異世界ダンジョン配信~回帰した俺だけが配信のやり方を知っているので今度は上手く配信を活用して世界のことを救ってみせます~   作:犬型大

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大都市へ2

「お前たちはまだ能力を買ってないのか?」

 

「はい。まだ自分たちで強くなれますから」

 

 能力はポイントで買うこともできる。

 ただ鍛えれば能力は伸びる。

 

 イースラたちはまだまだ若いので鍛えれば強くなれるのだ。

 回帰前の記憶があるイースラの頭の中には鍛える方法もあるし、それ以外で強くなる方法もあった。

 

「その方がいい……買って得た力も悪くはなかったが、いつしか俺たちは目先の能力値ばかり追いかけるようになってしまった。強くなれるなら自分で強くなった方がよかったよ」

 

「それにポイントで買える分ってすぐに高くなって少ししか買えなかったものね。期待しない方がいいわよ」

 

 能力値が買えるからといって強くなれるとも限らない。

 それに能力値の数値にはちょっとした秘密もあるのだ。

 

「分かりました。頑張ります」

 

 能力値の購入に重きを置かない方がいいということはイースラも同意である。

 先輩たちの言葉は素直に受け取っておく。

 

「今日はもう休んで明日は朝食料品を買ってから出発だ」

 

 ーーーーー

 

「イースラ君、少しいいですか?」

 

 旅をすればどうしても次の町に間に合わないことなどある。

 そうなると早めに移動を切り上げて夜を乗り越える準備をする必要がある。

 

 枝を集めて、スダーヌとサシャのために小さいテントを張る。

 早めに食事をとって交代で火の番を務めながら夜を過ごすのだ。

 

 今回は二人ずつ起きて火の番をやることになっていたのだが、今後のためになるだろうとイースラたちも火の番をやっていた。

 今はみんなが寝静まっている中で火の番として起きていたのはイースラとバルデダルだった。

 

 元々バルデダルは寡黙な方であるがダンジョンの件以降もあまり多くのことを語らない。

 

「何ですか?」

 

「私のこと……どこまで知っているのですか?」

 

 バルデダルが真っ直ぐにイースラのことを見つめる。

 

「どこまでとは?」

 

 イースラは怖気付くこともなくニコリとバルデダルの目を見返す。

 クラインとサシャは固い雰囲気のバルデダルが苦手であるが、イースラは特に何とも思っていない。

 

「私が魔力障害なこと知っておりますね?」

 

「はい、知ってます」

 

 魔力障害とは魔力に関して何らかの障害を抱える人のことを言う。

 体の不調を広く風邪と呼ぶように魔力障害も魔力に関しての不調があればそう呼ぶ。

 

 なぜなら魔力の不調は何が原因で起きているのかも分からないことが多く、原因が分かっても治療できないこともあるので特定の病名をつけられず魔力障害とだけ言うのだ。

 バルデダルはダンジョンでの戦いの時に突如として血を吐いた。

 

 それは魔力障害によるものだった。

 

「たとえベロンのことを聞いても私の魔力障害にまで言及するとは思えない。どうやって知ったのですか?」

 

 ベロンのが商人の息子なことは知り得るとしてもバルデダルが魔力障害なことまで他人がイースラに話すとは思えなかった。

 だがダンジョンでの戦いの時にイースラはバルデダルの魔力障害について知っているようだった。

 

「バルデダル・ソーサンクラーン、今俺は二つの選択肢を提示する」

 

「なんですと……?」

 

 突如笑顔を消したイースラは二本の指を立てた。

 

「全て話そう。あなたは疑問が解消してスッキリする」

 

 子供っぽい雰囲気も消え去り、家名までイースラが口にしたことなどもはや気にしている余裕がなかった。

 

「もう一つ……疑問なんて忘れることです。その代わりあなたの魔力障害を解決して差し上げましょう」

 

「それは、本当なのか?」

 

「今も時々胸が痛むでしょう? 俺ならそれを解決してまたオーラを自由に扱えるようにしてあげます」

 

「…………何も聞かない代わり、か」

 

 イースラが提示した選択肢にバルデダルは揺れていた。

 疑問がさらに増えた。

 

 なぜ魔力障害を治せるなどと言えるのか。

 しかし疑問を解決すればバルデダルは魔力障害とこれからも一生付き合っていかねばならない。

 

 バルデダルの抱える魔力障害は普段は何ともないのだが戦いでオーラを使おうとすると胸に痛みが走り、限界を超えるとオーラを扱えなくなる。

 体に負担がかかるのかしばらく胸が痛むようになって死の不安が常に後ろにいるような気分にさせられるのだ。

 

 オーラを再び自由に扱えることもまたバルデダルの望みであるが、胸の痛みがなくなるだけでも日常の苦痛から解放される。

 

「選べるのは一度だけ。選んだら後戻りはできません」

 

 バルデダルの鼓動が速くなる。

 イースラには何か大きな秘密がある。

 

 それを知りたいと思うのだけど、魔力障害を解消してくれるという提案はあまりにも捨て難い。

 

「今すぐ選んでください。選べないのなら……全部無しです」

 

 自分の年齢の半分にもいかないだろう子に手のひらの上で転がされている。

 初めての経験にバルデダルもすぐには言葉が出てこない。

 

「三……」

 

 イースラは指を三本立てた。

 

「二……」

 

 そして一本折りたたむ。

 

「一……」

 

 最後に残されたのは指一本。

 

「魔力障害を……治してくれ」

 

 バルデダルは選択した。

 全ての疑問なんかよりも忌々しい魔力障害を治すことの方がバルデダルにとっては重要だった。

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