水魔法ぐらいしか取り柄がないけど現代知識があれば充分だよね?   作:mono-zo

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第88話 保護者と謝罪と友達と。

 

ギレーネと実行犯の騎士、裁判に関わった人達をどうするかの条件はほぼほぼ決まって……次にしないといけないことは決まっている。まずはミリーたちのもとにいかねばならない。

 

まだ何があるか分からなかったためアーダルム先生が皆と一緒に、いつもの教室にいたのでちょっと安心した。

 

いつもの教室、私は礼儀作法を受けていないからしばらく別の教室での講義を受けていて……ここに来るのはちょっと久しぶりだ。

 

 

教室の前まで来て…………中からミリーたちの声が聞こえるが、私の手は止まってしまった。

 

 

「フリム様?」

 

「………」

 

 

謝らないといけない。もちろん悪いことをしたのはギレーネだ。

 

しかし、私が関与し、私が挑発してギレーネはより攻撃的になったことだろう。

 

ミリーの打たれた傷の痕は私のせいでもある…………どんな顔をして謝れば良いのかわからない。

 

 

「ここに用があるのか?入るぞ」

 

「あっ」

 

「学びの時にすまんな。シャルトル・ヴァイノア・リアー・ルーナ・オベイロス。この国の王である」

 

「 ヒ ョ ワ っ ッ シ ュ !!?」

 

 

すごい勢いでアーダルム先生が飛び退いた。

 

それよりも仲間が、友達がどうしているのかが怖い。もしかしたら今回の一件で私とはもう話したくないって言うかもしれない。

 

ドザザザと人が一斉に動いた音がした。貴族階級の人は席から降りて膝を付き、教室の後ろの高い位置にいた平民は皆席を降りて膝をついたり虫の構えとなった。何人か教室の後ろにいた従者たちも土下座体勢である。

 

 

「顔を上げるが良い」

 

「そんなっ恐れ多い!!?」

 

 

アーダルム先生は可哀想なぐらい固まってしまっている。

 

この学園内では身分はそう関係ないように言われるが国のトップがいきなり来たらびっくりすると思う。シャルル王の像も学園内にはあるし。

 

 

「なるほど、被害者か……」

 

 

ワタワタとシャルルの眼の前に出てくる生徒たち。教室は階段があるし上から王様を見るとか不敬っぽいもんね。

 

……………そう言えばシャルルは私とは気安い関係だけど王様だった。いつもと同じ豪華な服のイケメンお兄さんだが仕事モードなのか少し威厳がある。

 

美形過ぎて照れとか感じないんだよなぁ……初対面は不審者だったし生首の印象が強すぎるのが原因かもしれない。

 

 

「ギレーネの一件、王家の争いが発端であった。王として被害を受けたものに謝罪する」

 

「シャルル!?」

 

 

エール先生が前に出た。流石に王様が謝るのは良くないと思う。

 

 

「俺はこの国を良いものにしたい……恨みや憎しみでばかりでは人は幸せになれん。人の代表者としてもそうだが俺は争いを止めたい。そのためなら謝罪も厭わん」

 

「しかし王がそう謝罪しては軽んじられますよ?」

 

「かまわん。俺はこの国の王である。決めるのは俺だ……それに俺はこれの保護者でもあるしな」

 

「うぅ」

 

 

後ろについていたのだが、頭をガシガシ撫でられて――――シャルルの前に出された。

 

 

「なにか言いにくいことがあるのだろう?構わんから言うがいい」

 

「……シャルルが居ると出来ないんで、出ていってください」

 

 

シャルルなりの気遣いかもしれないが、シャルルが居ると「王様が居るから許す」ってなっちゃうかもしれない。それは圧力が強すぎる。

 

 

「なに?」

 

「エール先生」

 

「はっ、行きますよ」

 

「おいこら!?」

 

 

エール先生に引っ張られていったシャルル王。

 

これで謝れると思ったが、まだ皆虫の体勢である。リコライなんて震えてしまって可哀想だ。

 

無理もない、この国は貴族や王に奴隷まで居る身分社会だ。学生の教室に国家元首が来るとか恐怖でしか無い………私もバーサル様相手にやってたのがなんだか懐かしい。

 

 

「えっと皆さん立ってください」

 

「大丈夫だった?フリム……?」

 

 

ミリーが近づいて来て顔を覗き込んできた。

 

その心配で涙がこぼれそうになるが……耐える。

 

私には合わせる顔がなかった。

 

 

「みんなごめん。ギレーネは逆恨みだったけどそれでも私のことを恨んでたんだ。なのに、私が挑発するような形になっちゃって、それで皆に迷惑かけたと思う」

 

「聞いたよ、フリムは悪くないよ」

 

「それでも―――――本当に、ごめんなさい」

 

 

頭を下げて皆に謝罪した。大人の教員に意味もわからないまま理不尽に棒で叩かれて、さぞ怖くて……さぞ痛かっただろう。

 

学校において……特に低学年なんて教師に逆らえるものではない。教師は大人で、生徒は子供で………自分たちに足りない知識を教えてくれる「敬うべき存在」である。

 

生徒は教師に悪意があろうが善意があろうがそこから学ぶしか無い。それが正しいか間違っているかなんて関係はない。

 

そんな逆らってはいけない相手に子供が痛くて怖い思いをさせられた――――それが自分に責任の一端があるともなればこの場で土下座したくなるほどに心が痛む。

 

もちろん私がやったわけじゃない。悪いのはギレーネだとはわかるが、それでも謝らずにはいられなかった。

 

 

「伯爵は悪くない。悪いのはあの婆」

「そうですわ!」

「フリム、元気出して」

「ダダダ大丈夫ですよこれしき!」

 

「うぅう………」

 

 

――――友達が、凄い暖かくて泣いてしまった。

 

 

「偉い人だから絡まれることもあって当たり前だよ!フリムは私達のために色々してくれてるんだし、感謝してるんだよ?いつもペンを折っちゃう私のために強いペンを作ってくれたりしててさ。………このぐらいどうってことないよ」

 

「ミ”リ”ィ”……」

 

「いつもありがとうねフリム!」

 

 

御免なさいしたらありがとうだなんて……つい泣き顔は見られなくてミリーに抱きついてしまった。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

精神は肉体に引き寄せられるのだろうか。

 

口下手なダーマにすら感謝されて大泣きしてしまった。泣き止んでニマニマするクラスメイトたちから逃げ出したがそれは許してほしい。

 

廊下でハンカチで目元を拭っているエール先生とニヤつくシャルルがいた。

 

 

「ふぐぅ!?なんでだ?!」

 

 

シャルル王のお腹に照れ隠しの一撃を入れてから部屋に戻って寝た。

 

人の恥ずかしいところをにやにや見るものじゃありません!用事が終わったんだからさっさと帰ってもらう。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

学園長が退いたので新たな学園長を選出しないといけない。学園長は一定の票を持った人達によって決められるそうだがそもそもこちらでは「任期」がない。ずっとラディアーノさんがトップにいたので選挙自体を知らない人も多い。

 

私の全く知らない人も候補に上がっていたがなんだかんだ学園長に一番近いとされているのがユース老先生だった。

 

しかしユース老先生は――――

 

「いやじゃよそんなの、研究が楽しいのにそんなつまらん仕事はしとうない。王宮に出て晩餐会に出席など、老い先短い老人にさせる仕事じゃないわい」

 

「そんな!先生!先生の名を歴史に残すべきです!!」

 

「えぇい!離せ!儂はそんなものに興味はない!自分が研究したいからするのじゃ!!!」

 

 

弟子たちや慕うものから逃げ回っているようだ。

 

 

「歴史書に書かれるからこそ先生の研究が後世に評価されるのです!」という説得に対して「煩いわ!研究させろ!」と議論の余地はない……議論にすらならないが………何十人にも追いかけられている。あ、あっちに逃げてましたよ。

 

 

ギレーネの悪事は完全に公表され、学園長の新たな処遇も学園内では掲示されたがそれでもラディアーノ学園長復帰の声は大きい。

 

本人は仲裁は得意だけどそもそもの能力がなかったと辞退し「ギレーネのためにこの道を選んだ」と胸を張っている。

 

そもそもが政争から来るものだし、自分から汚名を被るあたり学園長の言っていたように「美談」としても学園で囁かれている。

 

 

貴族階級にとって神殿の勢力は無視できないものではあるものの、やはり罪を犯した上で神殿に送られるというのは恥であるようだ。

 

彼女の資産から皆の治療費は出されるし、彼女の資産は全部没収、被害者である私を中心に超多額の慰謝料が渡されることが決まった。

 

エンカテイナー侯爵からもどっさりと……金額が怖くなるほど………これが国の重鎮として働いてきたものの力か…………。

 

まだ地盤固めも出来ていない成り上がり貴族とは言え、現役の上級貴族の当主に対して貴族の直系の人間が直接ボロカスに言うなど……「領地間で戦争」が起きてもおかしくないほどらしい。

 

しかし、本人からの謝罪はない。今更謝ってもらっても今後の処遇に怯えてする謝罪なんて心からの謝罪ではないし、いらないけどね。―――数年後、本気で反省した後ならあって話すぐらいならしても良いけど。

 

 

ユース老先生達にお願いをして首輪を作ってもらう。ラディアーノは首輪をすることを譲らなかった。

 

奴隷とは体に刻印を刻む魔法を使うこともあるが、安価な場合は足首や手首にも鎖をつけることもある。そして金属製の首輪や足輪は当然重い、しかも錆びるから健康に悪いはずだし見てると気分が悪い。

 

体に隷属の魔法を使うがアピールとして自分で首輪をつけようとするから……どうせなら軽くてサビずに「大きいもの」を作ってと依頼した。

 

中空構造の軽いものは出来ないかと説明していると本人の要望で何故か大きくなった。

 

大きすぎて頭からすっぽり抜けるのだけど「自分でつけられるから自分からやっている」と見せるためなのと「ルカリム伯爵が寛容である」と言えるようにアピールするためのようだ。なにか狙いがあるみたいだけど……絶対肩凝るだろうな。

 

 

テレビやスマホがなくて学園内の情報は錯綜している。いつの間にか私も学園長候補に選出されていて笑ったがもちろん票は殆どない。

 

毎日票が張り出されていくが私に入れたのはインフー先生だった。………なぜに?

 

これまでの学園長の選出は「エンカテイナーの縁者」や「エンカテイナーが推薦する者」が勝つ流れがあったようで……今回エンカテイナー侯爵は関わらないし選挙自体がグッチャグチャで進んでいる。

 

自薦他薦問わず、票を持つものは一度だけ投票が可能。ちょっと驚いたのが一人が一票分の重さではない。

 

学園内に済む清掃の方や事務の方は一ポイントだが学者や騎士、薬師などの立場であれば更にポイントが高いし「賢者」や「魔導師」であったり「研究者」は更に一票のポイントが大きい。しかも、これまで受け取った個人の勲章でもポイントが増えるようだ。

 

学園内で派閥があってその派閥の当主が誰かに入れれば票がまとめてそっちに行ったりもする。

 

生徒には基本的に票がないが学生が注目しているのは票の開示が派手だからだろう……学園の広場で不正がないように誰が誰に入れたかが毎日はっきり一枚一枚公表されていく。

 

これはこれで良いのか?と思う制度だがこちらの風習だしそれでいいだろう。現代とは全く違う制度だ。

 

 

「儂、若いもんが学園長をするべきだと思うんじゃよ……」

 

「絶対やりませんよ」

 

 

すでに最大の票を集め、自身も最大の票を持つ人が私の横で物騒なことを言い始めたが、私は絶対にやらないと宣言しておいた。

 




コメントと評価?そりゃあお前……きっと、あれだよ!あれ!あれだって!な?わかるだろ?
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