赤いスパイダーマンと青い春の物語   作:はふはふサドンデス

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まどろみの中で

 

桐藤ナギサ。

トリニティ、ティーパーティーの生徒会長の一人。

それは皆の憧れの的であり、敬愛の対象。

もしくは畏れを抱かれる、どころか目障りと思われることもある。

そんな皆が共通していること。それは完璧を求め、それが常態だと認識することだ。完璧をこなそうと称賛があるわけではない。だが下手をうてば非難轟々。

なら私は何のためにこの仕事を?自分で問うても分からない

 

私は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どこかの草原にいた。

懐かしいような、寂しいような匂いがした。

風が髪を撫でる。

 

「ここは………」

 

「ナギちゃん!」

 

知っている声がした。その声の方に振り向く。

一つの影が立っていた。見覚えのある影だ。

 

「ミカさん……?」

 

影に呼びかける。しかし、それは私を無視してどこかに歩いていってしまう。私を背にして草原の向こうへと消えていく

 

「待って…!待ってください…!」

 

私も追いかける。けれど、どんなに速く走ろうとその差が縮まらない

 

「待って!おいてかないで…!」

 

呼吸が苦しくなってくる。足が痛い。

やがて足がもつれて顔から転ぶ。

 

「ミカさん…!待ってください…!」

 

顔を上げる。するとその影と目が合った

 

「……………。」

 

しばらく見つめ合ったあと、影はそっぽ向いてどこかに歩いていってしまう

 

「ミカさん…!………嫌だ!ミカ!待ってよ!ねぇ!」

 

子供のように泣きそうで上ずった声で懇願する。それでも影は私から離れていく

 

「嫌だ!ミカ!…置いていかないでよ…ミカ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ッ!」

 

目を覚ます。

「………はぁ……はぁ…」

 

目に入るのは見慣れた天井、使い慣れた寝具。

 

「…はぁ…はぁ……………先ほどのは………」

 

理解した。夢だ。夢をみたのだ。悪夢にうなされていたのだ。

ひとまず平静を取り戻すことに努める。乱れた呼吸を平常に戻し、深呼吸を重ね、思考を元通りに

 

「……………ふぅ……」

 

ひとまず、落ち着いた。それでも先ほどの悪夢を頭の中で反芻してしまう。あやふやなまま、不確かな記憶を何度も呼び起こす。思考を巡らせようとすればするほど分からなくなる。

 

「考えるのは……やめにしましょう………」

 

ベッドから降りて洗面台へと向かう。水を一杯、乱雑に飲む。喉につっかえそうになっても、飲み込む。

 

「…ぅ…………はぁ……。」

 

鏡に目を移せば、そこに写るのは顔色の悪い私。

夢の内容がなぜか嫌でも想起される。

 

「…ミカ……………さん…」

 

小さな子供の頃の夢だった。小等部に入る前の思い出だった。でもあんな強迫めいた思い出はなかったはずだ。

 

夢は脳がこれまでの情報を整理するために見ると聞いたことがある。

夢を見た人物の近況を表すものでもあると聞いた。

だとしたら昔の記憶に今の状況が反映されたのだろうか

 

最近はなにかと忙しい。エデン条約の件で起こった様々な問題の後処理はまだ続いている。その後起こった虚構のサンクトゥムタワーだとかの件の後処理もまだある。

ゲヘナとの外交。発展の続くミレニアムへの警戒。泡沫の学校への支援。これらもまた解決することのない課題として存在し続ける

 

今のティーパーティーのホストはセイアさんだ。それでも過去の私の権限下で決まった政策や指針も多い。それに病弱なセイアさんが常に仕事を続けられるわけではない。私がやらなければならないことは増えていく一方

 

 

それにミカがいない。

 

 

会えないわけではない。むしろ騒ぎの前より話す機会が増えたのではないか、と思うこともある。

それでも仕事となると、彼女の姿が見えなくなる。当たり前だ。実質的な解任。もう彼女とは共に同じ仕事ができないと考えたほうがいい。

 

 

 

「………っぷは……!」

 

顔を洗う。淀んだ頭が少しさえる。

まだ空は曙の色。いつもよりずいぶんと朝早く目覚めたが、もう学校への支度をしてもいいだろう。たまには余裕を持って登校しよう。

顔を拭いて洗面台を出る

 

同じものが何着もある中から一つの制服を手に取る。

 

「…………?」

 

違う。これはもう着ないものだ。この制服は中等部までのもの。

ティーパーティーに入った時に新調された制服。私が着るべきなのはこちらだ

 

「なぜ………」

 

なにか私の中で塞ぐべき欲求が燻っている。

 

「…………さっさと行きましょう……」

 

私はそれを無視するしかなかった。

 




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