赤いスパイダーマンと青い春の物語   作:はふはふサドンデス

5 / 12
主人公レイサでもよかったんじゃね?とは思ってる。


力の使い方

 

 

 

 

 

ただ走った。学校の外に出た。校舎裏に設置されているベンチを見つけて座った。

息を整え、先ほどの愚行を振り返る

 

 

 

「……………はぁ…」

 

まずいことをした。

 

「…っ……!」

 

私を見るヒフミの顔がフラッシュバックする。

 

驚き、恐れ、失望、悲しみ

 

どの感情をもって、ヒフミはあの顔をしていたのかはわからない。けど心にある確信が浮かんでしまう

 

「嫌われちゃった…な………」

 

ヒフミがそんな薄情な人じゃないとはわかってる。それでもそう思わずにはいられない。

自分勝手に人の悪い感情を推察する。私の悪い癖だ。だから人と接するのを恐れて友達ができない。

 

「はぁ……」

 

ベンチにもたれかかって全身を脱力させる。色々な思考が渦巻く。

トウコの銃をぶっ壊した。自分は酷いことをしたはずなのに、あの時は私は快楽に浸っていた。そんな自分が醜い

それにこれからどういう処罰を受けるんだろうか。奉仕活動で済むだろうか。最悪の場合、停学や退学なんてことも…

そもそもこの馬鹿力はなんなんだ。やっぱり蜘蛛に噛まれたことが原因なのか?今のところ恩恵しかないが、内臓や脳がいつの間にか侵されていたりしないのか?これ以上他の人に露呈したら研究機関に拉致されたりしないだろうか?

 

 

「ああ……、どうしよ…」

 

何をすればいいのか分からない

そんなことを考えていると

 

「あ、いいところにベンチ…」

 

ベンチの隣に誰かが遠慮なく座ってきた。

 

「…ぇ…」

 

「よいしょっと…」

 

その人は体操着を着ていて、ピンクの髪を両サイドでお団子にして留めていた。相当な毛量があるのだろうか、お団子は手のひらより巨大であった。ほどけば膝まで届いてしまいそうな髪の量だ。

汗まみれでさっきまで何か作業をしていたのが分かった

 

「……ぇ………ぁ…」

 

「あ、ごめん。隣失礼するね。」

 

私がしどろもどろになっている間に、その人が話しかけてきた。汗をぬぐい、手で風を仰ぎながらリラックスしていた。その所作からは上品さが見え隠れしていた

 

「いい日陰だよね、ここ」

 

「あ、あ…そうです…ね。日陰…いいですよね、ここ…へへ…。」

 

ゴミカスのような返事と乾いた笑いを発することしかできない。緊張と悩みのストレスで追い込まれた私にできる最大限の対応がこれなのだ。

 

「ねぇ、私のこと知ってる?」

 

「え?えっと………ごめんなさい…その…知らない…です…すみません…」

 

「へぇー……珍しい…」

 

どこかで見たこともあるような気がするが分からない。この人は何かの有名人なのだろうか。あいにくそういう話題を共有する友達もいないしニュースもそんなに見ない。

 

「名前はなんて言うの?」

 

「な、名前……。えと…山城ベニ……です」

 

「ベニちゃん……。ふ〜ん…

いつもここに来てるの?」

 

「いや…今日はじめて来て……」

 

「あれ……何か用事でもあったの?」

 

「あ、いや…別に」

 

いくら質問されても会話が続かない。

もっと気を使って会話を続けなければならないのに…

 

「ベニちゃんは私のことを知らないんだよね?」

 

「あ、あ、…そうですね…。」

 

「…………じゃあ、さっき嫌な事があったから少し愚痴ってもいい?」

 

「…へ?あ、愚痴…。愚痴ですね…。

お、お願いします…!」

 

唐突な話題に驚いて変な返事を返してしまった

 

「お願いしますって…あははは!なにそれ!

ふふ…そう言われちゃったら、気合い入れて愚痴っちゃおうかな〜…なんて」

 

笑ってくれた。それが何故か嬉しかった

 

「ははは…」

 

私も釣られて弱く笑う

 

「私さ、色々な事があって奉仕活動をやらなきゃいけないんだよね。」

 

「へぇ」

 

奉仕活動…。この人も何か問題を起こしたのだろうか

 

「それで草むしりとか暑い中頑張ってるのに、後ろからグチグチグチグチ言ってくる奴らがいるの」

 

「はあ…それは、なんか嫌ですね」

 

「でしょ?でもそれに反応したっていいことないし、無視してたの。でもねアイツラは私の飲み物を奪って隠しちゃてさ。さすがに返してって怒ったの」

 

「ああ、いますよねそういうの」

 

そう返事して、トウコの顔が思い浮かんだ

 

「ソイツラが逃げたから追いかけたの。そしたらいきなりホースで水をかけてきて。『水が欲しかったんだろ?』って馬鹿にしてきてさ…」

 

「うわぁ…」

 

「おかげで服はびちゃびちゃだし、水も無くなるしで最悪!」

 

さっきまで汗で濡れているのだと思っていたが、よく見てみると髪や上着のジャージまでビチョ濡れだ。

 

「わかります。水で濡れると服がヒタってして不快ですよね」

 

「うん、そう!今ホントに最悪!ベニちゃんがわかってくれる人でよかった!

もしかしてベニちゃんも水かけられたことあったり…?まさかね…」

 

「えっと…かけられたっていうか…。トイレで上からバケツの水をまかれたりとか、プールに落とされたりとか…そういうので、ひどいですよね、はははは」

 

「え…それめっちゃヤバくない…?」

 

私がへらへらとしながら語る様子に対して、体操着の人は真剣な顔で私を見ていた

 

「え?」

 

「もしかして…イジメに悩んでたりするの?それでこのベンチに一人でいたとか…」

 

半分当たっている。が、イジメそのものに悩んでいるわけではない

 

「あ、いや別にイジメは昔の事というか…!けど悩みは…ある…あ、いやない…。いややっぱあって…あ!イジメはもうないんですよ…!……た、たぶん」

 

しかし、そのことを正確に伝えられるコミュケーション能力がある私ではなかった

 

「ふふ、ゆっくり落ち着いて。さっきまで私が好き放題話してたんだから、今度はベニちゃんが好きなように話せばいいじゃん、ね?」

 

「あ…ゆっくり…。はい……。でも、私なんかが話しても…」

 

そんなことを言う私に、その人は手を置いてこちらを見つめた

 

「私ね、すっごく頼れる人がいてね。その人に悩みとかを打ち明けるとすごく気持ちが軽くなるの。」

 

「…………」

 

「私もその人みたいになれたらなっていつも思ってて………だからお願い、私にベニちゃんの悩みを聞かせて。

これは私のわがまま。だから話すも話さないもベニちゃんの自由だよ」

 

その言葉を聞いた私は知らず知らず口を開いていた

 

「…………じゃあ、その、はい…」

 

 

 

 

トウコとの衝突の事を話した。けど蜘蛛のことは話さなかった。突然目覚めた力の詳細は秘密にしたいと言ったらそれでもいいと言ってくれた。

この人と話していると、自分でも不思議なくらい言葉がスラスラと出てきた

 

 

___________

 

「………なるほど…。大事な友達に嫌われちゃったかもしれないんだ」

 

「私に友達だって言ってくれた、たった一人で……それなのに…」

 

「でもその子を守れたじゃん」

 

「え……」

 

「誰かのために自分の力を使う。大事なことだよ。きっとベニちゃんの気持ちはその子にも伝わるはず」

 

「そう…だといいですけど」

 

「もう一度その子と話して。そしたら絶対に伝わるはずだから」

 

「……わかりました」

 

やらなければならないことが見つかった。それだけで少し気持ちが晴れた。

 

 

 

「けど、その力は無闇に使っちゃだめ」

 

「……!」

 

その人の表情が少し硬くなった

 

「大きな力はたくさんの選択肢をくれる。けど選択を間違えると、その代償を払うことになる。」

 

「代償………」

 

「…そう…だから自分の力をきちんと知る必要がある。それを向けるべき相手を見誤っちゃだめ。」

 

「知る………」

 

自分の手のひらを見つめてそれを握りしめる。

 

「理由は分からないけど、急にそうなっちゃったんでしょ?なら、地道に使い方を見つけていけばいいよ」

 

「……はい」

自分が今やるべきこと。それが整理された気がした。気分がいくらか楽になった。

ヒフミと会って話すこと。自分の力を知ること。この2つをこなそう

そう心のなかで意気込んだ

 

「でもベニちゃんは偉いよ。相手はイジメてきた子なのに直接手を出さなかったんでしょ?」

 

「それは…たまたまというか、タイミングは良かったというか。直接手を出してないからといっても怖がらせちゃっただろうし…」

 

「それでも十分偉いよ!」

 

「そ、そうですかね…」

 

「うん……………ベニちゃんは私みたいになっちゃだめだよ…」

 

「え?」

 

小声で何かを言ったのが聞こえた

 

 

「あーー!今のなしなし…!」

 

「………」

 

納得いかない気もするが、詮索するのも無粋だ

 

「あの、ありがとうございました。色々と楽になりました」

 

「そう?じゃあ、よかった。私もあの人に少し近づけたかな…?」

 

「……」

 

その人はどこか遠くを見て短い思考にふけっていた

 

「それじゃ、私はそろそろ行くね」

 

彼女はベンチから立ち上がった

 

「あ、はい………」

 

見送ろうとしたとき、どうしても聞きたいことがあるのを思い出した。ここで聞かないと次の機会がないかもしれない

 

「…あ!あの!」

 

うわずった私の声が響く。なんとしてでも呼び止めたくなって、声のボリュームを上げすぎた。

 

「ん?」

 

「な、名前…あなたの名前は…なんて……言うんですか…」

 

「……………」

 

彼女は少し淀んだ顔をしていた。何か抵抗でもあるかのように、細かく息を飲んでいた。

 

「あ、嫌なら別に言わなくても……」

 

「………美園ミカ」

 

「え?ああ…美園ミカ…。ミカさん……。

その、よろしくお願いします、ミカさん……。

あ…今更『よろしくお願いします』はおかしいか……」

 

私がブツブツ言ってる間、ミカさんの表情が緩んでいた

 

「……はは!…ほんとに知らないんだ、ははは…!」

 

「え、あ、ごめんなさいホント…世間知らずで…」

 

「いいよ、むしろソッチのほうが楽だから。」

 

「え?そういうもんなんですか…?」

 

やっぱり有名人だと色々と困ることもあるのだろうか

 

「うん。それじゃまたねベニちゃん」

 

手を振ってミカさんは歩き出していった

 

「え、あ、はい!またいつか…!」

 

私も急いで手を振る。そうした時にはもうミカさんはこっちを見ておらず歩いていってしまっていた

 

 

「…。」

 

 

「私もそろそろ行くか」

 

 

まずはヒフミと話すべきだろうが、今どこにいるか分からない。とりあえず力を調べることに注力しよう。そのためには人けの少ない場所に移る必要がある

 

ベンチから立ち上がり目的地へ向けて歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。