ルギア、拾っちゃいました。3   作:じゅに

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第12話 打倒ヒードラン(後)

 

 

 

 

 コイキングが推薦してくれた長──もといクソデカ色違いコイキング(以下ヌシ)は、ヒードラン討伐に向けて、寡黙ながらも非常に意欲的な姿勢を見せてくださったが、使える技が跳ねるとじたばたしかないということで丁重にお断りさせていただいた。

 

「共に行こうって気持ちはありがたい。

 本当にありがたいんですが、水技を撃てるポケモンを探してるんです」

 

 と頭を下げると、ヌシは至極残念そうな顔で「ま゛……」と呻きながら泉の底に帰っていった。

 

「すみません……私も水技は撃てませんで……」

 

 取り次いでくれたコイキングが項垂れる。

 俺はぱたぱた手を振った。

 

「いいって。気にすんなよ。ヒスイは広いんだ。

 どっかに俺たちの仲間になってくれる奴の1人やふたりは居るだろ」

 

 海に川、湖に沼地。

 水棲ポケモンの住処は至る所にある。

 いくらでも選択肢はあるだろうと高を括っていたのだが、探索は困難を極めた。

 

 何故か。

 条件が厳しすぎるからだ。

 

 ヒードラン討伐に必要な要素を地面に書き出してみる。

 

 ①バトルに積極的な気質ないし性格であること

 ②ヒードランの弱点を突けそうな属性攻撃を豊富に覚えていること

 ③ヒードランの攻撃を耐えられるぐらいの耐性や体力があること

 

 これら全てクリアできそうな個体は見当たらず、2つ以上達成できそうな個体は群れのリーダーを担っていることがほとんどで、俺の誘いに一切興味を示さなかった。

 

 当然といえば当然だ。

 彼らにも日々の生活があり、リーダーとしての責務もある。

 わざわざ彼方の島に巣食うヒードランへ喧嘩を売りに行く理由も必要性も皆無なのだ。

 

 木の枝をぴこぴこ揺らしながら、俺は独りごちた。

 

「んー……やっぱ望みすぎかぁ?」

 

 もっと条件を緩めないと、とても仲間を増やせそうにない。

 

 ミュウツーと一緒にああでもないこうでもないと頭を捻ってひり出した新条件がこれだ。

 

 ①水技を撃てること

 

「もう、これさえ出来ればいいかな……」

 

 俺は苦笑して枝を放り出した。

 

 バトルの大部分はミュウツーに任せるとしても、弱点をつける攻撃が撃てるのと撃てないのとでは大きな差がある。みずでっぽうレベルでいいから、後方支援してくれるポケモンがなんとしても欲しかった。

 

 ミュウツーも頷く。

 

「そうだな。

 まずはこれを元に探した方がいいと思う」

 

「うし。そんじゃ行くか」

 

 日はすでに傾き始めている。探索に使える時間は1時間程度だろう。

 泉のほとりで寝息を立てているシェイミを起こさないよう、抜き足差足で通り抜け、森の奥へと進んで行った。

 

 

 ○○○

 

 

「……んぁ」

 

 顔を照らす夕陽の眩しさにシェイミがふと目覚め、大きな欠伸を漏らした。

 

「んー、よく寝たでしゅ」

「おはよ、シェイミ。もうすぐ夜だけど」

「んう。アシタバでしゅか。

 水タイプは見つかったんでしゅ?」

 

 問われ、俺が答えるより早く。

 泉の水で遊んでいた()()が振り向いた。

 

「おうおうっ、目が覚めたかい嬢ちゃん!

 ちっと邪魔してるぜ! なんたってこの泉は水が清くて心地いいやね! 鱗がピカピカになっちまうよ!

 まあ生まれつきピカピカなんだけどな! ガハハ!」

 

 ちゃきちゃきした喋り方。

 威勢のいい態度。

 それと反比例する、掌サイズの小さな身体。

 

 シェイミが半目で俺を睨んだ。

 

「……テッポウオじゃねーでしゅか。

 しかも()()の」

 

「…………うん」

 

 俺はそっと目を逸らした。

 

 仕方ないじゃない。

 そこいら中練り歩いて仲間になってくれたのがコイツだけだったんだもの。

 

 シェイミは溜息をついて、顎をしゃくった。

 

「……まあ、身体の大きさは大した問題じゃないでしゅ。ユーは水鉄砲くらい撃てるんでしゅよね?」

 

 テッポウオは「ったりめぇだい!」と小気味よく跳ねた。

 

「こちとら喋りと水鉄砲の勢いだけがウリなんでぃ!

 おれっちのタマぁ喰らったらよ、()ードランなんてお茶の子よぉ!」

 

 お前お茶飲んだことないだろ。

 シードランじゃなくてヒードランだし。

 

 など諸々のツッコミをぐっと堪え、俺は懸命に笑みを浮かべた。

 

「期待してるぜ、坊ちゃん」

「任しときなぁっ!」

 

 テッポウオのヒレが、キラッと光った。

 

 

 ○○○

 

 

 そして翌日。

 ミュウツーのテレポートで再び火吹き島の土を踏んだ俺たちは、肌を突き刺すような殺気のただ中にあった。

 

「今回はマグマから脅かしてこないってわけね」

 

 とめどなく噴き出す汗がうなじを流れ落ちていく。

 眼前には、戦闘態勢に入ったヒードランが爛々と光る(まなこ)でミュウツーを睨めつけていた。

 

 脳内で相棒に呼びかける。

 

《好きに暴れてくれ。機を見て仕掛ける》

《承知》

 

 言うが早いかミュウツーが消えた。

 テレポートでヒードランの左手に飛んだのだ。

 片手を天に突き上げ、ぎゅっと拳を握る。

 一瞬後、無数のスピードスターが降り注いだ! 

 

ドドドドドドドッ

 

 ここに着地する前に、上空で発動させておいたものだ。ミュウツーの合図に合わせて射出する、いわば時間差攻撃(ディレイ・アタック)! 

 

 さすがに新技を習得するほどのゆとりは無かった。

 ならば今持てる技で工夫しようと、一晩話し合った策戦の内のひとつである。

 

 意外な方向からの攻撃にヒードランが身を捩る。

 痛くはなかろう。

 鋼タイプにノーマル技はいまひとつだ。

 だがそんなもの、物量で押し切ればいい! 

 

「止まるな! 移動しながらスターを設置し続けろ!」

 

 射線に入らないよう細心の注意を払いながら、俺もちょこまかと逃げ回った。

 ヒードランは俺に一瞥もくれない。

 ただミュウツーだけを見据えている。

 

 当然だ。非力な人間がポケモンに、それも伝説級のポケモンに敵うわけがないのだから、意識を割くだけムダである。

 

 なので俺は悠々と、ヒードランの背後に陣取ることができた。

 

 人差し指と中指を揃えてヒードランに突きつける。

 まるで、子供が鉄砲ごっこをするように。

 そして叫んだ。

 

()ぇ!」

 

 袖の内側に仕込んでおいたテッポウオが水鉄砲を発射した! 

 無防備な背中に文字通り冷や水を掛けられ、ヒードランが仰け反る! 

 血走った目に捉えられ、俺はニヤリと笑って言った。

 

「わりーな。痛かった?」

「ごぼぼぼぼっ!」

 

 怒り猛ったヒードランが破壊光線を放とうと口を開いた刹那、口腔にスターが飛びこみ、爆発する。

 身体の外側を殴られるのとは訳が違う壮絶な痛みに、ヒードランは絶叫した。

 

(よし……よし!)

 

 確かな手応えに、俺は固く拳を握った。

 

 ヒードランのあくびは、一度発動させてしまったらもう取り返しがつかない。

 またミュウツーが眠らされたら今度こそ終わりだ。

 だから俺たちは、あくびを打ちたくても打てないような場を作る方針を立てた。

 それがこの、《撃って撃って撃ちまくる策戦》である。

 

 結局ゴリ押しかよと言うなかれ。

 だって他にどうしようもねーんだもんよ! 

 

「効いてる! このまま攻めるぞ!」

「ああ!」

 

 ミュウツーは次から次へとスピードスターを乱射し、俺も隙あらば水鉄砲を撃ちこんだ。

 

 ヒードランはなんとか反撃しようとしばらく頑張っていたが、ミュウツーの執念深い弾幕の前ではどうすることもできず、マグマの中に沈んでいった。

 

 土煙のなか油断なく見回していたミュウツーが、ほっと肩の力を抜く。

 

「……完全に気配が消えた。

 もうワタシたちを襲っては来ないだろう」

「なら」

「ああ」

 

 ミュウツーの口元が、笑みに緩む。

 

「ワタシたちの、勝ちだ」

 

 俺たちは破顔しながら、音高く掌を打ち合わせた。

 

 

 ○○○

 

 

「いや──────もう(おでれ)ぇたのなんの! 

 シードランがあんなデカブツたぁね!

 なんだいあの赤いドロドロした体は!

 おれっちあんなん見たことねぇ!

 水ん中じゃあみんな透き通ったボデェだもんよ!」

 

 テッポウオが大声で立て板に水と捲し立てる。

 勝利の興奮が潤滑油になっているのだろう。

 まあよく回る舌だ。

 俺は苦笑しながら「お前さんの水鉄砲、強かったよ」と褒めたたえた。

 

 実際、ミュウツーだけじゃあここまで圧勝できなかったろう。

 いくらチリツモとは言っても、スピードスターのダメージなんてたかが知れている。

 仮に単独で挑んだ場合、一日中攻撃しても倒せたかどうか。

 

 なにより、そんな悠長な攻撃じゃあ、必ずどこかのタイミングであくびを喰らっていたはずだ。

 そうなれば、またボルトロスが助けに来てくれるんでもない限り全滅は免れない。

 

 テッポウオの存在は、誇張なしに俺たちの勝利の要だった。

 

 そういうことをつらつら話して聞かせると、最初は得意満面で聞いていたのに、段々頬を赤らめ始め、最終的には茹でられたみたいに真っ赤になった。

 

「よ、よせやぁい」

 

 そう言う声もやけに小さい。

 なんだよ、べしゃり好きなクセに褒められベタか? 面白くなってもう少しからかおうかとした時、ミュウツーが不意に彼方を指さした。

 

「アシタバ。向こうに何かいる」

 

 指し示しているのは島の中央に聳える火山の方角だ。

 

「敵意は?」

「ない。というより、意識そのものがなさそうだ」

「……ってことは」

 

 眠らされているおほしさま──ジラーチかもしれない。

 

 逸る気持ちを抑えて慎重に歩を進める。

 ヒードラン以外にも襲ってくるポケモンがいることを警戒したのだが、杞憂に終わった。

 

 というのも、島の中央は溶岩が無作為に流れる灼熱の広場になっていたからだ。

 こんなところを自在に歩けるのはマグマの化身たるヒードランを於いてない。

 

「アシタバ」

「ああ」

 

 ミュウツーと俺は、同時にそれを見つけていた。

 広場の真ん中、マグマの上にぽつんと浮く影。

 

 満願成就を体現するポケモン、ジラーチ。

 現世へと帰る、唯一のきざはし。

 

 ミュウツーに念力で引き寄せてもらい、優しく抱きしめる。

 ジラーチは寝息こそ規則的だが、顔色が紙のようだし目の下のクマも酷い。衰弱しきっている。

 

「飛べるか?」

「任せろ」

 

 ミュウツーにぐっと肩を抱かれ、俺たちはもう一度、シェイミの待つ泉へと帰った。

 

 

 

 




というわけで12話。
今回は夜の投稿でした。

新しい仲間のおかげでヒードランを圧倒しジラーチを助け出したアシタバたち。このまま目覚めさせたとて、果たして帰れるんでしょうか。
バサギリの問題も解決してないしなあ。
もすこしヒスイのポケモン書きたいしなあ(ニチャ)

テッポウオを袖口に仕込んで狙撃、という戦法は随分前に思いついてたんですがようやく出せました。
こういう小ネタが大量にあります。ネタだけはね、浮かぶんだ。

次の更新もちょっとお待たせしそうです。
面白い話になるよう頑張ります!
良ければ感想高評価おなしゃ!
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