ゼロの白夜叉   作:近衛陸

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次は夜です。
って前書きで書くことじゃないなこれ(笑)



第4訓 伝説って意外と近くにあるもんだ

 

皆様は覚えているだろうか、先日ルイズが銀時を召喚した時にいたハゲた男のことを……

 

実は、彼の名前はミスタ・コルベール。

このトリステイン魔法学院の教師だ。

彼は『火』系統の魔法を得意とし、『炎蛇のコルベール』という立派な二つ名をもっているメイジである。

 

そのコルベールは今、トリステイン魔法学院の図書館にいた。図書館の中はとても広く、壁際にどどんっと本棚がたくさん並んでいる。

彼は今、そんな図書館の中の一区画、『フェ二アのライブラリー』の中にいた。

ちなみに、『フェ二アのライブラリー』とは、教師のみが閲覧できる本が所狭しと置かれている場所である。

 

 

「ふむ、これは違う。これも違う……どこで見たんでしたかな?」

 

本をパラパラとめくりながらコルベールは何かを探しているようだ。

何十冊、いや、何百冊見ただろうか……コルベールは一心不乱に本をパラパラ捲っては首を振る。

 

そして、しばらくしてある一冊の本をパラパラと捲り……止まった。

どうやら、探していた本が見つかったようだ。コルベールは何度も何度も本を読む。

 

「やはり、そうでしたか。これは、大変なことになりましたぞ!!早くオールド・オスマンに伝えなくては!!」

 

コルベールは本を抱えると、急いで学院長室へと向かった。

 

 

 

 

学院長室では、白い口ひげと髪を揺らした老人が暇そうに頑丈そうなテーブルに肘をついていた。

 

「うむ。暇じゃのう、ミス・ロングビル」

 

「暇ではありません!!書類がたまりにたまっているんですよ」

 

ミス・ロングビルはクィッと眼鏡をあげてきっぱりと言った。

 

「書類、そうか書類……ふむ、どこまで終わったのかね」

 

オスマンは椅子から立ち上がるとうんうんと頷きながらミス・ロングビルに近付いた。

そして、後ろに立つと書類を覗き込む。

 

「オールド・オスマン」

 

ミス・ロングビルは羽ペンで書類に何かを書き込みながら言った。

 

「ん?なんじゃ?」

 

「書類にかっこつけて、お尻を撫でるのはいい加減やめてください!!王室に報告しますよ」

 

ミス・ロングビルの淡々とした言葉にオスマンは少し眉を寄せた。

 

「まぁ、そうカッカしなさんな。そんな風だから……婚期を逃すのじゃ」

 

オスマンは反省した素振りもなくお尻を撫でる。ミス・ロングビルの額に青筋が浮かぶ。

 

「こ、こんのエロジジイがァァァァアア!!」

 

ミス・ロングビルは立ち上がり振り向くと思いきりオスマンを何度も踏みつけた。

 

「ぎゃっ、痛い。やめて、そんな年寄りを、痛い。もう、もうしないから」

 

ミス・ロングビルがオスマンを痛めつけていると、突然ドアがバタンと開いた。

コルベールがやってきたのだ。

 

「オールド・オス……何をやっているのですか?」

 

コルベールが入って早々に見たのは秘書が学院長をボコッているところだった。

 

 

 

「で?……何用かね?」

 

オスマンはゴホンと咳払いをし、誤魔化すように椅子へと座った。

ミス・ロングビルはまたせかせかと仕事をしだす。

 

「あっ、えっと……あっ、そうそう大変、大変なんです!!」

 

「何が大変なんじゃ?」

 

オスマンが聞くとコルベールは慌てたように口を開く。

 

「だからそれは……」

 

しかし、すぐにコルベールは困ったようにチラッとミス・ロングビルを見た。

これは歴史的にとても大変なこと、いくらオスマンの秘書でも知られてはまずいと思ったのだろう。

 

「ミス・ロングビル。すまないが、席を外してくれないか」

 

オスマンが言うとミス・ロングビルはお辞儀をして部屋から出て行った。オスマンは、コルベールを見据える。

 

「これで話せるじゃろう。いったいどうしたのじゃ」

 

 

 

 

 

一方そのころ銀時はというと、ルイズと一緒に食堂に来ていた。昼ごはんを食べるためだ。

ルイズに椅子を引き座らせると銀時は床を見た。しかし床には何もない。

 

「アレ?ルイズ……俺の飯は?」

 

「あんたはここよ」

 

ルイズは隣の席を指差して言った。

 

「へ?」

 

銀時はきょとんとした。それもそのはず朝は怒られた椅子に座ってもいいと言われたのだ。マジマジとルイズを見つめる。その視線に気付いたのか、ルイズは頬を染めて言った。

 

「か、か、勘違いしないでよね!!こ、今回は片付け頑張ってくれたからそのご褒美よ!!」

 

「そっか……ありがとうな」

 

ルイズの様子に笑いながら頭を撫でてやる。するとルイズは先ほどよりも顔を真っ赤にした。そんなルイズを見て、どうしたのかと銀時は首を傾げた。

 

その後、銀時はルイズと一緒に祈りの言葉を唱和した。

そして、すぐに肉へと手を伸ばす。

 

「ん、うまい」

 

銀時はモグモグと口いっぱいに肉を頬張った。

とても美味しい肉だったようでキラキラと瞳を輝かせている。

 

「そう、なら良かったわ」

 

ルイズはキラキラオーラ全開の銀時を直視出来ずに俯いた。

 

(何よ、何なのよ!!このキラキラ……は、反則だわ)

 

ルイズは頬を染め、心の中で呟いた。

 

 

 

しばらくして、ご飯も食べ終わり銀時はランランと瞳を輝かせデザートを待っていた。

ルイズから今日のデザートはケーキだと聞いてそれはもう楽しみにしているのだ。

 

「それにしても、遅いわね」

 

ルイズは眉を寄せて呟いた。銀時もコクンっと頷く。いつまでたってもケーキが運ばれてこないのだ。

 

その時である。

 

遠くの方から騒ぎ声が聞こえた。

どうやら、男の方が怒っており、女の方は涙声で謝っているようだ。

 

「何だ、あれ?」

 

「ん?どうせ、またギーシュね。いつものように、二股がバレてメイドにでも八つ当たりしてるんじゃないの?ほっときなさい」

 

ルイズはきっぱり言うも、銀時は椅子から立ち上がった。

見えたのだ、ギーシュに怒鳴られて泣きそうになっているメイドのそばに銀のトレイがあるのを……もちろん上にはデザートであろうケーキがたくさん並んでいる。

 

「ギントキ?あんたどこ行く気?」

 

「俺のケーキ時間を邪魔した馬鹿を殴ってくる(可哀想だからメイド助けに行くわ)」

 

銀時はきっぱりといった。分かったのだろう、なぜ何時までたってもデザートのケーキが来ないのか……

メイドを助けるという大義名分で、その原因を排除しに行ったのだ。

 

「ちょ、ギントキ待ちなさい!!ってかあんた本音と建て前逆になってるわよッ!!」

 

ルイズは慌てて立ち上がり銀時の後を追った。

 

 

 

 

 

「全く、給仕の質が落ちたものだよ。嘆かわしい!!」

 

金色の巻き髪をかきあげ、ヒラヒラとフリルのついたシャツを恥ずかしげもなく着た気障なメイジは目の前のメイドを見て、冷たい言葉をはいた。

 

そんなメイジの言葉にメイドは頭を下げる。メイドは黒髪にそばかすといった素朴な感じの少女だった。

 

気障なメイジ、いや、ギーシュはまだ言い足りないとばかりにメイドを攻め立てる。

どうやら、メイドのある行動が原因で二股がバレたらしい。

ぶっちゃけ二股するギーシュがわるいのだが、ギーシュにはまだ常識が通用しないようだ。

 

 

「なぁ、いい加減その辺にしたらどうだ?」

 

 

ギーシュの後ろから声が聞こえた。ギーシュは慌てて振り返る。

 

「誰……おや?君は確かあのゼロのルイズが呼び出した平民だったな。で?何か用かね?」

 

ギーシュは銀時の姿を見ると馬鹿にしたように鼻で笑った。

銀時は苛っとし、きっぱり言った。

 

「だからよォ。その辺にしとけっつったんだよ!!ナルシスト野郎」

 

どうやら、ケーキを長いことお預けされて苛つき度がとても高くなっているようだ。

 

「なっ!?ナルシス……君は礼儀がなってないようだな」

 

「礼儀だァ?テメェが一番なってねぇだろうが!!テメェがくだんねぇことでギャアギャア騒いでる間、俺はどんだけケーキを待ち望んでたと思ってんだゴラ!!」

 

「ケーキ?ケーキごときで貴族に逆らうと?流石ゼロのルイズの使い魔。馬鹿にもほどがあるじゃないか。なぁ、お前たちもそう思わないか」

 

ギーシュが言うと、周りのギーシュの友人たちがどっと笑い出した。

 

「ケーキごとき……だと」

 

銀時は小さくボソッと呟いた。勘の良い奴なら危険を察知し、銀時から離れているだろう。

 

しかし、残念ながらギーシュとギーシュの友人たちは鈍かった。

だからこそ、言ってはならない言葉を言ってしまう。

 

「ヴェストリの広場に来たまえ。お馬鹿な君に礼儀を教えてやろう」

 

 

 

 

 

 

「ちょ、ちょっとギントキ。本当に決闘なんかする気?危ないから止めなさいよ!!」

 

「大丈夫だ、一応ガキ相手だし手加減はしてやらァ」

 

ヴェストリの広場に向かう銀時にルイズは忠告した。

しかし、返ってきたのは真逆の言葉だった。

 

 

 

 

 

場所が変わって、ここは学院長室だ。

ミスタ・コルベールとオールド・オスマンは鏡を見ている。そこには銀時とギーシュのやり取りが映っていた。

 

「うーむ、大変な事になってしまったのぅ……」

 

鏡を見ながら呟くオスマン。

 

「よろしいのですか!?『眠りの鐘』で止めたほうが……」

 

「子供のケンカに大切な『秘宝』を使う必要はないじゃろう」

 

「し、しかし……平民がメイジ相手にただでは済みませんぞ?」

 

オスマンの言葉に少し驚いて言う。どうやら銀時の身を案じてくれてるようだ。そんなコルベールを横目で見るオスマン。

 

「ミスタ・コルベール。わからんのかね?だから止めるな。っと言っておるのじゃよ」

 

コルベールは驚き目を見開いた。

 

「もし、ミス・ヴァリエールの召喚した平民が伝説の『ガンダールヴ』だというのならその確認ができるよい機会ではないか」

 

 

そう言いながら再度鏡を覗き込み始めた。

 

 

 

 

ヴェストリの広場につくと、生徒たちがたくさん群がっていた。どうやらギーシュが決闘をすると言う噂を聞きつけてやってきたのだろう。

 

ギーシュが薔薇の造花で出来た杖を上げると生徒たちから歓声の声があがった。

 

「何これ?暇人多すぎじゃねぇ?」

 

銀時はその様子を見てきっぱりと言う。

 

「おや?逃げなかったんだな」

 

ギーシュは銀時が来ると意外そうに呟いた。

 

「逃げるわけねぇだろ。ケーキを馬鹿にした代償を払って貰ってねぇからな!!」

 

銀時はギラギラと瞳を光らせ指を鳴らした。

観客の中にいる勘の良いメイジたち数人が、ビクッと身体を震わした。

 

「本当に馬鹿だな。ケーキなんかで怪我をすることを望むなんて」

 

ギーシュは全く気付いてないらしく、薔薇の造花を振った。

すると、甲冑を着た女戦士がモデルであろう人形が現れた。

 

「僕の二つ名は『青銅のギーシュ』、つまり青銅のゴーレム『ワルキューレ』が君のお相手をするよ」

 

銀時とワルキューレが動こうとすると人込みの中から、ルイズが飛び出した。

 

「ギーシュ、いい加減にして!!決闘は禁止されてるでしょ!!」

 

ルイズがギーシュに向かって怒鳴るように言った。すると、ギーシュは淡々と述べる。

 

「貴族同士の決闘はね。平民とは禁止されてないはずだよ」

 

「う……そ、それはそうだけど」

 

「それともルイズ、その平民が好きなのかい?」

 

「なっ!?ち、違う、違うわよ。そ、そんなんじゃ……」

 

ルイズはギーシュの言葉に顔を真っ赤に染めた。それは怒っているというよりもむしろ……

 

「ルイズ、君もしかして……ふっ、流石はゼロのルイズだね。そこまで堕ちたなんて」

 

ギーシュの言葉にルイズは悔しそうに顔を俯かせた。

 

「おい、ルイズ。しっかり顔を上げて見ていろ」

 

銀時は腰から洞爺湖を抜いて構えて言った。

ルイズはハッとし、顔を上げる。

 

それを見たギーシュは杖を振った。

 

 

ギーシュのワルキューレは銀時に突進していく。

 

「ギントキィィイ!!」

 

ルイズは叫んだ。しかし次の瞬間驚くべき光景が映った。

なんと予想とは違いワルキューレが壊されていたのだ。

 

「なっ……」

 

「え?……」

 

「う……そ……」

 

ざわざわと周りの生徒が騒がしくなる。ギーシュやルイズも驚きを隠せないようだ。

 

 

 

そんな中銀時は口を開いた。

 

「いい加減、ムカつくんだよね……銀さんのケーキ時間を邪魔しただけじゃ飽きたらず、人のことゼロだの平民だのバカにしやがってよォ。魔法がそんなに偉いのかよ!!」

 

銀時の言葉にルイズはハッとした。ケーキのこと以外は、もしかしたらこの決闘は自分のためなのかも知れない。

 

「ま、まぐれで一体倒したから調子に乗らないでくれたまえ」

 

ギーシュは再度杖を振り今度は七体のゴーレムを出した。

七体のゴーレムが銀時を襲う、そのとき左手のルーン文字が光った。

 

動きの遅く見えるゴーレムなんて銀時の敵ではない。

洞爺湖の一振りで一気に三体ものゴーレムが壊れた。

残り四体も目に見えない剣さばきでバラバラに切り裂かれる。速い。

 

あんな風に木刀を振れる人間がいるなんて思えない。

銀時が自分めがけて跳躍するのが見えた。

 

(や、やられる!!)

 

ギーシュは頭を抱えた。

 

しかし、いつまで待っても衝撃が来ない。恐る恐る目を開けて見ると木刀が目の前にあった。寸止めだ。

 

「はァい。終了ォ」

 

木刀を腰に差すとルイズの元へと歩く

 

「ま、待ちたまえ。君は情けでもかけたつもりなのか?」

 

ギーシュの言葉に立ち止まる銀時。

 

「情けだァ?そんなもん、お前にかける位ならご飯にかけるわ。喧嘩ってのはよォ。何かを守るためにやるもんだろうが」

 

「ま、守るって……君は何を守ったんだ?」

 

ギーシュの言葉に振り向くと真剣な表情でルイズの頭にポンポンと手を置き言った。

 

「俺の武士道と大切なケーキ時間……そして、こいつの心だ」

 

そのときギーシュは銀時の中に光り輝く何かを見た。

 

(勝てるわけがない。自分とあの平民とでは見ているものが違いすぎる)

 

「僕の……負けだ」

 

ギーシュが言った瞬間周りから歓声が湧き起こった。

 

銀時はルイズを連れてさっさと中庭から去ろうとしている。

 

「待ってくれ。君は何者なんだ?」

 

ギーシュが問いかけると銀時はきっぱりと言った。

 

「俺ァ坂田銀時……ただの侍だ」

 

ギーシュはキラキラと瞳を輝かせて銀時を見送った。

 

 

 

 

 

「あっさりと勝っちゃいましたね」

 

「うむ」

 

コルベールの言葉にオスマンも頷いた。

 

「彼はやはり、伝説のガンダールヴなのでしょうか?」

 

「ううむ……」

 

オスマンは困ったように唸った。そして、言葉を発する。

 

「とりあえずこの件はまだ様子見と言うことで私が預かる。もちろん他言無用で頼むぞ。ミスタ・コルベール」

 

「はい、もちろん!!」

 

オスマンは、窓際へ向かうと……遠い歴史の彼方へと想いを馳せた。

 

「伝説の使い魔『ガンダールヴ』か……」

 

 

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