異世界ダンジョン配信~回帰した俺だけが配信のやり方を知っているので今度は上手く配信を活用して世界のことを救ってみせます~   作:犬型大

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上下関係3

「んじゃこれにサインしてもらおうか」

 

 イースラが画面をいじると手の中に丸められた紙とペンが現れた。

 それに何かを書き込むとポムに紙を突きつけた。

 

「こ、これは?」

 

「契約書だ。俺たちが半分払ってやるんだから半分俺たちに借金するようなもんだろ? なら借金の契約書が必要だ」

 

 口約束で銅貨五十枚も払ってやるほどイースラもお人好しではない。

 当然貸し借りの証拠は残しておく。

 

「嫌ならいい。俺たちはこのまま帰って、お前は全部ちゃんと借金を返して、ついでに俺たちに押し付けようとして殴られた分の利子も払うだろうな」

 

 ポムは怪訝そうな顔をしたが、イースラとしては金貸しの連中をボコボコにした時点でもう終わっている話なので帰ってもいいのだ。

 ただしイースラたちが帰った後でポムがどうなるのか想像することは難しくない。

 

 返すあてもない大きな借金のみがただ残る。

 それだけではなくイースラたちがお金も払わずぶん殴られたことに金貸したちはポムに当たることになるだろう。

 

 少し目を腫らすだけじゃ済まない可能性すらある。

 ジワラの視線に気がついてポムは顔を青くする。

 

 イースラへの返事次第でイースラが言ったことが本当になると悟ったのだ。

 

「わ、分かった! だから半分頼むよ……ここに書けばいいんだな?」

 

 もはやポムに断ることなどできなかった。

 イースラから契約書とペンを受け取るとポムは慌てて名前を書く。

 

「これでいいのか……なんだこれ?」

 

 名前を書いたポムが契約書を返そうとすると契約書から光が飛び出してイースラとポムの胸に吸い込まれていった。

 

「これは契約書だ。ただしただの契約書じゃなくて魔法のな」

 

「魔法の契約書?」

 

 イースラは配信ショップにある中から契約書を購入した。

 けれどもただの紙ではなく魔法によって契約の内容が保証される特殊な契約書であったのだ。

 

 ポムが名前を書いたことによって魔法が発動した。

 

「そう、俺はお前に銅貨五十枚を貸す代わりにお前は俺の命令に従わなきゃいけなくなったんだ」

 

「はぁ!? なんだそりゃ!」

 

「なんの見返りもなく貸すわけないだろ。契約書はちゃんと読め」

 

 言わなかったことはずるいけれど文字としては小さくもなくちゃんと書いてある。

 読んだ場合だってポムに断る権利などないのは分かりきっているので堂々と条件として書き込んであったが、ポムはしっかり内容を読んでいなかったらしい。

 

「破棄もできるぞ。俺は構わない」

 

「うっ……」

 

 イースラのはっきりとした物言いにポムはたじろぐ。

 どうせ破棄などできない。

 

「よし、じゃあ五十枚払うから少しついてきてくれ」

 

「どこに行く?」

 

「買い物直後に銅貨五十枚なんか持ってない。だから換金してくるんだよ」

 

 そもそも買い物にそんなに大金は持ち込まない。

 買い物直後でお金もないのでどこからか持ってくる必要がある。

 

 イースラはポムとジワラを連れて冒険者ギルドに向かった。

 配信者受付でポイントをお金に交換する。

 

「ほらよ」

 

「確かに受け取った」

 

 イースラに殴られたところが痛んでジワラは顔をしかめる。

 しかし半分でも金は回収できた。

 

「残りの金は俺が返させる。もし逃げたりしたらこいつのこと捕まえて売り払って構わない」

 

「……分かった、お前に任せる」

 

 お金を払わずに他人に押し付けようとしたポムよりも腕が立ってちゃんとお金を渡してきたイースラの方が信頼できる。

 ジワラはひとまずイースラにポムを任せることにした。

 

「お、俺はどうなるんだ……」

 

「もう賭け事はやめろ。真面目に金を返すんだ。まずは金貸し、それから俺に金を返せ。そしたらお前は自由だ」

 

「そんな……」

 

「もし逃げたりまた賭け事に手を出したらベロンさんに言いつけるからな」

 

「そ、それだけは……!」

 

 いかにもクズなポムであるがベロンに対しては弱い。

 ポムはフラフラとしていたところを拾われてもらった恩があってベロンのことは本気で尊敬していた。

 

 ベロンにだけは賭け事に手を出して借金までしているとバレたくないのだ。

 だから殴られてもベロンに強く金の無心ができないのである。

 

「心を入れ替えろ。今からだ」

 

「…………はい」

 

 ポムは泣きそうな顔をして項垂れた。

 どうしてこんなことになったのか。

 

 ポムにはそれが分かっていなかった。

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