呪術廻戦RTA 高専メインキャラ全員生存ルート 作:オールF
星漿体護衛任務が終わり、理子ちゃんと黒井さんは悟の実家の庇護下に入った。
理子ちゃんは普通に生きる道を選んだ。天元様との同化を拒み、一人の女の子として。
理子ちゃんが同化を拒んだ時のことは悟とは相談済みだったこともあって、手続きは滞りなく済んだ。
同化しないことで天元様や高専や呪術総監部から何かしらの介入がくるんじゃないかと心配したけど、杞憂に終わった。
理子ちゃんが天元様と同化しない道を選んだことで盤星教に雇われていたと思われる傷の男─────悟曰く禪院家の人間や他の暗殺者は現れていない。
生死をさまよった事で「星」以外の式神を使えるようになった元陽と、反転術式を習得して術式反転も会得した悟を敵に回すのが無理になったという見方もあるが、なんにせよ、私と悟に課せられた重要任務は無事に終わった。
そして、あれから1年。
悟は最強になった。
ミンミンゼミの鳴く木の下で私たちは集められた。
「いっくよー」
そう合図をした硝子の手には消しゴム、その隣に立つ私の手にはペンが握られている。
それを悟の方へと投げるとペンは空中で止まり、消しゴムだけが悟へと届いた。
「うん、いけるね」
その結果に悟は満足そうに頷いた。
「げ、何今の」
「術式対象の自動選択か?」
「そ」
驚く硝子に対して、私の頭は冷静だった。
正確に言えば術式対象は俺だけどと訂正した悟はそのまま続けた。
「今までマニュアルでやってたのをオートマにした。呪力の強弱だけじゃなく質量・速度・形状からも物体の危険度を選別できる。毒物なんかも選別できればいいんだけどそれはまだ難しいかな。これなら最小限のリソースで無下限呪術をほぼ出しっぱにできる」
「出しっぱなしなんて脳が焼き切れるよ」
「自己補完の範疇で反転術式を回し続ける。新鮮な脳をお届けだ」
無下限呪術が脳にかける負担は相当らしく、悟はそれをセーブするためにサングラスやアイマスクをしていた。
それは今後も変わらないだろうが、しかし脳への負担は反転術式によってなかったことにできると言う。
「前からやってた掌印の省略は完璧。「赫」と「蒼」それぞれの複数同時発動もぼちぼち。あとの課題は領域と長距離の瞬間移動かな」
あの呪詛師との戦いで反転術式を会得した悟は術師として遥か高みへと至った。
無下限呪術を余すことなく使える最強の呪術師に。
「領域さえ使えれば元陽の式神も問題外」
その悟に傷をつけた元陽もまた術師として私よりもまた数歩先をいったのは間違いない。
私はまだ見ていないが時を止め、さらには鏡の中なんていうメルヘンな世界から他者を攻撃できるようになったという。
「傑、ちょっと痩せた? 大丈夫か?」
私だけが置いていかれている。
任務も全て1人でこなせる悟と元陽。
硝子は元々危険な任務で外に出ることは無い。
私はこれから必然的に1人になるだろう。
「ただの夏バテさ。大丈夫」
「ソーメン食いすぎた?」
そうかな。そうかも。そうだなと苦笑か愛想笑いか。
その時どう返したかは覚えていない。
悟はその後、瞬間移動のための実験で硝子にネズミを借りに行った。
残されたのは私と元陽だけになった。
「夏油、夏バテのところ悪いが時間をくれないか」
「……は?」
「式神が増えたはいいが使えるのがてんで足りない。出来れば術式以外の使い道を模索したい。手伝ってくれ」
相変わらず同い年には見えない厳つい顔で突拍子もないことを言われた私はたじろいだ。
「別に君はそんな事しなくてもいいだろう」
時を止められるのなら他の式神に頼ることなく術師でも呪霊でも倒せるはずだ。
それに時を止めなくても、「星」のスピードとパワーは驚異的だ。
「今は呪霊が多い。去年の災害の影響だ。それにそういうことならさっき悟に」
「お前じゃないとだめなんだ」
「っ」
「複数の呪霊を使うお前となら、何かしらのヒントが得られる。あと五条はいちいち態度がデカくてムカつく」
「しかし……」
否定の言葉を口にしようとして、言い淀んで、私は口を閉じる。
確かに私と同じく手数が豊富になった元陽と私が組めば何か得られるものはあるかもしれない。
「……分かった。加減はしてくれよ?」
「グッド。お前ならそう言うと思った」
そうして特訓をすることになった私たちはとりあえずいくつか目標を定めた。
最終的には反転術式、領域展開を身につけるが、その前に手持ちの呪霊と式神の中で使いにくい、使わないものの使い道を考えることになった。
「呪霊を合成するってのはできないのか?」
「ふむ、どうだろう……考えたこともなかったな」
低級の呪霊は撹乱や陽動、あとは盾に用いることはあっても、それ以外の使い道は考えていなかった。
他にも元陽には色んなアイデアがあった。
呪霊を身にまとったり、術式は強力だが本体が弱い呪霊の術式を他の呪霊に引き継がせたりできないかなど
発想としては面白いし、拡張術式の範疇ではあるだろうから、出来ないということは無いだろう。
実際できてしまったわけだし。
「呪力を流し続ける必要があるが、そこは外付けにした低級呪霊たちから引っ張ってくれば場持ちは悪くないね」
「腕や脚に限定すれば縛りとして機能する。なるほど、いいアイデアだ」
一通り試して、実戦経験を通して私たちはお互いの術式の幅を広げた。
私は合成や組み合わせを行い呪力タンクとしての呪霊や耐久力のある盾呪霊を作ったり、術式効果のみを発揮しつつ縛りで効果を底上げし腕や足に纏って戦ったりできるようになった。
元陽も式神を腕だけに纏うことで彼自身の強化に回したり、限定的ではあるが2体の式神を使うこともできるようになっていた。
ただ呪霊相手だとやはり敵を止める方が早いらしく、気付けば呪霊の中心に穴が空いて離散する。
なんて、場面が多くあった。
「元陽、それじゃ取り込めないだろ」
「いいじゃねぇか。不味いんだろ、こいつら」
アイスクリームみてぇな味ならいいのにな、と珍しく彼から冗談を聞いて私は久しぶりに笑った気がする。
そういえば、元陽とこんなに沢山話したのはいつ以来だろうか。
入学と同時に元陽が受けた任務に同行して以来かもしれない。
反転術式と領域展開は会得できなかったが、他に得るものはたくさんあった。
特に同級生の意外な一面を見れたのは、私にとってはいい思い出だった。
「げっ、星野さん……あっ!! 夏油さん!!」
そんな日々を繰り返し、高専内の休憩所で休んでいたところに灰原がやってきた。
誰かに対して露骨に嫌な顔はしない。というイメージを持っていた灰原が元陽に向けた嫌そうな顔は意外だったが、私は気にせず手招いた。
「灰原」
「お疲れ様です!!」
私には溌剌とした笑顔を向けてくる灰原に、私は腰をあげる。
「何したの元陽」
「ちょっと鍛えてやっただけだぜ」
その際に灰原に聞こえないよう、耳元で小声で聞くと元陽はそう返した。
ここ数日一緒にいるからわかるんだが、彼のちょっとというのは常人には相当なものだろう。
「なにか飲むか?」
「えぇ!? 悪いですよ、コーラで!!」
「ふふっ」
遠慮するのかしないのか、灰原は笑って缶コーラを受け取るとその場でプルタブを開けた。
「明日の任務結構遠出なんですよ」
「そうかお土産頼むよ」
「了解です!! 甘いのとしょっぱいのどっちがいいですか?」
そう聞かれて、3人の顔が思い浮かぶ。
悟は甘いものが好きだが、硝子は酒のツマミになるからとしょっぱい方が好きだ。
元陽は……。
「俺のことは気にしなくていいぜ。それより、その任務大丈夫なのか?」
どうなのだろうと視線を向けたが、どちらでもいいのか、あるいはいらないのか。
おそらく後者だろうが元陽は首を横に振って灰原に話を振った。
「はい、2級相当ですし、七海と2人なんで」
「そうか……まぁ油断するなよ。誰かさんみたいに逆鉾で斬られないようにな」
「?」
素っ気ない返事をする灰原に元陽はそう言った。
七海も灰原も、悟が生死をさまよったことについて、悟から箝口令が敷かれているため、詳しくは聞かされていない。
だから、何のことか分からないとでも言いたげに首を傾げていたが、私は苦笑を浮かべた。
「2級だからといって甘く見ない方がいいってことさ」
「なるほど! わかりました! 夏油さん!」
いや、言ったのは元陽なんだけどね?
本当に何したんだ元陽は……と訝しげな目を向けているとコツコツとまた誰かがやってくる足音が聞こえてくる。
「君が夏油くん?」
長い髪と白い肌、硝子とは違うタイプの美人な顔に、スタイルの良さを惜しげも無く晒している女性に私は目を丸くする。
「どんな女が好みかな? ん?」
知らない女だ。
ここにいるということは高専関係者なんだろうが。
「どちら様ですか?」
「自分は沢山食べる子が好きです!!」
私の質問を遮るように灰原が素直に答えた。
「灰原……」
「大丈夫ですよ。悪い人じゃないです。人を見る目には自信があります」
術式の中には質問への返答によって儀式が完成するものもあるというのに無警戒にも程があるだろうと顔をしかめると灰原は笑顔を向けてくる。
そんな灰原はそろそろ戻らなくてはいけないと「失礼しまーす」と去っていった。
「じゃあ、俺もお暇するぜ。明日の任務についてもう少し聞いておきたいしな」
「あれ? 君も居ていいんだよ?」
余程気になることがあるのか、元陽はこの場を去ろうとするが謎の女性に呼び止められる。
「用は夏油なんだろ。邪魔する気はねぇーぜ」
「邪魔じゃないって。で、君はどんな子がタイプ?」
「初対面の女に言うことじゃねぇ」
「ははは、じゃあ夏油くんには? お友達、でしょ」
ニヤニヤと笑みを浮かべて謎の女は元陽の方を見上げるが、元陽の顔には少なからず怒りの顔が見て取れた。
「ねぇねえ、いいでしょ? お姉さんとお友達の夏油くんに教えてみなさいな」
「やかましい!! うっとおしいぞこのアマ!!」
そうキレると元陽は不機嫌さを隠すことない歩みで去っていった。
ひとまず、元陽はやかましい、鬱陶しい女は嫌いみたいだ。
「こわ……年頃だからかな……いやはや気をつけないと……」
年下にキレられて肩をすくめる女性に私はため息をついた。
そして、ようやく彼女が何者であるのかを知る。
特級術師、九十九由基。
特級のくせに任務を全く受けず海外をぶらぶらしてるろくでなしという噂の術師。
そんな彼女が私のところに来たのは特級術師になった私と悟に挨拶に来たとの事だ。
あとは高専のやり方と合わないから、志を共にできる仲間を探しているとか。
呪霊の生まれない世界にするためには、全人類から呪力を無くすか、全人類に呪力のコントロールを可能にさせるのどちらからしい。
術師からは呪霊は生まれない。
全人類が術師になれば呪いは生まれない。
ならば、非術師が全員死ねば呪霊は生まれない。
「ダメだな」
その話を七海や灰原を助けに行って帰ってきた元陽にしたところ、返ってきたのは否定の言葉だった。
「確かに呪霊は生まれないが、術師だけの世界になったとしてどうする。今度は呪術師と呪詛師が争う世界になる」
それに呪術師同士の子供が呪術師とは限らない以上、終わらない負の連鎖が再び始まるのではないかというのが元陽の意見だった。
「それなら非術師を術師の体に作り替える術式を持つ呪霊を探して、そいつをお前が取り込む方が早そうなもんだがな」
「そんな呪霊……」
いない、とは言いきれないのが呪術界の妙だ。なにしろ何でもありなのだから。
「まあいい。それで、お前の頼みってのはなんだ? こんな与太話を聞かせるだけか?」
「あぁ、それなんだが」
村落内での神隠し、変死が起きているという村で、その原因と思われる呪霊の祓除に当たってくれというものだ。
「すまないが元陽、付き合ってくれないか? 大したことは無いと思うんだが……」
七海と灰原の件もある。
上が等級を見誤っている可能性も十分にあり得る。
「いいぜ。お前には借りがあるからな」
「ありがとう。助かるよ」
正直、領域展開でもされたら今の私一人ではどうしようもない。
そう思って声をかけたのだが、元陽は思いのほかあっさりと快諾してくれた。
ただ、原因となっていた呪霊は今の私たちでは片手間で倒せるほどに弱く、問題はその後だった。
「これはなんですか?」
呪霊の祓除を報告しに戻れば、まだ終わっていないと村民に、ある民家に通される。
そこで私が見たのは見るからに暴力を受けたであろう跡が残る少女2人が檻の中に閉じ込められている姿だった。
「何とは? この2人が一連の事件の原因でしょう?」
「違います」
「この2人は頭がおかしい。不思議な力で村人を度々襲うのです」
「事件の原因は私たちが取り除きました」
「私の孫もこの2人に殺されかけたことがあります」
老婆の言葉に檻の中の少女が口を開く。
「それはあっちが」
「黙りなさい化け物め!」
「あなた達の親もそうだった! やはり赤子の内に殺しておくべきだった!」
耳障りな声が、不愉快な言葉が聞こえる。
先程まで人の言葉として聞こえていたものが、何故か猿の鳴き声のように聞こえる。
疲れているのか?
おそらく、呪霊が見える自分たちが異端と判断され、非術師の子供たちに何らかの嫌がらせを受け、それの自己防衛に呪術を行使した。
悪いことではない。自分の身を守るために力を使うのは当然だ。
だが、彼らはそう思わなかった。
自分たちの知らない呪術と呪霊に恐怖し、2人を監禁し、暴力を振るった。
これがおなじ人間のすることなのか?
いや、私たちと彼らは同じ人間なのか?
「ちょい待ちな。こいつらの親がなんだって? 殺しておくべきだったと聞こえたが」
私の中で何かが湧き上がっできそうになっている中で元陽は冷静だった。
「そうだ! 不気味な力を使う! それで村の者たちがどれだけ怯えてきたか!」
「この2人もそう! 怪我をさせたのは自分たちじゃない! 化け物のせいだとおかしなことを言う!」
「化け物はこいつらだ!」
「なるほどな。それで化け物退治のためにこんな痣だらけにしたわけか」
「ああ! 何が悪い! 素直に認めればいいものを! 大人にも怪我をしたヤツがいるんだ!!」
村民がごちゃごちゃと捲し立てると、元陽はもう十分聞き終わったと、手を突っ込んでいたポケットから銀色の長方形の機械を取り出すとボタンを押す。
「監禁に暴行、それに殺人……てめぇらがどうしようも無い悪党だってのはよーく分かったぜ」
「何をしているんですか!」
「録音だ」
詰め寄る村民に目もくれず、元陽は私の方を見る。
「夏油、このことを夜蛾先生に報告しろ。そうすればすぐに警察と高専が動くはずだ」
「あ、あぁ、わかった」
村の警察ではダメだ。
管轄外の警察に動いてもらわないと腐敗している可能性がある。
携帯を手に取りながら私は頭の隅で冷静に考えるが、頭の中が沸騰するようでもある。
村人たちはそんな私の様子をみて不安そうな表情を浮かべる。
「や、やめなさい! あなた達も呪いの子なのですか!?」
「毒を制するのは毒! お前たちも悪魔の一党か!!」
自分たちが不利な状況に陥ると村民たちは私と元陽を責め立ててくる。
ふざけるな。悪魔はお前たちの方だ。
そう言いたくなるのをぐっと堪えて、私は夜蛾先生へと電話を繋ごうとしたところで、鈍い骨が軋む音が響いた。
「やかましいッ! 悪魔はてめぇらの方だぜ! こんな俺にも吐き気のする悪はわかる! てめー自身のためだけに、弱者を一方的に踏みつけるやつのことだ!! それも女のガキを! てめぇらがやったのはそれだ! この2人はてめぇが受けたこの拳よりも傷ついたんだぞ、あぁ!?」
見れば、小太りした男の方が元陽に殴られ地面に倒れており、老婆の方も元陽が少女2人の入った檻の木をへし折ったのを見て尻餅をついている。
自分よりキレている人間を見ると冷静になってしまうというのは本当なのだろう。
電波が届いていないのか携帯は繋がらなかったので、家にある電話から夜蛾先生に連絡し、事情を説明すると1時間もしないうちに村外から高専と繋がりのある警察がやってきた。
そして、███村は密やかに解体され、少女2人は高専で預かることとなった。
「ありがとう、ございます」
少女の1人、ななこにそう言われて私は首を振った。
「違うよ。私の力じゃない、元陽がいたから君たちは────いや─────私たちはここにいるんだ」
きっと元陽が居なかったら私はあの場で彼らを……そう考えてみみこの治療を終えた硝子と話している元陽の方を見る。
彼がいる限りは呪術師という終わらないマラソンゲームにも光があるかもしれない。
そう思うのだった。
硝子と話してた内容
し「ロリコンなの?」
ほ「どうしてそうなる」
し「そういえば、特級術師に好みのタイプ聞かれたんだって?」
ほ「誰に聞いた」
し「灰原」
ほ「ヤロウ……(灰原)」
し「特級術師って教えてくれたのは夏油だけど。で、どんなのが好きなの?参考までに聞いたげる。初対面じゃなきゃ教えてくれるんでしょ?」
ほ「ヤロウ……!(夏油)」
し「ま、大体わかるからいいけど。2人、お風呂入れてくるから野郎2人はどっか行きな〜」
ほ「……やれやれだぜ」
なお走者はほとんどスキップしてるから夏油や硝子との会話内容はほぼ知らない。
こんな俺の前置きは意図的にしませんでしたが、内容はご想像にお任せします。
乙骨世代に進むまでに2話くらい小話やるかそのまま0~原作1話くらいまでいくかもです。
ま、いつになるかはわからんが