に来る。つまりは国が生徒を集めて優秀な人物を選抜し、職を斡旋する。

 

専門機関では魔導具や魔法の研究、学問に神学、精霊研究、等様々な研究をするほか騎士もいる。

 

騎士は王宮から本職の騎士が青田買いのためにも教えに来ている。騎士科の生徒は実地訓練なのか普段から学内の自治のためにも学内を警護しているそうだ。法学を学んでいる者たちによって裁判すら行うそうだが……生徒会とか風紀委員の権力凄そうだな。

 

 

「ようこそフレーミス嬢、ここでは伯爵としての地位は関係なく学ぶことになります。早速試験を行いますのでこちらへどうぞ」

 

「はい」

 

 

そうは言われるが一応特別扱いはされる。特定の人間は騎士科から警護も来るし、全寮制の部屋は特別室となる。

 

私の安全と――――騒動が起きないための処置だそうだ。

 

そうだよね、平民の人と同室になって一緒に過ごせば……もしも、その人の家族が人質になれば私を襲うヒットマンになりかねない。身分社会怖い。

 

 

「なんだあれ?」

「魔導具かな?」

「貴族様だろ、俺達は俺達で試験に集中しようぜ」

 

 

皆歳上だろう、体もおっきい。

 

既に集まった生徒候補たちに遅れて私も試験会場に入る。

 

やはりストーカー杖のことは目立ちまくってるが先に連絡しただけあって騎士の人も試験官の人も何も言ってこない。

 

 

「ミリアです。試験頑張りましょうね!」

 

「ご挨拶ありがとうございます。フレーミス・タナナ・レーム・ルカリムです。お互い頑張りましょう!」

 

 

指定された席に座ると隣の席の子に声をかけられたので挨拶する。ミリア……短くて覚えやすい名前じゃあないか!髪は肩まである金、目は澄んだ緑色。歳は15ほどだろうか?しっかり成長していて出るところがでている。

 

この会場では少し上の年齢だがこの学校は入学要項に決まった年齢というものはない。何ならおじいさんが入学してきても良いはずだ。

 

 

「え?貴族様ですか?」

 

「はい、ルカリム伯爵です。よろしくお願いしますね」

 

「?はい、ルカリムさんでいいですか?」

 

「なにかの縁です。フリムと呼んでください」

 

「わかりました!私のこともミリーと呼んでください!」

 

「ミリー!どんな試験なんでしょうね!」

 

「試験は学科と戦闘を見るそうですよ?そのペン面白いですね!」

 

 

ちょっとこの子はぽんやりしているかもしれない。伯爵と言えば上級貴族である。現代に置き換えると「私名前の知れた大企業の社長の一人です」っていうものだろうか?

 

貴族らしい子もいるが流石に席が遠すぎる。そしてこのふんわり飛んでついてくる杖が目立っていて……生徒たちには目立ちまくっているはずだ。

 

であるのに普通に接してくる。

 

私もそれに甘えてそのまま仲良くなろうと試みる。後で何かしらの理由で友情に亀裂が入ったりするかもしれないが、初対面だし友好的な人は増やしたい……できれば仲良くなれればいいな。わかってなさそうなミリーだが、周りの子はなにか察しているのかな?ひくついた顔でこっち見るんじゃありません。

 

 

何百人かで受ける試験。学校では月に一度ほど試験があるようで現代のように「年に一度まとめて入学」というサイクルではないようだ。卒業も優秀であればすぐだと聞くし、なかなか先進的なシステムなのではないだろうか?

 

 

――――しかし、試験、試験か……フリムちゃんはこれでも中身は大人。それも小学校・中学校・高校・大学と16年も学んだ…………いわゆるチートではないだろうか?子供の中で試験を受けるなんて目立つこと間違いなしだろう。

 

普段からエール先生に褒められている私はきっとここで目立つだろう。いや、目立つぐらい派手な成績を残せばきっと私は侮られないだろう。

 

 

 

 

 

 

――――――――…………そして私は大敗北した。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

試験内容は各個人の学力レベルを確かめるもので簡単なものから難しいものまでわんさか出された。

 

有名な故事やら精霊様を称える言葉……ナンデスカソレワ?歴代の王様の名前や、公爵の名前、美しい字を書け?待てや「細くて美しい字」って羽根ペンで書かれていることが基準で……………。

 

筆記で出来る問題はボロッボロだ。計算だけはどうにか出来たが他は駄目だ。シャルルの名前の綴りあってたかな?

 

 

「次、外で行うからついてきなさい」

 

「「「「はいっ!!」」」」

 

「………はい」

 

 

エール先生たちは簡単だって言ってたけどヤバい。このままじゃ、もしかしたら入学すら出来ないかもしれない。

 

外の試験会場。コロシアムのように観客席があって、先程までそこにいたらしい生徒たちが観客席に座って汗を拭っている。

 

 

「よーし!やるぞ!!!」

「やっとかよ」

「お前字を読むのもやっとだもんな」

「言うなよ、へへ……俺は剣じゃ負けねーよ!!」

 

 

剣術、弓術、魔法など騎士や魔法使い志望の子は張り切って試験を受けている。

 

私が行うのは勿論魔法。剣や弓なんて無理無理。

 

ここで本気を出さないと入学も出来ない?がっかりされて、侮られて爵位返上?そしたら私の今後は?私についてきてくれる家臣たちは?―――――……私の命は??

 

 

「時間内に使える魔法を見せてもらおう!カイセラス!前へ!」

 

「はい!!」

 

 

胃が痛くなりそうになりながら様子をうかがっているとどの属性の子もそんなに強い魔法は使えていない。

 

 

「<レンジャクの炎よ!我が眼前の敵を焼け!!>」

「当たれぇっ」

「プマーラ!プマーラ!カブリーラ!!プマーラ!プマーラ!カブリーラぁ!!ドカチラレケチラララリラーマララー!」

 

 

用意された的に向かって火や風をぶつける子もいるし、弓矢の先を燃やして火矢を放つ子もいる。

 

時間は一人5分ほどだろうか?地面になにか描いてる子もいるし、既に何かを書かれた紙を前に向けて……的に当たらなくてもポチャンと水を出した子もいる。

 

なんか必死に踊って風が巻き起こって的がコーンと音を立てた子もいる……あれは別の国の魔法だろうか?

 

緊張から唾を飲み込む。

 

 

「レーハ・カルチャル・キンジーです。ルカリム伯爵には負けませんよ」

 

「………ソうですカ、オ互い頑張りましょウ」

 

 

貴族らしき人の中から勝ち気そうな少女が来た。真っ赤な髪に真っ赤な服。そして杖まで真っ赤で派手だが今の私に相手をする余裕はない。

 

気がつけば口が勝手に答えていた。

 

ここであのど派手に目立った人よりも目立たねばならない。……合格を勝ち取らねばならない。ペーパーテストの手応えが全然駄目だったのだ。生きるために、やらねばならない。

 

罪もない小さな的には申し訳ないが本気でいかせてもらおう。

 

集中して、体の中の魔力を確かめる。

 

 

「次!フレーミス・タナナ・レーム・ルカリム!」

 

「はい!よろしくお願いします!!」

 

 

私は杖を強く握りしめ、的に向かってあらん限りの攻撃魔法を放った――――――。

 




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