異世界ダンジョン配信~回帰した俺だけが配信のやり方を知っているので今度は上手く配信を活用して世界のことを救ってみせます~   作:犬型大

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運命に抗うもの1

「……生きてる……」

 

 上下に移動したり左右に揺られたり回転したり。

 ドラゴンに掴まれて揺さぶられたのかと思った。

 

「あれ……なんだったの?」

 

「ダンジョンの再構築だ」

 

「再構築……?」

 

「ダンジョンっていうのは変わらないものも多いけど中の構造が変わってしまうということもあるんだ」

 

 イースラは体を起こす。

 サシャもクラインもイースラのそばで倒れている。

 

 ただ二人とも生きていた。

 それで今は十分である。

 

「たとえ中に人がいようとダンジョンにはそんなこと関係ない。たまたま再構築のタイミングでダンジョンに入っちゃったんだな」

 

「そんなことがあるんだ……」

 

 ダンジョンの再構築が起こることは分かっていた。

 だから実は一日攻略を遅らせてもらった。

 

 日持ちする食料品がたまたま売っていなかったなんて苦しい言い訳をしてどうにかずらしてもらったのだ。

 しかしそれでもダンジョンの再構築は起きた。

 

「時間じゃないな……」

 

 先ほどイースラはたまたま再構築のタイミングに来てしまったと言ったがそうではないと考えていた。

 本来なら一日前に再構築は怒っていたはずなのだが結果的に攻略中に再構築が起きてしまっている。

 

 つまり再構築は時間的なタイミングで起きたものではなく攻略したから起きたものだったのだ。

 ダンジョンがどうして攻略されると再構築し始めたのか知らないが、キーは攻略だったのである。

 

 そうだと分かっていたらみんなで集まることができた可能性もあったのにと少し悔しい思いがある。

 

「まあ……とりあえず無事でよかった」

 

 少なくとも再構築中に死ぬことはなかった。

 ダンジョンの再構築は非常に危険なもので巻き込まれて死ぬ可能性もある。

 

 壁に挟まれたり天井が落ちてきたりと変動するダンジョンの中でどんな死を遂げてもおかしくない。

 クラインは回帰前ダンジョンの再構築で一人はぐれて死んでしまった。

 

 死体は見つからなかった。

 ダンジョンの再構築で死んだのか、あるいは再構築を生き延びても魔物にやられて死んだのかそれすらも分からない。

 

 死体も見つからなかったのでダンジョンの再構築に巻き込まれて死んだのだろう。

 今は一緒に生きている。

 

 とりあえず再構築で死ぬかもしれないというクラインの運命は変えられたのだと考えておくことにした。

 

「二人とも怪我はないか?」

 

「……配信続けるの?」

 

「不謹慎な話だがトラブルは視聴者の大好物だからな」

 

 イースラは手に持ったままだったカメラアイをサシャとイースラに向けた。

 配信の操作のメインはベロンが担っている。

 

 イースラの方で勝手に切ることはできない。

 加えて配信が続いているということはベロンは生きているということになる。

 

 続いているなら続けておく。

 当事者としては頭の痛い話であるが想定外のトラブルというのは見ている側にとってハラハラするもので視聴者や応援するパトロンの増加に繋がる。

 

 ダンジョンの再構築についてちゃんと説明したのも見ている人のためというところもあった。

 

「とりあえずここは……密室ではなさそうだな」

 

 話によるとダンジョンの再構築によってどことも繋がっていない部屋になることもあるらしい。

 誰がそんなこと確かめられるのか知らないけれどひとまずどこにも繋がっていない部屋にはなっていないようで道がある。

 

「……何か音がするね」

 

 複数道があるのだがどこからかカサカサと音が聞こえてくる。

 どこかにケイブアントがいる。

 

「クライン、サシャ」

 

「これって……」

 

「剣だ。他にみんながいない以上自分で戦うしかない。オーラも解禁だ」

 

 イースラは荷物の中から剣を取り出して二人に渡した。

 こんなこともあるかもしれないとベロンに買ってもらったのである。

 

 クラインとサシャもバルデダルから剣を習っているので二人の分までベロンは買ってくれた。

 流石に未熟な技術、子供の力でケイブアントと戦うのは厳しい。

 

 みんなにオーラがバレることよりも生き残ることの方が大事なので出し惜しみはしない。

 

「よっしゃ! やってやる!」

 

「き、緊張するね……」

 

 初めての実戦だがクラインはやる気を見せている。

 対してサシャの方は緊張しているのか少し顔色が悪い。

 

「まあ緊張するなとは言わないが怖がることはない。俺がお前のこと守るから」

 

「う、うん」

 

 イースラの言葉にサシャは顔を赤くする。

 

「俺たちが無事ってことはベロンさんやバルデダルさんには分かってる可能性が高いしさ」

 

「えっ、どうして?」

 

「配信続いてるからさ」

 

 イースラはカメラアイをサシャに向ける。

 自分の配信は自分でも確認することができる。

 

 カメラアイが損傷せず配信が続いているということはカメラアイに映っているサシャやクラインの姿が見られるということでもある。

 ベロンやバルデダルが冷静で配信画面をチェックしているならイースラたちが無事でいることは確認できるのだ。

 

 配信を切っていないということは配信が続いているということに気づいていない可能性ももちろんあるのだけど、配信を行っているのはベロンであるということになっているので少なくともベロンは生きている。

 死んだら少し経って配信も止まってしまうのだ。

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