ゼロの白夜叉   作:近衛陸

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すいませーん。他の小説書いてたらこっち更新するの忘れてました。
ちなみに移転は次で終了となります。


第7訓 剣はしゃべれても剣

今日は虚無の曜日のため学院が休みのせいかキュルケは昼前に目を覚ました。

 

眠気眼でぱちくりと焦げた窓枠を見つめる。

 

「ああ、そういえば昨日」

 

キュルケは昨日の出来事を思い出すと、起き上がり化粧を始めた。

きっと銀時にでも会いに行くのだろう。ワクワクウキウキと顔を緩ませている。

 

キュルケは化粧も終え、部屋から出るとルイズの部屋の扉をノックした。

静かな廊下にノック音が響く。

 

「あら?」

 

しばらくしてもノックの返事がないことにキュルケは首を傾げ、ドアノブへと手を伸ばした。

あけようとするもピクリともしない。どうやら、鍵がかかっているようだ。

 

キュルケは胸の谷間から魔法の杖を取り出し『アンロック』の呪文を唱えた。

ドアから鍵が開く音が微かに聞こえる。

実は『アンロック』の呪文はかなり重い校則違反だ。

しかし、キュルケは全く気にせずに唱えた。キュルケにとって校則違反よりも恋を成就するほうがよっぽど重要なのである。

キュルケが、ドアを開けると部屋の中には誰も居なかった。

 

「鞄ないわねぇ。出掛けたのかしら」

 

キュルケはそう思い窓から二人が見えないか見回した。

ちょうど、馬が門から出て行くのが見えた。二人の男女が乗っている。

 

「なによー、一体二人してどこ行くのよ」

 

キュルケは眉を寄せると、何かを考えついたのかルイズの部屋から出て行った。

 

 

 

 

青みがかった髪にブルーの瞳、そしてメガネを掛けた少女は自分の部屋で読書をしていた。

よほど、その本が面白いのか……それとも読書が好きなのかキラキラと瞳を輝かせている。

 

少女の名前はタバサ、小柄なルイズよりも身長が低いせいか実年齢より四つも五つも若く見られることが多い。

まぁ、当の本人はそんなこと全く気にしていないのだが……。

 

タバサは虚無の曜日が好きだった。何故なら自分の思いのままに本の世界へとどっぷり浸っていられるからだ。

 

タバサが大好きな読書をしていると、突然ドアが開けられた。

 

タバサは一切本から目を離さずじっと読み続けた。

誰が入ってきたのか気にならないのだろうか?

 

それとも入ってきたのがタバサの友人、キュルケだとわかっていたのか……

タバサの表情はピクリとも変わらない。

 

「タバサ!!支度して、出かけるわよ!!」

 

タバサが本を読んだままでいると、キュルケが叫んだ。タバサは小さくボソッと呟く。

 

「虚無の曜日」

 

タバサの言葉にキュルケはすぐに口を開いた。

 

「わかってる!!けど今はそれどころじゃないの!!恋!!恋なのよ!!」

 

キュルケの言葉にタバサは少しだけ本から顔を上げて首を傾げた。

一体キュルケが何を言いたいのか分からないのだ。

もっと詳しく話して欲しいものだ。

 

そんなタバサの様子に気づいたのだろう。キュルケは説明を始めた。

自分の恋した相手がにっくいヴァリエールと出掛けたこと。馬に乗って出掛けたのでタバサに助けを求めにきたこと。

 

タバサは少し考えるとコクンと頷いた。

心の中ではなんとも面倒なことを頼まれたと思っている。しかし、一切その気持ちを顔には出さなかった。

 

タバサは、窓を開けると口笛を吹いた。そして、窓枠に登り飛び降りたのだ。

 

キュルケもタバサに続いて飛び降りる。

 

落下する二人をばっさばっさと翼をはためかせたウィンドドラゴンが受け止める。

 

どうやらこのウィンドドラゴンの幼生シルフィードがタバサの使い魔らしい。

 

「どっち?」

 

ウィンドドラゴンが一瞬で空高く駆け上ったのを確認するとタバサがキュルケに短く尋ねた。

 

キュルケは少し困ったようにあっと声にならない声をあげる。

その声に理解したのかタバサはウィンドドラゴンに命じた。

 

「馬二頭。食べちゃだめ」

 

ウィンドドラゴンが了解とでも言うかのように小さく鳴くと、タバサは風竜の背びれによりかかり本を読み始めた。

 

 

 

 

 

「……腰いてぇ」

 

銀時がトリステインの城下町について呟いた最初の言葉はそれだった。

慣れない馬に乗ったせいで腰を痛めたようだ。

 

ルイズはそんな銀時を見てため息をついた。

せっかくデートのような気分でワクワクしていたのに銀時の情けなさに気分台無しである。

 

「なっ!?別にデートの気分じゃないわよ!!バ、ババカじゃないの!!あんた」

 

「へ?お前何いきなり言ってんの?」

 

ナレーションの言葉に反応し顔を真っ赤にするルイズ。

銀時は突然のルイズの言葉に首を傾げた。

 

「いや、その、さっき……な、何でもないわ」

 

ルイズは先ほど聞こえた内容を説明することも出来ず頬を染めて俯いた。

そんなルイズに銀時に不思議そうに首を傾げた。

 

さて、何故二人がこんな所にいるかというと当然デート……ではない。

 

朝ルイズに叩き起こされた銀時は、なんやかんやで剣を買うことになっていた。

そして、取り敢えず剣を買うため城下町にやってきたのだ。

 

銀時は腰を擦りながら辺りを見回した。

 

「狭ぇな」

 

「狭いって、大通りなんだけど」

 

「……路地裏じゃなくてか?」

 

道幅は五メートルもなく、大勢の人が行き来するため道幅以上に狭く感じる。

 

「ここは、トリステインで一番大きな通りなのよ?ちなみにこの先に宮殿があるわ」

 

「宮殿に行くのか?」

 

「女王陛下に拝謁してどうするのよ」

 

ルイズの言葉に銀時は少し考えニタリと笑う。

 

「そりゃ、もちろん……勇者として宝物庫の宝を全部戴く」

 

「戴くなァァア!!勇者じゃなくて盗賊じゃない!!」

 

ルイズは頭に手を当て呆れたようにため息をついた。

 

「あんたは絶対宮殿に行かせないわ。……盗賊といえば、スリが多いんだった。ギントキ、上着の中の財布は大丈夫?」

 

この世界のお金は金貨なため財布は基本的にずっしりと重い。

そのため、銀時に持ってもらったのだ。

 

「あ?あるぜ。大体スられたらスリ返してやらァ」

 

銀時は腕を振りながらきっぱり言う。ルイズは顔をしからめた。

 

「何言ってるの!!魔法を使われたら、一発でしょ」

 

「貴族がスリなんかすんのか?」

 

銀時が今まで見てきた貴族は無駄にプライドが高くスリなどしそうにないので聞いてみた。

 

銀時の言葉にルイズは語った。貴族といえども色々あるのだと……

 

「ふぅーん。なるほどな……そういやまだつかねぇのか」

 

ルイズの話を聞きながら歩くも長いこと歩いているため確認として聞く。

 

「こっちよ。ピエモンの秘薬屋の近くだったから、この辺なんだけど……」

 

銀時の言葉にルイズはさらに狭い路地裏に入り辺りをキョロキョロ見回した。

 

「あ、あれね」

 

ルイズの視線の方向に目を向けると、剣の形をした看板が下がっていた。銀時とルイズは石段を上がり羽扉をあけ、店へと入っていった。

 

 

 

 

 

店の中は薄暗く、ランプの灯りがともっている。

 

壁や棚には剣や槍などが無造作にならべられており、隅には立派な甲冑が飾られていた。

この店の主人だろうか?パイプをくわえた五十くらいの親父がルイズを見て眉を寄せた。

 

「いらっしゃいやせ。しかし、貴族の旦那、うちはお上に目をつけられることはしていやせんぜ」

 

「違うわ、客よ」

 

主人の言葉にルイズは少し眉を寄せて言った。すると、主人はわざとらしくびっくりしたように両手をひろげる。

 

「貴族が剣を!?こりゃおったまげた!!」

 

主人が言うとルイズは気にした素振りも見せず、きっぱりと言った。

 

「使うのはわたしじゃないもの」

 

「では、剣を使うのはこちらの方で?」

 

主人の言葉にルイズはコクンっと頷く。

すると、主人は銀時をジロジロと見つめ、いそいそと奥の倉庫に消えた。

きっと剣を取りに行ったんだろう。

 

「おい、ルイズ」

 

「何よ。ギントキ」

 

「ここ、すげぇオヤジが怪しいんだけど……ってかガラクタばっかだし」

 

銀時の言うとおり店に飾られた剣は錆び付いており使えそうにない。きっぱり言う銀時にルイズは眉を寄せた。

 

「何言ってるの。大丈夫だからわたしに任せなさい!!」

 

銀時が言うもルイズは聞く耳を一切もたない。そうこうしているうちに主人が細身の剣を持って現れた。

一メイルほどの長さの華奢な剣である。

 

片手で扱うものらしく、短めの柄にハンドガードがついていた。

 

主人はルイズに剣を見せながら思い出したように話し出した。

どうやら今は『土くれ』のフーケという、メイジの盗賊があらわれるため貴族たちは恐れて下僕に剣を持たせるのだと言う。

そして、その時選ぶのがこの剣らしい。

確かにきらびやかな模様がついていて、貴族に似合いの綺麗な剣だった。

 

ルイズは盗賊には興味がなかったので、話半分に聞き流しじろじろと剣を眺めた。

 

「ギントキ、どう?」

 

剣を眺めながら銀時に聞く。

 

「いらねぇ。大体俺には洞爺湖があるしよォ」

 

銀時がきっぱり言うと店の主人が口を出した。

 

「お言葉ですけど旦那。そんな木の棒なんかこの剣の足元にも及びませんぜ」

 

「へぇー、試してみるか。この木刀でその剣が斬れるかどうか」

 

銀時の言葉に主人はレイピアを置いた。やれるならやってみろといった感じだ。

銀時はにんまりと笑うと木刀を腰から抜き置かれたレイピア目掛けて振り下ろした。

パキっと軽い音を立てレイピアは簡単に真っ二つになった。

 

「「え?」」

 

ルイズと主人は目をまん丸くさせた。木刀で剣を斬るなんて非常識なこと出来るはずないと思っていたのだ。

 

「ルイズ。やっぱ他んとこ行こうぜ」

 

銀時はルイズにきっぱりと言うと店を出ようとする

 

「ま、待ってくれ!!もっと貴族に相応しい良いものがある」

 

主人は我にかえると銀時を引き止めた。せっかく来たカモだ。何も買わせず帰すのは店の主人としてのプライドが許さない。

主人は奥から一・五メイルはあろうかという大剣を持ってきた。柄は両手で扱えるように長く、立派な姿である。ところどころに宝石が散りばめられ、両刃の刀身がキラキラと光っている。見た感じ切れそうな頑丈な大剣であった。

 

「店一番の業物でさ」

 

「へぇー、おいくら?」

 

ルイズは店一番とオヤジが太鼓判を押したのを気に入って値段を聞いた。

 

「おやすかあ、ありませんぜ」

 

「あら、わたしは貴族よ」

 

ルイズは胸をそらせる。すると、主人は淡々と値段を告げた。

 

「エキュー金貨で二千。新金貨なら三千でさあ」

 

「なっ!?高すぎよッ!!立派な家と、森つきの庭が買えるじゃない!!」

 

ルイズは呆れて言った。

 

「仕方ないでさ。何せこいつを鍛えたのは、かの高名なゲルマ二アの錬金術師シュぺー郷で。魔法がかかっているから鉄だって一刀両断でさ。それに……」

 

「ふぅーん。一刀両断ねぇ……じゃあ、今度は木刀で斬れないんだな」

 

主人は得意気に話すも銀時の言葉に止まった。そして先ほど折られたレイピアを思い出し顔を青ざめた。

それもそのはず、錬金術師シュぺー郷が作ったのではなく主人が作った剣なのだ。主人が黙っていると銀時は木刀を抜いた。その光景を見て主人は冷や汗ダラダラだ。

そして主人の見ている目の前で大剣は真っ二つになった。

 

「べ、弁償だァァア!!旦那2つとも弁償でさあ」

 

主人は銀時を指差しきっぱりと言った。

ギャーギャー喚く主人を見ると銀時は耳穴に指を突っ込み動じず言った。

 

「なんで?」

 

「なんでって旦那が壊したからに決まって……」

 

主人がまくし立てて言うと銀時は眉を寄せた。

 

「オイオイ、言いがかりは止してくんない?大体よォ。木刀で折れる剣売るなんてどういうこと?詐欺か?詐欺なのか?銀さん出るとこ出てもかまわねぇぜ」

 

 

 

 

 

銀時の言葉に主人は悔しそうに口を閉じた。するとその時乱雑に積み上げられた剣の中から声がした。低い男の声だ。

 

「ぶっひゃひゃひゃ、おでれーた。おでれーた。まさかこんなに主人をへこます奴が居るとはよ」

 

銀時とルイズは声の方を見た。主人は頭を抱えている。

銀時は眉を寄せ一本の剣を見つめた。どうやら錆の浮いたボロボロの剣から声は発せられているようだ。

 

「剣?この世界の剣はしゃべるのか?」

 

銀時が不思議そうにすると店の主人が怒鳴り声をあげた。

 

「やい!!デル公!!余計なこと言うんじゃねぇ!!」

 

銀時は剣をまじまじと見つめた。表面に錆が浮いているが、この中では一番まともな剣だ。剣も主人を無視って銀時を観察している。それからしばらくして剣は小さな声でしゃべり始めた。

 

「おい、兄ちゃん」

 

「なんだ?ガラクタ」

 

剣の呼びかけに銀時は答える。

 

「ガラクタじゃねぇよ!!俺はデルフリンガーさまだ!!兄ちゃん『使い手』か」

 

「あ?『使い手』?」

 

「自分の実力知らないのか。まぁいい。兄ちゃん俺を買え」

 

銀時はじっと剣を見つめにっこり微笑みきっぱり言った。

 

「いやだ」

 

「相棒!!そりゃねぇよ。買ってくれる雰囲気だったじゃねぇか!!」

 

「誰が相棒だ!!誰が!!」

 

銀時とデル公が言いあってるとルイズは勝手にデル公を買っていた。

理由は主人がデル公ならタダでやると言ったからだ。

 

「ギントキ。もう買ったからあんたの剣よ」

 

ルイズはデル公を持ち上げ銀時に渡した。

 

「は?おい、ルイズ。俺はこんなガラクタいら……」

 

銀時が文句言おうとするもルイズの言葉に止まった。

 

「さて、お金も浮いたことだし。ケーキでも食べて帰りましょう。……っとギントキ何か言った?」

 

「いや、なんでもねぇよ。早く行こうぜ」

 

銀時はルイズの言葉を聞くと瞬時にデル公を洞爺湖のように腰に差し瞳をキラキラさせ店の出入り口に向かった。

 

 

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