赤いスパイダーマンと青い春の物語   作:はふはふサドンデス

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普通の女の子

ブラックマーケット。そう呼ばれている地区がこの先にある。あらゆる非合法がまかり通る危険地帯だ。学校からはここに近づくことすら警告されている

この奥にある廃墟に行く際には、回り道をした後に小道を経由してから行っていた。

 

今日はなんとなくその近くまで来てしまった。

まだ引き返せる。遠回りすれば安全に廃墟まで辿り着ける。けど

 

「今日はマーケットを突っ切ってやろう……。」

 

行くなと言われている場所にこそ興味が湧いてしまう。

 

大丈夫だ、この力があれば何かあってもすぐに逃げられる。

そんな曖昧な確信を持ったまま、闇に足を踏み入れた。

 

 

 

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ブッラクマーケットに入った、からと言って急激に何か変わるのではなかった。

最初は変わったカスタムパーツが売っているな、と感じるくらいで、別に恐怖は感じない。

ただ奥に進むほど、違和感が大きくなっていった。

絶対に売ってはいけないであろう弾丸。見たことがない戦車のパーツ。

進めば進むほどその異様さが目立っていく。

 

「ひきかえそうか……。」

 

正直に言って怖い。こんなところで買い物をしてる奴の気がしれない。私は足をできるだけ早く動かした

 

 

「お嬢ちゃん!!!!!」

 

「!?!?」

 

唐突に突きつけられた大声が鼓膜に突き刺さる

 

「血湧き肉躍る地下闘技大会に興味ないかい????」

 

不良みたいなナリをした子が大きな看板をブンブンと振り回して、顔を近づけてくる。

 

「チケットはたったの1000円!!!超お得だよ???」

 

私が唖然としているのを無視して、ガンガンと詰めてくる

 

「あ、いやいいです……」

 

私が否定を口に出しても、不良の子は少し考え込んだ後にすぐに口を開く

 

「あ!!!!!もしかして観戦じゃつまらないタチかな???大会に参加するなら尚更大歓迎!!参加費は無料!!優勝賞金はなんと100万円!!!!!!…命の保証はないが………どうかな??参加するかい???」

 

しつこい勧誘に嫌気がさしてきた。もう適当にいなしながら逃げてしまおう。

 

「いや、だからそういうのに興味がないっていうか________

 

 

 

 

______!」

 

何かを得たいのしれない感覚を覚えた。

 

「危ない!」

 

咄嗟に不良の子を抱えてしゃがみ込む。

 

「な!!!???」

 

下げた頭のすぐ上を何かが掠め、次の瞬間

 

ドーーーン!!!

 

すぐ隣の建物が爆発し、その爆風が髪の毛を揺らした

 

「……っ…………」

 

とりあえず様子を見てから立ち上がり、不良の子の肩を叩いた

 

「だいじょうぶ?」

 

「ああ、助かった!!!!あのままだったら私らが爆発してたところだよ!!!!!」

 

なんでこの子はちょっと楽しそうなんだ。

 

「それにしてもなにがあったんだ????よく避けれたな君!!!」

 

「………いや……わからない。ただ何か気配がしたから……。」

 

昇る黒煙が晴れて、建物には大きな穴が空いているのが見えた

 

「これは……戦車の砲撃っぽいな!!!また誰かがトラブルでも起こしたんだろう!!!!なははははは!!!!平常平常!!!」

 

不良の子は看板を拾ってそのままどこかへ行ってしまった。私はただ立ち尽くして、置いてかれてしまった

 

「…………………なんだったんだ?…」

 

砲弾が発射されたであろう方向を見てみる。

すると大量の兵士、それに戦車に追い回されている少女がいた。

どうやら、狙いが定まらなかった砲弾がこちらに飛んできたようだ。

 

「やっぱり、こんなとこ来るじゃなかった…」

 

今日はもう帰ろう。来た道をさっさと引き返せば安全なはずだ。

 

そう思い、歩き出した時、ふと、追いかけ回されている少女が気になってそちらのほうを振り返った。よくよく見てみると見覚えがある顔だ

 

 

 

「あれは……ヒフミ…?????」

 

何度見てもそれはヒフミだった。

 

「何……やってるんだ?????」

 

兵士たちが放つ弾丸の間を縫いながら、なんとか走っている。が、いずれ限界が来るだろう

 

 

とりあえず………助けに行くか。

 

糸を放ち彼女のもとへと飛んでいく

 

 

 

_____________________

 

 

 

 

「誤解なんです!!!」

 

「関係ない。大人しく捕まれ」

 

次々と放たれる弾丸。ヒフミはそれらをなんとか避けながら走っていた。

しかし

 

ドォン!

 

戦車が放った砲撃が足元に着弾する。

 

「ああ!」

 

吹き飛ばされたヒフミは壁に叩きつけられ、そのまま倒れ込んでしまった。

 

「うう……」

 

「大人しくしてもらうぞ。盗んだ商品の補填をしてもらわなければならんからな」

 

兵士たちがヒフミの前に整列し、一斉に銃口を向ける

 

「わ、私は盗んでなんかいません…!あなたたちは誤解してます…!」

 

「お前が犯人かどうかは重要ではない。受けた損害分の利益を回収する。得られるはずだった利益を回収する。それが俺達の仕事だ。だからどんな手段を使ってでもそれを実行するまで」

 

「…………!」

 

「少し寝ててもらうぞ」

 

狙いはヒフミの脳天。引き金に指がかかる

 

 

 

 

 

 

「どりゃああああああ!!」

 

「うごぉ?!」

 

兵士の脳天めがけてドロップキック。そのまま壁に叩きつけてやった

 

「ベニちゃん!?」

 

「逃げるよヒフミ!」

 

ヒフミの体を起き上がらせて、2人で走り出した。

 

「なんだあいつは?!」

 

「いいから二人とも捕らえてしまえ!!」

 

響く怒号が近づいてくる。

 

(なんとかして撒かないと…………。

あそこなら……使えるか…?)

 

少し道が狭くなる曲がり角を視界にとらえる

 

「ヒフミ!あそこで曲がって!」

 

「え?!はい!」

 

ヒフミを先に行かせる。あとに続く私は、ちょうど兵士の頭の高さくらいの壁に糸をかけてから走り出した。

 

「何をしたんですか…??」

 

「ちょっとした足止め!どっちにしろ早く逃げないと追いつかれるから、とにかく走って!」

 

「は、はい!」

 

大勢の足音が迫ってくる。

 

「そこの角に逃げたぞ。追え」

 

「何としてでもとらえ___ん!?」

 

全力で走る兵士たち。その勢いのまま、私が設置した糸に頭が引っかかった。

 

「グオ…!?」

 

続々と転倒していき、そのまま人の山が出来上がる。それらに阻まれた残りの兵士たちも立ち往生するしかなかった

 

「よし!成功!」

 

 

 

そのまま走り続け、ブラックマーケットの外まで出ることができた。

 

 

_____________________

 

 

 

マーケットから少し離れたトリニティ自治区内

 

 

「ふぅ…ここまで来れば、平気でしょ」

 

「はぁ……はぁ……助かりました………。」

 

「ヒフミが、無事でよかった…」

 

私は少し息が上がる程度だったが、ヒフミは息も絶え絶えだった。2人してその場に座り込み、息を整えてからヒフミが口を開けた

 

「……そういえば、ハナコさんから、ベニちゃんが私に会いたがってたって……。何からあったんですか?」

 

「あ〜…」

 

明日会うつもりでいたからなんにも考えていなかった。だからといって口を噤み続けるわけにはいかない。

 

「なんていうか……その……。昨日のこと…。

何も言わずに…私、逃げちゃったじゃん…?

怖がらせたいかもしれないし……なにか言わなきゃなって思って…けど、なんていうか…わからなくて…」

 

本音を一つ一つ、拙く、繋いでいく

 

「怖がらせたなんて、そんな…!ただあの時は少しびっくりしちゃっただけです。弾丸を掴んだり、銃が握り潰されるのなんて間近で見たことがなくって…………」

 

ヒフミは気にしていなさそうだ。けどそれで済む話だろうか。

 

「………あの時、ヒフミが呼びかけてくれなかったら、私はあのままトウコのことをぶん殴ってた。それか、もっと酷いことを………してたかも」

 

「たしかに、それは……………。ベニちゃんにはそんなことしてほしくはないとは思っています。

けどあの時は、友達として、私のために怒ってくれた。……変な話ですけど、それはうれしかったです」

 

「そう……思ってくれてるなら、よかった」

 

安堵からため息が漏れ出た

 

「というか、私のことよりトウコさんのほうが心配したほうがいいです。彼女に昨日のこと、ちゃんと謝ったんですか?」

 

「あ、話したけど……謝ってない…」

 

「じゃあ明日真っ先に行かないと、ですね」

 

「うん…そうする」

 

ヒフミが立ち上がって、私もそれにつられて立ち上がる。もう帰ろうという雰囲気になった。

けど私にはどうしても聞きたいことがあった

 

「一つだけさ…聞いてもいいかな」

 

「……?」

 

少し息を吸ってから口を開く

 

「………ブラックマーケットで…何やってたの?」

 

「………!」

 

自分が言えたことではない。けど、どうしても気になった。あそこはヒフミみたいな人間がいていい場所ではない。何かよっぽどの理由があるのだろう

 

「…どうしても…欲しいものがあったんです」

 

「欲しい、もの?」

 

ヒフミがスマホの画面を見せてくる。そこには鳥のぬいぐるみの画像があった

 

「モモフレンズ、ってご存知ですか?」

 

「え?ああ、まぁ、ちょっとだけ」

 

ほんとにちょっとだけだ。色んな動物のぬいぐるみがあるらしいってことくらいしか知らない。

 

「それがどうしたの?」

 

「私はモモフレンズに登場する、このペロロ様の大ファンなんです」

 

「はぁ……」

 

ヒフミの目の色が明らかにおかしくなった。それに話が見えてこない

 

「ペロロ様の幻の限定衣装『シルクハットを被ったペロロ』の人形がブラックマーケットの『デマーの商店』で販売されてるっていう情報を掴んだんです」

 

ヒフミが見せてきたスマホには、その衣装を着たペロロとやらの人形の画像が表示されていた。隣に、おそらく衣装を着ていない姿であろうペロロも表示されていたが、大した違いを見つけられなかった。

 

「まさか………そのためだけにブラックマーケットにいたの…………???」

 

「だけ、とは何ですか!?この衣装は何年か前の映画で数量限定配布された幻の衣装なんです!」

 

普通のそれではない覇気を持ってこちらに説明してくるヒフミ

 

「ああ…うん、ごめん。

…それで、そのペロロの人形は手に入れたの?」

 

「いいえ。…売っていたお店を見つけることはできたんですが………。90万円と…あまりにも高くて手が出せなかったんです」

 

「たっか……」

 

「それで泣く泣くショーケースを眺めていたんですが……そしたら何故か突然、万引きを疑われて…そのまま追いかけ回されていたんです」

 

「え、何もしてないのに?」

 

「ええ、なんでも最近ブラックマーケット一帯で商品や金品の窃盗が多発しているようで…。それでガードやら私兵やらが警備を過剰に強化していて………。盗難被害を取り戻すために言いがかりをつけて、無関係の人から金品を巻き上げることもあるそうで……」

 

「怖ぁ……」

 

やっぱりブラックマーケットに安全なんてないんだ

 

「ところで…ベニちゃんはなぜブラックマーケットに?」

 

「あー…」

 

正直に言うか。言ったところで別になんてことはない理由だ

 

「マーケットの奥に廃墟があるじゃん?暇な時はよくそこで暇を潰しててさ。

いつもは遠回りして行ってるんだけど、今日は調子乗って近道しようとして…それで」

 

「なるほど。そんな理由で…」

 

「ヒフミに比べたらつまらない理由だけどね…はは」

 

「ふふ…でもそのつまらない理由のおかげで私は助かったんですから。感謝しています」

 

「それもそっか…はは」

 

自分でも聞こえるかわからないほど小さな笑い声を出した。

 

「それじゃ、また明日学校で会いましょう」

 

「うん、またね」

 

手を振ってヒフミとは別れた。予想外の形ではあったけど、色々と話ができてよかった

 

 

 

「モモフレンズ……か」

 

ちょっと検索してみた。色々な動物などをモチーフとしたキャラクターたちがいる。私はその中で

 

「ウェーブキャット……ふふ、かわいい。気に入った」

 

昔から黒猫が好きだ。理由はよく分からないけど好きだ

 

 

 

 

 




不良の子
声がデカい。ブラックマーケットの地下闘技場の運営に深く関わっている
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