バコン!
バコン!
「あの音だ……近づいてる………」
ショッカーの銃の音。視界に入る道路の穴も真新しいものばかり。
「いた…!」
銃の反動で不規則に飛び上がる影。ショッカーだ。
その彼女が向かっている先は…
「そっちは…!トリニティの自治区…?!」
マーケットを抜けて少し歩いて行けば、そこはトリニティの自治区だ。そっちは本格的にまずい
ショッカーの移動量なら一瞬でたどり着くだろう
「ショッカー!!!待って!!」
「……?」
ショッカーが振り向く。と同時にこちらに弾丸を放ってきた
「はあ?!」
身を捻り、なんとか避けることができた。
「ちょっと!! 感動の再会にしては殺意が高くない!?」
「誰だお前は!」
こいつ、私だって気づいてないな。
けど別にいい。私だって分かったところでこいつが止まるとは思えない。
力ずくで止めてやる
「せめて制限速度くらいは守ってもらうよ…」
片方の手の糸を電柱に引っ掛け、もう片方をショッカーの足に絡ませた
「?! なにすんの!虫けら!」
「虫けら!? 蜘蛛は昆虫じゃないんだけど…な…!」
ショッカー側の糸を引っ張って、地面に落としてやった
「ぐっ!!」
「よし、やった!」
油断した、その時だった
バコッ!!!
「…………!!!!!」
体中に走る衝撃。
ショッカーの弾丸を真正面から食らったのだ。
強くなる前の貧弱な肉体の時に、弾丸を大量に食らってきた。けど、この弾丸はそれまで食らってきたどれよりも衝撃的で、とてつもなく痛い。
上下が分からなくなるほど激しく体が回転し、建物にめり込む勢いで叩きつけられた。
コンクリートが崩れ、私を覆うように落下する
「……バカな自警団……。見たところ素人だね。
この弾丸で死にはしないが、しばらく失神することにはなるよ。頭を冷やしな」
弾丸を再装填し、飛び上がる構えをとるショッカー
パシュ…!
その彼女の肩を何かがかすめた
「………?」
「外した……」
瓦礫の隙間から糸を放ってみたが、うまく当たらなかった。痛みと瓦礫の重みで満足に体に力が入らず、狙いがうまくいかない
「…まだ意識があるんだ。すごいね。
じゃ、バイバイ」
バコン!
銃の反動でまたショッカーが飛んでいき、視界から消えていった。
ここで逃したらヤツはトリニティに行く
「フンッ……なああ…!」
力を込めて瓦礫を押し上げて、なんとか抜け出す。
「急がないと…」
2つの建物の端に糸をかける。スリングショットの要領で体を引っ張り、そのまま考え得る限りの最高速で飛んでいった
巡る景色から灰色が抜け、彩りを持ち始める。ブラックマーケットを出て、トリニティの自治区に入ったのだ。
整備された道、生い茂る芝生に植えられた整えられた木々。その所々にボコボコと穴が空いている。奴はもうここに侵入している
「…………いた!」
遠目からショッカーが銃を構えているのが見えた。
その目の前に誰かいる。あれは
「ヒフミ……!? なんで…」
互いに銃を構え合っていて一触即発。ショッカーの銃がエネルギーを溜め始めている
あの弾丸を至近距離で食らったら、どうなるかもわからない
「ここからじゃ、間に合わない……」
関係ない。間に合わせなければならない。
糸を伸ばす。ショッカーの銃口を少しでもずらせれば、何とかなるかもしれない。それしか何とする方法が思いつかない
糸は真っ直ぐと、一直線に空気を割いて進んだ。糸がたどり着く、その直前
バコッッッ
その肢体が軽く吹き飛ばされる。勢いでむしられた周囲の芝生の草が、乱れる空気に呑まれてその場で回り続けていた
「……………………
ヒフミ……!!!!」
私は勢いよく頭から地面に落ちた。糸はエネルギーに弾かれて着地点を見失い、私は何の歯止めもなしに地面に激突したのだ
マスクは破れ剥がれ、顔の擦り傷に土が染み込んだ
「まだいたの…?」
滑り込んできた私を見下すショッカー。一瞥もなくそのままどこかへ飛んでいった
バコン バコン バコン バコン…
その銃声は追いつけなくなるほど、だんだん音を小さくしていった
「クソ……痛…」
痛みなんて気にしてる暇はない。すぐに立ち上がった。彼女が飛ばされたであろう方向へと走り出す。脚が引き摺られて満足に走れない。
少し離れた場所にある小さな教会の壁。そこに大きな窪みができている。ヒフミがその中心で埋もれているのを見つけた
「…………ヒフミ」
動かない。意識を失ってる
彼女に近づき、できるだけゆっくりと壁から下ろした。
頭から血が出てる。弾丸が命中したであろう腹が少しだけへこんでいる。
息はしてる。か弱く
「なんで…………」